宇佐見りんのレビュー一覧
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ネタバレしばらく読みづらかったけど、半分過ぎたあたりから入り込んで読んだ。
「機能不全家庭」「ヤングケアラー」という言葉が頭に浮かんだ。
こんなにも娘に愛されているのに、この父親ときたら自分の傷にしか目がいかない。可哀想な生い立ちだったとは思う。結局、受けた傷や空虚感や渇きはその人の中に残り続け、貰えなかった愛情を死ぬまで欲しがるようになってしまうんだろうか。私は自分を省みても、自分の親のことを考えても、そう思ってしまうのだ。
かんこは最後、車で寝泊まりする事によって両親から物理的に少し距離を置けた。それによって見なくていいもの聞かなくていいものをある程度避ける事が出来るようになり、自分の生活に集中 -
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ネタバレ目次
・かか
・三十一日
独特のかか弁で書かれた非常に読みにくい文体が、奇をてらったものではなく、必要だったのだなあと思う。
すごい作家が誕生したものだ、と思った。
19歳の浪人生うーちゃんの語る家族の姿は、実に歪だ。
とと=父親が浮気をして出て行ってしまったため、かかとうーちゃんとおまい=みっくん=弟の3人は、かかの実家でジジとババと従妹の明子と暮らしている。
明子の母がかかの姉だが、ババはこのかかの姉=夕子ちゃんを溺愛していて、夕子ちゃんが寂しくないようにおまけでかかを産んだということを公言してはばからない。
その夕子ちゃんの忘れ形見の明子を今度は溺愛して、ジジとババはオペラに連れて -
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良作でした。
推しという存在がいる人もいない人も是非読んで欲しいです。
推しという存在によってその人が社会の中で生きていける、逆説的に基本的にそれくらい生き辛い世の中なんだそんなことを教えてくれる作品。推しとは一般的にそう思われがちなアイドルや歌手・俳優・声優などだけではなく、家族であったり作品であったりレジャーや風景などその人にとって何がそうなるのかそれぞれだと思います。それが無いとどれだけ生き辛くなるのか。
それをかなりこじらせるとこの作品の主人公のようになるのでしょう。推しの存在を確認することで自分の存在を確認できる。
そこまで思える推しがいることは幸福だし、そうすることでしか自分が存在 -
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いたい…いたい…
傷つけあっても、また寄り添えあえるのが家族だと、おめでたく思っていたけれど、ちがうよね。家族でも許せないことは許せない。だけど、とりあえず一緒にいるから、時の流れに「溶けていく」だけ。
他人なら、傷つけられた人のことは避けたり、抗議したり出来るが、「帰る家」の中で傷つけられると逃げ場がない。けれど、優しいときも楽しい時も温かい時もあるから、やっぱりそこが居場所になって、「怒り」や「悲しみ」は「保護」や「権力」に塗り込められてしまう。私は自分が親になってからは、自分が塗り込んでしまった「壁」しか見ていなかった。
かんこの父は生家で母親に可愛がられなかったため、一人で強く -
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キター!宇佐美りん節炸裂ー!
わたしのHPが持ちません!
この作者の小さな刃で深く抉って、いつまでも疼いて痛む傷つけ方を知っている恐ろしさたるやなんなのだろうか。(めちゃくちゃ惚れ惚れしているという意味です!)
宇佐美さんの言葉ひとつひとつを飲み込みながら、言葉は、本当に人を傷つけることができる、と思うのです。(そしてそれを正しく使われ、表現を浴びた今、畏怖と多幸感でいっぱいです!)
本作は世代間連鎖のお話です。
主人公は自分の受ける痛みと、その家族が受け続けてきた痛みをも背負い込もうとしてしまう、愛情深い女の子、かんこ。
自分だけが楽になることは火事場で子供を手放せと言われているのと同等 -
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ネタバレ19歳のうーちゃんとかか、弟、祖父母、従姉、犬の日常。一見するとありふれた家族のように思えるけど、かかは酒を飲んで荒れるし、祖父母とはぎくしゃくしたような関係。家族との複雑な関係や、何で生まれてきたのかのような問いかけが出てきて、読んでて苦しくて仕方なくなってくる。
だけど合間にうーちゃんの、かかが好きな気持ちが見え隠れしてるし、旅の途中で突発的に嘘をSNS に投稿しては自分の気持ちを確かめ整理してて、とても目が離せなかった。
まず冒頭の『女の股から溢れ出る血液』が衝撃を受けた。幼少のうーちゃんが『一疋の金魚』の正体を知らないのは当然のことだけど、知らないからこその好奇心、誰かに見せたいとい -
ネタバレ
アイドルも、おたくも必読な本
推しが存在したことも燃えたこともある身からすると、主人公の思いも行動もリアルで心抉れました。 推し活とは推しに自分を重ね託すことで、どうしようもない自分の生活が救われ、承認欲求が満たされる行為です。誰かのために生きるという観点からすると、子供や親や恋人のために仕事・生活を頑張ることと同義です。主人公の行き過ぎた推しへの想いや熱度を私は愛しいと感じました。
そして、自分の全てをかけ生きる糧としたファンがいたことが上野真幸にも伝わっていればいいとも思ってしまいました。
誰かを推したこと、推されたことがある全ての人に読んでほしい作品です。
生きていく意味を失ったあかりが次の生きる糧を見つけられるこ -
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おそらく『推し、燃ゆ』が何十万部売れようと、この人には関係ないんだろうなというのが、まず読み終えた第一印象であり、23歳という若さに似合わぬ、その堂々とした佇まいから放たれる、大胆にして理知的でありながらも、平和そうに見える現実の奥底に深く沈み込んでいる絶望的な闇を、その客観的視点で見つけ出し、なんとかしようと孤軍奮闘している。そんな印象を私に与えてくれた本書は間違いなく衝撃作だと思う。
本書で扱っている問題は、いわゆる家庭内暴力が当然のように繰り返される、どうしようもない家族の在り方であり、普段は人が好くても時折子供のようにカッとなる父親と、脳梗塞の後遺症を引き摺る不安定な母親と共に暮らす -
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すごく斬新で面白かった。
主人公は、友達との関わりが上手にいかない、時間や提出の期限が守れない。学校、勉強は興味がない。それでも大好きな推し活はスケジュール管理して、推しを中心として生活している女子高校生です。
もちろん推しはお金がかかるので、頑張ってバイトをしています。ブログなどSNSの文章はすごく真面目でなのに、現実の家族や社会に馴染めません。
家族は大切に主人公を大切に見守っているけれど、その気持ちが主人公には理解できない。
推しを推している自分は頑張っている、偉いという肯定感を家族から否定されるのが癪に障る。どうしていいのかわからなくなり、混乱して泣き出す。
家族としてどう対応すべ -
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なりたい理想の自分があるけれど、あくまで理想であるため、現実の自分とは程遠い。そんなギャップに苦しめられるなら、自分の理想と似た人間を推せばいい。極限まで推している主人公がその拠り所を無くしてしまう心苦しさや僅かな可能性に賭ける思いが伝わってきてすごく好みだった。
解説でも書かれているが、推し活を背骨と喩えているのがとても好き。人はそこまで強く無いため、趣味などを持ちそれを自身の生きる理由としているケースが多い。だからこそ趣味、本作では推し活を背骨と喩え、失われてしまえば立ち上がれないという思いが伝わってきた。
「推し」が炎上した行動を行った理由が一切語られないことで、主人公と推しには明確な隔 -
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Posted by ブクログ
女性作家の自身の身体にまつわるエッセイ集。特に30,40代の今人気の作家さんたちだけを集めたというのが面白い。自身の身長について書かれている方もいたが、自ずと性にまつわる話が多かった。
個人的に感動したのは村田沙耶香さんと能町みね子さん。こちらの感想で、女性なのに自慰について書かれている方が多くて引いた、という感想が少なくないのは正直ちょっと残念だなと思った。村田沙耶香さんは幼少期から行っていた自慰について、いやらしいものという周囲との認識の差に未だに慣れない、ということを書かれていたのだが、子供の頃の自分の王国という表現でその感覚について本当に美しい描写をされており、涙が出そうなほど感動し