浅田次郎のレビュー一覧
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めくって最初の章のタイトルが「ひといろの青」
蒼穹の昴も一つの大きな節目にきたんだなと思いました。そして語られるのは中国の創世神話。
" 森羅万象はこうして調いました。しかしそれだけでは、人間の住まう世界にはなりません。
天に代わって人の世を統ぶる帝。天命を奉じて政を行う、中華皇帝がいなければ。そのみしるしとして、盤古の心臓は大きなダイアモンドに変わりました。
どれほどすぐれた人間であろうと、神々の目から見れば乙甲の獣にすぎません。選ばれた唯一の人間が皇帝として龍玉を抱いてこそ、世界は定まるのです。"
創世神話を思い起こしながら日光浴をする溥儀。「私の過去には全き幸福の時間などかたときもなかったらしい」と振り返る。しかし、幼い頃春児が話してくれた物語は好きだったと。未来の私のためにたくさんの宝石を献じてくれたのだと話す。
"どうして私が
なにゆえこんなにも、高貴な不幸を背負わねばならぬ"
と振り返りながらも。
映画スターになるべく満州にきた田宮少年を見て、「満州に渡った日本人は誰もがみな多かれ少なかれ芝居を打っているのではないか」と考え始める。この「満州」は本来どこにもないのではないかという疑問が頭をもたせかける。人はみんな懸命に生きているが、どこか空回りを続ける空気感だった。
日本にいる吉永はいよいよかの急進派、「危険」と言った石原に会う。石原はいずれ白人世界とアジアで戦争が起きる。そのために満州が必要なんだと話す。
"「いいか、石原。貴様は天才でもなければ英雄でもない。みずからを天才と信じ、みずから英雄たらんとする、皮肉屋で臍曲がりの宗教家にすぎん。宗教家ではなく軍人だと言うのなら、もう一度繰り返すーー恥を知れ」"
どんな理由であれ侵略はいけない。その土地はその土地に生きる者たちのもの。しかしどんどん悪い方に転がっていく中での群像劇だった。
"執政溥儀という人物が、他人のように思えない(中略)しかしその苦悩は、凡下の人々の及ぶところではない。貧しさとは無縁でこそあれ、生きながら地獄をさまようほどの不幸であろう。"
志津は「満州はひどいところだ」と士官学校の同期に話す。ひどいところの満州に、夢を見る者、人生を賭ける者もいる。『満州』とはなんだったのか。このシリーズはどんな結論を出すのか、最後まで追いかけたいと思う。 -
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蒼穹の昴では、中国名が難しくて誰が誰なのかこんがらがってたけれど、ここまで読んだら分かるようになってきた!
珍妃を殺したのは誰だというミステリー小説なのかと思いきや、とても素敵なラブストーリーでした。みんなが証言することが全然違かったり、実際に会ってみた人物が噂と違ったりでどういうことだってなってたところでのラスト!全く想像出来なかった。皇帝と珍妃の深く揺るぎない愛に泣けた。歴史上の事実は別として、この物語の珍妃が大好きになりました。
そして実際に珍妃が殺されたとされる井戸が中国にあるらしい…見てみたくなった!今まで全く興味のなかった中国史が面白いと感じるようになってきたぞ。 -
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じわっと感動が広がる作品でした。本書では犠牲者の方々の無念だけでなく、戦後も生き残った関係者たちの心境についてもなんとか読者に伝えようとしているのかと思いました。弥勒丸に乗船していて助けられた人、またシンガポールで弥勒丸の乗船名簿を作成していた軍人、またシンガポールで弥勒丸から下船するロシア人密航者など、様々な立場で弥勒丸に関わった人たちの心境を描写しようとしていた気がします。弥勒丸関係者の中で生き残った人の多くはその後が描写されていますが、後日談が書かれていない何人かの登場人物について、これらの人々はその後どういう人生を送ったのか、どういう気持ちで送ったんだろうかと想像を巡らせました。あらためて実際に起こった「阿波丸事件」の犠牲者に祈りを向けさせていただき、また戦後も生き残った関係者の方々の気持ちにも思いが向かいました。
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イギリスに留まるかそれとも故郷に帰るか考え続ける張学良。そして生きていた王逸。春雷はいよいよ、その弟子に龍玉を渡そうとする。王逸が家庭教師として育てた弟子の名前は毛沢東。
ああ……ああそうなるのか……そうなるんだけどいよいよここまで来たんだなという感慨に溢れる第3巻。
"恐怖心は武士道に悖る。だから誰も本音を口にできない。美辞麗句の建前に糊塗されて、実はその存在理由がよくわからない国家が、満州なのです。"
その満州でいよいよプロパガンダのための映画制作が始まる。そもそも何のためのプロパガンダなのか、本当はみんなわかっているけれどわからないふりをしているんだな。
いや〜〜自分の偏見に気付かされた巻でもありました……元自衛官の浅田先生がこんなにバチバチに旧大日本帝国軍と関東軍を批判するとは……恥ずかしながら予想していなかったというのが事実です。浅田先生は東京オリンピック開催にも反対してましたもんね。そりゃそうなんですよね。
ナチ党と満州国共和会をなぞらえるあたりの緊迫感よ……
文秀の教え子、朝日新聞の北村記者も好きです。大きな流れに抵抗しなければ。ジャーナリストとしてやるべきことをやらねばと思っているのに、甘粕はじめ大きな流れに飲まれていってしまう。どうかジャーナリストであり続けてほしい。柳川先生の教え子ならと思わずにはいられません。
そして張学良は帰国する。自分は中国を選んだのだと信じて。