星野博美のレビュー一覧

  • 世界は五反田から始まった

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    ネタバレ

    五反田から戸越銀座にかけての昭和の初めから戦後に至るまでの街の歴史と、それにまつわる筆者の家族(筆者の祖父は外房から出てきて小さな工場を作り上げた)の歴史。
    筆者が私と同世代であるためか、親や祖父母に聞いた話が同じ(焼け跡には早く戻って杭を打つべし、とか)。
    五反田を離れるが、国際基督教大学は中島飛行機の工場が米軍に接収されたその跡地にできた(建物の一部は中島飛行機のものをそのまま使っている)、というのには驚いた。
    五反田かいわいに興味のある人や、私と同年代の人は読むべし。
    筆者はあの「転がる香港に苔は生えない」の人。

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    2025年11月24日
  • 愚か者、中国をゆく

    匿名

    ネタバレ 購入済み

    変わらずの

    おもしろさ
    この方はやっぱり旅エッセイがおもしろい

    その中に文化歴史への考え方が書き込まれて
    いるのがただのエッセイとは異なり面白さ増々

    文中にある金持ちの横のゴミ箱は
    ウォシュレットの普及により拭いた後の紙も
    キレイだから流さないのが個人的見解

    #エモい

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    2025年09月25日
  • 転がる香港に苔は生えない

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    ネタバレ

    別れ、再会、疎遠、遭遇、衝突、すれちがい、離散
    ‐返還前夜の香港‐あの時あの場所でしか起きえなかった交流の必然と偶然が描かれている。
     生活を前に進めるには持っているものを切り捨てなければいけない、いくつものそういう描写に気持ちが辛くなった。
     
     「多様性」の理解を一歩進めるきっかけにもなった。
     多様性とは、肌の色、宗教、年収などではなく、バックグラウンド。いつ香港に来たか、どんな手段で香港に来たか、なぜまだ香港に居続けるのか、そういった全ての背景が一人ひとりを形作る。背負っているものを明かすことあるし、隠しておくこともある。これらの集合体が香港の多様性だと知った。

     作中に何回か出てき

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    2025年09月11日
  • 島へ免許を取りに行く

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    もとは「すばる」2011年5月号~12年3月号連載。
    星野博美、44歳、五島列島へ車の免許をとりにゆく。ドキュメンタリー風のエッセイ、教習と教習所周辺の出来事が綴られている。それまでのヘヴィーなドキュメンタリーに比べると、いささか拍子抜けするが、「兵士の休息」だと思ってしまえば、平凡なはずの出来事もおもしろく感じられだす。ただし、この休息は長い。なかなか試験に合格せず、教習所の宿舎に4週間いることになったからだ。五島への愛も芽生えただけでなく、日を追ううちに満開になる。
    これはたんなる休息で終わりはしなかった。それ以降の活動へのスプリングボードの役目もはたした。同時期に書かれた『コンニャク屋漂

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    2025年07月22日
  • 転がる香港に苔は生えない

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    97年中国返還前後の香港で、著者の体感した「香港とは」と香港の移り変わりがとても率直に書かれていて面白い。
    著者の半端ない逞しさと香港への好奇心がなせる良書だと思う。
    30年近く経ち、もうこの本にある香港を見つけることのほうが難しいのかもしれないけど、もし香港を訪れることがあれば、もう一つのガイドブックとして、この本を持って行くことだろう。

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    2025年07月21日
  • 謝々! チャイニーズ

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    柳おばさんの家族の章がよかった。
    生きるということ。
    今並行して読んでいる全然系統の違う本でも、生きるということ真剣に向き合うことが書かれていて、単純に都会・田舎とかだけじゃなく日本社会システムのことが共通して出てくるところにヒントがあるかもしれない。
    あとがきが特にいい。

    2025.5.28

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    2025年05月28日
  • 転がる香港に苔は生えない

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    中国に行く前に中国の風を感じたくて読み始めた。
    文章が上手い、綺麗な文章とかいう意味でなく、文章の密度が濃く、感情や状況を言語化するのが上手い。この著者の存在は、米原万里さんの読書日記で取り上げていて知ったが、米原さんの中国版という感じ。
    香港人の食に対する考え方(不味い冷凍肉は食わないがo157の危険のある新鮮鶏肉を食べる)とか博打の考え方がよかった。
    著者の他の本読んでみたい。

    2025.5.21

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    2025年05月24日
  • 銭湯の女神

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    星野博美は1996年から98年まで中国への返還前後の香港にどっぷり浸かった。本書はそれから帰国後の3年間のこと。ほぼ書き下ろしのエッセイ。
    住み慣れたはずの東京、なのにどこもかしこもおかしく感じられる。一種のカルチャーショック。そのなかで、香港のルポをまとめるという孤独な作業に取り組む。待っていたのはバーンアウト。燃え尽きてしまったのかもしれない。
    エッセイの舞台は西荻や吉祥寺のファミレスや銭湯。ファミレスの店員の対応がどうしても理不尽に感じられる(それは星野の鬱屈した心の反映なのかもしれない)。行きつけの銭湯では、どっしりとしたアフロディーテに遭遇し、感動したりもする。
    全体的なトーンは明る

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    2025年05月09日
  • 世界は五反田から始まった

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    祖父の手記をきっかけに自分の家系をさかのぼった『コンニャク屋漂流記』の、いわば姉妹編。今回は時間の向きは逆で、祖父が移り住んだGreater Gotanda(五反田駅を中心に半径2キロ)の昭和の歴史をたどる。
    五反田の北東側はハイソで閑静な住宅地。一方、南西側(旧荏原区)には町工場が立ち並ぶ。戦時下には軍需産業の下請けとして機能し、城南大空襲に遭い、焦土と化した。が、東京大空襲は死者10万人超だったのに、死者は数百人でしかなかった。なぜ少なくて済んだのか。
    そこにずっと住みながら、知ることのなかった過去。祖父が書き残した手記をヒントに、いろいろな疑問が解き明かされてゆく。よくも悪くも、コロナ禍

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    2025年05月05日
  • 愚か者、中国をゆく

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    星野博美の『謝々!チャイニーズ』は1993-94年の華南、『転がる香港に苔は生えない』は1996-98年の香港だった。本書はそれ以前、1986-87年の香港と中国。この時、星野は香港に交換留学した。
    まずは留学先の大学でグレるところから始まる。それも香港風のパンキッシュなグレ方! そして終わりは、友人(男性)と1カ月にわたるシルクロードまでの過酷な列車旅。
    中国の観光地や名所旧跡はほとんど出てこない。出てくるのは、もっぱら駅の切符売り場、そして車中の模様。中国の慣習やシステムの不条理と不合理に直面することで、目から鱗が落ちてゆく。そうか、そういうことだったのか。愚か者が愚かでなくなってゆくその

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    2025年05月05日
  • コンニャク屋漂流記

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    奇異なタイトルに惹かれて読み始め、気がつくと、ファミリーストーリーのとりこになっている。読者をぐいぐい引き込むイントロ部分の構成のうまさ! キーワードは、コンニャク(蒟蒻)とイワシ(鰯)。どちらも「弱」という字があるのもおもしろい。
    8歳の時に、祖父が病床で自伝的な手記を書いているのを見ていた。その33年後、それを頼りに、自分の家のルーツをさぐる旅へ。地縁・血縁をたどり、戸越銀座から、五反田、白金、外房、紀州へと400年の時空の旅。
    最初はエッセイ風だったのが、途中からルポルタージュ色が濃くなり、最後は青いヴィッツで取材旅行。あれ、車の免許はもっていなかったはずなのに。

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    2025年05月03日
  • 転がる香港に苔は生えない

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    ドンピシャのタイトル、Rolling Hong Kong gathers no moss。1996.8.19に始まり、97.7.1の中国返還を挟み、98.10.9に終わる感動的な香港ルポルタージュ。
    変わりゆく香港、変わり続ける香港。ページのそちこちから喧騒、熱気と暑気、匂いが立ちのぼる。いまを生きる(したたかでパワフルな)香港の人々に圧倒されまくる。
    知己のまんじゅう職人に会いにゆくところから始まるのが印象的。ラストの8ページでは、帰国後西荻のアパートで香港を想う。600ページのルポを読んだあと、では、なんだか心が震え、胸が熱くなる。
    大宅壮一ノンフクション賞を受賞していたのに、手にとること

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    2025年05月03日
  • みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記

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    一気に読もうとしても、そうはいかない。反芻しながら読むと、ゆうに1週間。濃密な時間が過ごせる。
    あつかわれているのは、キリスト教の最初の布教と受容、その後の弾圧と迫害と殉教、いわゆるキリシタンの歴史。大追放(禁教令)後も残り続けた宣教師たちはみな処刑された。島原の乱でのキリシタンの死者はなんと37000人。皆殺しだったため、それを語り継ぐものはいなかった。
    宣教師たちはなぜ布教地に残ったのか。なぜ殉教を切望したのだろう。棄教しなかった信徒たちは殉教者の遺体や遺物に熱狂した。なぜだろう。Why, why, why?! 
    サブタイトルには「私的」とあるけれど、かなり公平な見方のキリシタン史。クリス

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    2025年05月03日
  • 謝々! チャイニーズ

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    星野博美の第1作目。1993年から94年、27歳から28歳、ベトナム国境の町に始まって、海沿いに中国南部の町を北上してゆく。30年後のいま読んでもみずみずしく、自分の国でもないのにどこか懐かしい。
    アブナイ人も含め、そこに暮らす人々との出会いと触れ合いが、めりはりのきいた文章で綴られている。熱気が、温もりが、光が、喧騒が、匂いがリアルに感じられる。登場する人々の写真も挿まれている。周さん一家、瑞英と息子、柳おばさんと包おじさん……みんないい顔をしている。
    本書が出た時、書評で大絶賛したのは米原万里。確かに感動的なデビュー作だ。

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    2025年05月03日
  • のりたまと煙突

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    星野博美の身辺を綴ったエッセイ60篇、時期からいうと『銭湯の女神』の妹分。頻出するのはネコと死。
    書名の「のりたま」はネコ「のり」と「たま」。「煙突」はなにやら死を連想させるが、星野が住んだ武蔵野の銭湯のある風景のこと。レクイエムが中心だが、そのトーンは必ずしも暗くない。
    「忠臣蔵」と「族長の死」がいい。前者は、忠臣蔵を知らなかった友人の話に始まり、泉岳寺の四十七士の墓、幼い時の傷痍軍人たちの思い出、そして同じ頃に熱中したドリフターズの墓や戦争孤児をめぐるコントへとつながってゆく。
    「族長の死」は祖父のこと。その通夜で、生前のことを書いた8歳の星野の作文をみなが読んでおいおい泣きまくる。これが

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    2025年05月03日
  • 戸越銀座でつかまえて

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    サリンジャー風のタイトル。2008年から09年に「週刊朝日」連載。戸越銀座近辺の今昔を語るエッセイだったが、単行本&文庫では大幅に書き改められ、ルポライターの地金が顔を覗かせている。
    自由を求めて戸越銀座を去るが、20年後、訳あって舞い戻る。かつて暮らしたその場所で、意外にも自分の生き方や考え方が変わってゆく。
    個人的には、共感できるエピソードがいくつも登場した。たとえば、かつてはよくあった私鉄(東急池上線)のストライキ。そうだったよね、線路をどこまでも歩けたもん、日常にはなかった空間がそこに広がっていた。スタンドバイミーみたいに。たとえば、初めて出席した女子高の同窓会(たぶん立教女学院)。ほ

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    2025年05月03日
  • 島へ免許を取りに行く

    購入済み

    これは旅エッセイです

    相変わらずのおもしろさ
    精神的に落ち込んでいた時季に
    お書気になられたとは思えないおもしろいさ。

    運転免許取得本でなく、五島へのお得意の
    旅のエッセイ本でした。

    でもJAFの方、コロナの車体の下廻りを
    蹴っ飛ばして直したりはしてないでしょ?

    そんな感覚もおもしろかったです
    運転は上手い下手ではなく、安全か危険

    名言です。

    #癒やされる

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    2025年04月28日
  • 島へ免許を取りに行く

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    面白かった。40代の筆者が五島列島の福江島の自動車学校で合宿免許を取って、東京で運転する話。簡単に書いてしまえばこれだけなのだが、免許を取る自分を徹底的に観察して描写し、合宿免許を取りに来る人、教習所の先生、島の人々への観察眼と描写がすごい。そして、笑える。後半にかけて久しぶりに本を読みながらゲラゲラ笑ってしまった。

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    2025年04月02日
  • 転がる香港に苔は生えない

    購入済み

    謝謝チャイニーズに続き

    こちらも拝読読み応え充分で
    非常におもしろいかったです

    タイトルの通り転がり続ければ
    苔は生えないと妙に納得したのですが
    本書は香港だけのことを述べている訳でなく
    日本のことも危惧されています

    出版当時はまだそんなことなかった
    多様性が叫ばれるこの時代への著者の
    先見性に驚きました

    次は銭湯の神様拝読致します。

    #エモい

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    2025年02月16日
  • みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記

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    予想以上の面白さで文句なしに★5つ。長崎旅行で世界遺産の潜伏キリシタン遺産を見学していて知った本。文庫本が品切れだったのを遠出してなんとか新品を購入。出版社はもっと刷れよ。歴史好きならきっと好きになる。キリシタンの歴史は知っているつもりでいたが全然解ってなかった。著者のおばさんに感謝。気になることを掘り下げていくパワーとセンスがすばらしい。それ以外に今回学んだことは、
     
    ・カトリック側は一枚岩ではなかった。ポルトガル/マカオから来て南蛮貿易に関与しつつ大名への上からの布教を目指したイエズス会と、スペイン/マニラから来て裸足で庶民に布教する清貧な托鉢修道会(フランシスコ会、ドミニコ会、アウグス

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    2024年12月02日