一色さゆりのレビュー一覧
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購入済み
背後設定が甘い
アート・ミステリとしての出来は2作目以降徐々に向上していく。登場人物のからみ合いも同様だが、2作目ではまだ最初の構想の細部が詰まっていなかったのこか、スケッチ風のままで、人物設定に奥行きがなく、そのためどの人物のイメージもぼんやりしている。政治的背景を絡めたのはトライアルだろうが、実のところアイディアに頼っているだけで書き込みが足りない。おそらくこの作家の手に余る問題だっただろう。
3作目あたりから、アートそれ自体を焦点とする扱いになっていく。描かれる世界は狭くなるが、むしろ作家の美術と美術史に対する関心と調査が表面に出て、作品としての凝集度は上がっていく。BMとのつながりをさっさと切ったのは、おそたく当初からの構想ではなく、作家自身がBMとロンドンについての知識不足を感じて、BMを舞台とするシリーズものとすることを断念したからだろう。そのために登場人物の関係性に集中する度合いが上がったのは良かったと思うが、2作目まではまだ、トライアルとしての色彩が強い。
アート・ミステリ好きで、シリーズでまとめ買いしていなかったら、2作までで「実力不足がひどい」として、放りだしていたと思う。 -
購入済み
プロットはそこそこだが・・・
よくある骨董探偵ものとしては、伏線配置も含めて安定感はある。しかしイギリスの下調べが不十分。実際に行っていないのではとさえ思う。旅行案内と地図と写真を活用か? 最初に引っかかったのは地下鉄をtube という表記だった。イギリスでも理解されないわけではないが、tubeは米語で、イギリスでは一貫してundergroundという。ロンドン市内随所の表記もそうなっている。地下鉄駅の地上案内板のデザインがお土産として人気なほど。 一度でも訪れたことがあれば、うっかりtubeと言ったときに「は? ああ・・・このガイジンさんは[もの知らず]・・・」という、やや冷笑めいた視線の経験があるはずだ。
さらに、NHG付近の高級骨董店街は、ケンジントン・ハイ・ストリートに向かう下り坂、駅を挟んでポートヴェロー・ロードとはほぼ反対側にあたる道沿いにある。毎週末のポートヴェロー・マーケットと、道沿いの常設展は、いわば庶民と旅行者向けの「蚤の市」で、上流客向けの骨董街ではない。(ケンジントン・ロード沿いの骨董店は、見るからに外国人の「一見さん」がふらりと入れるような雰囲気じゃない。せいぜい通りからガラス戸越しに中を覗く程度だ。しかも、外から客の姿をみかけたことがない。予約した客が店の奥の応接室に通されるシステムだろう。「階級社会」の存在にある程度触れていれば「自分はお呼びじゃない」とすぐわかる。) この本の設定の店でも、有力な伝手もない外国人がケンジントン・ロード沿いにいきなり常設店をもてるかどうかかなり疑わしいが、少なくともいつまでもポートヴェローに店を持ち続けてしかも漢字の看板を掛けているのはおかしい(実際に、そんな店は、一度も、ひとつも、見たことがない。)
当初の設定がどうでも、イギリス旅行案内・生活体験記などを少し丁寧に調べれば一日程度で判るはずのことだ。物書きの初歩としての心得が足りないし、出版までに誰も指摘しなかったのかと思うと、日本の「小説」界のいい加減ぶりにおどろく。まともな文学大賞に応募しなかったはずだ。小説を上に置くのはいいのかとも思うが、実際に、ライトノベルならかなりの荒唐無稽もいい加減も許容、という風潮はある。その意味で、この作者の書くものは、ジャンルとしてはライトノベルのレベルだと思う。 スターはプロットについてだけのもの。 感想に該当するタグがないが、「いいかげん」があればそれ一択。 -
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コンサバターという意味が分からず、ネットで調べると仏像や絵画などの文化財を守り、後世に伝える仕事だと書かれていた。
美術品は人々を魅了するものだけれど、その過去には美術品を巡り略奪、強奪等が行われるなど人間の邪な欲望に翻弄されてきたものなども少なくないのではと感じた。
作品の中で「文化が衰退すると、世界はどうなると思いますか」という問いかけがあり。文化というのはその国それぞれの「色」があり、それがたとえお金や利益にならず、不便なモノだとしてもその文化によって安らぎを感じている人もいるんだなと改めて自分の国の文化ことなどをよく知りたいなと考えることができた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ東京芸術大学。最難関であり、就職にいちばん遠い大学…。
入学するときは芸術のエリートなのに、その後の生活の保証なし。
そんな学生生活をおくる4人の若者の群像劇。
作者さんが藝大ご出身なので、中のことが知れて面白かった(興味本位で読むには)。
しかし才能で淘汰される世界、しかも選び抜かれた者たちのなかで、嫌というほど自分を思い知らされる…。
友でありライバル、才能に嫉妬し嫉み苦しみ。個性を見出すために七転八倒する。若いからできるバカや苦労もある。
それでも自分の道を進むしかない。
読後はスッキリしてよかったが、小説としてはもうひと超えほしかった。 -
Posted by ブクログ
美術の世界は詳しくないけれど、
美術展開催までの裏側ってこうなのかな、と想像が膨んで楽しい。
美術館に行くあのわくわく感が身に覚えのある人なら、この世界観を楽しめるはず。
でも、ここまでハードとは…
本の中にもある、生きた作家との準備というのが印象的だった。まさに伴走なんだろうな。
テーマはセンシティブでもありリアルで、なかなか挑戦的にも感じる。
働くことと私生活のせめぎ合いのような描写は特にリアルで、三十代には刺さるのでは。
女性目線の話なので、男性側から見たらどうなんだろうか。友人との会話なんてリアルそのもの。
ただ、最後の方、もう少し丁寧に描いてほしかったなと思う部分も正直ある。それが、余韻にわずかに苦さを残している。
作家の過去も然り、主人公の将来への選択も然り。
全てが解決していないことはある意味現実だけれど…
残された目の前の問題にも、主人公が逃げずに向き合っていくんだろうなと想像できる余白はあるから、
読み手に委ねられているのかもしれない。
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Posted by ブクログ
葛藤の先に見える自分の道へ - 一色さゆり「ピカソになれない私たち」★★★☆☆
このミス大賞の一色さんの作品ですがミステリーではなかった。著者は美術館に勤務しているという筋金入りの美術家。自身のバックボーンに近い感じなんだろうな。
4人の群像劇としては、よかったんだけどなんか結局それぞれが自分と向き合った結果に終止しちゃたかなぁ。題材は悪くないんだけどな。このミスの看板が邪魔だったな。中途半端に謎っぽいものを入れるくらいなら謎に全振りするか、青春に全振りするべきだったよね。
#引用
・誰かが本気で取り組んだものって、きっと誰かの背中を押すもの
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コンサバターシリーズ第2弾はゴッホの幻の「ひまわり」をめぐる事件。そこにアフガニスタンから持ち出された美術品の行方が絡みミステリに深みを加える。
ゴッホやフェルメールの幻の作品の話はさておき、戦争で破壊された博物館から持ち出された美術品が正当な持ち主である国に戻されることなく出回り、あるいは盗品として警察の管理下で死蔵されているという話に考えさせられる。
美術品は誰のものか?どのように扱われるべきものなのか?考えさせられる。少なくとも一部の富裕層の投機の対象ではあってほしくない。
シリーズのお楽しみスギモトと晴香の関係は少しずつ深まり、そこにスギモトの元カノ、従兄のマクシミランが絡んできて面白くなって来た。
ラストはスギモトの父も登場し、次作が楽しみになって来た。 -
Posted by ブクログ
大英博物館の天才修復士ケント・スギモトと、彼の助手で大英博物館で修復士として働く晴香が、実在する美術品の謎を解いていくコンサバターシリーズの第1弾。
今回のテーマは
①パルテノン・マーブル
②和時計
③古代エジプトのミイラ
④北斎のグレート・ウエーブ
各章の美術品の謎と、行方不明になったスギモトの父の謎という二重の謎解きが並行して進むミステリは、その過程で修復のあれこれや美術品の蘊蓄だけでなく、イギリスの街や暮らしも垣間見えるのが魅力。
途中ややこんがらがってくるけど、スギモトの造形が魅力的だし、晴香との関係にも目が離せない。
この作品、どこか大好きな黒猫シリーズの黒猫と付き人の関係を彷彿とさせてワクワクする。
第2弾も読みます! -
Posted by ブクログ
こちらが勝手にダ・ヴィンチ・コードのような感じを期待していたのですが、ライトな人の死なないミステリでした。ミステリと言ってもこちらが推理する余地はなく、主人公達の冒険を追う形となります。
大英博物館やイギリスやスイスの情景が丁寧に描かれていて、旅情気分も味わえ知的好奇心も満たされます。登場人物たちもみんな清潔感がありクレバーで好感が持てます。
ただコンサバターとしての仕事ぶりが見たかったのと、主人公に芽生えつつある甘い感情が不要だったのではないかと個人的には思っています。
男前でプレイボーイになった山岡士郎と栗田ゆう子という構図です。
悪くはないけど次作も読まないと!という気持ちにはならなかったです。 -
Posted by ブクログ
ちょうど「ブルーピリオド」の1巻を読んだあとに読み始めたので作者さんの経歴を見て「おおお」となりました。
癖のある修復士と実家元和紙職人のアシスタントの組み合わせが面白かったです。
美術関連のお話も勿論ですが個人的に日本人視点からの英国生活の描写が特に面白かったです。
イギリスに留学した知人たち9割が世代問わず「ご飯まずい」「茶はうまい。茶は」と言っていたのを思い出しましたし、イギリス人彼氏と彼氏実家に滞在してた後輩が、滞在中に彼氏に「元」がつき、現地で新しい彼氏を探したけど「いい男は全部ゲイなんだよ」ってキレ気味にぼやいていたのも併せて思い出しました。イギリス、いつか行ってみたいです。
カテゴリーとして美術ミステリーということですが個人的には読み始めて「ダヴィンチコード」より「ギャラリーフェイク」を思い出しました。
和時計が興味深かったです。