一色さゆりのレビュー一覧
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ネタバレアート×旅小説第2弾。前作と比べて「余命宣告された病人が恩人たちに旅をプレゼントしつつ、思い出の睡蓮を探す」という設定に無理を感じるものの、それぞれのお話は良かった。
モネの睡蓮は日本中にあるけれど、美術館ごとに見え方が違うのが面白い。「睡蓮は鏡で、見る人の心を雑念なくうつしてくれるから、多くの人の心を打つ」という考え方になるほどと。時間や天気を想像してみるというのは面白い見方だなと思った。
・ロダンの「考える人」は「地獄の門」の一部。本当は「詩人」という題名。ロダンは写実的な肖像彫刻が主流だった時代に、自分の心を人体像として表現したことで、近代彫刻の父と言われる。
・ポーラ美術館は原生林 -
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ふわっと心に染みる、アート×旅小説。「現代アートはもっと気楽に、これまでの人生や生きることについて、ふと立ち止まって考えるためのきっかけにすぎない。旅行とも相性がいい。(略)」という言葉が良かった。自分としてもとても思い出深い川村記念美術館が最後の章だったのが嬉しい。
・ユリイカはギリシャ語で「わかった」というひらめいた瞬間を指す言葉アート鑑賞はユリイカの連続。心や感情を知的に揺さぶられ、腑に落ちる瞬間がある。
・ウォルターデマリア《ライトニングフィールド》体験してみたい。
・河井寛次郎は民藝(無名の職人の手仕事にも美しいものは宿る)の中心
・京都タワーは瓦屋根の波を照らす灯台のイメージで作 -
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わたしは、一色さゆりの文章が好きだ。
この小説のシリーズには、志比桐子(しび きりこ)という女性が出てくる。彼女は梅村トラベルに勤務し、姿勢がよく背が高いスタイルで、細身の黒いパンツスーツを着こなし、てきぱきと仕事をこなす凛とした女性だ。
一色さゆりの文章は、志比桐子を体現しているかのような文章である。表現に一切無駄は無いが、けしてぞんざいではなく、品があってキレが良い。淡々と話を書き連ねているようでいて、各段落はきちんと均整がとれている。
まるでミケランジェロやロダンの大理石の彫像のような、滑らかなプロポーションと凛とした趣きがある。
姿態や仕草がきりりとして、小粋で魅力的な -
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初めて飛行機に乗ろうとする桜野 優彩(さくらの ゆあ)の羽田空港第二ターミナルの印象はこうだ。
「そこは明るく、清潔な空間だった。」
そして、場所の描写が続く、
「吹き抜けになった天井は、距離感をつかめないくらい高い。白いポールが網目状に張りめぐらされた、近未来的なデザイン。ガラス越しに、初夏の日差しがふり注ぐ。くもりのないフロアも、階段や手すりも、ピカピカに光っていた。」
思い起こしてみよう。わたしたちが初めて羽田空港を訪れた時のことを。果たして、これほどまでの新鮮な印象を受けただろうか。
これは、優彩が新しい人生へ踏み出す瞬間の描写。これから始まるアートへの旅と、そしてそ -
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アートの旅と日常の謎が織り成す物語ですね。
『ユリイカの宝箱』の続篇です。
梅村トラベルに、旅行の依頼があって、社長と桐子優彩の三人は世田谷にある資産家の柳橋友哉の家に訪れる。
依頼は奇妙なもので、モネの名画『睡蓮』を巡る旅を組んでほしいと言う。しかも旅をするのは柳橋本人ではなく、彼が指名した四人の代理人でとの事?
旅に隠された真の目的とは………?
もくじ
第一章 国立西洋美術館 東京
「過去と今をつなぐ睡蓮」
第二章 ポーラ美術館 箱根
「夢をあたえる睡蓮」
第三章 大原美術館 倉敷
「友情をとりもどす睡蓮」
第四章 アサヒグループ大 -
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前作があるのを知らずに読み始めてしまったが楽しめた。
とにかく美術館に行きたくなる本。
西洋美術館は年に一回は行きます。何度行っても飽きない。企画展やってなくても常設展だけでも大満足です。
大原美術館は子供が小さいときに行ったのでゆっくり楽しめなかったのでいつかまた行きたいなぁ。
アサヒグループ大山崎山荘美術館が一番行けそうな場所だな。建物も素敵そうなのでぜひ行ってみたい!
でも、なんと言っても本好きとしては箱根本箱に泊まってポーラ美術館に行きたい。箱根本箱高いなぁ。でも泊まりたいなぁ!
…と、内容に関係ないレビューに走ってしまいました。 -
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『コンサバター』シリーズの五巻目ですね。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ?」
晴香がそう呟いだ!
「そのために、俺はここルーヴルに来たようなものだ」スギモトは《モナリザ》に視線を向けたまま、静かに肯(うなず)いた。
前巻の続篇は、いよいよルーヴル美術館の至宝の謎解きに………?
晴香とスギモト、そしてイタリア・ルネサンス専門のキュレーターのルカの三人に調査を依頼されたのは、ルーヴル美術館の地下の貯蔵庫に、落とされていた一枚の素描だ。
ダ・ヴィンチの《大洪水》によく似た一枚の素描の謎を探る物語が始まる………?
目次
プロローグ
第一章 指紋《荒野の聖ヒエロニムス》
第二章 -
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コンサバターシリーズの四冊目ですね。
スギモトが行方不明になって、一人でロンドン・ベイカー・ストリートにいた晴香のもとに、封筒で絵はがきとパリ行きの航空券と宿泊先らしきアパルトマンの情報が届いた。
今度の仕事は、ルーブル美術館のようだが、晴香はケント・スギモトへの憤懣をぶちまける。相変わらずのどこ吹く風。物語が始まる……?
短編連作の四話
contents
第一章 ニケの指輪
第二章 芸術家たちのカフェ
第三章 汚された風景画
第四章 ショパンと雨
サモトラケのニケの像の修復が、今度の仕事になりそうだが、ルーブル美術館の修復師はフランス人という暗黙の了解があって、