一色さゆりのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
美術・アート業界という、一般にはあまり馴染みのない世界が舞台。世界的に評価の高いアーティストの、何億という高値で取引される作品たち。大きな金額が動けば、そこには必ず人の欲やエゴが絡み、不穏な輩も現れてくるのは世の習い。その「やばい部分」に果敢に足を踏み入れ、テーマとして取り上げた意欲作である。
もちろんフィクションでアリ、虚実ない交ぜではあろうが、参考とした美術品のオークションや、怪しいアジアの大富豪とのやり取りなど、知らない者にも「ものすごいリアリティ」を感じさせてくれる。
「人前に姿を現さない」孤高の天才作家と、そのマネジメントを一手に引き受けているやり手美女。その美女のアシスタントを務める若い女性が主人公で、「大きなうねり」に翻弄される様がまたリアル。
ミステリなので殺人事件が起こるが、その「謎解き」がメインのテーマではない...のではなかろうか。アート業界の表裏を描く「お仕事小説」でもあり、最後の最後で気づかされるが、主人公の「成長譚」でもあるのだ。
「狐と狸の化かし合い」のような緊迫したストーリーの中で、読者へのちょっとした「プレゼント」のようなエピソードも挟み込まれていて、盛りだくさんであり、かつ抜かりがない(^ ^
本作がデビュー作らしいが、とてもそうは思えない「手練れ」と見た。他の作品もぜひ読んでみたくなる(^ ^ -
Posted by ブクログ
東京藝術大学出身の著者によるアート小説。
じんわり沁みる素敵な作品でした。
東京国立西洋美術館、箱根のポーラ美術館、倉敷の大原美術館、京都の大山崎山荘美術館を舞台に、モネの「睡蓮」を巡る旅。
それは自分ではなく、依頼した人に代わりに絵を見る旅に出てもらうというもの。
どうして自分で行かないのか?
なぜその人を代わりに選んだのか?
……は、読んでからのお楽しみ。
作品のなかでは一番身近な国立西洋美術館所蔵の「睡蓮」。そこに、一体どんな物語が広がっているのか読む前からドキドキ。
ストーリーとは別に、訪れる美術館や創始者、展示作品などについて知れたのも良かった。
ロダンはなぜ近代彫刻の父と言われるのか、とか。
モネにとってジヴェルニーの庭を描くことはどういうことだったのか、とか。
歳を重ねるにつれ見えてくることや、「もっとこうしておけば」と思うことも増えてくる。
絵を観ることは、絵と向き合いながら自分を見つめる時間でもあるのかもしれない。
登場人物と一緒に、アテンドしてもらいながら美術館を巡っているような気分になりました。素敵なひととき。
迷ったり立ち止まったりしながら、美術館を訪れることで自らを見つめ直す登場人物たちの姿に、凛とした空気を感じて厳かな気持ちになりました。
アートや美術館、どんなふうに鑑賞し、そこに何を見るのか……そんなことにも意識を向けさせてくれる作品。
おもしろかったので、著者の他作品も読んでみようと思う。
『いわば《睡蓮》は鏡なのだ。
見る人の心をまっすぐに、雑念なくうつしてくれる。』