岡崎隼人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「書店」という閉鎖的な空間に特化したホラー小説を書いてみよう。そんな発想から、本書は動き始める。
けれど、書店にまつわる恐怖体験と聞くと、正直かなり限定的で、そこまで怖い話は集まらないのではないかと思ってしまう。
しかし、担当編集者と話し合いながら全国の書店員さんに恐怖体験を募集してみると、予想以上に多くの体験談が集まった。
内容は実にさまざまだ。
書店内に犬の幽霊が現れ、犬の缶詰を開封せずに置いておいたはずなのに、翌日には蓋が開き、中身が空になっていたりする。
著者名順に「あ」から「ん」まで並べていた本棚が、いつの間にか「ん」から「あ」へと逆順になっていたこともある。
また、入口近くの新刊棚に太宰治の『人間失格』が置かれており、元の場所へ戻して閉店したはずなのに、翌朝店を開けるとまた同じ新刊棚に戻っていた、という話もある。
ほかにも、耳元でささやく声が聞こえて振り返っても、誰もいないといった体験も語られる。
そうした数々の怪異の中で、特に目を引くのが、「子どもと思われる幽霊」を見たという証言がいくつも存在することだ。
書店の場所も違えば、体験した人同士にも接点はない。それでも、怪奇現象に子どもが関係しているという点だけは、不思議なほど共通している。
しかも、それ以外にも細かな共通点がいくつか見えてくる。
もしかすると、全国から集まった「子どもの霊が現れる」体験談には、何かしらのつながりがあるのではないか。
そう考えた著者の岡崎さんと編集者は、特に似通った体験談に注目し、体験者への直接取材などを通して情報を集めていく。
本書は、次回作のテーマが自然と「書店にまつわる怪談」へと定まっていく流れを追いながら、全国の書店員さんから体験談を募っていく過程そのものを描いた構成になっている。
読者は、その体験談を資料のように読むことができるだけでなく、そこに浮かび上がる共通点について、著者たちと一緒に推理していく感覚も味わえる。
単なる短編集として読んでも楽しめるし、それぞれの話の奥に渦巻く「子どもが登場する怪異」の輪郭が、少しずつ立ち上がってくるのも面白い。
モキュメンタリーホラーとして、飛び抜けて恐ろしい作品というわけではない。けれど、本好きの僕にとっては、書店という身近な場所でこれほど多くの奇妙な出来事が起きるというだけで、いつもの書店が少し違って見えてくる。その感覚も含めて、楽しく味わえる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026.01.22 (木)
短編で手に取りやすく読んだことのない作家さんも多い中、読みやすかった。
金子玲介目当てで購入したけど、いくつか気に入った作品があって嬉しかった。
岡崎隼人 「パルス、またたき、脳挫傷」
砥上裕將 「母の箪笥」
五十嵐律人 「累犯家族」
荒木あかね 「重政の電池」
金子玲介 「恋文」
背筋 「こわくてキモくてかわいい、それ」
多崎礼 「海に還る」
柾木政宗 「切れたミサンガ」
夕木春央 「擲たれた手紙」
麻耶雄嵩 「探偵ですから」
この作品たちが好きだった。なかでも 「重政の電池」が1番良かったかも。余韻も好きだった。 -
Posted by ブクログ
警察官×殺し屋
当初ターゲットであった警察官が自分の敬愛していた小説家だったと知り、その人の命を守るため真犯人を一緒に探していくというところから物語は始まっていく。
雛鳥が最初に見たものを親として認識するように、自分の幼少期から刷り込まれてきた習性。主人公である雨乞は“父”である和尚こそが絶対的な神とし、「自分の心を殺すよう」と学習された。
でも、どんなに心を殺しても小説やある小説家、はたまた小説を書くことを愛することはやめられなかった。それに対して自分がどんな感情を持っているか言語化出来なくとも。
そして、雨乞がやがて絶対的に信じているものに裏切られていたと知ったとしても、彼には愛するものがあったからこそ絶望に沈まずにいれたのだと思う。
何を見て、何を感じるかが自分の人生にとっては重要なのだろうけど、その根底にはそもそも何と出会えるのか、なんだと改めて思った。