宇佐見りんのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ内容は今どきだなと思ったけれど、描写がとても美しくて良いな、と思って読んでいたら後書きで純文学と書かれていて納得。純文学というと堅苦しくて古めかしいイメージだったけれど、こういう本もあるのかと思った。
あかりの何をやってもいまいち上手くできない、
上手に生きられない描写が生々しくて、自分と重なって苦しかった。それを見つめるお姉ちゃんの「頑張ってるって言わないで。責めないで」の気持ちもすごく理解できて、読んでてしんどかった。自分はすごく苦しんでるのに大して努力してないように見える人が「頑張ってる」と言ってて苦しい気持ちを「責めないで」という言葉に集約させた作者さんの表現力がすごいと思った。
思っていた展開と違って、あかりが前向きに生きるのかどうか最後まで分からなくて読んでてハラハラした。
読んだタイミングが現実ニュースとリンクしてあまりにタイムリーすぎて、同じように打ちひしがれてる人も実際に存在するんだろうなぁと思ってしまった。
後書きの「頼れる大人は一見厳しく寡黙で、とっつきにくく見える。頼れない大人は自分を持ち上げてくれる生徒にだけ調子のいいことを言い、そうでない生徒を、言葉を持たない未成年であるのをいいことに傷つける。口を閉じている存在を軽んじる先輩や大人にはどうか背を向けて、心の柔らかい部分をまもって生きてもらえたら」が、個人的にすごく刺さった。本当にその通り。ここだけでも子どもに読んで欲しいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなぜかもっとハッピーなポップな小説だと思っていたら!しっかり昏くてよかった。この小説が流行る日本の社会をちょっとだけ憂いでしまったり、この小説を評価するひとたちが多いという事実にむしろちょっと安心したり。抑圧されたコロナ禍だったから余計かもしれないな。
不器用なあかりが「背骨」と表現するもの、世界と自分を繋ぎ止めるもの、世界を生きていくにはそういうものが必要であることを肯定してくれるストーリー。「毒のような薬」に感じた。
私には芸能界やIPなどに明確な「推し」がいなくて、ずっと推しごとに忙しいひとたちをどこか羨ましく感じてきたけど、わたしにとっては恋人や酒がそれだったのだと気付かされた。
あかりが堕ちていく描写が非常にリアル。自分自身にもそういう瞬間はあって、家族が嘆くあかりの生活、そしてそんなことをまるで気にしないあかりの感覚が、実は自分のほんのすぐそばにあったのだろうと思う。
背骨を失いながらも綿棒を拾いきったあとのあかり、別の背骨を見つけられているといいな。
推しごとの良さをうまーく言語化してるなと思った文、
「携帯やテレビ画面には、あるいはステージと客席には、そのへだたりぶんの優しさがあると思う。相手と話して距離が近づくこともない、あたしが何かをすることで関係性が壊れることもない、一定のへだたりのある場所で誰かの存在を感じ続けられることが、安らぎを与えてくれるということがあるように思う。」
「日が翳っていくのにかかった時間の分だけ心のなかに黒っぽい焦りがつのっていく。何もしないでいることが何かをするよりつらいということが、あるのだと思う。」 -
Posted by ブクログ
こわかった。「家族」と「暴力」と「依存」をテーマにしながら、そこから抜け出せない(抜け出したくない)、このまま「生」が続くことの恐怖が文章からにじみ出ていた。
車の中は家族の息苦しさの象徴なのかもしれないけれど、そうやって無理にでも家族という形の中に自分を置いて、置いてしまえばその方が生き続けられる。兄や弟は逃げるという選択をしたが、逃げることだけが必ずしも「正解」ではないという、新しい視点だった。
家族の中で生じる暴力(言葉を含め)も、夜の闇に溶けて、なんだか自分が悪かったようにも思い始めて、そしてまた暴力が起きて憤って、その沼のような繰り返しがあまりにもリアル。 -
Posted by ブクログ
以前読んだ朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』と似たテーマだが、こっちは御伽話で、本作は劇っぽいと思った。純文学らしく、推しの炎上と引退を受けた主人公の内面の変化に表現のフォーカスを当てた150ページ。とはいっても、主人公がまだ高校生だからか、はたまた目の前の生活に手一杯だからか、なかなか具体的な表現をもって心情を吐露してくれる場面は少ない。あとがきでも触れられていたが、主人公のあかりは自分でも自身の気持ちがしっかり把握できておらず、ゆえに「言い切り」の形で文章が登場することが多い。この言い切りの文体が奇しくも文章をスラスラ読み進めるために一役担っていた。
生きる理由を自分以外に求めるということがどれだけ不安定なことなのか、『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだときも痛感させられたが、『推し、燃ゆ』でも同様に、いやそれ以上にグロく突きつけられた。 -
Posted by ブクログ
推しを中心に生活がまわっている女子高生が推しにまつわる出来事により変化していく姿と内面を描いた作品。
推しを語るひとつひとつの言葉が、同じようにオタクとしてその想いを適切に表現するすべを持たない私自身にとても響いた。推しに抱く気持ちに対して的確に言葉をもらった気がした。
その一方でだからと言って主人公の行動は理解できないし、推しを持つ人たちに世間が抱くステレオタイプに当てはめられているような気がして気持ち悪いと感じた。
苦痛を和らげるために推す、生活がままならないけど推しがいれば生きていける、というのは私はオタクの世界の一部だと思う。この作品は推し活が流行っているいまの時代を映すと言われるが、たしかに推し活、オタクへの世間の解像度がここに記録されているように感じる。 -
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性というか性別(性自認や対象)というか、性欲というか性癖とか、性体験とか。
「性」のことはご法度的で親子、恋人、親友でも避けたりするわけで、孤独な世界だと思ってきたけれど。それが女性作家が17人も語るわけで下品上等、生々しくて面白い。
面白い、と言ってる事を下品と言う人もいると思いますが、多様性?とあえて言葉にすれば線引きしないでよ、と。
面白いというのは具体的に変えれば興味深い、が適切か。いやらしい意味でなく、前述のようにご法度な他者の世界に興味があるわたしは、作家がこうもあけすけにエッセイとして実体験や思想を語ってくれてありがたく。
本として残るので結構なカミングアウトもあったりするわけですが、それはどういう心境なのだろうか、とも思ったり。
他にもこの手の本はあるのかな?と探したくなったほど。
男性作家版も出して欲しい所存です。
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Posted by ブクログ
ネタバレ「推し、燃ゆ」のじわじわしみて来る文体に押されて、デビュー作を読んでみた。 10代で書かれたという驚異の新文学。
世代の違いをまざまざと感じながら、それでもなにか身に迫ってくる娘(うーちゃん)と狂っていく母親(かか)との切り離せない愛情の物語と思えば、世代を超えた心情がよくわかってくる。
「かか」の手術前日に家を出て熊野に詣でる旅に出る。冒頭近く
かかはとある手術を翌日に控えていました。旅の出発日は入院日でもありました。それを放り出して旅を計画したうーちゃんをおまいは決してなじることはありませんでしたが、なんでそいなタイミングでうーちゃんがひとり旅立ってしまったかおまいにはよく把握できていなかったはずです。
みっくん、うーちゃんはね、かかを産みたかった。かかをにんしんしたかったんよ。
ここに至るうーちゃんとかかとの生活。ととが浮気をして家を出てしまったことや、同居することになったババから、かわいがっていた姉が亡くなったとき姉が一人で寂しいだろうとつぎにかかを産んだのだと言われ、それらがかかの深い心の傷になっていることで深酒や自傷行為を繰り返してきたこと。
その度にうーちゃんも深く傷ついていたこと。かかがうーちゃんを抱きしめて「エンジェル」と呼んでいたこと。
そういった荒れた日常で成績が良かったウーちゃんの気持ちが乱れ、とうとう受験に失敗して浪人生活になる。
こんな家庭に生まれついたという愚痴ではない。かかとの暮らしで同じように傷ついて苦しむうーちゃんが自分を持てあまし、かかも自分を持て余して乱れた暮らしの中にある孤独感を二人とも同じように持て余している、それがかか弁という独特の方言を混ぜた日常語で綿々と語られる。
スマホを使いこなすZ世代特有のSMSを使った気持ちのはけ口も、ついにそれまでいらなくなるほど決心は強い。泥だらけでたどり着いた雨の日、熊野の滝の水煙もうーちゃんは癒されることがなかった。
こんな暮らしは想像はつくけれど、乱れて汚れた暮らしは少しおぞましい語り口ながら、親子の結びつきがうーちゃんの言葉でつづられる粘性の強い作品は驚異的に深いものだった。
うーちゃんが全身で浸ってしまっているその重さから熊野詣でに出たことも、まず手術に失敗はしないだろうと思われるかかの病名であったことも、ついにうーちゃんがかかを熊野に無事産み落としただろう結末は何かほの明るかった。
最後に短編
「三十一日」
どちらかと言えばこの方は清々しくこの作家の力を感じた。
ペットの墓を訪ねる道の途中で止めてあった赤い自転車が倒れる。散らばった籠の荷物を一緒に拾った女とのわずかな会話や風景やにわか雨が潤した風景が美しい。
風が吹く。木立の葉の裏、自動車のホイール、遊具の手摺、家屋の外壁に走るパイプ、雨水の引ききらない路面、街中に埋まった銀色が風に吹かれて目覚めてゆくように光る。
犬を拾って育てたこと、犬が死んだこと。
彼女の中にある喪失感は
耐え難い哀しみが頭蓋骨に深い裂け目をつくり黒い穴をのぞかせる。理不尽な一瞬にあらがえるものなど本当はこの世には何一つないと尚子は思った。
……
終わる。終わっていく。戻ってはこない。なにひとつ取り返しがつかない。