銀座の老舗文房具店『四宝堂』の店主とそこを訪れるお客様たちの物語、第三弾です。
銀座の一角に趣のある佇まいで店を構えている老舗の文房具店、『四宝堂』。そこを訪れる人々は、常連客だったり、ふらりと立ち寄っただけだったりと様々だ。彼らがそれぞれ思い入れのある文具に触れる時、ふと過去を振り返りたくなったり、これからの自分の人生を考えさせられたり。想いを伝えたい時、もう一歩を踏み出したい時、そっと背中を押してくれるような物が、きっとある。
シリーズの前作は四宝堂の店主、硯さん自身のことにも触れたお話がありましたが、今作はお客様中心の物語でした。そして、どのお話も考えさせられることがある、いいお話でした…。お気に入りの文房具がきっかけで過去を振り返ったり、これからの未来に目を向けることができるようになったり。身近で、ささやかなものだからこそ、そういった力になる部分もあるのかもしれません。文房具のお話というより、文房具を通して、もしくはきっかけとして人間を描く物語で、とても心が温まる感じがします。
今回はどれも好きな話で、ブックカバーの話では自分も学生の時に何を考えていて、親にどんな態度を取っていただろうと考えさせられたり、同時に今思春期真っただ中の姪は何を考えているだろうと思いを馳せたりしていました。私も言いたいことが上手く言えずに、もやもやした気持ちだけで八つ当たりのようになったことがあった気がするな、とか。その時の母もこうやって悩んだんだろうか、とか。今思うと恥ずかしいこともあるのですが、当時は一生懸命だったんだよね、と自分で弁明してみたりしながら思い返していました。
模造紙の話は、読みながらなんだか泣けてしまって。模造紙で実物大店舗模型を作ってプレゼンをするなんて、一体どれほど紙を使うことか。けれど、ミニチュア模型でなく、実物大にすることがミソなのかもしれません。他人に手柄を譲ってでも、会社のためになることをしてほしいと望めるなんて、人間のできた人だなあとしみじみ感心してしまいます。いい人が出世するわけではない世の中ですが、頑張った人が頑張った分だけ喜びを得られる世界であって欲しいと思います。
今作も、とても心温まるストーリーをたくさん読ませて頂きました。次作ではどんな文房具が登場するのか楽しみです。