森村誠一のレビュー一覧
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情熱を傾け、全能力を振り絞った仕事も所詮会社の仕事。会社を辞めると同時に、生き甲斐であった仕事の成果は、すべて会社に返還させられる。歯車の一個として組織の中に埋没し、組織の一コマとして担当してきたにすぎない仕事は、決して自立することはない。会社を辞め会社という掌から解放され、はじめてフロントガラスしか見ていなかったこれまでの半生に気付く。高速で突っ走り、狭められていた視野に、スピードダウンをして初めて入ってくる沿道の風景が広がる。視野の大部分を埋めていた仕事は、自分の人生の本来の目的とは違う幻影にすぎなかった。会社からリタイヤして、初めて個人に目覚める主人公。大地を踏みしめて自分の足で歩くよう
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殺し屋・星名五郎が主人公の短編オムニバス。普通、私立探偵でやりそうなシリーズを、殺し屋でやったというような作品。
森村誠一の代表作扱いになっている割に、ドラマや映画化もされていなかったので読んでいなかった。短編集というところでちょっと意外。
全体に、ミステリのような謎解きをするわけでもないので、展開は早い。だからといって手を抜いているわけではなく、オチ(殺し方)に対して、非常に細かく調査して書いている当たりは好感。「メチルシアノアクリレートだ!」とか、森村誠一らしい。普通そんなの書かなくて良い。
しかしながら、2つの不満。
なんというか、「星名五郎」が薄っぺらいのだ。クールでニヒルなの -
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Posted by ブクログ
常に笑顔の絶えない家族のもとに嫁いだ女性の感じる違和感が恐怖に変わっていく薄気味悪い話。でもホラーじゃなくてミステリかな。
短編集だろうと高をくくって開いてみたら、長編じゃないですか。そんなに長くないけど。しかも真ん中辺りまで、ニコニコしながら脅迫されるような、真綿で首を絞められるような、なんとも言えない恐怖がなかなか秀逸である。
真ん中を過ぎると、ミステリ慣れのせいか、前振りも状況も黒幕もつながってくるのだが、それまでのジリジリ進まない恐怖感とは違った、早い展開になるので飽きさせない。
ただ、3人行方不明はなあ、ちょっとどころかやり過ぎだと思うけれども。
最後は陳腐に怪談オチ。よく考 -
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Posted by ブクログ
銀行で働く津村豊和は、入行して10年目、仲の良い同僚の自殺をきっかけに自分もこのまま銀行に飼い殺されるのは嫌だと感じ、昔から好きだった小説を書いて生計を立てられないかと思いつく。そして一作目が幸運にも懸賞小説で入選し、天狗になった津村は早々に銀行をやめてしまうが、2作目をなかなか発表しなかったため、すぐに編集者にも世間にも冷たくされ、後がなくなってしまう。なんとか自分の原稿を売り込もうと東京に出てきてホテルに泊まった時、隣の部屋で女性の他殺体が見つかり、津村は犯人らしき男を目撃したにも関わらず警察には信じてもらえず、容疑者として取り調べられることになってしまう。落ち込む津村だったが、ここで発
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