星野博美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1600年代前半のキリシタン弾圧についてのノンフィクション。対象へのアプローチの仕方が、なんというかファンっぽくてよい。例えば、天正遣欧使節団がリュートを引いたので自分もリュートを習うとか。ドニー・イェンにはまったぼくの友だちが、詠春拳を習おうとしているんだが、それに近いぞ。対象を自分にひきつけて、身体や感情ごと捉えているんだよね。
著者が調査を進めていく中で、調査対象の人物や土地の歴史と感情が同調するさまがとても魅力的だ。解説ではこの本について「キリシタンを巡る感情の歴史を書いた本」というような記述があった。これは、見事な指摘だ。ファン的なアプローチだからこそ、できたのだと思う。最近、専門 -
Posted by ブクログ
約400年前の日本で起きたキリスト教への弾圧と殉教者をテーマとした作品。殉教者とはすなわち信仰を守るために命を落とした人々の事である。
日本へ最初にキリスト教が伝わったのは1549年、その中心的人物といえばあの有名なフランシスコ・ザビエルだ。ザビエルが所属するイエズス会の戦略もあり、大名などの上流階級を取り込みながらキリスト教は急速に信者を増やしていった。
当初は時の為政者も、キリスト教と一緒に伝わる西洋の文化や情報を重宝していたのだが、死をも恐れぬキリスト教徒たちの強い信仰心に危機感を抱きはじめ、やがては禁教令や残忍な宗教弾圧に発展。当時国内にいた約30万~40万人といわれる信者は、無情 -
Posted by ブクログ
1997年にイギリスから中国へ返還された香港で、返還前後の約2年間を現地で生活したノンフィクション作家、星野博美氏の著書。最初の1年は就学ビザのため語学学校へ通い、2年目からは1か月間の観光ビザを取得するために入出国を繰り返すという、実に気合いの入った生活ぶりである。
ちょうど歴史的転換点を迎えた香港の様子を描いているのだが、政治的な話はほとんど登場しない。一緒に語学学校へ通うシスターや、大学時代に留学していた中文大学のエリート同級生、借りたアパートの近所の人々とのエピソードを通じて、街の喧騒や匂いが存分に伝わる内容となっている。
大陸との関係や移民問題、密輸や密入国者が多い事、不自由な住