宇佐見りんのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
Posted by ブクログ
ネタバレ父方の祖母が亡くなり、かんこと両親は車で祖母の家へ向かう。
車中泊をしながら。
家を出て暮らしている兄と弟もそれぞれやってきて…という話なのだが、彼女の作品を説明するのに、あらすじなど書いたところでしょうがない。
傍から見ればかんこの家族は壊れている。
些細なことですぐかッとし暴力をふるう父、脳梗塞で倒れて以来自分の感情を持て余すかのように時々爆発する母。
家を出て自分の力で生きている兄と、遠くの高校へ通うために家を出ている弟。
家族それぞれが傷つけあい、血を流しながらも愛している。
それは歪なこと?
逃げ出さなくてはならないこと?
かんこはそうは思わない。
”もつれ合いながら脱しようと -
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Posted by ブクログ
非常に面白かった。
自分にはファンで応援しているアーティストや作家はいるが、推すという言葉はそういったものとは違う形の熱量を持っている気がして、自分では使わないようにしている。この本を読んで、やはり推すという行為はファンであるというのはおそらく違う性質を持っているのだなと再確認した。(まぁ、ファンというのと変わらない感覚で使っている人もいるとは思うが)
しかし、この作品で書かれていることは推すという行為を心の支えにし、生きづらさを抱えながら生きている人間がそれを失いその生きづらさをより突きつけられていく様だ。
おそらく、私と同じように推すという行為に対して懐疑的で違和感を持つ人間は多いと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ薄くて文字が大きくて行間の広い本なのに、読むのに時間がかかる。
作者は、見たものを丸ごと記憶する力を持っているのか、主人公が目にする世界のことごとくが、こと細かくて、しかも多分正確だ。
デビュー作『かか』では、その特異な文体ゆえあまり気にならなかった、選択される語彙の的確さ。
その文章の持つ圧倒的な力に気圧されて、読むのに時間がかかる。
読み進めるとまた、その圧倒的なまでの自己肯定感の低さというか、生きることに対する不器用さに圧倒される。
生きにくい生きにくい生きにくい。
声にならない悲鳴のような思いの強さに、デビュー当時の金原ひとみを思い出す。
推しを思う気持ちは、理解できる。
ファンの -
Posted by ブクログ
推しに全霊を懸ける女子高校生の話。推しがファンをなぐって炎上した、という意味でのタイトルではあるが、最後まで読むと主人公の心情がそのまま表現されているタイトルでもあり、上手いなぁと感動しています。
宇佐見りん氏については受賞のニュースで若手で才能のある作家さんが出たんだなぁ、くらいの認識でしたが、今回はじめて作品を読み、これは賞を獲らないほうがおかしいな、と冒頭から納得してしまう表現力でした。この視点とか表現とかどうやって身につけたんだろ、と思いながら読み進めていくうち、自身の遠い過去に全霊を注ぎ込んで好きになった人がいたことや、その時の感情が見事によみがえってきて、これはたぶん来るなぁと思 -
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母と娘の特殊な結び付きが痛々しくて切なかった。
パッと分かりやすい不幸でないと不幸と認めてもらえないこと、行き詰まった心の吐き出し先がない苦しさなど、読みながら胸が痛くなった。
小さな子供にとっては誰でも母は信仰の対象だ。例え子供っぽくて、父から捨てられ、鬱で半狂乱になる母でも、その信仰を子供は捨てることができない。特に娘にとっては同性である女であることが呪いのようにもなってしまう。
ラストの後、信仰の対象がなくなったことがどうか良い方に転んでほしいと思った。
また、身内でありながら第三者ポジションの「おまい」への語り口調が家族間の関係性を浮き彫りにさせていて、より主人公の孤独感が際立ってい -
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Posted by ブクログ
ネタバレ声にならない痛みを全身で叫んでいるような作品だった。
なんでもないかのように振る舞う主人公につられて、そういうものかと読み進めていったら、家族はとうに崩壊していることが徐々に明らかになってくる。
父と母と娘、もはや自分たちだけではどうにもできない状態なのだが、主人公は当事者であるため冷静に考えることができていない。それは無理もないことで、親への愛情も愛着もあるだろう。たとえそれが最善だと言われても、両親を置いて離れることに苦痛を感じているようなのが、また悲しかった。
家族間の長年かけて築いてきた空気感が見事に表現されていて、ほんとうに苦しかった。死は思ったよりもすぐそばにあるが、今この瞬間は平 -
Posted by ブクログ
ネタバレ辛い時に自分をものだと思うとか、痛いほど共感できる。こんなものを書きたい。自分に足りないものを一々考えさせられる。自然、光の描写が多い。
確かに、「自分は自分で守れ」は、見捨てられる側にとっても残酷な言葉。
母の病気がきっかけと言っても、それは母のせいでないから父が悪いと。弟に「だからいじめられるんだ」、かんこの鬱を責めるのはひどい。でも作中にあった通り、それは祖母のせいであり、それも遡れば原因はあり、それ以外にもきっと原因はある。
「なんで生きてきちゃったんだろうな」
車で住むようになって学校に行けるようになったのは両親と離れたからだと思う。それでも兄弟の中で1番見放さないかんこは偉い