あらすじ
世界最古で最大の大英博物館。その膨大なコレクションを管理する修復士、ケント・スギモトのもとには、日々謎めいた美術品が持ち込まれる。すり替えられたパルテノン神殿の石板。なぜか動かない和時計。札束が詰めこまれたミイラの木棺。天才的な審美眼と修復技術を持つ主人公が実在の美術品にまつわる謎を解く、豊潤なるアート・ミステリー。
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面白いです! 原田マハ風なアート小説でもありますが、ダン・ブラウン的な展開もあって、ミステリーとしても楽しめました。著者は、「このミス大賞」受賞者とありましたが頷けます。美術関係の知識も豊富でこれにも驚きました。
英国にはかなり頻繁に行ったので、大英博物館やロンドンの風景、ノッテヒング・ヒルの骨董屋、エジンバラなど情景が目に浮かぶようでした。北斎の浮世絵の話は「なるほど~」でしたが、南方熊楠についても知識がなかったので、一挙に興味を持ちました。
続いて、続編の「ひまわり」を読もうと思います。
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舞台はイギリス、大英博物館!日本人の晴香が働くにはさぞ大変だっただろう。そこには天才修復士といわれるケント・スギモトがいる。ぶつかりながらもいいコンビ?
和時計の職人からとケントの家族の謎にも迫る?
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はい、いきなりですが、本日のレビューはクイズでスタートします。
Q. 『大英博物館』の『展示室で来館者の目に触れるコレクション』はどの程度の割合でしょうか?
① 86パーセント
② 53パーセント
③ 27パーセント
④ 1パーセント
はい、いかがでしょうか?正解しても賞金はでません(笑)。う〜ん、なんだか微妙な数字が並んでいますね。さて、どうでしょうか?はい、ここで行数を無駄に取るわけにはいきませんので(笑)、そろそろ正解に行きたいと思います。
はい、その答えはっ!
A. ④ 1パーセント
えええええっ!うっそ〜!ですよね。なんと、逆に考えれば『収蔵品』の『九十九パーセントがほとんど誰の目にも触れられないまま、収蔵庫という名の墓場に眠っている』ということにもなるのです。これには、ビックリです。あまりにもったいないとも思います。では、そんな『収蔵品』はどのように管理されているのでしょうか?野晒しになってただただ朽ち果てていくのでしょうか?
さてここに、『大英博物館』に収蔵された『八百万点を超えるコレクション』をケアし続けている『修復士(コンサバター)』を描く物語があります。そんな組織の『トップに立つ男』、『天才修復士』と呼ばれる男の素顔を見るこの作品。ミイラから浮世絵まで幅広い”アート”の醍醐味を味わえるこの作品。そしてそれは、『収蔵品』にまつわるさまざまな謎に立ち向かっていく『コンサバター』たちの活躍を見る”アート・ミステリー”な物語です。
『自撮り棒は禁止なんです』と、『大英博物館地上階にある「パルテノン・ギャラリー」』の『来館者の男性』に『女性監視員が近づいて声をかけ』ます。『風邪気味なのか、鼻をぐずぐずさせている』その男性は『すみません』と『自撮り棒をすぐに折り畳み、鞄に仕舞』います。再び、『椅子に腰を下ろし』『そろそろ交代かな』と『腕時計を確認する』『女性監視員』。しばらくして『交代の監視員が声をかけてきたとき』、『金属が倒れる音にも、なにかがバシャンと割れる音にも聞こえ』る『大きな音が』し、『その場にいた全員が、いっせいに音の方を見』ます。監視員が『慌てて駆け寄る』と、そこには『さきほど声をかけた男性が自撮り棒を手に持ち、顔面蒼白で立ち尽くしてい』ました。そんな『彼の足元に落ちている白い塊を見て、監視員は背筋が凍』ります。『縦横一メートル以上、厚さ十センチもの浮彫の石板が、彼の胸の高さから落下していた』というその状況。一方で、警備員が駆けつける中、監視員は『自撮り棒の男性が口元にふと笑みを浮かべた』のに気づきます。
場面は変わり、『お待たせして大変申し訳ありません。糸川晴香(いとかわ はるか)と申します』と記者に挨拶する晴香は、上司の『スギモトから急に取材対応を押し付けられ』、やむなく『修復部門のラボ』を案内します。『百人ほどの修復士たちによって、八百万点を超えるコレクションが順番にケアされている』というラボを案内した晴香が『地上階に戻』ると、『受付スタッフの女の子と談笑している』スギモトの姿がありました。『いくつか質問を準備してきたんです』と言う記者に『美人からの質問は大歓迎ですよ』と答えるスギモト。そんなスギモトに『「天才修復士」という評判を、ご自身ではどうお考えですか』と訊く記者に『ああ、その通りですよ』と答えるスギモト。『三十七歳という若さにもかかわらず』、『すべての知識に精通する自他ともに認める「天才」』という『スギモトの修復は魔法みたい』とも言われています。その後も幾つかの質問をし、場を後にした記者を見送ると、『新聞社の取材を差し置いて、受付の女の子なんかとおしゃべりなさっているとは思いませんでした』と嫌味を言う晴香に『受付の女の子なんか』と引っかかるスギモト。『彼女はオリヴィア…「受付の女の子なんか」と呼ぶべきかな?』と訊くスギモトに答えられない晴香。そんな晴香に『ところで、新しいフラットを探しているようだね』と話題を変えたスギモトは、『ベイカー・ストリート』に住む中で『同居人を募集するかどうか、ずっと迷っている』と話します。そして、『今じつは助手を探してるんだが、もし君にやる気があるなら、試用期間だけ仮住まいさせてやってもいいぞ』と切り出したスギモトは、『あくまで仮住まいだ』と淡々と話します。そして、『考えておいてくれ』と言うと席を立ったスギモトは去り際に『さっきの一言がどうも引っかかる』、『受付の女の子なんかってやつだ』と話題を戻すと、『そういう考え方のやつと組むのは御免だってことは伝えておこう』と言うと去って行きました。
再度場面は変わり、スギモトから聞いたフラットへとやってきた晴香は、『どうして裸なんですか!』と上半身裸のスギモトに驚きます。『今、取り込んでるんだ』と言うスギモトは、晴香をフラットに入れると建物の中を案内します。そして、試用期間が終わるまで鍵は渡せないと伝えると、建物の五階を晴香の住まいだと話します。そんな時、『スギモトのスマホが鳴』ります。『分かった、すぐに向かうよ』と電話を終えたスギモトは『休日出勤らしい、最高だな』と話します。『私もですか?』と訊く晴香に『ああ、ウーバーを呼んでくれ』と言うスギモト。そんなスギモトはその理由を説明します。『三十分ほど前に、見学していた来館者が、自撮り棒をぶつけて大理石彫刻を落下させたらしい』。博物館へとウーバーで急ぐ二人は到着後、『信じられないですね』と、壁にあった『高浮彫のメトープ《ラピタイ人とケンタウロスの戦い》』が床に落ち『うつ伏せの状態で真っ二つに割れていた』というまさかを見ます。そんな『大英博物館』の緊急事態の裏側に隠された真実が浮かびあがる物語が描かれていきます…という最初の短編〈コレクション1 パルテノン・マーブル〉。収蔵品に隠されたまさかの真実を見る展開に一気にこの作品世界に引き込まれる好編でした。
“世界最古で最大の大英博物館。その膨大なコレクションを管理する修復士、ケント・スギモトのもとには、日々謎めいた美術品が持ち込まれる。すり替えられたパルテノン神殿の石板。なぜか動かない和時計。札束が詰めこまれたミイラの木棺。天才的な審美眼と修復技術を持つ主人公が実在の美術品にまつわる謎を解く、豊潤なるアート・ミステリー”と内容紹介にうたわれるこの作品。このレビュー執筆時点で5冊目まで刊行されている一色さゆりさんの人気シリーズです。
一色さゆりさんといえば、東京藝術大学美術学部を卒業後、都内で3年間のギャラリー勤務を経て、香港中文大学大学院美術研究科に入学というご経歴をお持ちの方です。”このミス”大賞を受賞したデビュー作「神の値段」もそんな一色さゆりさんならではの”アート”な魅力たっぷりに描かれた作品世界に酔わせていただきました。そんな一色さゆりさんがこのシリーズで描くのは作品のサブタイトルにもある通り『大英博物館の天才修復士』であるケント・スギモトとそのアシスタントになった糸川晴香を主人公とするこれまた”アート”な魅力たっぷりに描かれる物語世界です。シリーズ第1作となるこの作品ですが幾つもの魅力に満ち溢れています。三つに分けてご紹介しましょう。
まず一つ目は作品の舞台が『大英博物館』のあるイギリスだというところです。私は今までに1,000冊の小説ばかりを読んできましたが、その作品の舞台は、海外旅行を描く作品でもなければ、ほぼほぼ日本国内です。それに対して、この作品は全編を通じてイギリスが舞台となり、主人公・晴香の日常に描かれるのは全てそんなイギリスとなります。幾つか見てみましょう。
『春はまだ肌寒く、夏も暑くないこの街では、五月から九月という長期間にわたって、芝に代表される花粉に見舞われる』。
『花粉に見舞われる』という描写にえっ?と思われた方は多いと思います。私も花粉症に長年悩まされてきた人間の一人ですが、てっきり日本の国民病だと思っていました。しかし、主人公の晴香は、『ロンドンに来て花粉症に悩まされるようになった』と、『鼻がむずむず』、『目も痒くなった』という日々を送っています。イギリスにも『花粉症』があるんだ、とビックリしました。次は、空に目を向けてみましょう。
『フラットを出ると、さきほどの青空は分厚い雲にすっぽりと覆われていた。窓辺の花にも緑豊かな公園にも、すべてに灰色のフィルターをかけてしまう、典型的なロンドンの天候である』。
ロンドンと言えばこのどんよりと曇った天気の風景がよく言われるところです。この感覚が物語の全編を包み込んでいくことで、日本ではないイギリスを舞台にした物語ならではのリアル感が漂います。もう一つイギリスならではのものをご紹介しましょう。
『俺はフィッシュ・アンド・チップスを愛してるんだ。あんなにうまいものはこの世にないよ』
そんな風にスギモトが語るイギリスを代表する食の登場です。
『フィッシュ・アンド・チップスとは、魚とじゃが芋の衣揚げを意味する、イギリス中どこの地域にも必ずある国民的ソウル・フードだ』。
『こちらではフィッシュ・アンド・チップスの衣にビールや炭酸水を使う』といった豆知識含め、この作品の食の場面は、とにかく『フィッシュ・アンド・チップス』が演出していきます。私もイギリスを旅した時に口にしましたが、個人的には悪くないという印象です。しかし、この作品の主人公である晴香は、『一生食べずに済ませられるならそうしたい食べ物ナンバーワン』という設定です。細かい点ですが、この設定も物語のちょっとしたアクセントで活きてきます。いずれにしても舞台がイギリスであるという新鮮な感覚がこの作品の一番の特徴だと思います。
次に二つ目は、”アート”に関するさまざまな知識がこれでもか!と登場するところです。この作品の目次を見てみましょう。
・〈コレクション1 パルテノン・マーブル〉
→ 高浮彫のメトープ《ラピタイ人とケンタウロスの戦い》
・〈コレクション2 和時計〉
→ 駒割式やぐら時計
・〈コレクション3 古代エジプトのミイラ〉
→ 庶民のミイラ
・〈コレクション4 HOKUSAI〉
→ 葛飾北斎「グレート・ウェーブ」
この作品は4つの短編が連作短編を構成していますが上記の通り、主人公・晴香が『大英博物館』に勤めているという点が一つのポイントとなります。”アート”を描く作品と言えば原田マハさんが有名です。そして、私は一色さゆりさんを知ることになって”アート”な小説の世界がさらに広がりましたが、この作品の舞台がさまざまな国のさまざまな芸術作品を蒐集した場所が故に、この作品では、ギリシャ彫刻、和時計、エジプトのミイラ、そして葛飾北斎の浮世絵というようになんとも幅の広い贅沢な”アート”に触れることができるのです。『アメリカ合衆国よりも長い歴史を持つ』という『大英博物館』は私も一度だけ訪れたことがありますが、とにかく巨大な建物の中に、もう何でもありという位にさまざまなものが展示されていることに圧倒されます。しかし、この作品にはそんな博物館についてこんな記述が登場します。
『人類の歴史そのものを凝縮した大英博物館の収蔵庫は、無限のようにつづく薄暗い廊下状になっている…ここに全所蔵品の九十九パーセントが眠っていると知り、度肝を抜かれた。
すなわち、展示室で来館者の目に触れるコレクションは、ほんの一パーセントなのだ』。
これは、驚きの記述です。一日ではとても見切れない圧倒的なコレクションが、全体の『ほんの一パーセント』に過ぎないという圧倒的な規模感。改めて『大英博物館』の凄さを思い知らされます。物語では、
『大英博物館のコレクションのほとんどが略奪品で、ユネスコで採択された条約に引っかかるものばかりだ』。
といった今の時代には議論を生まざるを得ない負の側面にも光が当てられていきますが、一色さゆりさんらしく、”アート”一つひとつを細かく見ていく視点もたまりません。その中でも私の興味を掻き立てられたのは『この波に辿り着くまでに、何十年もかけて数々の波を描いてきた』という葛飾北斎の『グレート・ウェーブ』についてです。
・『画面のなかで、波濤が無数の白い飛沫をあげながら立ち上がり、江戸へと魚を運んでいる三艘の押送船を翻弄する。とくに大きく立ち上がるこの絵のランドマークともいえる中景の波は、ゴッホが「船を捕らえる爪」として引用した』。
・『この波濤の造形は、何千分の一秒のシャッタースピードで撮影した実際の波と、まったく同じだというのは有名な話である』。
そんな風に描写されていく世界的に有名な『グレート・ウェーブ』。そして、葛飾北斎が最後に残したという
『天があと五年の命を与えてくれるなら、真正の画工になったのに』
そんな言葉も含めて描写されていく様は”アート”な魅力たっぷりです。しかも、『修復士』の視点で、そんな絵を深く分析していく物語が描かれてもいくのです。この先、5作目まで刊行されている理由がよくわかるように思いました。
最後に三つ目が、『スギモトの修復は魔法みたい』と評される『天才修復士』のスギモトと、そんな彼のフラットに同居しながらアシスタントとして彼を支える主人公・晴香の”お仕事小説”の側面が描かれていくところです。
『百人ほどの修復士たちによって、八百万点を超えるコレクションが順番にケアされている』。
『大英博物館』ならではの圧倒的な規模感を誇るスタッフの陣容ですが、そこは分業制が徹底されているようです。
『大英博物館では基本的に、すべての作業が細分化、専門化されています。修復部門で言えば紙の修復をするのは紙の専門家で、他にも、木やミイラといったオーガニックなもの、石、陶磁器、ガラス、金属…いろいろな専門家がいます』。
主人公の晴香はそんな場所で『紙』を専門としています。そこでは、こんななるほど記述に驚かされます。
『白い帯が見えますよね?これ、和紙なんです。切れた部分をつなぎとめる補強材として使われています』。
『まず薄いこと』、『伸縮性があって破けにくく長持ちする』という特性を持った『和紙や麩糊といった日本の素材に関する知識』を”お仕事”に役立たせていく晴香。
『修復の世界って、知られていないことが多いんですね』
そんな言葉の通り、私たちが普段目にすることのない博物館のバックヤードで日々続けられる『修復士』の”お仕事”、そしてその存在がこの作品によって光を当てられていきます。これは非常に興味深いものがあります。そして、それは上記した通り幅広い”アート”にまたがってもいきます。”アート”が好きな方には必読書と言って良いシリーズだと思いました。
そんなこの作品は、物語の冒頭で、『今じつは助手を探してるんだが、もし君にやる気があるなら、試用期間だけ仮住まいさせてやってもいいぞ』と上司のケント・スギモトから声をかけられた晴香が、『パイプをくゆらす名探偵の横顔が、モザイクで大々的にデザインされている』『ベイカー・ストリート』駅至近なフラットで同居を始めたところから始まります。『天才修復士』として、『大英博物館』の中で『部門のトップに立つ男』、それがスギモトです。『三十七歳という若さにもかかわらず、有機物、無機物、科学調査、すべての知識に精通する自他ともに認める「天才」』というスギモトの凄さは4つの短編それぞれの中で披露されていきますが、一方で『やれやれこの男はいったい何人の女を相手にしているんだ』と晴香が呆れるほどに『女にだらしなさそう』な側面を見せるところが堅物ではないスギモトのもう一つの顔を見せてもいきます。そんなスギモトの下で、『猪突猛進するタイプなので、脇目もふらずに前へ進んで今に至』る晴香は『修復』という”お仕事”にこんな思いを抱いています。
『修復って、ものに隠された見知らぬ土地や時代を解き明かしていく行為だと思うんです。もっと言えば、ものに秘められた人々の想いを読み解く行為というか』。
そんな思いの先に、スギモトのアシスタントとしてさまざまな謎に立ち向かっていく晴香。さまざまな”アート”の舞台裏に触れていく物語は、スギモトと晴香のでこぼこコンビが良い味を出していきます。また、父親が姿を消してしまったことを気にかけるスギモトの心中を描く視点が物語を一本に繋いでもいきます。そんな物語は、この構成であればどこまでも続けていける!そんな面白さを感じさせる中に、まさしく”つづく…”という結末を迎えます。すぐにでも第2作を手にしたいと思わせる魅力溢れるこの作品。そこには、芸術への深い愛を感じさせる一色さゆりさんだからこそ描ける物語の姿がありました。
『コンサバターとは、作品をじかに扱う立場のプロフェッショナルだ』。
『大英博物館』で『修復士』として働く主人公の晴香とその上司である『天才修復士』・スギモトの活躍を描くこの作品には、”アート”な魅力を前面に押し出した魅力溢れる物語が描かれていました。幅広いジャンルの”アート”の登場に何かしら興味を惹かれるものが見つかるこの作品。そんな”アート”の裏側にある、あんなことこんなことに触れられるこの作品。
“アート・ミステリー”の面白さにすっかりハマってもしまう素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
美術館の修復士が謎解きに挑む!知らない言葉が多くてWikipediaで調べながら読んでました。本の内容だけでなく、雑学も知れて面白い!続きが読みたいです。
Posted by ブクログ
大英博物館に勤める修復士の糸川晴香が、上司のスギモトと一緒に美術品にまつわる謎解きをしていく物語。
四つの章に分かれ、パルテノン・マーブル、和時計、古代エジプトのミイラ、北斎のグレート・ウェーブが題材となっている。斬新で面白かった。
Posted by ブクログ
大英博物館の天才修復士、ケント・スギモトが解き明かすアートが絡むミステリー連作。芸術と言っても和時計やミイラの木棺など多岐にわたる品物が登場します。美術館のあり方や修復士の仕事など細かい部分も知ることが出来て面白かったです。
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大英博物館の天才修復士、ケント・スギモト。
彼の元に持ち込まれるのは、難事件ばかり。
・パルテノン・マーブル
・和時計
・古代エジプトのミイラ
・HOKUSAI
の4篇。
すり替えられたパルテノン神殿の石板。
なぜか動かない和時計。
札束が詰め込まれたミイラの木棺。
などなど
知らず知らずに、美術品のうんちくも身に付きますね。なかなか面白いです。
Posted by ブクログ
大英博物館に行きたくなるし、北斎も見たくなる。Arts & Humanitiesが衰退してしまうことがないように自分も何かしなきゃと思わされます。
ミステリー要素がメインというわけではなくて、誰がやったのかは予想がつくのだけど、博物館や美術に関する問題や課題はリアリティがあって面白かったです。
Posted by ブクログ
イギリスを舞台に天才修復士が助手と美術館と関係のある謎を解いていきます。
昔、テレビで少し見たことあるくらいしか修復士という仕事を知りませんでしたが、とてつもない専門職であり職人といった職業です。
天才スギモトの頭の中で推理が進んでいくので、読み手は第三者的に話が進んでいきますが、イギリスの雰囲気だったり美術や修復にまつわることがたくさん出てくるので、ワクワクしながら読めました。
Posted by ブクログ
イギリスの街並に実際に行ったみたいでワクワクした。博物館の中の迷路やエジンバラでのドライブなど楽しい。
各話のメインキャラクターのその後が想像できるのも良い。小出しされるとニクイ。和時計というものは恥ずかしながら初めてその存在を知ったので、実際に見てみたいな。できれば小さくなって中に入ってみたい。
晴香がケントの舌を懐柔するのかと思ったら、晴香がフィッシュアンドチップス好きになっていた。郷に入りては、と言うけど、恐るべし、ジャンクフード。
アンジェラはぜひ晴香としまむらに行ってほしい。何ならオソロのTシャツとか買って着てほしい。多分可愛い。
神奈川沖浪裏ほ以前美の巨人たちでVR再現された映像を見たけど、迫力が凄まじかった。
Posted by ブクログ
好きなタイプのアートミステリーだった。
大英博物館のキザな天才修復士と、主人公の修復士が辿るアートというよりは、その対象物に関連する周囲の人間の動きに関わる謎、というべきか。修復士というのも良い。
印象としてはちょっとダン・ブラウンに近いような構成だが、大きな謎、というわけではないのでさっぱり目に感じるかと。
Posted by ブクログ
題名の「コンサバター」とは絵画や壁画などの修復士と言う意味。
イギリスの大英博物館を舞台に2人の日本人の修復士が、様々な謎に挑んでいきます。
全4章+αの連作短編集です。
ミステリーといっても殺人事件が起きるわけではなく、章ごとに一つの実際に存在する芸術作品が登場し、「科学」を駆使して解決へと導いていきます。その芸術作品の歴史・背景も登場しますが、どっちかというと科学捜査をメインに展開するので、ちょっとしたスリル感がありました。
壊された作品が偽物だったり、ミイラが入っているかと思いきや昔の札束だったりと興味を誘う物語ばかりでした。
実際の芸術作品の歴史だけでなく、大英博物館の闇の部分も描かれています。舞台はイギリスですが、ちょくちょく日本に関係することも登場するので、色々楽しめました。
修復するときには和紙を使ったり、ミイラの棺を調査するときは、CTスキャンを使用したりとあまり知らなかったことも学べ、ほぉーと勉強になりました。
キャラクターは個性あふれる人達で、特にメインの2人の掛け合いが良いコンビを生んでいました。続編があるんじゃないかという終わり方でしたので、他の芸術作品も知りたいなと思わせてくれました。
もし、実写化するなら、晴香は北川景子さん、スギモトは玉木宏さんかなと思いました。
Posted by ブクログ
推理を楽しむミステリというジャンルではないので、そういう楽しみを求めてる人は注意が必要。
美術に関する蘊蓄やコンサバターやキュレターといった美術界隈の世界観を楽しみたい人だったり、
私みたいに美術に関する知見がないけど、別世界を覗いてみたい人向けかな。
人も死なないし、ページ数も普通で展開も早いので、サクッと楽しめる。
ちょっと恋愛要素が気になる点だけど、つづきも読もうと思う。
Posted by ブクログ
大英博物館の修復士の話。コンサバターっていう仕事が初耳でこういう仕事があるのかと知れるのが楽しい。そして美術ミステリがワクワクする!あと和時計の価値とか知らんことばっかりで勉強になる。博物館とか美術館行きたくなるしこの世界もっと知りたくなる!
Posted by ブクログ
大英博物館の修復士が美術品にまつわる謎を解く短編集。
ライトミステリで、美術に詳しくなくても楽しく読める。
博物館のスタッフのお仕事小説として面白かったし、美術そのものというより美術品のあり方について考えさせられた。
プロットはそこそこだが・・・
よくある骨董探偵ものとしては、伏線配置も含めて安定感はある。しかしイギリスの下調べが不十分。実際に行っていないのではとさえ思う。旅行案内と地図と写真を活用か? 最初に引っかかったのは地下鉄をtube という表記だった。イギリスでも理解されないわけではないが、tubeは米語で、イギリスでは一貫してundergroundという。ロンドン市内随所の表記もそうなっている。地下鉄駅の地上案内板のデザインがお土産として人気なほど。 一度でも訪れたことがあれば、うっかりtubeと言ったときに「は? ああ・・・このガイジンさんは[もの知らず]・・・」という、やや冷笑めいた視線の経験があるはずだ。
さらに、NHG付近の高級骨董店街は、ケンジントン・ハイ・ストリートに向かう下り坂、駅を挟んでポートヴェロー・ロードとはほぼ反対側にあたる道沿いにある。毎週末のポートヴェロー・マーケットと、道沿いの常設展は、いわば庶民と旅行者向けの「蚤の市」で、上流客向けの骨董街ではない。(ケンジントン・ロード沿いの骨董店は、見るからに外国人の「一見さん」がふらりと入れるような雰囲気じゃない。せいぜい通りからガラス戸越しに中を覗く程度だ。しかも、外から客の姿をみかけたことがない。予約した客が店の奥の応接室に通されるシステムだろう。「階級社会」の存在にある程度触れていれば「自分はお呼びじゃない」とすぐわかる。) この本の設定の店でも、有力な伝手もない外国人がケンジントン・ロード沿いにいきなり常設店をもてるかどうかかなり疑わしいが、少なくともいつまでもポートヴェローに店を持ち続けてしかも漢字の看板を掛けているのはおかしい(実際に、そんな店は、一度も、ひとつも、見たことがない。)
当初の設定がどうでも、イギリス旅行案内・生活体験記などを少し丁寧に調べれば一日程度で判るはずのことだ。物書きの初歩としての心得が足りないし、出版までに誰も指摘しなかったのかと思うと、日本の「小説」界のいい加減ぶりにおどろく。まともな文学大賞に応募しなかったはずだ。小説を上に置くのはいいのかとも思うが、実際に、ライトノベルならかなりの荒唐無稽もいい加減も許容、という風潮はある。その意味で、この作者の書くものは、ジャンルとしてはライトノベルのレベルだと思う。 スターはプロットについてだけのもの。 感想に該当するタグがないが、「いいかげん」があればそれ一択。
Posted by ブクログ
コンサバターという意味が分からず、ネットで調べると仏像や絵画などの文化財を守り、後世に伝える仕事だと書かれていた。
美術品は人々を魅了するものだけれど、その過去には美術品を巡り略奪、強奪等が行われるなど人間の邪な欲望に翻弄されてきたものなども少なくないのではと感じた。
作品の中で「文化が衰退すると、世界はどうなると思いますか」という問いかけがあり。文化というのはその国それぞれの「色」があり、それがたとえお金や利益にならず、不便なモノだとしてもその文化によって安らぎを感じている人もいるんだなと改めて自分の国の文化ことなどをよく知りたいなと考えることができた。
Posted by ブクログ
大英博物館の天才修復士ケント・スギモトと、彼の助手で大英博物館で修復士として働く晴香が、実在する美術品の謎を解いていくコンサバターシリーズの第1弾。
今回のテーマは
①パルテノン・マーブル
②和時計
③古代エジプトのミイラ
④北斎のグレート・ウエーブ
各章の美術品の謎と、行方不明になったスギモトの父の謎という二重の謎解きが並行して進むミステリは、その過程で修復のあれこれや美術品の蘊蓄だけでなく、イギリスの街や暮らしも垣間見えるのが魅力。
途中ややこんがらがってくるけど、スギモトの造形が魅力的だし、晴香との関係にも目が離せない。
この作品、どこか大好きな黒猫シリーズの黒猫と付き人の関係を彷彿とさせてワクワクする。
第2弾も読みます!
Posted by ブクログ
こちらが勝手にダ・ヴィンチ・コードのような感じを期待していたのですが、ライトな人の死なないミステリでした。ミステリと言ってもこちらが推理する余地はなく、主人公達の冒険を追う形となります。
大英博物館やイギリスやスイスの情景が丁寧に描かれていて、旅情気分も味わえ知的好奇心も満たされます。登場人物たちもみんな清潔感がありクレバーで好感が持てます。
ただコンサバターとしての仕事ぶりが見たかったのと、主人公に芽生えつつある甘い感情が不要だったのではないかと個人的には思っています。
男前でプレイボーイになった山岡士郎と栗田ゆう子という構図です。
悪くはないけど次作も読まないと!という気持ちにはならなかったです。
Posted by ブクログ
ちょうど「ブルーピリオド」の1巻を読んだあとに読み始めたので作者さんの経歴を見て「おおお」となりました。
癖のある修復士と実家元和紙職人のアシスタントの組み合わせが面白かったです。
美術関連のお話も勿論ですが個人的に日本人視点からの英国生活の描写が特に面白かったです。
イギリスに留学した知人たち9割が世代問わず「ご飯まずい」「茶はうまい。茶は」と言っていたのを思い出しましたし、イギリス人彼氏と彼氏実家に滞在してた後輩が、滞在中に彼氏に「元」がつき、現地で新しい彼氏を探したけど「いい男は全部ゲイなんだよ」ってキレ気味にぼやいていたのも併せて思い出しました。イギリス、いつか行ってみたいです。
カテゴリーとして美術ミステリーということですが個人的には読み始めて「ダヴィンチコード」より「ギャラリーフェイク」を思い出しました。
和時計が興味深かったです。
Posted by ブクログ
天才で非常識なイケメンと、常識人の女子によるバディもの。ケント・スギモトの傲慢な変人ぶりは案外と大人しく、そこで奇をてらおうとしていない感じがむしろ好感が持てる。売りとしては、博物館の裏側式の、美術ネタの蘊蓄なのだろうけど、言うほどのことはない気がする。それより英国生活のデティールが妙にリアルなのが印象に残る。