あらすじ
80年代 東京――僕と不良のひと夏の物語。
中学卒業と同時に渡米し、長らく日本を留守にしていた吉田倫。吉田は旧友である寿司屋の主からの誘いに応じて、中学の同窓会に赴いた。
同窓会のメインイベントは当時作ったタイムカプセルを皆で開けること。タイムカプセルの中に入っていたのは、アイドルのブロマイドに『明星』や『平凡』といった芸能雑誌、『なめ猫』の缶ペンケースなどなど。三十年以上前に流行した懐かしいグッズの数々に、同級生たちの会話が盛り上がる。
そんな中、吉田の紙袋から出てきたのは『ビニ本』に『警棒』、そして小さく折りたたまれた『おみくじ』だった。
それらは吉田が中学三年の夏休みに出会った、中学生ながら屋台を営む町一番の不良、東屋との思い出の品で――。
平凡な「僕」と不良の「あいつ」、正反対の二人が出会った、ひと夏の切ない物語。
感情タグBEST3
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すごく感動した!
ちょっとしたきっかけで地元で一番の不良と出会って、色々巻き込まれて、そして最後の別れまで。初めはどうなるんだろと思ったけど、意外といい奴で…
でも、最後には…涙
有名な本しか読んでなかったけど、隠れた名作って結構あるのかなって思いました〜
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お祭りの縁日などで見る、大きな鉄板で焼きそばを焼いている人、そして向かい側に誰かが立っているイラストが表紙。この鉄板(テッパン)が大きな意味を持つ…
主人公は中学卒業と同時に渡米していたが、同窓会で当時作ったタイムカプセルを開けるために久しぶりに帰国。そしてタイムカプセルに入っていた『おみくじ』だけを手に握り締める…忘れもしない中学三年の夏休みに出会った、中学生ながら屋台を営む町一番の不良、東屋(あずまや)との思い出の品だった。
そこから物語は舞台を80年代の東京に移し、回想シーンが描かれてゆく。
回想シーンの中で、彼と僕のひと夏の切ない物語が展開する。この不良の東屋がいい奴。家庭が複雑でテキ屋をやってお金を稼いでいる。そして彼のつくる屋台の焼きそばが美味すぎて、僕は忘れられない。
ネタバレは書けないが、最後の最後のエピソードには目頭が熱くなった。思いがけずいいストーリーでした。ピュアに感動します。
作者の上田健次さんはサラリーマンをやりながら作家になった人。現在も会社役員と作家の二足のわらじを履いている。『銀座「四宝堂」文房具店』シリーズが有名で、今度読んでみたい、注目したい作家です。
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中学卒業から日本を離れていた吉田は、旧友に誘われた中学の同窓会に赴き、30年以上もほっぽかれたタイムカプセルを開けることに。
吉田のタイムカプセルから出てきたものは…。
そこから一気に中学三年の夏になり、夏休みの夏期講習で他校の東屋と出会うことに…
東屋は、素行の悪さで区内中に知れ渡っている名前だったが、初めて見る姿は不良の感じはしなかった。
吉田と東屋の切なすぎるひと夏に青春を感じるが、けっして青くさいものではなく、ただ東屋が語ることは真っ当で中学生とは思えず驚いた。
食に関して詳しいことと美味しいものをどうやって提供できるか、など観察眼も凄い。
すべては祖父に教わったようだが、孤独でありながら乱れたところがない生活。
学びと仕事を両立させるのは将来を見据えているからで、その影響を少しは受けたであろう吉田が、留学し何を学んだかは気になるところだったが、ラストは感動した。
そこにいたのは、確かに東屋だった。
あのとき食べたヤキソバと同じくらいにうまかったのだから…。
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平凡で普通の「僕」と、最恐の不良と言われる「あいつ」が過ごした一夏の物語。
主人公は、中学の同窓会の誘いを受けて帰京し、そこで御開帳されたタイムカプセルに、中学時代の懐かしい思い出を見つける。
その頃の「僕」は受験をどうするか迷いのある中学三年生。夏期講習で他校の不良と隣の席になったことで、いつの間にか少しずつ彼と交流が生まれていく。名の知れた不良だという「あいつ」は、義理堅くて、読書家で、つまらない夏期講習も真剣に聞いているようなところもあって、縁日の屋台で焼きそばを作る姿が堂に入っている。けれど、平々凡々な一般人である「僕」と四代目を継ぐのだという的屋の「あいつ」とは、住む世界が違っていて。
終盤まで、この話が主人公の回想で進んでいたことを忘れるくらい、過去の思い出が濃く、匂い立つような物語でした。切ない余韻が後を引きます。もっと、読んでいたかった。主人公と、不良の一夏だけというには濃すぎる思い出が、夏の蒸すような暑さと非日常に相まって、永遠には続かない切なさを伴った雰囲気と共に押し寄せてくるようでした。
読んでみた印象として、とても描写の上手い文章でした。何より、食事の描写がすごいです。文章を読んでいるのに目の前でその料理が作られているような、香りさえ漂ってくるような気がする文章で、なんて美味しそうに書くのだろうと思ってしまうほど。料理や鉄板屋の描写を読むためだけに読み返したいと思うくらいです。
そして、的屋の祖父から教えられた東屋の語る一つ一つが深みを持っていて、自分はこんな風には教えられてこなかったな、などと思ってしまいます。大人としての食事の楽しみ方や時間の使い方など、大人と呼ばれるべき年になった自分でもできないことを、中学生の彼が知っている。なんだか少し羨ましく、いやまだまだ私だってこれからだ、と思う気持ちもありつつ。
教訓としたい言葉がいくつもある話でした。
また折を見て読み返したい一冊です。
Posted by ブクログ
性格も境遇も違う二人の少年が中学3年の時期を一緒に過ごしお互いを支え合う物語。ラストは切ないだけではないどこか暖かいもので安心した。その界隈は常に危険が伴うものなんだと怖さ半分人間の暖かみも感じた。
Posted by ブクログ
初読みの作家さん
表紙から食べ物の話かなと思ってたけど、ちょっもベクトル違った。
いやまぁ食べ物の話っちゃ話だけれども。そして出てくる食べ物おしなべて美味しそう・・
この文章表現ぴかいち
呼んだ後に表紙の画みるとまた違った感想に
面白かった満足
Posted by ブクログ
本に出てくる食べ物は、描写が本当においしそうで、おなかが空く感じだった!
それと同時にケンカのシーンが生々しくて…。想像して、ウエッてなった。
デビュー作ということもあると思うが、面白かったけど、読むのに時間がかかって苦労しました。
Posted by ブクログ
読みやすくて一気に読む事が出来ました。丁度中学校が荒れていた時代のお話でした。私の中学生時代は穏やかで、先生の威厳があり、いじめも無く皆んな和気あいあいとした時代でした。他の中学校のお友達もいて、大人になってから再開した時は互いに懐かしく昔話に盛り上がりました。元気で再会できていたら良かったのにと思いましたが、息子が父親そっくり成長してくれて、救われました。
Posted by ブクログ
小学館文庫のこの手の本は当たりはずれがあるというたら失礼すぎるか
合う合わないがすごいある(笑)
ちゅうことで、この本も、まあさらさらと読んだけどそこまでアレではなかった(笑)
筋は面白い…んやけど、どうしても
「こんな中学生おるかい」
ってなってしまう
そもそも会話文も
「こんなしゃべり方する中学生おるかい」
ってなってまうねんな~(笑)
途中からコレ、ツッコミ待ちなん? と、すら思ったけど、ちゃうよな
たぶんちゃうよな(笑)
ほんでよくよく考えたら著者はわたしより10才くらい年長ぽいので、そうか…あの時代の中学生やったら、このくらいの話はあるんかもしれん…、と、思った
ちょっと脚色は入ってるけど、ちょっと。たぶんちょっと。すごい時代やな
食べ物の描写はなかなかおいしそうで楽しめたけど、ときどき
「そういう表現つかう…?」
と、いうのもある
「ネットリ」とか…
そうなんやろうけど、なんかもっと違う表現はないのか、とか(笑)
形容詞の位置なんかがびみょうに読みづらかったりしたので、わりと自由な文章やなあとも思った。えらそうですいません
なんやろうね、国語の模試なんかで
「この『ゆっくりと』はどこにかかっているでしょう」
っていう問題が作れそうなわかりにくさというか(すいません)(しかもわからんわ)
「ぼくらの七日間戦争」とか、あのへんをめちゃくちゃ楽しんだ世代ならこれもまた楽しいんじゃないかな
うまいこと令和の時代に昔を取り込んでると思う
懐かしいな~、そういうこともあったな~、そういえばあのころって…
とか、思うにはいいんじゃないかな
残念ながら、(懐古するには)わたしはちょっと時代が違うかった
もっと(時代が)離れてたら逆にファンタジーに楽しめるのかもしれへんし、この世代のお子さん方が現在の20代から30代前半なんやな、と、思うと、いやいや、楽しんで読めるかもしれない
この世代を親御さんにもつ若い人のほうがわたしよりずっと(この世代の感覚の)解像度が高いかもしれんな
いいとか悪いとかではなく、歴史ってそういうもんやもんなという(きゅうに話がでかくなったな)
Posted by ブクログ
普通の家の子とテキ屋の仕事と学業を両立している子のブラザーフッドのお話。
テキ屋の仕事から社会と接している子は、どこか大人びる。人間関係の細かいお作法やレストランでのマナーも心得ている。
普通の家の子との共通点から意気投合ではないけれど偶然のあれこれで話が展開していく。
小さい社会の謎のヒエラルキー。
よくある展開。だけれど…
読後、グルメや嗜好がどうこうでなく
ストーリーの総括として
カップ焼きそばでなく、鉄板で焼いた少し焦げたところのある固まる寸前のドロリとしたソース焼きそばが食べたくなる。
超高級店の分厚い鉄板でなく
薄くもなく分厚くもない、屋台のテッパン。
思春期のあれこれを暗示しているようだ。
「テッパン」良いタイトルだと思った。
Posted by ブクログ
☆5に近い4。(勝手に☆5のハードルをあげてしまっているため……)
昭和の空気感、思春期の友情、垣間見る大人の世界……。
言葉にすると安っぽくなってしまうけれど、そういった切なさの混じったいろんな感情が呼び起こされる。
「日本おいしい小説大賞」応募作品のため、食べものの描写がたくさん出てきて、美味しそう!……ではあるのだが、主役の2人の少年の前には、ちょっと邪魔な気も……。
とにかく、2人がいい。
絆って、おいしいご飯をどれだけ一緒に食べたか、その時間を共有できたか、と密接に関わっている。
時間が長ければいい、回数が多ければいい、というものではない。その時間の濃密さ。
最後も、ハッピーエンドかはわからないけれど、ホロリと来ました。
Posted by ブクログ
普通の中三男子・吉田が中学生ながら屋台を営む不良・東家と出会う。同じ中学のフリから恐喝されたが、何とかやり過ごした。そして二人で高級ステーキ屋でステーキを食べる。それから30年以上がたち、東家は死んでいた。そして東家の息子さんが鉄板で焼きそばを焼いていた。涙まではいかなかったが、良かった。おすすめの言葉は『迷った時は野生の勘に従って最初に選んだ方を選べ』
Posted by ブクログ
薬師湯シリーズもあるから、この著者さん、新井薬師好きなんだろうな…または、この辺りで過ごしていたことがあるのかな。
近年のテキ屋の実態などまったく知らないけれど、こんな危険と隣合わせな稼業なんだろうか。
倫の進路を後押しする担任、梅子のセリフが色々とおもしろく、心軽くなる感じで良かった。
Posted by ブクログ
夏期講習に通っている時の、主人公と不良少年とのやりとりは、面白く読めたけど、その後の展開がちょっとしっくりこなかった。ラストは、2人の再会とかちょっと感動がほしかったなあ。
Posted by ブクログ
ご飯の描写がどれも美味しそうでお腹が空きました。主人公と不良の関係性がとても良く、どのエピソードも面白かったし、最後は切なかったですが素敵な終わり方だったと思います。お祭りに行きたくなりました。
Posted by ブクログ
締めくくりは凄く良かった。
純粋に人として惹かれたり、真っ当な道に歩みを進めようとしているのに、大人の事情やら、裏社会でのあれやこれやが関係して、心で繋がり関係を深めることが出来る可能性を遠ざけなければならない感じにモヤモヤが引っかかり続けた。
読み終えて、これを書き進める中でまだなお、喉元に詰まった何かがある感覚だ。
Posted by ブクログ
若い頃の記憶を振り返りながら、友との出会いと別れを描いている。ほろ苦い話ではあるけど、最後は東屋の口癖「お前の顔こんなだぜ」を彷彿するやりとりに救われる。
Posted by ブクログ
ランキングにあった『銀座「四宝堂」文房具店』を読みたいと思ったのだが、中古本屋にはまだ出てこずで、同じ作者のこちらから行ってみる。
同窓会で甦る中3の夏休みの思い出。
町一番の不良、テキ屋の四代目・東屋のキャラクターが魅力的。
おじいさん子でその祖父が語ってくれた規範と知識に従い生きていて、主人公・吉田と同じ中学生とは思えないほど大人びて、腕っぷしも強ければ料理も上手い。
『お前の顔、こんなだぜ』と茶化されるばかりの「まともな家の子」である吉田との対比が際立ち、男気溢れる居住まいに仁侠映画を思い出す。
やくざの頭になった男の、若き日の外伝といった趣。