浅田次郎のレビュー一覧
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今回の物語は、また角度を変えて、生と死を描いたもの。一般社会での価値体系よる一元的な評価だけでは人間は測れないということを、アウトローの任侠と触れることで解体し敷衍してきたのがこのシリーズ。しかし、そんな異なる価値体系、見えや粋、面子と言ったものを大切にして生きている男たちも、死を前にして、命と向き合うと形無になってしまう。
『死にたいことと、死んでもいいってことは、全く別物』という言葉の重さを知る。
イジメを苦にする少年や次作を求める編集者の姿から、生きることは、苦しく、さまざまなことを縁にして人は生きていることが浮かび上がる。その一方で、その命をめぐる、マリアと平岡の対立、そして山男の姿勢 -
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ネタバレ2巻に入って、俄然面白くなる。
佐藤優の言っていた、人を侮ること、侮られまいと足掻くことが、実感として腑に落ちる物語だった。
なべ長がガラッと雰囲気を変えるのは、245ページでこれは手打ちだと思ったところからだろう。『他人には言えぬ悩みや悲しみや、クタクタに疲れた体や押し殺した怒りやー様々のストレスで爆発寸前の、自分自身との手打ちなのだ。』
『俺、わからねえもの。自分がどこの誰だか、何をしてるんだか、ずっとわからねえんだ。』
『ぼくは暗澹とした。真っ暗な底知れぬ、不可解な人生の淵を覗き込むようなきぶんになった。』
人間の価値とか、あり方、大きさ、真摯さというものは、決して出世とか、見た -
無料版購入済み
コミカライズの名作
原作は浅田次郎の作品の中でもとりわけ泣かせる名作である。この名作のコミカライズであるが素晴らしい絵柄で原作に負けないほどの仕上がりになっている。原作の雰囲気が、原作以上に読者に伝わってきている。コミカライズの名作と言っていいと思う。
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購入済み
やっぱり名作
はじめはNHK の時代劇で知ったこの作品。紙の本で読んでいたが利便性を考えて電子書籍で再購入。数年振りに読んだが、やっぱりおもしろい。昔ながらのTV時代劇を観ているようだった。こういう、分かりやすく日本人の琴線に触れるような、良い意味で芝居くさい時代小説は、人生の清涼剤になると改めて思った。また、一年後にでも読み返して、一路とお殿様の世界に浸りたい。定期的に読み返したくなる名作だ。
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『一刀斎夢録』浅田次郎
一刀斎。
新撰組最強の剣客と呼ばれ、恐れられた、鬼の3番隊隊長、斎藤一。
幕末を生き延び、明治を経て大正を迎えた「一刀斎」は、近衛師団の中尉に向かって夜毎語る。
新撰組とは何だったのか。
斎藤一が生きた、その理由とは。
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浅田次郎の新撰組三部作、最後の一作品。
こちらも期待を裏切らない、超大作でした。
ついに舞台は幕末の動乱期に。
今回は複数人視点の語りではなく、ひたすら斎藤一本人がその口で過去を語る。
年老いた斎藤一が毎夜訪れる若い中尉を相手に昔語りをしている姿を想像するだけでなぜだか泣けてくる。
吉村貫一郎先生や、芹沢鴨暗殺事件あたりの話も沢山出てき -
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初回は2011年3月に読んでいるらしい。
今回2回目。
とにかく面白かった!という印象があり、友人に貸しても4冊もあるのに1週間で読んだと返ってくる。
そのシリーズを今回Instagramの本仲間内で開催された『本を読まない人におすすめ本を紹介する』という企画で紹介し、晴れて大賞を獲得した。
ということで、慌てて再読。
少々時代も過ぎたものの、10年前とそう変わりはないはずの現在。
義母や愛人を簡単に殴り飛ばす主人公の行動には嫌気がさすが、その子供っぽさ、甘えん坊根性を大きく包み込む話の流れ、任侠オヤジたち、頑固夫、真面目支配人、プライドの高いシェフの男気(侠気、漢気)が清々しい。
解 -
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上下とも読破。理不尽に大役を任されながらも、一所懸命に任務を遂行していく。木曽路に連なる峰々のごとく難題が押し寄せるが、道中を歩進めるように一つ一つ乗り越えてゆく。その姿に、何か忘れかけていた大事なことに気付かされる。
ストーリーが素晴らしいこともさることながら、著者が古文書好きということもあり、普段なかなか見ることのできない表現を発見することができる。今まで見たこともない漢字・言い回しなのに、なぜか懐かしく、すっと腑に落ちるような表現。今でこそ「古い」とされる表現も、江戸時代が200年以上続いたことを考えると、日本語の歴史を俯瞰した時に、今の表現技法はごくごく最近になってからのものであろう -
購入済み
浅田文学を堪能して
東京育ちの自分は時折googlemapを見ながら読んだ。
昭和時代の昔話だけではない。
仕事にかまけて読む本がつい実用書ばかりになっている自分には、精神の本物の栄養となる浅田文学が必要なのだ。
海外在住中でまさかのコロナ禍にあって、まるで遣唐使気分の今ながら、日本に一時帰国できたときは行ってみたい。
海外で無念のうちにコロナで斃れた邦人の慰霊もあり。
いつもいつも、浅田次郎さんには、そうやって正してもらっている。