森村誠一のレビュー一覧
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行きずりのホテルで出会った女性と意気投合し、来週も会いましょうという約束をして別れた。次の週に約束の場所に行くも、1時間経っても女性は現れず、手元には女性が忘れていったフィルムが1本残っていた。その後女性が殺されたことを知り…。
森村誠一の、おそらく大半は初期の短編を集めた短編集。子供2人を戦争でなくしたおばあさんの話なんかは、昭和30年代くらいの話ではないかと思われる。
森村誠一の真骨頂である、細かい残存証拠という話ではなく、もっと荒い証拠の話だったり、犯人を追い詰めるという話ではなかったりと、ショートショートレベルで短くともオチは多様で、『世にも奇妙な物語』のようなものでも採用されそうな話が多い。
1990年代以降の小説では、「読者がわからないから」と削られてしまったような語彙がそこそこ含まれているあたりも、読みやすくて印象が良い。
難を言うなら、小道具が写真のフィルムだったりして古さは否めないのだが、それは若い人は調べて読んでみて欲しい。詩を小道具にする話も良い。
短編集というと、次の話を読むときに前作が引っかかって頭に入ってこないことがあるけれども、本作は結末のキレの良さと、冒頭の引きつけ方も良いので、前作に引っ張られることも少ない。
短編ミステリの教科書になりうる良い作品集だった。 -
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棟居刑事の情熱
棟居刑事は多忙ななか休暇が取れて穂高岳を目指す。若い女性を偶然にも上高地で見かけ気になっていた。登山初心者のようである。軽装備で頼りない足取りながら、棟居の後ろをついてくるのである。棟居は彼女をさりげなくガイドするかたちでサポートする。とうとう彼女は穂高岳山頂に立てたのである。2人は意気投合したのだが、連絡先も交換せず帰途の新宿駅で別れる。彼女の名は本宮桐子。
この小説は、棟居と桐子の出会いの小説でもある。以降、森村氏の作品では、棟居登場の陰に桐子あり、の場面が幾度となく設定される。2人は相思相愛の様相であるが、プラトニックな関係をあえて崩さない。棟居刑事シリーズなどでは、桐子は、たびたび登場し棟居に事件解決のヒントを授けることとなる。
物語は、新宿署の銀座ホステス殺人事件、厚木署のライフル射殺事件、碑文谷署の料亭従業員の失踪事件、八王子署の赤坂料亭従業員殺人死体遺棄事件、の関わりが、各署の刑事たちの執念によって紐解かれていく。新宿署には警視庁捜査一課那須班も投入される。新宿署の牛尾刑事、那須班の棟居刑事の活躍も描かれる。
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ホテル業務の危ういところが、要領よく描かれていて面白い。そこに入っていったのが、商社をやめて、退屈しのぎに入った、というのは会社の争い事に飽きていてあまり本気でやる気はなかった、畑中だ。事件は起こり、アマポーラというバーになにかあると、たまたま入社前から、早朝マラソンで知りあった仲のおじさんがたまたまホテルの社長だったこともあるからか、事件をホテルの社長に調べるよういわれたので調べたらそこに行き着くのである。社長との関係や、社長の要求がコロコロ変わるところが、読みどころで、畑中が、自分の立場をある種開き直って考えるところが考えかたとして、社賊なのかもしれない。
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もう何度も何度も観た大好きな映画の原作。もはや言う必要が無いかもしれませんが、森村誠一の代表作であり不朽の名作。
わたくしこれは、劇場公開時、鑑賞直後に読んで、(観てから読んだやつです)その後かなり経ってから一度再読、そしてそれっきりだったのではないかと思いますが、なんと今回、角川のキャンペーン、「あの頃流行ったベストセラー」に乗っかってつい買い直しちゃいました。(バーコード無しの、当時の文庫も持ってるのにw)
さて、観てから読んだ場合、あぁこの人はこうかかわってくるなとだいたい分かりますが、逆の場合、真相が徐々に解明していくに連なって、怒涛の伏線回収になるかと。
あらゆる登場人物の、あらゆる角度からの表現、著者の丁寧な筆致による
各登場人物の心の動き。映像より先に読んで見たかったかもなあと思わせてくれた作品です。
何せ棟居刑事は松田優作感が強すぎて。全く違う印象を受けますね。どちらが正解と言う訳ではなく、映画の棟居、原作の棟居、という解釈をしたい。
麦わら帽子、キスミー、西條八十に、ぬいぐるみのくま。
謎だらけのアイテムが、徐々に、まるでかかっていたもやがなくなって繋がっていく様は、とても心地良い体験ですね。
脳内であの音楽が流れてきてしまうのはもう仕方ないですよね。
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著者自身が古希(70歳)を過ぎて経験した老人性うつ病や「老い」という喪失体験にどう向き合うべきかを綴った体験的エッセイです。
定年退職、体力の低下、親しい人との別れ……。高齢期に訪れる「うつ」的な気分を、単なる病気として排除するのではなく、「人生を振り返り、次へ進むために必要な心の整理のプロセス」として捉え直す視点は、競争社会に疲れた心に深く染み入ります。
現役時代は「何ができるか、何を達成したか(Doing)」で評価されますが、老後は「ただそこに居てくれるだけでいい(Being)」という価値観へシフトすべきだと述べられています。実用的な情報はありません。心の持ちようを説く本です。読み終えた後、肩の荷が下りて少し泣きたくなるような、温かい読後感の本です。 -
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多作の作家・森村誠一が三千枚の歴史大作を『野性時代』誌で初めて発表したのは、平成3年であった。この年、吉川英治の『私本太平記』を原作にした大河ドラマ『太平記』が放映になり、本作は角川映画版「太平記」の原作としてスタートしたものである。結局映画化は実現しなかったが、ドラマ性の高さ、架空エピソードの折り込みなどに映画的演出を感じさせる。作者は初期作品から社会・推理小説作家の印象が強いが、実は多数の時代・歴史作品をものしており、忠臣蔵・新選組・平家物語をテーマにした大作がある。歴史小説の大家・吉川英治や山岡荘八とは違った視点と雰囲気があり、現代的で流麗な文体に特色がある。最終巻までテンポよく読み進めることができた。
本巻は堕落した幕府を打倒するため、野心家の後醍醐天皇が近侍と密議を繰り返し、いざ挙兵という段になって謀議が露見し、一網打尽にされた1324年の正中の変から、再度の倒幕の画策を密告されて急遽都を脱出、笠置山に籠城、楠木正成がそれに呼応して、赤坂城を舞台に奮戦苦闘する1331年の元弘の乱勃発までを描いている。 -
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昭和51年に講談社文庫として刊行されてから、そのあと、角川文庫から角川ホラー文庫へと変遷。作者初期の全七編を収めた短篇集である。ホラー小説と呼べるのは、『空白の凶相』くらいではなかろうか。ほかは作者らしい、ひねりの利いたサスペンス、皮肉な結末を用意している人間ドラマと呼んだほうがいいだろう。『死を運ぶ天敵』や『殺意中毒症』のような推理小説仕立ての作品もあり、いずれも面白い。この時期の作者は多作を極めているが、よくも巧みなプロットを次々とひねり出せるものである。
表題作の『魔少年』は、悪魔的な悪巧みを企てる少年に不気味さを感じていた母親が、自らの不貞をきっかけに、驚くべき真相を知らされるもの。ひねりがピリッと利いている。『燃えつきた蝋燭』は人生の無常が強調された作品。寝たきりの老人の生への執着、孤独が生む心の荒廃、若者への嫉妬が引き起こす残酷な結末。読後感は実に重い。『雪の絶唱』は女の独占欲の強さ、執念の恐ろしさが、死して男を追い詰めるという作品。異形の愛の完成には言葉もない。一番の秀作には『殺意中毒症』を挙げておきたい。"意外な真相"が明かされたと思いきや、更なるどんでん返しにはさすがの一言。 -
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読書録「人間の証明」5
著者 森村誠一
出版 角川文庫
p9より引用
“ 食事が豪華であればあるほど、食事本来の目
的から逸脱してくる。だが、人々はその矛盾にほ
とんど気がつかない。"
目次より抜粋引用
“エトランジェの死
謎のキイワード
過去をつなぐ橋
おもかげの母
人間の証明"
思い過去を持つ刑事を主人公とした、長編ミス
テリ小説。同社刊行文庫改版。
高級レストランへと向かうエレベーターの中
で、一人の外国人青年が亡くなった。彼の胸には
ナイフが根本まで突き立てられており、しかしそ
んな体でどこからか歩いてきたようで…。
上記の引用は、亡くなった青年が向かったと思
われる、レストランに来る客たちについての一
文。何のために食べるのかを忘れなければ、食事
に対して変な見栄を張らずに済むのかも知れませ
ん。
何度も映像化されている、日本ミステリの傑
作。私はTV版の連続ドラマで見てから知ったので
すが、話も犯人も分かっていてなお、後書きまで
全て読み通せる作品でした。
初版が1977年と50年近く前で、舞台も昭和40年
代で現代とは色々と違っていたりする部分もある
のですけれど、人の感情に訴えかける事というの
は、今も昔も変わらないのかなと思わされます。
初版の解説が、「金田一耕助シリーズ」の横溝
正史という所も面白いというか、日本の小説界の
歴史を感じられる部分ではないでしょうか。
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星の旗(上下)
戦時中特攻隊の生き残り木島は、今や70歳過ぎの老人であった。警察も当てに出来ない町で、暴力団、大門組や一誠会が政界の黒幕の配下となってうごめく。
大門組に親族を自殺に追いやられ、知り合った若い娘、香子を廃人同様に犯された木島は、特攻隊時代の仲間七人を集め、暴力団と戦う。平成天誅組と呼ばれるにいたり老人達の生気はよみがえり、戦時中に隠された兵器を入手し、暴力団を相手に活劇風なストーリー展開となる。
この小説、著者定番の社会派推理からは少し外れ、映画007(初期)の活劇ストーリー風になっていく。
しかし「終章」では、森村氏の筆がさえる、涙が滲んできた。5つ星である!
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