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読むと美術館に行きたくなる? 爽やかでやさしいアート小説 求職活動中の優彩のもとに「あなただけのアート旅にご案内します」という不思議なDMが届く。アートと旅をめぐる連作短編集!
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Posted by ブクログ
最近アート、絵画に触れてからもっと知りたいと思い手に取った本。 これからも興味の赴くまま、色々知っていきたい、と思える一冊だった。
アート旅行を通して、自分を見つめ直す主人公。 桐子さんとの関係や、母娘の関係など 話が少し出来過ぎかなと思う所はあるが、 アテンダントの桐子さんのアート旅行は 押しつけがましくなく、心に迷いを持った 旅行依頼者に寄り添い、アート作品に 触れることで、自分の内にあった気づき ユリイカを導く、1話完結の...続きを読むドラマにしたら、 良さそう。 以前、東京国立近代美術館で、 荻原守衛の彫刻 『女』を見たが 安曇野の碌山美術館にも同じものがあることをや、碌山が人妻への報われぬ恋に苦しみながら 制作した背景など、今回、初めて知った。 次回は、碌山美術館で『女』を見てみたい。 その時は、碌山の苦悩に思いを馳せながら また違った感情が、湧き上がってきそうだ。
あなたは、こんなことが書かれた手紙を受け取ったらどうするでしょうか? 『あなただけのアートの旅にご案内します』 いや、どうするでしょうか?じゃないですよね。今の世の中、何事にも用心しなければいけません。警察署の番号から電話がかかってきたとしてもそれが本当に警察からのものとも言えない時代ですから...続きを読むね。こんな怪しい手紙はとっとと捨ててしまうのが正解だと思います。 しかし、落ち着いて差出人を調べると『ホームページ』が存在し、全く架空とも思えない状況が見えて来ると少し調べてみたくなるのも人の世の常です。『こんなにおいしいことが起こっていいのか』とは思いつつ『旅費のほとんどを会社に負担してもらえる』と聞くとさらに調べたくなってもしまいます。 さてここに、『梅村トラベル』という『旅行会社』から『アートの旅』の招待状を受け取ったひとりの女性が主人公となる物語があります。『アート』な魅力たっぷりに描かれるこの作品。そんな場所にも『アート』があるのかと驚くこの作品。そしてそれは、読後、『アートの旅』に出かけたくなること必至の物語です。 『桜野様でしょうか?』、『このたびは、弊社からの招待を承諾してくださり、ありがとうございます』と『羽田空港』『出発ロビーのAゲート前』で『小さなプラカードを掲げ』た女性に話しかけられたのは主人公の桜野優彩(さくらの ゆあ)。名刺を差し出され慌てて鞄に手を伸ばすも『無職だ』という自らを思い出した優彩に『私は志比桐子(しび きりこ)と申します。これから一泊二日で、桜野様をアートの旅へとお連れいたします』と挨拶する女性。そんな女性に案内され『高松空港』へむけた飛行機に乗り込んだ優彩。半年前、『高校卒業から七年間勤めた画材店が、店じまい』をしてしまったことで、仕事を失い、『自暴自棄』な日々を送っていた優彩は『母と二人暮らしをしている自宅に、一通の封筒』を受け取ります。『旅行会社から』という封筒を開けると、『あなただけのアートの旅にご案内します』、『梅村トラベル』と印刷された『上質な紙』が入っていました。ちゃんとした『ホームページ』があることを確認した優彩は訝しがりながらも思い切って電話をかけます。すると、『新しくアートの旅行を企画する』にあたって『モニター調査を行って』おり、その誘いであると説明を受けます。『どうして見知らぬ旅行会社が、こちらの住所を知っているのか』等不安が消えない優彩でしたが、『担当者だという志比桐子と、メールのやりとりをはじめ』ます。そして、『細かい質問リスト』に答える中で、『行先は瀬戸内海に浮かぶ直島という、以前から一度は行ってみたかった「現代アートの聖地」に決ま』ります。やがて高度を下げ始めた機体の中で、『心配事は完全には消えないけれど、胸の高鳴りを抑えられな』くなる優彩。 場面は変わり、『雲ひとつない晴天が広が』る高松へと降り立った優彩は、リムジンバスに乗り込みます。『じつはここにもアート作品があるんです』と桐子に案内された『芝生の空き地』に目をやる優彩。『イサム・ノグチの《タイム・アンド・スペース》という遺作です。香川県は、花崗岩のダイヤモンドと呼ばれる庵治石が採れます。彫刻家のイサム・ノグチはそれを素材として使用していました…』と詳細な説明を受ける優彩。やがてバスは『県庁の近くのバス停』を通ります。そこで再び桐子は説明を始めます。『香川県庁舎東館は、丹下健三による名建築としても知られます…重要文化財にも指定されていて、建築ファンから愛されているんですよ』…。『公共交通機関を利用しながらも、こうして高松市内のアートスポットをたっぷり案内してもらえるとは。お金を払わなくても自由に鑑賞できるアートが、意外とたくさんあるという事実』に優彩は驚きます。そして、『桐子のような人は、どういう人生を歩んできたのだろう。自分がうまくいっていないと、つい他人の芝生が青く見える…羨ましいというか、憧れを感じる。なんせアートに関わる仕事をしているのだ…』と思う優彩。一緒にランチを取った優彩に『旅行って、人生を見つめ直す時間だと思うんです』と語り始めた桐子は、『余計な心配はせず、楽しんでいただければ、いいんです』と続けます。『旅って、日常から離れて素直に盛りあがれるときだと思うんです。想像もしなかった興味深いことにも出会える。今回の旅では、そういうユリイカな瞬間こそ、味わっていただきたいです』と言う桐子。『ユリイカって?』と訊く優彩に『ギリシャ語で「わかった」っていう意味の、閃いた瞬間を指す言葉だそうです』と答える桐子。『優彩よりも四歳年上で、出身は関東の方だという』桐子と『地中美術館』へとやってきた優彩は、『SF映画の一場面に迷い込んだような気分に』なりながら、さまざまな彫刻を目にします。そして、『最後に訪れた展示室』で『幅六メートルにもなるモネの《睡蓮》の本物』を見る中に『なんと贅沢な時間だろう』と思います。そして、一泊二日の旅が終わり、フェリーへと乗船した二人。そんな中で『私、無職なんです。東京に帰ったら、求職活動が待ってます。気が重いけど、この企画のおかげで頑張れそうです。ありがとうございました』、『自分で自分に呪いをかけたり、暗い方向に進んでいくのは、もうやめることにします』と話す優彩に、『桜野さんは、もう強いと思います』と返す桐子。そして、今回の旅を振り返る会話をする中に『あの、桜野さん。私と一緒に働きませんか?』と切り出した桐子は、『桜野さんって、ツアーアテンダントに向いていると思います…』と続けます。『いやいやいや!私なんて!』と『急すぎる提案に』『どう反応していいのかわからない』優彩。そして、『梅村トラベル』で働くことになった優彩のそれからの日々が描かれていきます。 “仕事を失い落ち込む優彩(ゆあ)の元に、見知らぬ旅行会社から「アート旅」のモニター参加の招待状が届く。行先は、瀬戸内海の直島。そこで、ツアーガイドに導かれて美術館を巡るうちに、生きるヒントが見えてきて…。頼れるガイド・桐子が、人生に迷える旅行客に寄り添い、全国各地の美術館へと誘う。藝大出身の著者が贈る、優しい連作短編集”と内容紹介にうたわれるこの作品。『アートの旅』が旅情感たっぷりに描かれていきます。 そんなこの作品ですが、実はこのレビューを書くまでには紆余曲折がありました。私は同じ作家さんの作品を三冊セットで読むようにしています。今回、一色さゆりさんの作品から三冊を選ぶ中では、代表作の「神の値段」、人気シリーズ「コンサバター大英博物館の天才修復士」がまず決まり、三冊目は「モネの宝箱 あの日の睡蓮を探して」に決めました。そして、「モネの宝箱」を手に取り目次に続く本文へと読み進めた私の目は点になりました。”えっ!これって、続編!” そうです。なんとまさかの続編を手にしてしまったことを知った私はすぐに本を置きWebで情報収集をしました。そしてわかったこと、それは「モネの宝箱」はこの作品「ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵」の続編だということでした。そもそも書名も全く異なりますし、内容紹介にもそんな記述はどこにもありません。他の作家さんの作品にもこういった”実は続編ものでした!”、という作品がありますが、正直勘弁していただきたいです。続編から読んでしまった…という不幸な読者を生まないためにも出版社の皆様には是非読む人の立場に立ったご配慮をお願いしたいと思います。 さて、紆余曲折があったもののそれは作品の内容とは別です。内容自体は一色さゆりさんらしいアートな魅力に満ち溢れています。まずはこの作品の構成から見てみたいと思います。この作品は、四つの短編が連作短編を構成しています。それぞれの短編は主人公の優彩が桐子と共に旅する国内のさまざまな『アート』な目的地が記されており、それは短編タイトルになっています。出版社サイトに追加で記されている内容を付記して並べてみましょう。 ・〈第一章 地中美術館、直島『私を見つめ直す旅』〉 → “好きを仕事にするのは悪いこと?” ・〈第二章 河井寅次郎記念館、京都『日常を好きになる旅』〉 → “自分に自信が持てない” ・〈第三章 碌山美術館、安曇野『過去とサヨナラする旅』〉 → “子どもが自立して心に穴が開いた” ・〈第四章 DIC川村記念美術館、佐倉『一緒に未来へ向かう旅』〉 → “結婚する相手を間違えたかも?” それぞれのタイトルに目的地とその場所にある美術館の名前が記載されています。それぞれの短編では、短編ごとにツアー客となる人物が登場し、優彩と桐子が『ツアーアテンダント』として同行します。付記した内容紹介は、そんなツアー客の心情をうたうものと考えていただければと思います。『直島』、『京都』、『安曇野』、そして『佐倉』と行き先は日本各地に点在しています。残念ながら、これらのひとつも行ったことがないどころか、全く知らない…というお恥ずかしい限りの私ですが、『アート』に詳しい方なら、どんな作品が見れるかもご存知かもしれません。物語は、そんなそれぞれの場所の『アート』を桐子が解説する体で読者にも疑似体験させてくれます。では、冒頭の〈第一章〉を例に、その旅がどんな風に『アート』の魅力を見せていただけるのかを見てみましょう。 『フェリーのデザインの原案でもある、草間彌生の赤い「かぼちゃ」に出迎えられ、ついに直島に上陸したのだ、と優彩の胸は高鳴る』。 あ、なるほど、こう説明されると見たことありますね。行ったことはないですが、ピンときました。ネットで調べてみるとやはり思った通りのものでした。草間彌生さんの『赤い「かぼちゃ」』。これが香川県の『直島』という島にあるわけなのですね。 『「直島って、どのくらいの人が住んでるんです?」 「人口は三千人ほどだそうですね。島の面積は渋谷区よりも小さくて、小学校と中学校がひとつずつ、コンビニも一軒しかない、かつては過疎化の進む島でした」』 二人の会話で『直島』がどんなところかを読者の中にイメージさせてくれます。 『九〇年代からアートプロジェクトがはじまり、美術館がつくられた。島内だけでも、地中美術館、李禹煥美術館、ANDO MUSEUM、宿泊先でもあるベネッセハウス・ミュージアムなど、質量ともに類を見ない美術館がいくつもある』。 なるほど。『人口は三千人』という島にこんなにもたくさんの美術館が集まっているなんて凄いです。 『また、埠頭にあった草間彌生の「かぼちゃ」を筆頭に、浜辺や桟橋、小高い丘から町の中心まで、さまざまなパブリック・アートが点在する』。 美術館だけではなく、島のあちこちに『アート』が存在するわけですね。そもそもが草間彌生さんの作品に圧倒される中に他の作品も見ていけるその環境が素晴らしいと思います。 『ホテルの部屋やロビーにも作品が展示されているため、目が覚めてから眠りに落ちるまで、心ゆくまでアートと対話することができる、まさに「聖地」なのだった』。 なるほど、この島は『アート』の『聖地』なのですね。これは『アート』が好きな方にはたまらないと思います。島に滞在する間中、心がときめきっぱなしの時間を過ごせそうです。他の短編含めて物語では、このように訪れる場所の丁寧な説明と、その場に展開する『アート』を桐子のわかりやすい説明がなされていきます。『旅』をテーマにした小説は多々ありますが、『アート』で魅せてくださるこの作品、とても興味深いものを見せていただきました。 そして、そんな『旅』を企画するのが桐子が勤めている『梅村トラベル』です。どんな『旅行会社』か見てみましょう。 ● 『梅村トラベル』ってどんな『旅行会社』なの? ・『青梅街道からほど近い、西新宿に事務所を構え』る ・『ガラス張りの扉を開けると、目の前に、旅行のポスターやパンフレットが掲示されたカウンターと来客用の椅子がいくつかあり、その向こうに十二畳ほどのこぢんまりとしたオフィス空間が広が』る ・『頭頂部まで額の広がった、六十代後半か、七十代はじめくらいの男性』が社長、『社員は僕のかみさんと、桐子さんの二人しかいない少数精鋭部隊』 ・『専門家の視点があるからこそ組める旅の必要性』を重視し、『社長の趣味であるアートの旅を提供することにした』 なるほど。そこには、こじんまりとした『旅行会社』のイメージが浮かび上がります。物語では、『高校卒業から七年間勤めた画材店が、店じまい』してしまい『自暴自棄』の日々を送る優彩の元にそんな『梅村トラベル』から一通の封筒が届くところから動き始めます。 『あなただけのアートの旅にご案内します』 そんな手紙を見て優彩が訝しがるのは当たり前です。私なら瞬殺で処分してしまいそうですが、優彩は『梅村トラベル』に電話をかけ、担当の桐子とメールを交わす先に『瀬戸内海に浮かぶ直島という、以前から一度は行ってみたかった「現代アートの聖地」』へと旅することになります。物語では、『どうして見知らぬ旅行会社が、こちらの住所を知っているのか』等当たり前の不信感を抱きながらも旅に出る優彩の姿が描かれていきます。 『一人で来ていれば、石の彫刻作品や県庁舎など気にも留めなかっただろう。ましてやつくった人たちの人生や、街の歴史について教わったうえで見ると、他の風景も色調がはっきりして、ここにしかない特別なものに映る』。 桐子のわかりやすく丁寧な解説付きの旅は優彩が抱いていた不安を打ち消し、やがて『アートの旅』に魅せられていきます。 『旅行って、人生を見つめ直す時間だと思うんです』 そんな桐子の言葉が最初はピンと来なかった優彩ですが、やがてその言葉を噛み締めるように心持ちが変化してもいきます。『ギリシャ語で「わかった」っていう意味の、閃いた瞬間を指す言葉』という『ユリイカ』。『アート鑑賞って、基本的に誰にとっても、ユリイカの連続』だと説明する桐子に、優彩はこう思います。 『じゃあ、この旅は、ユリイカを探す旅ってことですね』、『ユリイカ、私も探してみたいです』 物語では、そんな旅の先に、自らも『梅村トラベル』の社員となって桐子と共に『ツアーアテンダント』を務める優彩の姿が描かれていきます。そこには、”人生に迷える旅行客”の姿があります。〈第二章〉から〈第四章〉の物語は、それぞれの短編にさまざまな理由でその場所を旅する人たちの姿が描かれていきます。そして、そんな物語には四つの短編共通に根底に繋がる謎が横たわっています。それこそが、どうして優彩に『アートの旅』の案内が届いたのかという根源的な疑問に繋がるものです。どうして優彩が選ばれたのか?桐子とは何者なのか?物語は、そんな謎解きの魅力を合わせ持ちながら、『アート』な魅力たっぷりに展開していきます。そして、そんな物語が至る結末、それは、この先にもまだまだ続編としてこの魅力的な構成の物語を見てみたいと思う納得の物語が描かれていました。 『旅行って、人生を見つめ直す時間だと思うんです』 そんな桐子の言葉に『ツアーアテンダント』としての日々をスタートさせていく主人公の優彩。この作品では、そんな優彩が桐子と共に日本各地へと『アートの旅』に赴く姿が描かれていました。美術館の外、街中にもたくさんの『アート』があることに驚かされるこの作品。知らず知らずのうちに『アート』の物知りになっていく魅力たっぷりなこの作品。 『人生を見つめ直す』ために、自分も『アートの旅』をしてみたい、そんな思いに強く囚われる作品でした。
導入がいいですねー!直島も京都も行った事ある! 物語に出てくるアートには直接出会ってないけど 有名な所だし大体わかるのが嬉しかったです ところどころ検索をかけたりしながら楽しく読みました 日常のちょっとしたミステリーもあって良かったです いや、もっとシリアスなミステリーがあってもいいんですよー デビ...続きを読むュー作のようなのを期待しすぎてしまった 表紙を見ればそのままかな笑 ほしおさんのような人間模様のあるアート小説でした
ふわっと心に染みる、アート×旅小説。「現代アートはもっと気楽に、これまでの人生や生きることについて、ふと立ち止まって考えるためのきっかけにすぎない。旅行とも相性がいい。(略)」という言葉が良かった。自分としてもとても思い出深い川村記念美術館が最後の章だったのが嬉しい。 ・ユリイカはギリシャ語で「わ...続きを読むかった」というひらめいた瞬間を指す言葉アート鑑賞はユリイカの連続。心や感情を知的に揺さぶられ、腑に落ちる瞬間がある。 ・ウォルターデマリア《ライトニングフィールド》体験してみたい。 ・河井寛次郎は民藝(無名の職人の手仕事にも美しいものは宿る)の中心 ・京都タワーは瓦屋根の波を照らす灯台のイメージで作られた
初めて飛行機に乗ろうとする桜野 優彩(さくらの ゆあ)の羽田空港第二ターミナルの印象はこうだ。 「そこは明るく、清潔な空間だった。」 そして、場所の描写が続く、 「吹き抜けになった天井は、距離感をつかめないくらい高い。白いポールが網目状に張りめぐらされた、近未来的なデザイン。ガラス越しに、...続きを読む初夏の日差しがふり注ぐ。くもりのないフロアも、階段や手すりも、ピカピカに光っていた。」 思い起こしてみよう。わたしたちが初めて羽田空港を訪れた時のことを。果たして、これほどまでの新鮮な印象を受けただろうか。 これは、優彩が新しい人生へ踏み出す瞬間の描写。これから始まるアートへの旅と、そしてそれを生業としていく彼女の第一歩の描写である。 高校卒業から7年勤めた画材店が店じまいし、半年間、自分の将来に不安を覚えながら過ごしてきた優彩は、あるDMを受け取る。それは旅行会社からのもので、「アートの旅」への招待状だった。半信半疑で、だが、ままよ、と思い、招待に応じて羽田空港へ赴く優彩。そして、冒頭の描写となる。 羽田空港第二ターミナル出発ロビーのAゲート前には、梅村トラベルの志比 桐子(しび きりこ)が優彩を待っていた。 この作品の著者 一色さゆり(いっしき さゆり)は、1988年、京都生まれで、東京藝術大学美術学部芸術学科卒業の作家。先の描写に表れるとおり、表現は緻密で美しい。 美術作品という言葉を使わない芸術を言葉で描写する。そこには、著者の人生経験と感性が否が応でも露呈する。一色さゆりの表現は、どこまでも明るく前向きだ。自然な語り口と分かりやすい表現が、わたしたちをアートという宝箱へと誘う。 「アートの旅」をとおして、わたしたちは、日頃は何気なく眺めている建造物が、実は著名な建築家によるアートであることに気づかされる。まさに「ユリイカ」(ギリシャ語で「わかった!」の意味)の瞬間である。 日常から非日常への転移が旅であるならば、アートの気づきも、旅そのものと言えるだろう。 そんな旅を、優彩と一緒に、みなさんにも体感して欲しい。そう願ってレビューとします。 ボンボヤージュ、良い旅を! 【目次】 第一章 地中美術館、直島「私を見つめ直す旅」 第二章 河井寛次郎記念館、京都「日常を好きになる旅」 第三章 碌山美術館、安曇野「過去とサヨナラする旅」 第四章 DIC川村記念美術館、佐倉「一緒に未来へ向かう旅」
初読の作家さん。マハさん以外のアート小説を 探していて出会いました。 先に積読本としていた「モネの宝箱」でしたが 1巻があると知り入手しました。 全体的にマハさんの作品より(比較する訳ではなく) 柔らかいイメージです。 マイナス思考強めの主人公がアートに触れる 職につき、自分の本当にやりたかった事...続きを読む アートを通じて探し求めて行く___ 知らなかった美術館も出てきたりして アート好きとして参考にもなりました。 2巻目「モネの宝箱」も続けて読みます ぜひシリーズ化して欲しいと思いました 2025.2 13冊目
お仕事のハートフル小説ですね。 勤め先の画材会社が倒産して、失業した桜野優彩のもとに、見知らぬ旅行代理店から「アート旅」のモニター参加の案内状が届く。もともと、美術に好きで画材会社に勤めていたので、興味がわいて募集に応じる。 旅行代理店の「ツアーアテンダント」は、志比桐子と名乗って、一緒に旅を...続きを読むすることになるが………? 目次 第一章 地中美術館 直島 「私を見つめ直す旅」 第二章 河井寛次郎記念館 京都 「日常を好きになる旅」 第三章 碌山美術館 安曇野 「過去とサヨナラする旅」 第四章 DIC川村記念美術館 佐倉 「一緒に未来へ向かう旅」 自分や家族との関係修復の旅でもある、心温まる物語です。桐子の言葉に「旅って、日常から離れて素直に盛りあがれるときだと思うんです。想像もしなかった興味深いことにも出会える。だから今回の旅では、そういうユリイカな瞬間こそ、味わっていただきたいです」とありますが、これがこの本のテーマですね。 「ユリイカ」と言うのは、ギリシャ語で「わかった」という意味だそうです。 最初のモニター旅行で親しくなった桐子から、「私の旅行代理店に勤めてみませんか?」と誘われて、優彩は、迷うが母の進めにも応じて「梅村トラベル」に勤務することになる。 第二章からは、桐子と優彩の二人が、お客さんとの旅をする話になります。様々な思惑が入り交じっての人間模様が、心のわだかまりを解きほぐす旅になる素敵な物語です。各美術館の魅力も、しっかりと味わえます。 そして、実は桐子は、優彩と小学生の時に知り合っていると言うのですが、優彩は思い出せません? 「私を思い出して……?」と言うのですが? これが、この本の第二のテーマです。 謎が出てきて、物語はさらに面白くなります。 一色さゆりさんの読みやすい爽やかな文章に馴染みながら、物語を堪能しました♪
アートを観るツアー、素敵です。行ってみたいけど、実際ここまで至れり尽くせりだったらお値段も張りそうな…。香川県直島、訪れてみたいです。地中美術館だけでなく、草間彌生さんのかぼちゃや、ベネッセハウスミュージアムとかあちこち楽しそうでした。千葉県のDIC川村記念美術館とかいつか行けたらいいなあ。たとえ行...続きを読むけなくてもこうして本の中で訪れた経験らしきこともできて良かったかな。 『女』は切手わ購入したことがあり作者名碌山じゃなかったように記憶してたんですが、守衛と名乗ってたころもあったことがわかり腑に落ちました。 これからも自分を見つめながら、楽しんでたくさんたくさんアート鑑賞していきたいと思いました。
アートを観るツアー。申し込んでみたい。ここまで手厚くガイドさんが一緒に来てくれるとなると値段は相当高くなりそうではあるが。 優彩や桐子のようなガイドだったら癒される旅となりそうだ。 アートは、観るときの自分の状態によってどのように見えるかが変わる。碌山美術館にある『女』のエピソードで、アート旅に来...続きを読むた客がまさにその体験をする。 昔は『女』の像は苦しんでいるようにしか見えなかったが、今はたくましく強く見えると。 そういう体験をしてみたいと思う。 過去に苦手と感じてしまったアートも、なぜ苦手と感じたのか深掘りしていけば、自分の当時の精神状態が関わっていたことに気づくのかもしれない。 自然風景や美術を前にして、不意に何かを思い出したり、誰かとの思い出を振り返ったりすることは誰しもあると思うし、素直になれる時間でもある。 アート旅は生きていく上で必須では無いかもしれないが、間違いなく素敵な体験になるだろう。
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