あらすじ
第14回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作!
マスコミはおろか関係者すら姿を知らない現代芸術家、川田無名。ある日、唯一無名の正体を知り、世界中で評価される彼の作品を発表してきた画廊経営者の唯子が何者かに殺されてしまう。犯人もわからず、無名の居所も知らない唯子のアシスタントの佐和子は、六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか――。美術市場の光と影を描く、『このミス』大賞受賞のアート・サスペンスの新機軸。
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美術・アート業界という、一般にはあまり馴染みのない世界が舞台。世界的に評価の高いアーティストの、何億という高値で取引される作品たち。大きな金額が動けば、そこには必ず人の欲やエゴが絡み、不穏な輩も現れてくるのは世の習い。その「やばい部分」に果敢に足を踏み入れ、テーマとして取り上げた意欲作である。
もちろんフィクションでアリ、虚実ない交ぜではあろうが、参考とした美術品のオークションや、怪しいアジアの大富豪とのやり取りなど、知らない者にも「ものすごいリアリティ」を感じさせてくれる。
「人前に姿を現さない」孤高の天才作家と、そのマネジメントを一手に引き受けているやり手美女。その美女のアシスタントを務める若い女性が主人公で、「大きなうねり」に翻弄される様がまたリアル。
ミステリなので殺人事件が起こるが、その「謎解き」がメインのテーマではない...のではなかろうか。アート業界の表裏を描く「お仕事小説」でもあり、最後の最後で気づかされるが、主人公の「成長譚」でもあるのだ。
「狐と狸の化かし合い」のような緊迫したストーリーの中で、読者へのちょっとした「プレゼント」のようなエピソードも挟み込まれていて、盛りだくさんであり、かつ抜かりがない(^ ^
本作がデビュー作らしいが、とてもそうは思えない「手練れ」と見た。他の作品もぜひ読んでみたくなる(^ ^
Posted by ブクログ
あとからじわじわと来る本
何故か、時折からの本のワンシーンを思い出してしまう
仕事への向き合い方を考える主人公
海外での展覧会のときの、一大イベントに向けた緊張感、臨場感、日常とかけ離れた世界観。
このシーンが好きだった
画伯、美術品コレクターなど、普段接しない世界観に触れられたのもおもしろかった。
読書の醍醐味だなぁ、と実感。
Posted by ブクログ
あなたは、”美術業界”の裏側を知っているでしょうか?
私たちは、美術館で絵を見ることができます。もちろん、絵といっても中世紀に描かれた宗教画から、モネに代表される印象派の絵画、そして、ちょっとハードルが高い現代美術の絵画までその種類は数多あります。入口で入館料を支払ってそんな絵を順番に見ていく私たち。
一方で、そんな絵を自分の手元に置きたいという需要が当然あります。私には、美術館でポストカードを買うのが精一杯ですが、毎年ニュースでも大きく報道される『オークション』での高額落札の話題を見ると、この世には絵画に高い価値を見出している方がたくさんいることがわかります。そこには、人々のさまざまな思惑が渦巻く、もしくは蠢く世界があるのだと思います。
さてここに、そんな”美術業界”の裏側を描いた物語があります。『不在のアーティスト』とされ、『まだ生きているのだろうか?』と囁かれる『芸術家』の作品が登場するこの作品。そんな場に謎の数々が登場するこの作品。そしてそれは、”このミス”大賞を受賞した一色さゆりさんの”美術ミステリー”を見る物語です。
『中国語で会話をしていた男女二人組のうち、男の方がガムを噛むような訛りの英語で』『ムメイ・カワタの作品はありますか』と『話しかけてきた』ことに、『はい、川田無名はうちの所属作家です』と『カウンター越しに答える』のは主人公の田中佐和子(たなか さわこ)。『彼の作品を買いたいのですが、リストを見せてもらえませんか』と始まったやり取りの先に『選ばれた客だけが通される奥のスペース』へと二人を案内した佐和子は、『八十号、つまり縦約百四十五センチ横百十二センチの作品』を見せます。『妻がこの作品の値段を知りたいと言っています』と男に言われ『二十万ドルです』と返す佐和子。『もう少し安くしてもらえたら…』と言われ『この作品は別のお客様の予約が入っているんです』、『無名は多作ではなく…描いた端から売り手が決まってしまうんです』と説明する佐和子。『一九三九年、貿易業で成功した日本人の父と、中国人の母とのあいだに生まれた』という川田無名は、当初『ニューヨークで活躍していた』ものの、帰国後、『奇妙なことに』『人前に一切姿を見せ』ず、『不在のアーティスト』と呼ばれるようになりました。『川田無名って本当は死んでるんじゃないの』とも噂される無名は『姿を見せないこと、作り手を超越していることが、表現のひとつでも』あります。そんな彼の『影であり、もう一人の川田無名』と言われるのが『専属ギャラリーを立ち上げた』永井唯子です。『娘ほど年の離れた唯子に』『なにかを見出した』無名は『唯子にだけ作品を託すこと』を決めました。佐和子が先ほどの『夫婦を見送りデスクに戻ると、松井がコーヒーを淹れてくれ』ます。『元作家志望でゲイ』という『後輩アシスタントの松井』に、『佐和子さんはどうしてここで働くことになったんですか』と訊かれ、『大学卒業間近になっても、就職先もやりたいことも見つからず…』という過去を振り返ります。父から『唯子のギャラリーのオープニングパーティに誘われ』、その場で唯子と会話する中に、成り行きで『私のところで働かない?』という展開となり今日に至った佐和子は、銀行に行く必要があったことを思い出し外出します。
場面は変わり、『どこ行ってたの』、『どうしたの。着てる服だって、昨日と同じじゃない』等、戻るや否や、佐和子に厳しい言葉を浴びせる唯子。『こんなに周囲の人間を緊張させることができるのは、すごい才能だと思う』と唯子を見る佐和子。そんな時、『どこに置きますか』と輸送業者が大きな品を運び込んできました。そして、彼らが帰ると『開けるわよ』という唯子の指示に従って松井と共に『電ドリ』で『ビスをゆるめ』ていく佐和子。そんな中からは『縦二メートル横三メートルをゆうに超える紙の上』に描かれた『とんでもない作品』が現れます。『MUMEI KAWATA Untitled 1959』と裏側に記されたその作品は無名が『ニューヨークで旋風を巻き起こし』た時代のものです。『この絵がここにあることは、一切口外しないこと』と二人に固く約束させる唯子。
再度場面は変わり、『美術館のオープニングパーティー』に唯子と出かけた佐和子はさまざまな人と話す中に疲れてしまい『その場から離れ一人になり』ます。そんなところに『あの、失礼ですが』と声をかけてきたのは唯子の夫、『ファイナンシャル・アドバイザーをしてい』る佐伯章介でした。そこに唯子も現れ『久しぶりね』、『今朝、羽田に着いたところ。あの作品は、もうギャラリー?』、『ええ、無事に。また電話するわ』と短く会話を交わす二人。そして、唯子がその場を去るのに合わせて佐和子も佐伯に会釈して、あとを追いかけます。『素敵な旦那さんですね』と声をかける佐和子に、『別居中なの』と語る唯子は、一方で『今日、誕生日でしょ』と言うと『鞄から小さなショップバッグを取り出』し、佐和子に手渡します。佐和子が『不意打ち』と感じる中に『お疲れさま』と去って行った唯子。
三度場面は変わり、『けたたましい音』で目を覚ました佐和子がアイフォンの画面を見ると、そこには『アトリエのディレクターである土門』の名前が表示されています。急いでかけ直した佐和子に、『どうも大変なことになったんだ』、『唯子ちゃんが、かなり危険なんだ』と言われ、慌てて病院へと向かう佐和子。そんな佐和子を病院で迎えた土門は『あの電話のあと、すぐ息を引き取ったんだ』、『窒息死らしい』、『詳しいことは、まだ分かってないんだ』と話します。それを聞いて『両手で顔を覆』う佐和子が唯子に隠された死の真相、そして一切姿を表さない現代美術の世界的な巨匠・川田無名に隠された謎を追い求める姿が描かれていきます。
“マスコミはおろか関係者すら姿を知らない現代芸術家、川田無名。ある日、唯一無名の正体を知り、世界中で評価される彼の作品を発表してきた画廊経営者の唯子が何者かに殺されてしまう。犯人もわからず、無名の居所も知らない唯子のアシスタントの佐和子は、六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか ー。美術市場の光と影を描く、『このミス』大賞受賞のアート・サスペンスの新機軸”と内容紹介にうたわれるこの作品。2002年に宝島社など3社が創設した”このミステリーがすごい!大賞”の第14回(2016年)を受賞した一色さゆりさんのデビュー作です。
私はこの作品が一色さゆりさんに出会う初めての作品になりますが、そのご経歴を知って驚きました。内容紹介には、”現役学芸員が描く美術ミステリー”という記述があります。しかし、一色さゆりさんの東京藝術大学美術学部卒、都内で3年間のギャラリー勤務を経て、香港中文大学大学院美術研究科に入学というご経歴は、作家というよりは芸術家といった面持ちです。私は今までに1,000冊以上の小説ばかりを読んできましたが、その中で”美術ミステリー”という言葉でピン!とくるのは原田マハさんです。今までに30冊を読んできた原田マハさんの作品は、普段、芸術に縁遠い私のような人間にもその面白さ、深さを魅力たっぷりに見せてくださいます。ということで、たまたま一色さゆりさんのことを知った私は、原田マハさんの他にも”美術ミステリー”を手がける方がいらしたんだ!という驚きもあって迷うことなくポチッ!と注文しました。
さて、そんなこの作品では、芸術作品を取り扱う『マーケット』についてわかりやすく説明がなされています。まずはここから見てみましょう。『アートにはふたつのマーケットがあります』と説明されるこんな内容です。分かりやすくまとめてみましょう。
・『ひとつは現存する作家から新作を直接預かって売るプライマリー・マーケット』
→ 『プライマリーは作家の代理として作品を売る。作家と一心同体になり、作品を発表する場を提供したり、買い手を発掘したり、上手な売り出し方を考える。仕入れ値を支払う相手は、作家本人』
・『もうひとつは二次であれ三次であれ、作品を転売するセカンダリー・マーケット』
→ 『セカンダリーは作家からではなく、別のコレクターや画廊から仕入れて転売するので、仕入れ値は作家には支払われない。骨董品やオールドマスターの市場がそれに当たるが、現存作家の作品を扱いながら、作家と直接仕事をしない場合もある』
なるほど、そのように分かれているのですね。お恥ずかしながら私は全く存じ上げませんでした。このように分かりやすく説明されるとその差異がよくわかります。私たちがよく目にする、耳にするのは『オークション』ですが、そんな『オークションで作品が記録的値段で落札されたとしても、その利益は作家本人にはびた一文も入らない』という現実があることもこの説明で理解できます。では、この作品で主人公を務める田中佐和子はどんな場で働いているのでしょうか?
『私たちは無名から直接作品を委託されている、世界で唯一のプライマリー・ギャラリーです』。
そうです。佐和子は現代芸術家・無名に直接利益が入る『プライマリー・ギャラリー』で働いているのです。次に無名とは何者か?を見てみましょう。
● 川田無名ってどんな人?
・『インク・アーティスト、抽象画家、国際的に活躍する美術家、前衛芸術家、彫刻家、パフォーマー、アクション・ペインターなど多様な肩書き』を持つ
・『一九三九年、貿易業で成功した日本人の父と、中国人の母とのあいだに生まれた』
・『正統な美術教育は受けなかったが、幼い頃から習字や書画を学んで芸術に親しみ、十八歳になると父の援助を受けてニューヨークに渡った』
・『渡米してわずか三年後に、無名はセンセーショナルな初個展を開いた。長年訓練を受けていた書の技術を応用して、墨を使った巨大なペインティングを発表した』
・『無名はこれまで様々な種類の作品を作っているが、共通しているのは白と黒しかない』
・『ニューヨークで活躍していた頃の彼は、長身瘦軀の美男子だった』が、帰国後、『人前に一切姿を見せ』ず、『不在のアーティスト』と呼ばれる
・『川田無名って本当は死んでるんじゃないの』と、『ネットでまことしやかに囁かれている』
いかがでしょうか?そもそも名前からしてどこか意味ありげでもあり、なんとも謎の多い人物であることがわかります。これが普通のサラリーマンであれば、会社に姿を現さなければ、クビ!のひとことで終わってしまいますが、『アーティスト』であるが故に『無名本人が不在でも問題はない』ことがわかります。そして、ここにもう一つ驚くべき記述が登場します。
『ディレクターの土門がアトリエの運営を取り仕切り、限界まで削ぎ落とされた近年の作品は、技術とキャリアがあるスタッフたちによって、つつがなく制作されているようだ』。
えっ!そうなの?と、この作品を読んで私が一番驚いたのがこのことです。さらに詳しくこんな風にも説明されています。
『作品というのは、単に絵を描いたりするだけでは完結しないんです…とくに現代アートのマーケットではコンセプトやアイデアが価値を形成します…自らの手の入っていない作品を売っている作家は沢山います』
なんと、『自らの手の入っていない作品を売っている作家は沢山い』る…と当たり前のように記されています。この記述には、驚かざるを得ません。同じように考えて良いのか分かりませんが、有名デザイナーの名を冠するファッションプランドが、その商品の全てを、当該有名デザイナーがデザインしているわけではないのと同じようなものなのかなあ?そんな風にも思いました。また、そもそも無名は『不在』であること自体に意味があるようです。
『無名にとって姿を見せないこと、作り手を超越していることが、表現のひとつでもあるのだ』。
こんな風に説明されてしまうともう何も言えなくなってしまいますね。いずれにしても、この作品は、川田無名本人が『姿を見せない』、『不在のアーティスト』であるということが、謎が謎を呼ぶ展開を絶妙に演出していくのです。
『無名はどこにいるのか。本当に生きているんだろうか』
そう、この問いがこの作品を引っ張っていく最大の”ミステリー”であることに違いはありません。さて、読者は物語の結末でそんな無名を目にすることができるのでしょうか?
ナイショダオ(′・∀)ノ('з') 内緒
はい、当然ですね。こんなところでネタバレするわけにはいきません。
さて、そんなこの作品は、『無名から直接作品を委託されている、世界で唯一のプライマリー・ギャラリー』で働く田中佐和子が主人公となって展開していきます。そんなギャラリーを主宰する永井唯子は、『作家の影であり、もう一人の川田無名』とも言われてもいます。物語では、そんな重要な立ち位置にいた唯子が『倉庫で倒れているところを発見され、今朝病院で息を引き取られました』と早々に物語から退場してしまいます。物語は、いきなり唯子不在の荒波の中に放り出された佐和子が、波に揉まれていく姿が描かれていきます。
『アートにそこまで詳しくもなければ、それほど好きなわけでもない私がこのギャラリーで働きつづけるのは、唯子がいるからなのだ』。
そんな頼みの綱の唯子が亡くなったことで佐和子が戸惑うのは当然のことです。いきなり、嵐の海に飛び込む状況に追い込まれた佐和子の戸惑いは半端ではありません。物語では、その一方で唯子が死の直前にギャラリーに運び込んだ無名の大作の行く末にも光を当てていきます。
『あの1959年の作品は、いったいどこから来て、どこに行くのだろう』。
『少なくとも十数年前のオークションでは、同じような条件の作品が六億円で落札された』という大作がギャラリーに残される中、一方で『世界ナンバーワン・コレクターの座に一番近いアジア人』と言われるワン・ラディと名乗る怪しげな中国人の存在が浮かび上がってもきます。この展開は面白いです。そんな中で佐和子は自らが置かれた立場を思い、そもそも論としてこんなことを考えます。
『どうして無名の作品にはこれほどの価値があるのか、誰がその価値を生み出しているのか、そしてその価値によって誰が得をしているのか…逆にいえば、その仕組みが見えてこない限り、無名の正体や事件の真相といった、より大きな謎には絶対に近づけない』
無名とは何者なのか?、そもそも今も生きているのか?、そして、唯子の死に隠された真実とは?物語は、作者の一色さゆりさんが通われた大学院のある香港にも舞台を移しながら、ダイナミックに展開していきます。そこには、単なる謎解きだけでなく、エンタメ要素もふんだんに盛り込んだ”読ませる物語”が展開していきます。そして、そんな物語が至る結末、そこには最後の一行に込められた一色さんの作品作りの上手さを見る物語が描かれていました。
『守らなければならない、無名の作品たちを。あるべき姿で展示し、あるべき場所に委ねたい』。
そんな思いの先に唯子の死に隠された真相を追い求めていく主人公の佐和子。この作品にはそんな佐和子が解き明かしていく”ミステリー”な物語が描かれていました。『アート』に関するあんなこと、こんなことが綴られていく中、面白く読み進めることのできるこの作品。そんな物語に”ミステリー”の要素が奥行きを出すこの作品。
“このミステリーがすごい!大賞”受賞が伊達ではない、“美術ミステリー”の面白さを再認識させてもくれた素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
中々面白かったが私がバカなのか、題名と作品のないようがよくわからなかったです。犯人は残った人物でまさか主人公の筈はなく何となく判ります。只最後の部分は犯人探しから違う方向に流れていたので、突然犯人へと流れて多少戸惑いました。
Posted by ブクログ
芸術がどうとかそういうのは詳しくないので分かりませんが、本気で芸術に向き合う人と、それを本気で支える人、それぞれの熱意、思いが伝わってきました。
また、終盤になるにつれ無名の存在が強く感じられ、物語全体の抑揚がとても上手な作品でした。
Posted by ブクログ
原田マハさんのアート小説が好きなので、他にもそういった系統の方はいないかなと思っていたところ見つけた著者。
一色さゆりさんは藝大卒業後、ギャラリーや美術館で勤務しているそう。その著者が書いた現代アートミステリ。
読みやすく、全く知らない現代アートの裏側をちょっと覗き見することもでき、またミステリとしても楽しめた。
他の著作も読んでみたい。
Posted by ブクログ
結構前なのですがΣ(-᷅_-᷄๑)このミスは好きで読んでますが、これもまた面白かった。絵画をモチーフにした作品は初めてですが専門的な言葉も少なくわかりやすかった。つかめそうで中々つかめない作家がどんな人物なのかものすごく気になったいい作品です!
Posted by ブクログ
途中まではちょっと退屈やったけど、後半グイグイ面白くなってきた。
アートの世界の奥深さを知れた気がした。
大変な世界なんやなぁ。
無名先生がめちゃくちゃカッコよくて、もう1回読もうかなぁと思ってしまった。
Posted by ブクログ
現代アートとミステリーを題材にした「このミス大賞」。姿を見せない作家の謎に引っ張られて一気に読みました。ギャラリーと作家の関係性や、アートビジネスについても勉強になりました。
しかし、作品を描かない作家って…映画の監督みたいなものなのでしょうか。それを何億円で売るというのがギャラリーの手腕なのでしょうか。よく分からないのでもう少しこの業界について知りたくなりました。
もし、ピカソやゴッホの作品がアトリエのスタッフによって描かれたらそこまで値段がついたのか…
Posted by ブクログ
2016年、第14回「このミステリーがすごい!」
大賞受賞作品。
現役の学芸員が描く美術ミステリーということで、
アート業界の裏側がこと細かに描かれています。
個人的にアートや美術館も好きなので、
これまでに知れなかった実情に触れられて面白かった!
説明・解説的な内容が多いのですが、
読みやすく細やか、するりと入ってくる文章表現のお陰で
主人公に感情移入でき、
どんどん物語の中に引き込まれていきました。
ミステリーとしてとなると★3ですが、
作品としては大変面白かったです!
次回作もぜひ読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
また、美術とか分かってへんのに美術ミステリー読んでしまった…^^;
何か、あらすじとか読んでると、つい…(^^;;
なので、絵画に関する解説とかは、こういうもんか…としか分からない…
でも、これは、オークションとか、アートのビジネス側からの話も多くて、結構、勉強になる。アートビジネスとか分かってない以前にそんなん買うお金が…
美人でやり手のギャラリスト唯子さんが急に!
犯人は、誰?
基本、唯子さんしか会っていない芸術家 川田無名か?生きてるんか?
ほんまに?
絵の描き方も独特で、自分で描くより、指示して描かせるんやな。めっちゃ細かい指示みたいやけど。
大きなお金が動くだけに、善人ばっかりの集まりではなく、怪しい(実際は分かりません〜)
結局、芸術を愛する人とお金を愛する人との違いが、今回の犯罪を起こしたんかな?
Posted by ブクログ
現代アートの裏側を描く美術ミステリー。
現代アートって、幅が広すぎて僕には難しく、守備範囲でないのですが、この小説は楽しく読めました。
アート小説と言えば、原田マハさん!
な僕ですが、昨年くらいに読んだ一色さゆりさんの「熊沢アート心療所の謎解きカルテ 絵に隠された記憶」が良かったので、今回はデビュー作でもあるこちらの小説を読んでみました。
アートは、純粋に観て楽しむものというだけでなく、ビジネスとの繋がりも強く、特に現代アートでは、レディメイドやアーティスト自身が手掛けていない作品など、言いようによっては、芸術的価値があってないようなものに目の回るような値段がつけられたりするようです
Posted by ブクログ
川田無名の作品を独占的に扱うギャラリーを経営する永井唯子.無名はニューヨークで活躍し名声を博したが帰国後はぱっとせず、最近になって人気が爆発した.田中佐和子は唯子にスカウトされた形でギャラリーで働いているが、無名のNY時代の作品が届いて話が展開する.中国人のグループなどが訪れ商談が始まるが、突然唯子が死んでしまう.唯子だけが無名との接触が可能で、途方に暮れる佐和子.犯人の目星は立たず女性捜査員の金谷とだけ僅かな接触がある.例の作品は無名の謎の指示で香港でのオークションへ出品するが、唯子の夫 佐伯章介の支援で何とか乗り切るが、佐和子は犯人の目途をつける.無名がさりげなく佐和子を助ける件が良かった.面白かった.
Posted by ブクログ
犯人がどうこうというより、現代アートの世界への興味がかきたてられた。アートに詳しくなくても、読後には深い何かが分かったような気になれる。ちょうど同じ頃にたまたま現代美術館に行ったが、それまでいまいちよくわからなかった現代アートの見方が少し変わったと思う。
Posted by ブクログ
『アートは理解するものではなく、信じるものだと思います』
『神の値段』の中にこんな言葉が出てきます。その言葉が出てくる場面を読んだとき、これまで生きてきた中で、なかなか理解しがたかったアートとそれを求める人たちの心情を、少し身近に感じられました。
この言葉は初めて画廊で作品を買おうとする男性と、その作品を扱う画廊のオーナーの会話の場面で出てきます。
感銘を受けた川田無名というアーチストの作品とはいえ、予算の10倍近くするものを買うかどうか迷う男性の客。その客に対し直感を信じるべきと促すオーナー。しかしこの作品を買った後に、もっと素晴らしいものに出会ったらと考えると……、と客は話して、なかなか決断しきれません。
そこでオーナーは、自分も作品を買うときは同じ気持ちになるが、と前置きした上で、無名の素晴らしさを語ります。
無名の作品を見る度に線や波のうねりを違うように感じ、そのたびに作品が好きになる。そこから作品との真の対話が始まる。そのような作品を自宅でいつでも目にすることができるなんて、究極の贅沢だと思いませんか、と。
感情と本能の赴くままに読み進めてしまうような本やマンガ。あるいはこんなにも時間が経っていたのかと、見終えた後に時計を確認し呆然とする映像作品。そんな作品に出会うことがたまにあります。
そうした作品に触れているとき、作品を理解しよう、なんて感情はありません。ただ感情や本能のままにその作品を読んだり観たりしています。そしてそうした体験にまた出会えることを信じ、本やマンガ、映画やアニメ全体が好きになり、そして好きな作家や監督、そして何度も読みたい、観たい作品が自分の中で出来てくるのだと思います。
もちろん値段なんかを考えるとスケールは全然違うし、第三者から見たらこの喩えはあんまりピンとこないのかもしれないけれど、それでも自分はアートに魅せられた登場人物たちに共感を覚えました。
そして芸術なんてまったく分からないのに、たまに美術館に行ったりするのも、すごいな、上手いな、というところを越えた、そういう体験に出会えるかもしれないゆえなのかも、と思ったりもします。
マスコミどころか関係者もほとんどが姿も顔も知らない、世界的なアーティストの川田無名。そんな無名の正体を知る画廊経営者であり、無名とタッグを組み作品を売り込んできた、ギャラリー経営者の唯子が殺害される。
そして唯子のアシスタントの佐和子は、事件に迫る一方でやり手の経営者だった唯子の仕事を引き継ぐことになります。
正直言うと、ミステリとしての完成度は決して高くないと思います。アート世界ならではの犯人の迫り方だったり、芸術家とアトリエの職人たちの関係性の話は面白かったものの、
展開はゆっくりで、殺人事件が途中で脇に置かれた展開が続くように感じ、結末でどどっと帳尻合わせのように謎解きが始まるのは、ミステリとしてはちょっと寂しい感じがします。
ただ、アートに関わる人々を描いた作品としては面白い。アートと相成れないように見えるマネーゲームのからくりであったり、現代アートの創作の仕組みや、アーチストのブランドを作り上げるための、売り方の工夫であったりと、知らない世界や知識を作品に織り込んでいく書き方が上手かったと思います。
姿を現さない無名の個性を、伝聞や彼の描いた作品、彼の文章から浮かび上がらせていくのも、想像力をかき立てられるようで面白く、そして佐和子が苦労、奮闘しながらも画廊の仕事をなんとか成立させようとする描写も、一種のお仕事小説のようでこれも面白い。
終盤で佐和子は、アートフェアとオークションに参加するため香港へ行きます。しかしフェアに向けてのブースの設営はトラブル続きで、佐和子は弱気になりながらも、なんとか無名の作品を配置し終えます。そして改めてブースを眺めると……
この場面が最もこの小説の中で好きでした。ある瞬間に突然に作品の見え方が変わり、そして佐和子の胸に押し寄せてくる感情と思い、そして決意。
無名の作品の描写が素晴らしかったので、佐和子がそれに感情を揺り動かされるのも、アートなんてとんと分からない自分でも、なんとなく納得してしまいます。
そして、無名の作品がオークションにかけられる場面も面白かった。オークションに出版される作品の描写が丁寧でリアルなので、それを競り落とそうとするオークション会場の興奮も想像しやすい。
そして徐々に値段がつり上がり、オークションの会場中が不気味な静けさに包まれていく。そんな様子も自然と浮かんできました。
ミステリとしては物足りなさはあるにはあったのですが、それを上回る著者の一色さゆりさんのアートの知識、そして愛や情熱、思いが感じられ、それが自分の中にも同調し大きな波を起こしたような、そんな作品でした。
第14回このミステリーがすごい!大賞 〈大賞〉
Posted by ブクログ
美術ミステリーというジャンルを初読しました。
敏腕画商が謎の死を遂げた。
画家、画商、コレクターの三者がマーケットを形成・拡大するというビジネス構造の中で、さまざまな利害が錯綜するが、犯人は一体??
美術ビジネスという一般には馴染みの薄い業界を取り上げており、新鮮に読めました。
Posted by ブクログ
アートサスペンスの作品。
マスコミはおろか関係者すら姿を見せぬ現代芸術家・川田 無名。
そして、彼の作品を一手に扱う画廊経営者の唯子が死体で発見される。
果たして、事故か、自殺か、殺人か?
何も知らない担当の佐和子は、6億円超えと言われる川田の作品を守れるのか?
美術の世界はわかりませんが、すごく世界ですね。
最後まで、川田の正体が分からなかったのは、少し消化不良でした。
Posted by ブクログ
絵画ギャラリーのオーナー唯子が亡くなった。
唯子の助手である主人公はギャラリーの運営と幻の作品の売り先を巡って唯子が亡くなった真相に近づいていく。
タイトルから期待値が高かっただけに少し物足りなさを感じた。
Posted by ブクログ
人前に一切姿を見せない、世界で評価される現代芸術家・川田無名。ただ一人、無名の正体を知る専属ギャラリーのオーナーである永井唯子が何者かに殺された。唯子のアシスタントの佐和子は残された六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか…。
現代アートを巡るミステリー。正体のわからない芸術家というのが面白い設定かなと思って読み始めたものの、現代アートというか美術品にそれほど興味がないからか、内容があまり入ってこなかった。ミステリー要素は薄め。興味が薄いせいか、全体的に盛り上がりを感じなかった。わりとあっさり終わった感じ。
Posted by ブクログ
現代美術のギャラリーを舞台にした話
あまり芸術に詳しくないが、少し芸術の世界を理解できた。
事件の謎解きが最後の方にあるが、結構あっさり終わっていてあまり印象に残らなかった。
Posted by ブクログ
最後のムメイの言葉がいい。
犯人謎のまま終わるのかなーって読み進めてたら謎解きが始まって自分としてはなんか急に来た感じで無理に話を終わらせにいってるのかと感じた。
佐和子さん頭きれる子だったのかと自分のなかでのキャラ設定とギャップが出てしまった…。
アート作品に少し興味がわいた自分の流されやすい性格を実感した。
Posted by ブクログ
このミス受賞作品だけど、トリック云々より舞台となっている画廊のお仕事が詳しく描かれていて面白かった
現代アートって確かに巨大オブジェとか作家本人が作ってるわけじゃないね
Posted by ブクログ
登場人物の雰囲気など、細かく伝わってきてどうゆう人物なのか想像しやすかったです。
ただ、美術作品に関する専門用語が多く、私には難しかったです。
作品の説明も長く、少し退屈に感じました。
Posted by ブクログ
*
その姿を見せない謎の画家、川田無名。
その無名と唯一会うことができる唯子は、
無名の画家としての知名度を上げて、
その絵を売ることに心血を注いでいたが
突然死んでしまう。
唯子のギャラリーに勤める佐和子は、
彼女が殺されたと知り愕然とする。
佐和子は唯子がいなくなったあと、
その意思を継ぎ残された業務に忙殺される中、
何故、唯子が殺されなけばならなかったのか
犯人は誰なのか知るために無名という
画家の秘密に近づいていく。
絵画の世界、アートオークションなど、
見ることのない世界が描かれるので、
馴染みが無さすぎて途中読み疲れしたが、
犯人、動機、方法など最後後味はよかった。
Posted by ブクログ
美術界ミステリー。作者が美術系に造詣深いから、その世界の詳細がありありと紡ぎ出されてる感じ。
謎に包まれた画家、川田無名の作品をめぐるミステリーだけど、オーナーの唯子や主人公の佐和子のキャラも良かったし、無名の作品が文字でしか想像できないけど、どんな作品なのか見てみたいなと思わせられた。
Posted by ブクログ
ミステリとしては殺人事件の犯人と、無名の1959年の絵の存在が軸になっている。
殺人事件の方は早々に犯人が分る。これは犯人たる動機をもちそうで怪しいのが他にいないという致命的な構造をこの物語が持っているからで、これでミスリードなら凄いなと思いながら読んでいたが、そのまま素直に犯人だった。
終盤、謎を解き明かす主人公の存在が今までのキャラ描写と微妙にズレを感じてしまったのは、なぜだろう。
読み方に問題があったかもしれない。
ただ、美術業界の描写は本職が書かれているだけに、詳細でその部分は興味深かった。
Posted by ブクログ
最後の怒涛の展開でえっとなった。
美術アートの世界、無名という謎の芸術家、殺人事件、、、
これらが絡み合った作品は、初めてな感覚を覚えたミステリーだった。
内容も新しい世界を見れたようで楽しい。
Posted by ブクログ
ミステリーというには謎解きの要素が少なく、サスペンスにしてもスリルが少ないため、その中間? そえゆえちょっと中途半端な感が否めません。
無名は結局その姿を現さないし、1959年の作品の行方がメインかといえばそうでもない、唯子を殺した犯人の捜索に血道を上げるわけでもなく…。物語のラストで唯子殺しの犯人がわかる場面でそれらが一つにつながるわけですが、そのタネあかしのシーンもちょっと急ごしらえな印象が拭えません。読んでいてもなんだか唐突な感じなんですよね。「あれっ、なんだか急にそんな展開なの?」 って思ってしまいました。
とはいえ、現代美術のマーケットに関することや、オークションの雰囲気を味わうことができる点については一見の価値があるかもしれません。ミステリー的な部分については唯子殺しの犯人が佐伯である点、読めばわかってしまう、、、かな。