梨のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ
主にネットで有名な共同創作サイト「SCP」とそれをテーマにした小説的な作品を指す「tale」というものがあり、本作品はこれらを固有名詞の使用を極力避け、一般的なホラー小説の一つとして世に出すという試みだと思う。
scpと小説内では「システムとしての怪異」として説明され、つまり学校がある土地の異常性がこれにあたる。
土地の異常性とは、怪異が起こりうる場所のように思われ、噂が生み出され、尾鰭をつけながら発展していく土壌。そして精神的に弱っている人がこの場所に近づくとこれらの噂を信じて次第に現実として受け入れるようになっていく。
創作物としての「scp」が基本的に報告書っぽい客観的な記述、あるいは既存の調査資料の引用の型を取るというルールが、本作の前半部分にあたる。
そして後半の語りパートは、一人称小説の文体になりSCPとなる土地をテーマにした、takeになっている。ただそこにあるものとしてのscpに、人々がどう関わっていくかは、さながらTRPGのシナリオのような多様性があるのがtaleだか、本作も土地にまつわる話の一例かもしれない。
「反ミーム」、「ヒューム値が低い」などの特有の語彙を感じる記述もあり、これらの語が登場するscp創作ならではの面白さをより広げていこうという意欲を感じた。
今はコロコロなどでキャラクターとしてのscpを取り上げたり知名度も徐々に広がる中で、ストーリーものとしてのscp(scp-jp)らしさも広まってくれるといいなと思う。 -
Posted by ブクログ
怪談ユニットFEAR飯による怪談語りツイキャス「禍話」。膨大なアーカイブを擁する禍話には、存在しない、n回があるという。そんな噂を耳にしたホラー作家、梨が集めたn回の情報を元にしてリライトしたのが本作「禍話n」である─
わたしは禍話のヘビーリスナーであるため、"気持ち悪く改変された"リライト、ではあるが、元の話を何十回も聞いてる身としては物足りなさがある。加えて、作家とあまり相性がよくない(がホラーファンなので映像作品などはだいたい目を通している)ため、作家の持ち味である「幕間」「オチ」部分を楽しむことも出来ず。
しかし、禍話をまったく知らないホラーファンが読むなら、元ネタが素晴らしく面白いので、はじめて触れて楽しいホラー体験になると思う。 -
Posted by ブクログ
文芸部の片隅で見つかったUSBメモリ。
それは、ひとりの男子学生の死に関する情報を集めたものだった。
その男子学生の死因は「自殺」。
ただ、発見現場には数々の不可解なものが残されていた。それらの痕跡は、まるで恐怖に苦しんだ結果、超自然的な儀式に手を染めたかのようで……。
文芸部で発見されたUSB、新聞部の校内記事、合唱部の変遷に関するインタビュー。様々な情報から見つけ出す「真実」の物語。
まるで恋愛小説のような美しく透明感のある本ですが、梨さんらしい考察要素もあるモキュメンタリ―ホラーで、QRコードで実際に作中のUSBメモリに入っていた情報を見る事が出来たり、何に載っていた情報かによってビジュアルなどにも変化があって凝った作りの1冊です。
ホラーはホラーなんですが、それと同時に青くてとてつもなく痛々しい青春小説でもあります。万人に認められる方法ではないけれど、こういった死者の弔い方・悼み方も私は否定できないなと思いました。そこには、確実に2人にしか分からない世界があったのだろうから。
出来たら、読み終わった後8章も探して読んでほしいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白い、面白くないで評価できない作品。
難しい、私には難し過ぎる。
比較的分かりやすい部類の「放課」も、結局何があったのかも分からんし。みちとくんって何者なん?そもそも、思いがけずこっくりさんが来てしまった後どうなったん?何で主人公は記憶が抜け落ちたん?
「カシル様専用」のラストのお母さまの言う『天罰』って何なん?
「穴埋め作業」と『遠野物語』の関係は何なん?
「虹色の水疱瘡〜」の叔父さんと主人公の間には何があったん?何となくよろしくない性的な関係だったのかなって推測はできるけど、正解かどうか分からんモヤモヤがあるし。
「箱庭」も分からんかった、なんか前衛的過ぎて。
考察しようとしたり、⬜︎に言葉当て嵌めたりしようとしたけど疲れた。
全体的に言えるのは、読むのに時間がかかった。とにかく進まない。面白いか否か以前の問題のような気がする。内容も言葉選びも難しい。理解が追いつかん。
あくまで個人的な意見やけど、ぶっちゃけ恐怖って感覚の問題やから、ホラーに小難しい頭使う要素っていらんと思うんやけどな。せっかく感覚的に不気味だ、気持ち悪いって話作ってるのに、そこを小難しくして考察の要素ぶっ込んで、怖いって感覚から読者を離れさせるのってもったいないと思うんやけどな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ少し前に娘が読みたいと言うので買った本。
カバーイラストに惹かれた模様。
娘の本棚から拝借。
■■高校文芸部の部室で見つかった持ち主不明の一本のUSBメモリ。
そこにはかつてこの高校に在籍していた少年の死を巡る調査や考察をまとめたドキュメントが保存されていた。
ともすると悪意すら感じる、死を目前にした少年の異常行動や心神喪失っぷりが書き記されたこの記録は誰が何の目的で残したのか。
怪異に怯えて自殺を遂げた少年。
少年と極めて近しい心情を抱きながら時を分かち合った少女。
この高校に巣食う言い伝え、場としての怪異。
前半は調査レポート、インタビュー、作中作めいた差し込み、手書き文字や見取り図などを交えたメモなどありとあらゆる表現方法を用い、ノンフィクションレポートっぽくこの舞台の不気味さ、不穏さを描いており、大変引き込まれた。
さしずめ『自由研究には向かない殺人』の国内ホラー版かのよう。
さすがwebを中心に活動する新進気鋭の作家さん。
厚み、深みはともかく新しい風を感じる。
中盤以降は自殺を遂げた少年、少年に寄り添っていた少女側からの物語が展開されるのだが、そこをどう感じるかが肝。
思考をこねくり回す感じが強すぎるのと、自殺擁護の論調に対して、凝り固まった思考のオジサン(自分)にはマイナスイメージだったが、まぁ分からなくはない。
なるほど、そういう見方もあるよねとは思う。
が、もし娘がこの思想のゆらめきを耽美的と感じ、ある種の憧れを抱くのだとしたらそこは釘を刺さんといけないかな。
別にこのホラーを楽しんだり、考え方を受容するのは構わないのだけれど、いろいろとすっとばして極論だけ掬ってしまうのは要注意。
と、結果検閲めいた読書になってしまったが、娘的には父がこの本を読んでいても特に何も感じていない模様なので、きっと物語と割り切って消化しているはず。 -
Posted by ブクログ
まず、表紙。
著者・梨さんだからホラーとはわかってるけど、さわやか青春小説?と思うほどの淡い水色のきれいな表紙に困惑。
そして「きみとの明日を消したい理由(櫻いいよ)」の表紙と酷似。
間違えて手に取ってしまったほど。
最後まで読むと、さわやかな表紙にも著者の思惑が織り込まれていることに感嘆。
内容は調査から入るモキュメンタリーホラーで、え?どういうこと?と困惑するパートとゾゾゾとするパートが入り乱れ、ティーンたちのモヤモヤや鬱々とした気分・死に惹かれる心がまざまざと書かれていて、気持ちが持っていかれそうになる。
ただ、これを読んだ10代たちには、この本が言いたいことは「自死を肯定してるんじゃないよ」ってわかってもらいたいな、と思った。
ホラーパートは文句なしな怖さで、怪談って昔からこうやって作られたんだな、って小説の中だけど、「実感」した。 -
Posted by ブクログ
死に魅了された人たちの、呪いのような美しい散文。まるで褪せたり朽ちたりしないよう、永久冷凍保存した恋文のような。なんとなく現代の太宰味を感じた。
25時59分 屋上で「答辞」と叫ぶ声が聞こえた
こっそりと拾った傘の内側に書かれた幾つもの謝辞
いつまでも釘を打つ音がする
もう木も、呪いたかった人すらもそこにいないのに
「けのび」という俗称がついている死体
自宅の窓に外側から張り付いている男児が
こちらを見ていたので、蝶かと思ったって言ったら、
その子が満足したみたいに笑って、消えた
「あの先輩に告白しなくてよかった、ずっと後悔できるから」
といった意味の話を、泥酔した勢いでされたことがある
わたしはそのひととその故人の共通の知人だった
もういいよ、という言葉が、
これから起こるとてもわくわくする出来事の
合図だった期間について