浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
痛快と言うわけではないが、苦しき中で粋に生きる人の強さと言うものを感じさせてくれる小説。
今の時代の価値観や世界観、人生観とは違う何か大切なものの見方を教えてくれている様な気がする。
ただの人情噺で哀れというのではなく、強く生きる力を感じさせてくれる。それは、解説で言われる、振り返って自己解釈する物語ではなく、過去から現在を照射する未来を照らす選び取る視点で描いた物語だからということなのかもしれない。
前者の視点は勝者の視点で、その視点から描くのが歴史。後者の視点は消えゆく者や敗者の視点で、その視点から描くのが物語。そう言う解説で、この物語の視点と、『童の神』や水滸伝などの敗者を描いた物語に心惹かれる理由に思い当たる。
この本のメッセージや価値をまだまだ、十分には味わい尽くせていない自分が居る。もっともっと、人生修行が必要な様だ。 -
Posted by ブクログ
プリズンホテル完結編。問答無用に面白い。
ちょっと冬で一休み?したかなと思ってたらやっぱ最後はプリズンホテルワールドが全開でしたね。
どうやって終わるか心配してた主人公。
予想以上に綺麗に終わりました。自分の止まっていた時計がようやく動き出したようです。よかったよかった。
夏、秋、冬と読んできて、最後は全作が走馬灯のように駆け巡りながら、それでも春のストーリーがもすごく内容が濃く、且つスピードのある展開で、読んでて結構忙しかったです。それでもものすごく良い忙しさ。
シリーズものはあんまり好きではないんですが、読み終えるのがすごく寂しかったです。
また本作の個性的な登場人物一人一人に必ず会いたいと思います。
全員が全員(女性もいるけど)漢である悲しくも、暖かい物語。 -
ネタバレ 購入済み
切ない
追い詰められた吉村貫一郎が南部藩邸に駆け込んでそこで切腹をかつての親友の大野次郎右衛門から申しつけられるところからスタートした話だが、いろんな証言者の回想シーンで過去を振り返っていたことからなかなか切腹には至らなかった。が、とうとうこの巻で切腹の晩の様子が判明する。切腹までの過程での吉村の思いだけでなく、その後の大野の思い、吉村の息子の思い、その他の人々の思いが当時の価値観や美意識といろいろな葛藤がうまく描かれている。痩せ我慢の美学で実利的ではないのかもしれないが、登場人物の言動や葛藤に正しさや美しさを感じた。
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Posted by ブクログ
今回の物語は、また角度を変えて、生と死を描いたもの。一般社会での価値体系よる一元的な評価だけでは人間は測れないということを、アウトローの任侠と触れることで解体し敷衍してきたのがこのシリーズ。しかし、そんな異なる価値体系、見えや粋、面子と言ったものを大切にして生きている男たちも、死を前にして、命と向き合うと形無になってしまう。
『死にたいことと、死んでもいいってことは、全く別物』という言葉の重さを知る。
イジメを苦にする少年や次作を求める編集者の姿から、生きることは、苦しく、さまざまなことを縁にして人は生きていることが浮かび上がる。その一方で、その命をめぐる、マリアと平岡の対立、そして山男の姿勢に命の尊厳、峻厳さを改めて気づかされる。
命は儚く頼りない。が、とてつもない力強さと光をも同時に宿している。
そんなメッセージを貰う生命賛歌の物語だった。
そして、そんな中で、徐々に主人公の作家の内面が前に出てくる。子どもで止まってしまい、愛情表現の方法を知らぬその姿に、漸く共感できるとっかかりが見つかった。次巻、最終巻で、この作家の魂も救われるのだろうか。
シリーズものながら、全く異なる展開でワンパターン化しない浅田次郎の筆力を感じさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2巻に入って、俄然面白くなる。
佐藤優の言っていた、人を侮ること、侮られまいと足掻くことが、実感として腑に落ちる物語だった。
なべ長がガラッと雰囲気を変えるのは、245ページでこれは手打ちだと思ったところからだろう。『他人には言えぬ悩みや悲しみや、クタクタに疲れた体や押し殺した怒りやー様々のストレスで爆発寸前の、自分自身との手打ちなのだ。』
『俺、わからねえもの。自分がどこの誰だか、何をしてるんだか、ずっとわからねえんだ。』
『ぼくは暗澹とした。真っ暗な底知れぬ、不可解な人生の淵を覗き込むようなきぶんになった。』
人間の価値とか、あり方、大きさ、真摯さというものは、決して出世とか、見た目や、表面的な行動だけで測ることはできないということ。そしてややもすると、自分でも自分の持っているそうした資質を忘れて日々生きているということがあるということに、気付かされた。プリズンホテルの魅力が漸く腹に落ちてきた。
其れにしても、主人公の作家は、事情はわかるけど、ちっとも理解できない。解説の人たちが書いてる様な、愛があるとは感じられず、愛すべきキャラクターとは思えないなぁ。その点では、鉄砲常の言葉に痺れる。『女子供をなかせるような外道は、この鉄砲常が活かしておかんですよ』