【感想・ネタバレ】みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記のレビュー

あらすじ

海を渡った宣教師と、命を賭した信徒たち。
殉教をめぐり400年の時を駆ける旅へ!

16世紀後半、織田信長の時代にローマに送られた天正遣欧使節の4人の少年たちは、帰国後、秀吉による伴天連追放令。キリシタンが迫害される世に何を思い、どう生きたのか。

また、日本で布教に携わって殉教した外国人の神父たちは、どんな思いで最期を迎えたのか――。

あらゆる資料・文献を丁寧に読み込み、自ら迫害にまつわる土地を旅して、当時のキリシタンの生き方に迫る。
長崎、島原城、日野江城、原城跡、大村、鈴田牢……さらには、殉教した外国人神父たちの故郷であるスペインの小さな村の教会まで。

果たして、日本人にとってキリシタンとは何だったのか――。

著者は4人の少年たちが8年にわたる訪欧の旅から戻った直後に、秀吉の前で奏でたリュートに強く興味をひかれ、東(日本)と西(ヨーロッパ)の狭間で翻弄された少年たちの気持ちに近づくために、自らリュートを習得した。

400年前、その時代を切実に生き抜いたキリシタンの息吹を新たな視点で現代に伝える野心作。

解説・若松英輔

「時空と距離を超えて、人々の心が結びつく瞬間が、著者の情熱によって到来する」(三浦しをん)

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Posted by ブクログ

一気に読もうとしても、そうはいかない。反芻しながら読むと、ゆうに1週間。濃密な時間が過ごせる。
あつかわれているのは、キリスト教の最初の布教と受容、その後の弾圧と迫害と殉教、いわゆるキリシタンの歴史。大追放(禁教令)後も残り続けた宣教師たちはみな処刑された。島原の乱でのキリシタンの死者はなんと37000人。皆殺しだったため、それを語り継ぐものはいなかった。
宣教師たちはなぜ布教地に残ったのか。なぜ殉教を切望したのだろう。棄教しなかった信徒たちは殉教者の遺体や遺物に熱狂した。なぜだろう。Why, why, why?! 
サブタイトルには「私的」とあるけれど、かなり公平な見方のキリシタン史。クリスチャンでもヒストリアンでもないが、ミッションスクールで学び、ICUで歴史を専攻したという素地が生き、ルポライターの本領も発揮されている。とくに、リュートを案内役にしたところがいい。あの形とあの音色。リュートという緩衝役がなかったら、キリシタン史の壮絶・凄惨な場面は読み進められなかったかもしれない。
タイトルは一見ロマンチック。でも、ほんとうの意味は読むうちにわかってくる。最後、「文庫版あとがき」がじんとくる。

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2025年05月03日

Posted by ブクログ

予想以上の面白さで文句なしに★5つ。長崎旅行で世界遺産の潜伏キリシタン遺産を見学していて知った本。文庫本が品切れだったのを遠出してなんとか新品を購入。出版社はもっと刷れよ。歴史好きならきっと好きになる。キリシタンの歴史は知っているつもりでいたが全然解ってなかった。著者のおばさんに感謝。気になることを掘り下げていくパワーとセンスがすばらしい。それ以外に今回学んだことは、
 
・カトリック側は一枚岩ではなかった。ポルトガル/マカオから来て南蛮貿易に関与しつつ大名への上からの布教を目指したイエズス会と、スペイン/マニラから来て裸足で庶民に布教する清貧な托鉢修道会(フランシスコ会、ドミニコ会、アウグスチノ会)は対立していた。
 
・列聖、列福の制度。2016年に高山右近が列福され、外国人を含め聖人42名、福者394名を生み出した。「殉教するかもしれないが行く、ではなく、殉教する可能性があるからこそ行く(p269)」「『あなたの存在を忘れない』というすさまじいほどの執念(p281)」
 
・聖遺物として殉教者の遺体の奪いあい。「キリシタンは初めから跪いていたが、殉教者の死んだのを見ると聖なる灰を祟って、役人にかまわず火の中にとび込んで行って、火傷をも恐れずに遺体を引き出した(p252)」
 
・自力でエルサレムやローマに行ったペトロ岐部カスイ。

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2024年12月02日

Posted by ブクログ

とても読み応えのある本だった。こういう体験ができるから、本を読むのはやめられない。
参照された膨大な資料と著者の並々ならぬ行動力もさることながら、そこから導き出される考察が深く、読みながら何度も胸を打たれた。名もなき人々の声に耳を傾けることは、本人たちが亡くなった後からでも十分可能だし、また長く語り継がれていくべきことなのだ。

大切なのは、忘れないこと。後ろめたい過去を「きれいな思い出」に書き換えないこと。「負の遺産」を美化せず受け止める心を多くの人が持つようになれば、過ちは繰り返されなくなると思う。

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2022年05月30日

Posted by ブクログ

天上遣欧使節の少年たちについての本かと思ったらもっと広い視野の本だった。家康のキリスト教への態度の変遷がとても腑に落ちた。

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2019年11月22日

Posted by ブクログ

1600年代前半のキリシタン弾圧についてのノンフィクション。対象へのアプローチの仕方が、なんというかファンっぽくてよい。例えば、天正遣欧使節団がリュートを引いたので自分もリュートを習うとか。ドニー・イェンにはまったぼくの友だちが、詠春拳を習おうとしているんだが、それに近いぞ。対象を自分にひきつけて、身体や感情ごと捉えているんだよね。

著者が調査を進めていく中で、調査対象の人物や土地の歴史と感情が同調するさまがとても魅力的だ。解説ではこの本について「キリシタンを巡る感情の歴史を書いた本」というような記述があった。これは、見事な指摘だ。ファン的なアプローチだからこそ、できたのだと思う。最近、専門家以外が「歴史」を語りにくくなっている。「最新の研究を参照しろ」「専門の教育を受けていない人間が口を出すな」「エビデンスを出せ」というような圧がある。いままでそれらが軽んじられてきたことへの反動や歴史修正主義への対抗で仕方がない部分はあるが、窮屈であることは否めない。著者は文学的想像力によるジャンプで、このような窮屈さを軽々と飛び越えて、当時の「感情」を描き出してくれる。

それにしても、自分は九州に住んでいながら、あまりに長崎のキリシタンのことを知らないことに恥じた。カトリックの歴史を残すことへの情熱と比べて、ぼくも含めた日本人の歴史へのまなざしはあまりにも冷淡で、それは慰霊への無関心にもつながっているのだろう。

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2019年09月10日

Posted by ブクログ

約400年前の日本で起きたキリスト教への弾圧と殉教者をテーマとした作品。殉教者とはすなわち信仰を守るために命を落とした人々の事である。

日本へ最初にキリスト教が伝わったのは1549年、その中心的人物といえばあの有名なフランシスコ・ザビエルだ。ザビエルが所属するイエズス会の戦略もあり、大名などの上流階級を取り込みながらキリスト教は急速に信者を増やしていった。

当初は時の為政者も、キリスト教と一緒に伝わる西洋の文化や情報を重宝していたのだが、死をも恐れぬキリスト教徒たちの強い信仰心に危機感を抱きはじめ、やがては禁教令や残忍な宗教弾圧に発展。当時国内にいた約30万~40万人といわれる信者は、無情にも棄教か処刑という究極の二者択一を迫られ、1割にあたる約4万人が外国人宣教師と一緒に殉教者となった。

作品終盤で著者の星野氏が、日本で処刑されたスペイン人神父オルファーネスの故郷であるバスク地方を訪ねた際、400年ぶりに地元の人々の誤解を解くシーンは非常に印象的で感動的だった。今度、教会遺構が世界遺産となった長崎へぜひ訪れてみたいものだ、訪れる前にこの作品に出会えてよかったと思う。

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2019年02月09日

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