星野博美のレビュー一覧
-
- カート
-
試し読み
-
匿名
ネタバレ 購入済み変わらずの
おもしろさ
この方はやっぱり旅エッセイがおもしろい
その中に文化歴史への考え方が書き込まれて
いるのがただのエッセイとは異なり面白さ増々
文中にある金持ちの横のゴミ箱は
ウォシュレットの普及により拭いた後の紙も
キレイだから流さないのが個人的見解 -
Posted by ブクログ
ネタバレ別れ、再会、疎遠、遭遇、衝突、すれちがい、離散
‐返還前夜の香港‐あの時あの場所でしか起きえなかった交流の必然と偶然が描かれている。
生活を前に進めるには持っているものを切り捨てなければいけない、いくつものそういう描写に気持ちが辛くなった。
「多様性」の理解を一歩進めるきっかけにもなった。
多様性とは、肌の色、宗教、年収などではなく、バックグラウンド。いつ香港に来たか、どんな手段で香港に来たか、なぜまだ香港に居続けるのか、そういった全ての背景が一人ひとりを形作る。背負っているものを明かすことあるし、隠しておくこともある。これらの集合体が香港の多様性だと知った。
作中に何回か出てき -
Posted by ブクログ
もとは「すばる」2011年5月号~12年3月号連載。
星野博美、44歳、五島列島へ車の免許をとりにゆく。ドキュメンタリー風のエッセイ、教習と教習所周辺の出来事が綴られている。それまでのヘヴィーなドキュメンタリーに比べると、いささか拍子抜けするが、「兵士の休息」だと思ってしまえば、平凡なはずの出来事もおもしろく感じられだす。ただし、この休息は長い。なかなか試験に合格せず、教習所の宿舎に4週間いることになったからだ。五島への愛も芽生えただけでなく、日を追ううちに満開になる。
これはたんなる休息で終わりはしなかった。それ以降の活動へのスプリングボードの役目もはたした。同時期に書かれた『コンニャク屋漂 -
Posted by ブクログ
星野博美は1996年から98年まで中国への返還前後の香港にどっぷり浸かった。本書はそれから帰国後の3年間のこと。ほぼ書き下ろしのエッセイ。
住み慣れたはずの東京、なのにどこもかしこもおかしく感じられる。一種のカルチャーショック。そのなかで、香港のルポをまとめるという孤独な作業に取り組む。待っていたのはバーンアウト。燃え尽きてしまったのかもしれない。
エッセイの舞台は西荻や吉祥寺のファミレスや銭湯。ファミレスの店員の対応がどうしても理不尽に感じられる(それは星野の鬱屈した心の反映なのかもしれない)。行きつけの銭湯では、どっしりとしたアフロディーテに遭遇し、感動したりもする。
全体的なトーンは明る -
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
祖父の手記をきっかけに自分の家系をさかのぼった『コンニャク屋漂流記』の、いわば姉妹編。今回は時間の向きは逆で、祖父が移り住んだGreater Gotanda(五反田駅を中心に半径2キロ)の昭和の歴史をたどる。
五反田の北東側はハイソで閑静な住宅地。一方、南西側(旧荏原区)には町工場が立ち並ぶ。戦時下には軍需産業の下請けとして機能し、城南大空襲に遭い、焦土と化した。が、東京大空襲は死者10万人超だったのに、死者は数百人でしかなかった。なぜ少なくて済んだのか。
そこにずっと住みながら、知ることのなかった過去。祖父が書き残した手記をヒントに、いろいろな疑問が解き明かされてゆく。よくも悪くも、コロナ禍 -
Posted by ブクログ
星野博美の『謝々!チャイニーズ』は1993-94年の華南、『転がる香港に苔は生えない』は1996-98年の香港だった。本書はそれ以前、1986-87年の香港と中国。この時、星野は香港に交換留学した。
まずは留学先の大学でグレるところから始まる。それも香港風のパンキッシュなグレ方! そして終わりは、友人(男性)と1カ月にわたるシルクロードまでの過酷な列車旅。
中国の観光地や名所旧跡はほとんど出てこない。出てくるのは、もっぱら駅の切符売り場、そして車中の模様。中国の慣習やシステムの不条理と不合理に直面することで、目から鱗が落ちてゆく。そうか、そういうことだったのか。愚か者が愚かでなくなってゆくその -
Posted by ブクログ
奇異なタイトルに惹かれて読み始め、気がつくと、ファミリーストーリーのとりこになっている。読者をぐいぐい引き込むイントロ部分の構成のうまさ! キーワードは、コンニャク(蒟蒻)とイワシ(鰯)。どちらも「弱」という字があるのもおもしろい。
8歳の時に、祖父が病床で自伝的な手記を書いているのを見ていた。その33年後、それを頼りに、自分の家のルーツをさぐる旅へ。地縁・血縁をたどり、戸越銀座から、五反田、白金、外房、紀州へと400年の時空の旅。
最初はエッセイ風だったのが、途中からルポルタージュ色が濃くなり、最後は青いヴィッツで取材旅行。あれ、車の免許はもっていなかったはずなのに。 -
Posted by ブクログ
ドンピシャのタイトル、Rolling Hong Kong gathers no moss。1996.8.19に始まり、97.7.1の中国返還を挟み、98.10.9に終わる感動的な香港ルポルタージュ。
変わりゆく香港、変わり続ける香港。ページのそちこちから喧騒、熱気と暑気、匂いが立ちのぼる。いまを生きる(したたかでパワフルな)香港の人々に圧倒されまくる。
知己のまんじゅう職人に会いにゆくところから始まるのが印象的。ラストの8ページでは、帰国後西荻のアパートで香港を想う。600ページのルポを読んだあと、では、なんだか心が震え、胸が熱くなる。
大宅壮一ノンフクション賞を受賞していたのに、手にとること -
Posted by ブクログ
一気に読もうとしても、そうはいかない。反芻しながら読むと、ゆうに1週間。濃密な時間が過ごせる。
あつかわれているのは、キリスト教の最初の布教と受容、その後の弾圧と迫害と殉教、いわゆるキリシタンの歴史。大追放(禁教令)後も残り続けた宣教師たちはみな処刑された。島原の乱でのキリシタンの死者はなんと37000人。皆殺しだったため、それを語り継ぐものはいなかった。
宣教師たちはなぜ布教地に残ったのか。なぜ殉教を切望したのだろう。棄教しなかった信徒たちは殉教者の遺体や遺物に熱狂した。なぜだろう。Why, why, why?!
サブタイトルには「私的」とあるけれど、かなり公平な見方のキリシタン史。クリス -
Posted by ブクログ
星野博美の身辺を綴ったエッセイ60篇、時期からいうと『銭湯の女神』の妹分。頻出するのはネコと死。
書名の「のりたま」はネコ「のり」と「たま」。「煙突」はなにやら死を連想させるが、星野が住んだ武蔵野の銭湯のある風景のこと。レクイエムが中心だが、そのトーンは必ずしも暗くない。
「忠臣蔵」と「族長の死」がいい。前者は、忠臣蔵を知らなかった友人の話に始まり、泉岳寺の四十七士の墓、幼い時の傷痍軍人たちの思い出、そして同じ頃に熱中したドリフターズの墓や戦争孤児をめぐるコントへとつながってゆく。
「族長の死」は祖父のこと。その通夜で、生前のことを書いた8歳の星野の作文をみなが読んでおいおい泣きまくる。これが -
Posted by ブクログ
サリンジャー風のタイトル。2008年から09年に「週刊朝日」連載。戸越銀座近辺の今昔を語るエッセイだったが、単行本&文庫では大幅に書き改められ、ルポライターの地金が顔を覗かせている。
自由を求めて戸越銀座を去るが、20年後、訳あって舞い戻る。かつて暮らしたその場所で、意外にも自分の生き方や考え方が変わってゆく。
個人的には、共感できるエピソードがいくつも登場した。たとえば、かつてはよくあった私鉄(東急池上線)のストライキ。そうだったよね、線路をどこまでも歩けたもん、日常にはなかった空間がそこに広がっていた。スタンドバイミーみたいに。たとえば、初めて出席した女子高の同窓会(たぶん立教女学院)。ほ -
購入済み
これは旅エッセイです
相変わらずのおもしろさ
精神的に落ち込んでいた時季に
お書気になられたとは思えないおもしろいさ。
運転免許取得本でなく、五島へのお得意の
旅のエッセイ本でした。
でもJAFの方、コロナの車体の下廻りを
蹴っ飛ばして直したりはしてないでしょ?
そんな感覚もおもしろかったです
運転は上手い下手ではなく、安全か危険
名言です。
-
購入済み
謝謝チャイニーズに続き
こちらも拝読読み応え充分で
非常におもしろいかったです
タイトルの通り転がり続ければ
苔は生えないと妙に納得したのですが
本書は香港だけのことを述べている訳でなく
日本のことも危惧されています
出版当時はまだそんなことなかった
多様性が叫ばれるこの時代への著者の
先見性に驚きました
次は銭湯の神様拝読致します。 -
Posted by ブクログ
予想以上の面白さで文句なしに★5つ。長崎旅行で世界遺産の潜伏キリシタン遺産を見学していて知った本。文庫本が品切れだったのを遠出してなんとか新品を購入。出版社はもっと刷れよ。歴史好きならきっと好きになる。キリシタンの歴史は知っているつもりでいたが全然解ってなかった。著者のおばさんに感謝。気になることを掘り下げていくパワーとセンスがすばらしい。それ以外に今回学んだことは、
・カトリック側は一枚岩ではなかった。ポルトガル/マカオから来て南蛮貿易に関与しつつ大名への上からの布教を目指したイエズス会と、スペイン/マニラから来て裸足で庶民に布教する清貧な托鉢修道会(フランシスコ会、ドミニコ会、アウグス