森村誠一のレビュー一覧
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昭和49年4月から翌年1月まで女性週刊誌『ヤングレディ』に連載された、この時期の作者の作品としては異色作と云える。主人公が若い女性というのもそうだし、トラベルミステリーであり、ロマン派推理小説でもある。ハッピーエンドが少なく、いつもラストは苦いのが作者の作風だが、本作は希望のあるエンディングになっている。それも連載誌のカラーを考慮したものだろう。次々と起こる事件に、最後まで息がつけない一作。
恋人に捨てられ傷心を癒やすため、団体での海外旅行へ出かけるヒロイン裕希子が、旅行中に様々な事件に遭遇する。同行の旅行者たちもいずれ曰くつきの人々であり、次々と勃発する不可解な事件に振りまわされるはめに。 -
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本書は昭和48年に『週刊ポスト』に連載され、同年末に刊行された著者の初期作品である。近年は政治改革の成果か、政界を揺るがす疑獄事件は起きなくなっているが、昭和期は腐敗が酷かった。著者は「悪徳政治家をせめて小説の中で弾劾しようとしてこの作品を書いた」と述べる。次期総理の有力候補・玉置森堂が政治的野望を実現するために計画した国有地売却計画。ある投書から、その背後にある不正の捜査をはじめる刑事・中津和男。上からの圧力に屈せず地道な捜査を続けるが、虎の尾を踏んだ彼は罠にはまり、辞職を余儀なくされる。そんな彼に一本の電話が入る。罠を仕掛けた女・久田芙美代の居所を教えるものであった。その場所はある高級ホテ
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昭和47年に『週刊小説』(実業之日本社)に連載された作者の初期の作品。いかにも森村作品らしい構成の妙があり、その設定と展開には多少の強引さも感じられるが、登場人物の関係の糸が少しずつ明らかになっていく巧みな筋書きが一気に読ませてくれるサスペンスだ。必然にあらがおうとする人間たちの懊悩と苦闘、虚構の愛を覆い隠せなくなり、静かな悲しみが漂うラスト、すべてが森村が奏でるいつもの色調である。
主人公の大学助教授・宮本洋一郎が、人気清純派女優・八木橋紀子との情事の後に帰宅すると妻が死体と化し、息子の姿が消えていた・・・。誘拐されたと判断した宮本は息子を案じるがゆえに警察には連絡せず、愛人の紀子に助けを -
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表題作のほか、「公害殺人事件」「殺意の架橋」「虫の息」「電話魔」「虚無の標的」の六篇を収録した短編集である。初版は昭和50年に発刊されているが表題作は45年に『小説現代』に掲載されたもの。前年の44年に作者は江戸川乱歩賞を受賞し、推理作家としてデビューするが、当時、乱歩賞受賞者はまず同誌に短編を発表するのが慣例となっていた。だが何度提稿しても、なかなか掲載のOKが出ず、ようやく六本目にして掲載になる。作者は同作品を「当時の苦悩が滲んでいるような作品」と回顧する。
作者は当時、自身の推理小説観を問われ「エンターテインメント。ストーリーに重点を置いた、読んで面白い小説でないといけない」と哲学を披 -
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古い本の整理をしていたら本書が出てきて、内容が少し気になったので読み始めると最後まで一気に読んでしまった。読みやすい文体とその面白さに引きつけられたのだ。昭和46年から47年にかけて小説誌に掲載された五編を収録した短篇集だが、何れも精神の病理研究をテーマにしている。「精神分析」「催眠術」「精神分裂」「麻薬分析」「児童心理」の各殺人事件を、精神医学・心理学・犯罪学の観点から事件解決に導く筋書きである。ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスものや、江戸川乱歩の『心理試験』など、犯罪者の心理に事件の鍵を置く小説は珍しくないが、本書の五編は練られたプロットと作者の心理研究が活かされており、作風の暗さと合わ
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"事故処理屋"星名五郎を主人公とした森村最初期の異色サスペンス連作集9編。星名は"事故処理屋(「トラブルエイジェント」と読む)"を名乗るが、その実体は殺し屋である。「退屈で仕方がないので自分をむごく静かに殺してほしい」なる特殊な依頼もあるが、多くは恨みを晴らしてほしいというもの。この男、虚無的でビジネスライクではあるが、金さえ貰えば誰でも殺す冷血漢とは必ずしもいえない。端々で義理堅さや人間味も垣間見せる。殺さずに依頼を遂行することもあるし、その逆に依頼主の求めに応じて、手間暇と費用をかけて残酷に葬ることもある。当世風にいえばアンチヒーローといったところか
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完全犯罪の使者
女性がホテルの一室で殺害される。疑われた不倫相手の男には、まもなく棟居刑事らの追及が及ぶ。しかし彼はシロの感触であった。物語はこの不倫相手の男を主人公として進展していく。
主人公へ新聞記者がコンタクトをとってきた。この新聞記者が水死体となって発見されるにいたり、主人公も犯人探しへと動き出す。期せずして新聞記者の義理の妹と知り合い、協力して犯人に迫る。
棟居刑事らへ情報を提供しつつ、二転三転しつつ犯人へ迫っていく。過去ひき逃げ犯との関わりが。複雑な悪の連結輪が、一つずつ解けていく。
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復活の条件
タイムマシンで過去へタイムスリップの物語りではないが、それに類するストーリーである。主人公はオリジナルの世界で喪失したものを、鏡像の世界へ身を移し取り戻していく。鏡像の世界というユニークな舞台で、社会派推理作家の巧みなストーリーが繰り広げられ、森村ワールドへ深く引き込まれてしまう。
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深海の夜景、弔辞屋
短編集とは気づかずに購入した。いずれの作品も社会派推理作家の本領発揮といったストーリー展開に引き込まれる。
最初の弔辞屋は、題目からは想像だにできない、若き日の男女のすれ違いが、往年になって紐解かれる、涙を誘うラブストーリーといえる。
✳︎出版社へ
文字化けが多数。なぜか「噂」という文字が、突如現れる、意味不明、存在しない熟語となっていたり、誤植と言うより電子データに起因する文字化けのように思える。 -
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名誉の条件
政権にいる悪を牛尾刑事らが追い詰める。暴力団組織も登場するが、このフロント企業のトップについたのが、組織の中にあって暴力を否定する特異な主人公である。主人公と様々な経歴を持つその部下たちは、個々の際立った能力を発揮つつ、牛尾らと連携して事件を追う。
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ネタバレ森村誠一「老いの希望論」、2015.10発行。目に留まった所は: ①シニアの二極化、「有用老人」vs「お荷物老人」、「好かれる老人」vs「嫌われる老人」。好かれなくてもいいけど、嫌われないようにはしたいですw ②高齢者は「負けること」「諦めること」も学ぶ必要が。若い頃から学んでいます。③人生を豊潤にする濃密な時間を持つ。著者は、喫茶店で過ごす時間。私は読書。④「独居老人」でなく「独立老人」の誇りを!
声かけで積極的に社会に参加している横丁の隠居。私もそうかもしれませんw。森村誠一「老いの希望論」、2015.15発行、再読。①リタイア後こそ、1日のスケジュール表が必須。同感です。私のはスケス -
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森村誠一『魚葬』角川文庫。
5編から成るミステリー短編集。たまに昭和を背景にした古いミステリーを読むのも面白い。男女の思考や欲望は今も昔も変わらない。予想以上に捻ったミステリー短編が並ぶ。
昭和は遠くなりにけり。
『魚葬』。なかなかタイトルとストーリーとが結び付かず、何かを象徴するタイトルなのかと読み進めば、タイトルがミステリーの解答であることに気付く。学費を稼ぐために今で言うパパ活から銀座のホステスに転身した女子大生の杉村加代は高額の給料に惹かれ、中堅製薬会社の社長秘書になる。だが、それは表向きで実は女の身体を武器にした特殊接待が本業であった……
『神の怒色』。運命は神のみぞ知る。身