あきのレビュー一覧
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“「どうして泣くの?お嬢さん。悲しいの?」
指摘されて気がついた。頬に涙がこぼれていた。
「怒ってるの!あんな綺麗な羽を、誰にも渡す必要なんかないのに。王様にだって、あんな綺麗なもの奪う権利はない。なんで渡しちゃったの!?」
「綺麗......?」
ルスルは生まれてはじめて聞いた言葉のように、それを繰り返した。そしてさらに困惑した表情になる。
「わたしのために泣いてるの?」
戦士妖精たちも、泣き出したアンを不思議そうに見ている。彼女がなぜ怒り、なぜ同時に泣いているのか、理解できないらしい。
その時そっと背後から、アンの両肩に手が置かれた。振り向くと、シャルだった。
黒い上衣とズボンを身につけているが、いつも着ているものと同じではない。ラファルが準備したものなのか、彼の服と似た、ビーズをあしらった優雅な衣装だ。髪が濡れていた。髪の先に滴が玉になって光っている。水を浴びたらしく、指先がいつもよりさらに冷たい。
「あなたは、あの親切な方?あなたもここにいらしたの?」
ルスルがシャルを見て、さらに驚いた顔をする。
「誰もこいつが怒る理由がわからないか?」
静かにシャルが問うと、戦士妖精たちは眉根を寄せる。顔を見合せる者たちもいる。
「ルスル・エル・ミン。おまえもわからないか?」
「......あまり」
シャルは軽くため息をついてアンの肩を抱き、歩くように促した。
「待って、そのお嬢さんが怒る理由を教えてくれないの?」
ルスルが声をかけると、シャルは淡々と告げた。
「こいつは俺に、羽を返した。ラファルは、俺から羽を奪った。その意味を考えろ」”
ラファルはまた出てきそうだなぁ。
もう一つの宝石も持ってるとか言ってたし。
二人の回り道にじれったい。
ジョナスの堕ちっぷりには驚いたけど活躍する彼は良いなあ。
ブリジットの件もとても良かった。
オーランドとくっついちゃえー。
そしてキースの言葉の衝撃。
アンは一カ所に留まるような人じゃなさそうだけど。
“「わたしはブリジットと工房のために、二人の婚約が最良の道だと考えた。二人とも受け入れてくれたから、心配ないと思った。だが、そうではないらしい。わたしはブリジットにいわせれば、娘を甘やかしすぎていたらしい。そのうえ娘の将来が不安で、親の決めた道を歩かせようとするのは、親自身が安心したいだけの親のエゴだと言われた。だだをこねるのじゃなく、ブリジットがこれほどはっきりと落ち着いて自分の考えを言ったのは、はじめてだった」
グレンの言葉に、ブリジットが唇をとがらせた。
「はじめてなんてことないわ。ただ、あまり言わなかっただけよ」
目を白黒させていたエリオットは、ようやく考えがまとまったらしくブリジットに向き直った。
「でもブリジット。いいの?俺がペイジ姓を継いで長になったら、居づらくならない?特に俺が結婚なんかしたら、ブリジットは血のつながらない小姑になるわけだし」
「居づらいわよ、絶対。決まってるじゃない」
ぷいと顔を背け、ブリジットはまた窓の外を見る。
「でも、エリオットと結婚するよりいい。居づらくなったら、わたしが自分で住み心地がいい場所を探すし、なんとかする」
「ひどいねぇ、俺と結婚するのそんなに嫌なんだ」
「そんなに嫌だったら、婚約しない。エリオットのことはとてもすごい職人だって、尊敬してる。好きよ。好きだけど、結婚したいとは思わないだけ。エリオットも、そうでしょう?」
問われて、エリオットはふっと笑った。いつものふざけた笑いでなく、自然な笑みだった。
「そうだねぇ。熱烈に結婚したいほどじゃないけど、好きだよ。綺麗な髪の毛も、可愛い顔も、ドレスも。女の子らしく、わがままいっぱいな漢字も、ちょっと面白くて好きだよ」
二人はしばらく見つめ合った後に、苦笑した。” -
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いよいよ佳境です。
クリスとシャーロックが結婚するため、
シャーロックが全てを捨てて
新天地(新生活)を開拓するのか。
親族をねじ伏せて未来の公爵夫妻となるか。
その為の試練として
シャーロックが単身アメリカへ・・・。
2人の明日はどっちだ?!
壁にぶち当たるかっこ悪い姿を見せたくないから
クリスは連れて行かないという男心(?)に同情。
でもその前にさらに2人の仲も進展して
(読者にとっては)遠恋の不安無しです。
クリスはどこにいてもドレスを作っているでしょうが、
パメラは、イアンは、アントニーは?
次作で身の振り方がいろいろ決まるんでしょうね。
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短編集です。
ジャレッド、クリスとシャーロック、アントニー、ソフィアとアルフレイド(シャーロックの両親)の話の計4編。
1つめは、あとがきによると雑誌掲載ではジャレッド初登場の中編らしい。
そういえば、文庫派の私は本編でジャレッドの登場を少し唐突に感じたような。
時期的には『黄昏に見る夢』と『約束の手紙』の間だそうです。
2つめは、『宵の明け星』と『追憶の糸』の間ぐらいの主役2人の話。
3つめは、『翡翠の森』での日々をアントニー視点から見た話。
4つめは、シャーロックのご両親の馴初め話。
今回もあきさんのミニ漫画ナイスです。
帯やなんかによると、本編はあと2冊のようです。
早くハッピーエンドが読みたいけど終わって欲しくないような・・・。
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“アンの後ろ姿を見つめる。
彼女は、自分で気がついているのだろうか。チビで、細くて、ひょろひょろした手足ばかりが目立っていた一年前に比べて、自分がすこし大きくなっていることを。
すこしだけ背が伸びて、胸や腰あたりにまるみができて、手足のバランスが良くなった。
小柄だが、すらりとした立ち姿だ。髪の色も、わずかに薄くなった。廊下の窓から射しこむ光に照らされる髪は、艶も増している。
たった一年で、少女が娘へと変化しようとしている。ただし中身は、外見ほど変化はしていないらしい。甘い言葉に応えられるようになるのは、まだまだ先かもしれない。
アンの姿が廊下の向こうへ消えると、シャルはふっと笑った。
生まれもった姿が時間とともに変化するのは、妖精からみると不思議なことだった。
人間という生き物の不可解さの一つだ。しかし、それが愛らしい。リズが子供から大人に変化していくのを見守っていた時にも、それを感じた。
しかしアンに対しては愛しさだけでなく、甘い切迫感が同居している。
その時、背を向けていた廊下の端から視線を感じた。ふり返ると、何者かの影が廊下の角を曲がったのが見えた。ふわりとした、紫色のなにかだ。”
シャル視点の時が楽しい。
自分の中でのエリオットへの印象がだんだん良くなってきた。
ヒューの言葉が悲しい。
アンには強く進んでもらいたい。
次くらいにジョナスまたくる?
“背後に立つシャルの手が、強ばるアンの背を軽くなでた。その手が語りかける。怯えるなと。
——誰一人、逃げてない。だからわたしも、逃げはうてない。
ひと呼吸。深く息を吸って吐いて、口を開いた。
「勝負します」
その言葉に、ヒューの背後に控えていたサリムがわずかに驚いた表情で呟く。
「向こう見ずな......」
ヒューは、にやりとした。
「受けてたとう。アン・ハルフォード」
「どうやって勝負するの?」
「砂糖菓子職人同士の勝負だ。砂糖菓子で勝負するしかないな」
しばしヒューは考えを廻らせるように、顎に手をやっていた。しかしすぐに、視線を右翼へ続く廊下の方へ向けた。
「あの妖精。ホリーリーフ城に住み着いていた妖精がいたな。捕まえたが、なにも食べないで、弱っていると」
「ノアのこと?」
「あいつに判断をしてもらおう。あいつなら、どちらの利害にも関係しない。妖精は、砂糖菓子に関して人間以上に目がきく。美しい砂糖菓子には、本能で惹きつけられる。あいつのために砂糖菓子を作る。砂糖菓子を作りあいつが食べる気になったら勝ち。どうだ?もし二人とも食べさせられなかった場合は、引き分けだ。引き分けの場合も、権利はゆずれない」
「わかった」
勝負の方法など、こだわったところで意味はない。自分の実力が、ヒューにおよばないことは変わらない。ただ勝負をする前に白旗をあげては、仕事をする仲間たちに顔向けができない。だから挑むしかない。
「時間が惜しいだろう。悠長にはしてられないな。期限は、明日いっぱい。明後日の朝には、二人とも作品を作りあげて、あの妖精に見せる。どうだ?」
「それでいい」
「楽しみだ。アン」
そう言って微笑したヒューは、嬉しそうだった。” -
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“アンは驚いた。
「そうか……。ほんとうに、そうよね……誰が?ていうか、どうやって……?」
――銀砂糖は最初に誰が作ったの?妖精が作ったって言われてるけど、妖精の誰が作ったの?どうやって!?
見慣れた風景の前に突然、未知の扉が開いたようだった。
銀砂糖は、最初の一握りの銀砂糖がなければ精製できない。けれど最初の一握りの銀砂糖も、銀砂糖がないとこの世に出現しない。銀砂糖は一体どうやってこの世に現れたのか。
それはいいようもなく不可思議な事実だ。なにかの魔法か、奇跡か。人間が知らない、妖精の神秘の技法か。想像するだけで、心が躍った。
「だから最初の銀砂糖には、得体が知れないものって意味もある。あなたは、ただ物珍しいから、期待されているだけよ。実力を買われたわけじゃない。そんな人に、なにができるの?」
最後のブリジットの言葉は、嫌味だろう。くどくどしくて攻撃力に欠けるので、嫌味としては不出来だ。だが嫌味には違いない。
けれどアンは、それどころではなかった。知らされた事実に興奮していた。
「気がつかなかった、今まで!」
「そうよ、だから」
「よく考えればわかったことなのに。わたし今まで、考えた事なかった。ブリジットさん、最初に銀砂糖を精製した人は、ほんとうにどうやって精製したの!?」
問うと、ブリジットは一瞬、なにを問われたのかわからないようにきょとんとした。しかしすぐに、かっとしたように怒鳴った。
「わたしが知るわけないじゃない!?」
彼女の怒声で、はっとする。
――あ…………。怒ってる。
当然だろう。馬鹿にされたと思ったに違いない。
「ご、ごめんなさい。つい」
あせって謝ると、ブリジットの背後で、シャルがくっくと笑いだした。”
どうしようアンがめちゃくちゃ格好いい。
アンがシャルを助けるその言い分とか。キャットの親切を断った理由とか。
彼女は本当真っ直ぐで折れることもあるけれど強いなぁ。
シャルの心境の変化も楽しい。動揺とか葛藤とか。
エリオットは結局、んー、良い人なのかな。中身が読めないけどそこまで悪人でもない。
ブリジットと、幸せになってくれたらとても嬉しいのだけど。
“「ほんとうに、無事でよかった。ありがとうシャル。いつも、守ってくれてる」
力の弱いアンは、シャルと一緒にいれば常に守ってもらうしかない。それはわかっているし、甘えてはいけないと思う。でもシャルが嫌だと言わない限りは、自分からシャルのそばを離れることはできない。もし離れてしまったら、恋しくて恋しくて、どうにかなってしまう。
ずっとシャルの優しさに甘えて、そばにいる自分の身勝手さを感じる。だからできるだけ、彼に負担をかけないようにするしかない。そしてただ感謝して、シャルがアンのそばにいてもいいと思ってくれる気まぐれが、ずっと続くように祈るしかない。
シャルの羽を握ってひきとめるようなことは、アンにはできない。
「待っててくれて、ありがとう。やっと羽を返すことができるね。シャル。あなたのもの」
羽の入った袋を、アンは手を伸ばしてシャルの首にかけた。シャルは微笑んだ。すこしかがみこむと、両掌でアンの頬を包む。そしてゆっくりと顔を近づけた。
「助けられたな」
彼の吐息が、アンの唇に触れた。落ちかかる髪が、さらりとアンの頬に触れる。背すじがしびれるような艶がシャルの瞳にやどり、それに射すくめられて、体の自由がきかなくなる。
「これでおまえは、自分の力で銀砂糖師になったと言える。胸を張って名乗れ。銀砂糖師と」
しばらくなにかを迷うように、シャルは動かなかった。それから思いなおしたように、彼の唇はわずかに位置を変えてアンの額に口づけた。
「銀砂糖師となったおまえに、祝福を」
囁きは優しく、甘かった。
アンは銀砂糖師になった。
飾り蠟燭の炎が揺らめき、聖堂はやわらかな光に満たされている。この世にいるのはたった二人だけだと錯覚しそうなほどに、静かだった。” -
Posted by ブクログ
公爵家の跡取り息子で男前。
当然社交界注目の的でオレ様な性格のシャーロック。
かたや弱冠16歳ながら親友パメラと2人で仕立て屋を営むクリス。
もちろん労働者階級。ただしとっても人見知り。
この2人の恋愛模様。
階級差別の厳しいヴィクトリア時代なもんで、
いろいろある訳です。
ただし、この1作目はお互いを意識するまでの導入部。
シリーズ一貫してタイトルの最初に『恋のドレスと〜』とあるように、
クリスのつくるドレスが重要なアイテムとなって事件が進行します。
主人公の性格やら何やらで恋愛方面はなかなか進展しませんが、
初対面のどちらかというとマイナスな印象から、
少しづつお互いを知っていく過程がときめきポイント。
女子はハマルこと請け合い。