森村誠一のレビュー一覧

  • 人間の証明

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    ネタバレ

    母が若い頃に読んで衝撃的だったと話していたので、すぐに買って読んでみた。
    棟居刑事の子どもの頃の描写が読んでいてつらくて、一瞬諦めそうになった気持ちを堪えた甲斐がありました。全部繋がった。
    設定が所々変わっていそうだけど、映画も観てみたいと思いました。

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    2024年03月30日
  • 異型の白昼

    購入済み

    異型の白昼

    コルト45口径M1911A1を入手した人物を取り巻く人間模様と付随して発生する事件を描く。拳銃を持ったことによる自信、心の余裕が、その人物の人間模様に改善をきたし、引き金を引くことなく手放す。拳銃を駅のコインロッカーへ預けて、キーを見ず知らずの人物へ気づかれぬまま渡してしまう。

    思いもかけずそのコインロッカーのキーを入手した新たな人物が拳銃を手にする。そしてまたその人物を取り巻く人間模様と付随して発生する事件が描かれる。やはり拳銃の引き金が引かれることはなく、拳銃は先と同様にして手放される。

    拳銃は再び駅のコインロッカーを経由して、次の登場人物への物語へと進展していく。このようなストーリーが、都度、新たな登場人物により、何回も繰り返される。

    拳銃は、澁谷駅、池袋駅、上野駅、秋葉原駅、東京駅、新橋駅、品川駅の各コインロッカーを経由して渋谷駅コインロッカーへ戻る。

    拳銃の各移動につき、1つのストーリーが展開されるのだが、各独立した短編小説ではない。前のストーリーの一人の登場人物が、次のストーリーで読者があっと驚く役割をになう。森村小説ここにあり、といった印象である。

    コルト45口径M1911A1は、最後まで引き金が引かれず物語は終了する。

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    2024年03月07日
  • 60歳で小説家になる。

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    現役作家の言うことには説得力がありますよね。
    自分は今21歳の就活生ですが、読んでよかった。これからの人生で小説家を目指す人には知っておいてほしいことがたくさんありました。
    どうやら60歳から作家になりたい方は短編よりも長編を鍛えた方が良いらしい、短編は倍率が宝くじ並みだそうですね。じゃあ裏を返せば若いうちは短編目指してもいいのでは?
    短編なら仕事との両立はできそう、若いから長い時間かけてやれる。宝くじを当てる確率高いお金(ここでは時間のこと)がある。そんな解釈ができるかと思います。

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    2024年02月21日
  • 新版 悪魔の飽食 日本細菌戦部隊の恐怖の実像!

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    わたしが中学生の頃 赤旗に連載された読み物ですが、どこまでが事実で、どこからが間違い(Fiction)なのか色々議論のある作品である。森村誠一の取材協力者は「赤旗」の記者だったそうだ。731部隊に関係しない写真が含まれていたことが後に判明したらしい。
    九州帝国大学の米軍捕虜生体実験(「海と毒薬」のモデル」となった) と並び日本軍による加害事件として記憶にとどめるべきと私は思っている。しかし米軍が731部隊の生物兵器データ提供の見返りに731部隊員を免責したのが事実なのか否かは私の思い込みか否か再検証してみようと思った。

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    2024年02月18日
  • 老いる意味 うつ、勇気、夢

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    前向き、チャレンジ。
    日々のひとつひとつの生活が大切。
    森村誠一さんが包み隠すことなく語ってくれている。
    自分も読み終わる時に風を拗らせ
    うつが身に沁みた。

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    2024年01月25日
  • 小説の書き方 ──小説道場・実践編

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    小説の書き方
    小説道場・実践編
    著:森村 誠一
    角川Oneテーマ21 B-119

    けっこうおもしろかった

    ■アイデアと構成

    ・小説のプロット(筋)やアイデアはどのようにして考えるのか
     百作あれば百作とも、スタイルやプロットの練り方がちがう
     カフェでぼんやりコーヒーを飲んでいるときもあり
     仕事場でデスクに向かって脂汗を流すようにおもいつくこともあり

    ・登場人物が勝手に動き出す、始めにつくった青写真が全く役にたたなくなることも

    ・推理小説では、途中で予定変更はできないが、連載小説であれば、ゴールが変わっても問題はない

    ・作家としての蓄積があればあるほどいい
     それはまず読書、続いて、人生経験

    ・小説とは人間や人生を描くことが一義、人間や人生を描くものがそれらを知らないことは、作家としての基本的な欠陥である

    ・物語の作り方
     ①時系列を基準として構成に並んでいて、太い一本の軸に沿って構成した作品
     ②複数の幹を絡ませながら最後に一本の結末に収束する多元的構成

    ・感性を磨く
     作家の感性とは、書く対象に感ずる能力
     作家の維持能力を支え得るには、野次馬根性というべき好奇心、好奇心がない作家は少なくとも語り部になり得ない。

    ・世界に誇る長編ドラマ 忠臣蔵
     長丁場を維持するものは、物語の起伏
     起伏ない物語は風景に変化のない大平原の直線道路を走るように退屈する
     それから要所要所に見せ場が必要
     そして、見せ場と見せ場をつなぐ橋があって、全体として、ストーリー全体が起伏に富んでくる

    ・忠臣蔵と並ぶ人間集団のドラマ それは、新選組、
     新選組の山場は、池田屋
     池田屋は夏で血なまぐさいだけであるに対して、忠臣蔵は、雪化粧で華がある
     新選組は、滅びの美、そして、時代錯誤

    ・小説の主人公は人間である
     したがって、魅力ある登場人物の設定が作品のキーとなる
     主人公は正邪、善悪いずれもでもよい
     登場人物の日常的危険性、性格、才能、感性、徳義、その生活、交友関係、癖、仕事、趣味、家族構成、病気、進学、就職、恋愛、結婚、離婚、リストラ、倒産、死
     その人生の場面における起伏が人物に潜む危険となって魅力的nキャラクターを刻んていく

    ・長編小説
     長丁場を維持する圧力とは、多彩で魅力的な登場人物
     ディスカッションドラマは二人以上の対話、討論形式で進行する
     小説の主人公は人間である、作品の成否はひとえに人間の造形にかかっている

    ・恋愛小説
     愛し合う2人を阻む障害が必要である

    ・登場人物のマイナスの魅力
     肉体的魅力 美貌、体形、音声、肉体的能力
     精神的魅力 人格、性格、教養、知力、感性、勇気、思慮、広い視野、先見力、分析力、精神性
     マイナスの魅力 身体、精神のハンディキャップ、反社会性、凶暴性、残忍性、狡猾、悪知恵、虚栄、吝嗇、遊蕩、射幸性、好色、淫乱、耽溺性、独善、多重人格、虚言癖
     間接的魅力 生活環境、条件、交友関係、過去

    ■書き始めと結末

    ・書き始めは玄関口 玄関口でもたついているとせっかくの訪問者を逃がしてしまう
    ・結末 ラストメッセージ ラストメッセージのない作品も少なくない
    ・題名 書き始めが玄関口であれば、題名(タイトル)は表札、魅力的な題名は読者を惹きつける、平凡だと、書物の大海の中で存在主張に乏しくなる
    ・小説のリアリティ 小説は虚構であっても、事実と真実の反映がなければならない、読者が小説に共鳴し、登場人物に感情移入するのも、小説にリアリティがあるから
    ・本物らしさを出すには
     ①まず作者みずから実地を見分すること
     ②次に書こうとすることについて、知識や情報を集める。綿密な調査に基づいた虚構は事実と通底している
    ・ディテール すべての事項についての詳細の説明や解説である 専門的な事項についてはある程度の説明を加えないと読者に分からない
     ディテールを欠いた作品はリアリティが薄くなる

    ■プロットの立て方

    ・小説はプロットが命 物語系の小説ではプロットの面白くない小説はもはや小説ではない
    ・プロット作法のパターン
     ①短期発想型 なにかのきっかけでひらめく
     ②出会い型 人間、場所、資料などの出会い
     ③長期構想型 長いあいだあたためてきたプロット
     ④バリエーション型 他の作品、映画、演劇などの影響を受けた作品
     ⑤最先端専門知識型
     ⑥同時進行型

    ・小説全体の推敲
     ①時系列 時間的な誤謬
     ②場所の検討 空間的錯覚
     ③伏線の欠落 伏線なしにいきなり書かれている
     ④情報もれ 知ることができないものを登場人物がしっている
     ⑤前段との不整合 流れに矛盾がある
     ⑥季節感 環境の描写に統一感、時制がない
     ⑦重複語
     ⑧専門知識、事実誤認
     ⑨差別用語
     ⑩敬語の使い方

    ・面白くするこつ
     序破急、起承転結、クライマックスの置き方、意外性

    ■文章論

    ・言葉の6つの機能
     ①知識、情報、客観的事実
     ②情緒の伝達
     ③人間関係の潤滑油、挨拶、激励、弔意
     ④娯楽
     ⑤だまし
     ⑥暴力

    ・描写と説明
     描写とは骨格を支える肉付け、筆者の主観によって描かれるもの 情景を情緒的に協調する
      ①心理描写 一番大事な描写
      ②情景描写
      ③風景描写

    ・説明とは客観的に記述されるもの できるだけ正確に伝達する

    ■文体論

    ・文体とは作者の文章のくせである

    ・文体を形成し、磨くには
     ①多くの名文に接する
     ②模倣する
     ③他人の訂正、修正などと格闘する
     ④模倣を踏まええ、独自の文体を研究、開発する

    ・切り口 作品のアングル(視角)である

    ・会話と地の文
     会話の得意な作家は、作品も面白い、当然会話も多くなる
     会話の不得意な作家は地の文章の比重が多くなる
     会話で心しなければならないのは、その人間の人生や性格、社会・時代・生活環境などから決して使わない言葉を話させてはならないということだ

    ・視点
     自分の視点、1人称
     神の視点 多視点

    ■実作のサンプル

    ・性 年齢別 幼年期、青春期、壮年期、老年期
       異性のどこを描写するか
       ブラトニックラブ 精神的な愛は、肉体的な愛よりもはるかに深い絆を結ぶことがある

    ・雰囲気づくり
       季節、時間、登場人物の心理状態、視野、視角、ファッション、言葉、方言、地域性など

    ・環境
    ・現場
    ・行動
    ・理論構成 思想、信条など
    ・叙情(リリシズム)
    ・奇想天外、諧謔
    ・ユーモア
    ・飲み物、味、アイロニー
    ・引用
    ・予告
    ・錯覚
    ・隠語、会話
    ・連作・反復・擬人化
    ・におい
    ・音
    ・色
    ・光と影
    ・風俗・ファッション
    ・四季
    ・演説
    ・超能力・超常現象

    目次
    第一章 アイディアと構成
    第二章 書き始めと結末
    第三章 プロットの立て方
    第四章 文章論─言葉の六大機能
    第五章 文体論
    第六章 実作のサンプル

    ISBN:9784047101876
    出版社:KADOKAWA
    判型:新書
    ページ数:256ページ
    定価:781円(本体)
    発売日:2009年04月10日

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    2024年01月15日
  • 異型の街角

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    異型の街角

     街角で働く人々が遭遇した5つの事件。気がかりな事件を彼らが解決していくストーリー。
     スーパーマーケットの後方処理担当課長の川地はさまざたな苦情処理係であり、お詫びのためにある女性を訪ねると....。
     ゴミ収集が仕事の清掃作業員平川は、ある女性を見かけ密かに憧れを寄せるようになるが...。
     テレビ番組「会いたいな、あの人に」のプロデューサー樋笠は、生放送のご対面番組中に、遠い過去の女性放火殺人事件に迫っていく。
     有線放送の技術員である佐古は自転車で狭い坂道をくだっている時、登ってきた対向車と接触しそうになり口論となる。それを目撃していた女性が殺害される...。 
     高層ビルの窓拭き業を営む笠井は、窓拭き用のゴンドラから殺人事件を目撃する...。

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    2024年03月07日
  • 東京空港殺人事件

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    東京空港殺人事件

    航空機墜落事故二件で物語は展開する。過去の飛行機事故は、アラスカ雪山への不時着である。わずかな生存者の1人の男が、羽田沖へ原因不明の墜落に関わる。この男が東京空港のホテルで殺害される、それは密室殺人の様相を呈していた。

    羽田沖墜落原因をめぐって、那須警部らが殺人事件の核心に迫っていく。

    この事故では、出張中の航空会社社員がまきこまれる。この社員や、アラスカ雪山不時着の生還者の人間模様が、密室殺人や墜落事故の真相をおりなす。

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    2023年10月22日
  • 夢の虐殺

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    昭和46年初頭から、翌々年半ばまでに発表されたものから自選した短篇集。表題作ほか全六編を収めている。現在、森村作品群から五冊が「角川ホラー文庫」から刊行されているが、実際はただのサスペンスが選ばれている。本当にホラーと呼べるのは本書だろう。作者は"怨念の作家"と評されることがあるが、それはホテル勤務時代の非人間的な扱いへの遺恨に由来しているという。本短篇はそのような情性が存分に発揮された作品ぞろいになっており、作者だけが表現できる"凄み"が描かれている。

    表題作『夢の虐殺』と『高燥の墳墓』は山岳を舞台にしたもの、『高燥の墳墓』と『派閥抗争殺人事件』は40年代の猛烈社員ぶりが狂気に達している風潮を背景にしており、トリックを利かせた作品だ。『侵略夫人』『殺意の造型』『人間溶解』は完全にホラーで、憎悪の対象をどう葬り去るかに知恵を働かせているが、登場人物はいずれもものの見事にイッてしまっている。サイコな者がひとり混じると、周りがすべて染まってしまい、正常だった人間まで恐ろしい犯罪に走ることが現実にもあるが、そんな典型例である。

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    2023年10月11日
  • シンデレラスター殺人事件

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    六編を収めた短篇集で、うち四編が今はなき学研の学年誌『中三コース』に昭和44年から46年に連載されたジュブナイル・ミステリーである。連載誌のカラーに合わせ作者お得意の濃厚な情事は描かれないし、おなじみの救いのない結末ではない。うち三編では中学生が探偵の役割を果たしている。連載分をそのまま載せたのか、ふりがなが多くつけられているのも特徴。中学生向けといってもそこは小説職人の森村誠一だから、大人が読むに堪える水準は維持されていて、いずれも最後にどんでん返しを用意している。それにしてもいろんな仕事を引き受けていたのにも驚くが、この時期の多作ぶりは鬼神のごとくである。しかも六編とも独自のトリックを下敷きにしているのが見事だ。

    『雪の湖殺人事件』は『女性自身』誌、『545M列車の乗客』は『日刊スポーツ』に共に昭和46年に書いたものだが、いずれも企画ものだったのか読者に真相を問う趣向である。前者はなんなく分かったが、後者は時刻表トリックなのだが状況説明が微妙ですっきりしない解答だった。いつもの毒こそないが、ひねりを効かせた短篇集である。

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    2023年10月10日
  • 虹への旅券

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    昭和49年4月から翌年1月まで女性週刊誌『ヤングレディ』に連載された、この時期の作者の作品としては異色作と云える。主人公が若い女性というのもそうだし、トラベルミステリーであり、ロマン派推理小説でもある。ハッピーエンドが少なく、いつもラストは苦いのが作者の作風だが、本作は希望のあるエンディングになっている。それも連載誌のカラーを考慮したものだろう。次々と起こる事件に、最後まで息がつけない一作。

    恋人に捨てられ傷心を癒やすため、団体での海外旅行へ出かけるヒロイン裕希子が、旅行中に様々な事件に遭遇する。同行の旅行者たちもいずれ曰くつきの人々であり、次々と勃発する不可解な事件に振りまわされるはめに。一方、日本では殺人事件の捜査が進行していて、セールスマンの日比野が自室で殺害された事件の捜査に那須警部が当たっていた。明白な動機を持つ男が当日に日比野宅を訪問していたことで、簡単に解決に向かうと思われた捜査は思いのほか難航する。そんな中、日比野宛の一通の手紙から、那須捜査班が手繰り寄せたのが「穂積裕希子」という名前であった。

    旅行で巡る欧州の風景が傷心旅行に花を添える一方、恋情のほつれ、憎しみと愛が交錯し、最後に意外な犯人が明かされる。完成度と娯楽性の高いミステリーロマンだ。

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    2023年09月30日
  • 暗黒流砂

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    本書は昭和48年に『週刊ポスト』に連載され、同年末に刊行された著者の初期作品である。近年は政治改革の成果か、政界を揺るがす疑獄事件は起きなくなっているが、昭和期は腐敗が酷かった。著者は「悪徳政治家をせめて小説の中で弾劾しようとしてこの作品を書いた」と述べる。次期総理の有力候補・玉置森堂が政治的野望を実現するために計画した国有地売却計画。ある投書から、その背後にある不正の捜査をはじめる刑事・中津和男。上からの圧力に屈せず地道な捜査を続けるが、虎の尾を踏んだ彼は罠にはまり、辞職を余儀なくされる。そんな彼に一本の電話が入る。罠を仕掛けた女・久田芙美代の居所を教えるものであった。その場所はある高級ホテル。新たなる罠の危険を承知のうえで、意を決してホテルに向かう中津。そこで遭遇したものは何と・・・。中津は、恋人の純子の協力を得て、巨大なる敵との闘いを決意する。

    なかなか面白く読めた。圧倒的に強大な敵を相手に、いかなる武器も持ち合わせない一個人が蟷螂の斧をふるって立ち向かうのが作者の作品によくみられる趣向である。プロットも凝っていて読ませてくれる。52年に主人公・中津を北大路欣也が演じたTVドラマが放映されていて、調べたらDVDで出ている。機会があれば視聴したいものだ。

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    2023年09月30日
  • 真昼の誘拐

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    昭和47年に『週刊小説』(実業之日本社)に連載された作者の初期の作品。いかにも森村作品らしい構成の妙があり、その設定と展開には多少の強引さも感じられるが、登場人物の関係の糸が少しずつ明らかになっていく巧みな筋書きが一気に読ませてくれるサスペンスだ。必然にあらがおうとする人間たちの懊悩と苦闘、虚構の愛を覆い隠せなくなり、静かな悲しみが漂うラスト、すべてが森村が奏でるいつもの色調である。

    主人公の大学助教授・宮本洋一郎が、人気清純派女優・八木橋紀子との情事の後に帰宅すると妻が死体と化し、息子の姿が消えていた・・・。誘拐されたと判断した宮本は息子を案じるがゆえに警察には連絡せず、愛人の紀子に助けを求める。しかし犯人からは連絡はこない。そこで女優の紀子は一計を案じ、テレビの生放送劇で犯人に連絡することを思い立つのだが・・・。昭和40年代には生の放送劇なんてものがあったのかと時代を感じさせる。読む側からすれば「警察に電話しろよ!」と言いたくなるが、そこはプロット上やむを得ない。複数の別の場所で発生する事件が見事にひとつにまとまっていく構成は作家の技量であり、古さは感じるがとにかく面白いことは確か。

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    2023年09月30日
  • 科学的管理法殺人事件

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    表題作のほか、「公害殺人事件」「殺意の架橋」「虫の息」「電話魔」「虚無の標的」の六篇を収録した短編集である。初版は昭和50年に発刊されているが表題作は45年に『小説現代』に掲載されたもの。前年の44年に作者は江戸川乱歩賞を受賞し、推理作家としてデビューするが、当時、乱歩賞受賞者はまず同誌に短編を発表するのが慣例となっていた。だが何度提稿しても、なかなか掲載のOKが出ず、ようやく六本目にして掲載になる。作者は同作品を「当時の苦悩が滲んでいるような作品」と回顧する。

    作者は当時、自身の推理小説観を問われ「エンターテインメント。ストーリーに重点を置いた、読んで面白い小説でないといけない」と哲学を披露している。本書作品群もその点においてうなずける。簡潔でプロットがよく練られている。上手いなと思わせる。登場人物が利己主義者で倒錯した人間ばかりなのは、いかにも森村作品。表題作は犯人が職場で導入された科学的管理法を逆手に取り、殺人行為の伴わない殺人を着想し、成功するというもの。「殺意の架橋」は物理トリックを用いた本格推理作品で「虫の息」は倒叙推理だろうか。「虚無の標的」は異色の文学的な作品になっている。

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    2023年09月30日
  • 精神分析殺人事件

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    古い本の整理をしていたら本書が出てきて、少し気になって読み始めると、最後まで一気に読んでしまった。読みやすい文体とその面白さに引きつけられたのだ。昭和46年から47年にかけて小説誌に掲載された五編を収録した短篇集だが、何れも精神の病理研究をテーマにしている。「精神分析」「催眠術」「精神分裂」「麻薬分析」「児童心理」の各殺人事件を、精神医学・心理学・犯罪学の観点から事件解決に導く筋書きである。ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスものや、江戸川乱歩の『心理試験』など、犯罪者の心理に事件の鍵を置く小説は珍しくないが、本書の五編は練られたプロットと作者の心理研究が活かされており、作風の暗さと合わさって面白かった。

    表題の『精神分析殺人事件』では、虫をとらえて残酷な遊びに熱中する孤独な少年を描いている。これは作者の自画像らしい。長編『真昼の誘拐』にも同様の児童が登場していた。『催眠術殺人事件』は催眠術を利用して殺人を代行させるという仰天のトリックが用いられるのだが、現実に可能なのか気になる。『精神分析殺人事件』は精神異常を装って罪を免責される完全犯罪に成功するが、入院した病院で地獄をみるという皮肉な作品である。精神医療の現場への告発ともいえよう。

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    2023年09月30日
  • むごく静かに殺せ

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    "事故処理屋"星名五郎を主人公とした森村最初期の異色サスペンス連作集9編。星名は"事故処理屋(「トラブルエイジェント」と読む)"を名乗るが、その実体は殺し屋である。「退屈で仕方がないので自分をむごく静かに殺してほしい」なる特殊な依頼もあるが、多くは恨みを晴らしてほしいというもの。この男、虚無的でビジネスライクではあるが、金さえ貰えば誰でも殺す冷血漢とは必ずしもいえない。端々で義理堅さや人間味も垣間見せる。殺さずに依頼を遂行することもあるし、その逆に依頼主の求めに応じて、手間暇と費用をかけて残酷に葬ることもある。当世風にいえばアンチヒーローといったところか。現実味より娯楽性を重視した作品であり、漫画原作でも通用しそうだ。

    ヨットの専門誌『スタッグ』に連載され、昭和44年に単行本が刊行された。本作のような病的な登場人物ばかりの暗色調の小説が、健全なスポーツ誌に連載されていたのは不思議だが、当時としては普通だったのかも知れない。第七章「白鳥焼身」はヨット乗りが登場する。後年『人間の証明』などによってベストセラー作家となり、本作の文庫化を勧められた際、作者には一縷の逡巡があったという。初期の荒削りの作品だったからだろう。だが実際に文庫化されるとたちまち100万部を突破。読者と作者の評価の乖離に驚かされたという。同じく角川によって後押しされ、超人気作家となった横溝正史も同様の経験をし、同様の感想を漏らしたりしている。当時の森村の人気度と角川文庫の隆盛が窺える。

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    2023年09月30日
  • 砂漠の喫茶店

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    森村誠一さん、亡くなって間もないことを思い出し、20年前の本だが読んでみた。
    最近読んだ警察物に比べると、淡々と語られている感じ。例えば、意地の悪い?なんでも反対する上司とか、その一言だけで、感情的な背景をはさまない。
    事件は複雑で、読み応えあり。行きつけの喫茶店の常連が、全員、解決への糸口を持っていたことが、面白くもあり、出来過ぎでもあり…

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    2023年09月14日
  • 完全犯罪の使者

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    完全犯罪の使者

    女性がホテルの一室で殺害される。疑われた不倫相手の男には、まもなく棟居刑事らの追及が及ぶ。しかし彼はシロの感触であった。物語はこの不倫相手の男を主人公として進展していく。

    主人公へ新聞記者がコンタクトをとってきた。この新聞記者が水死体となって発見されるにいたり、主人公も犯人探しへと動き出す。期せずして新聞記者の義理の妹と知り合い、協力して犯人に迫る。

    棟居刑事らへ情報を提供しつつ、二転三転しつつ犯人へ迫っていく。過去ひき逃げ犯との関わりが。複雑な悪の連結輪が、一つずつ解けていく。


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    2023年08月05日
  • 老いる意味 うつ、勇気、夢

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    朝日新聞の売れている本で紹介された。作家が書いたエッセイである。文字も大きく字間も十分にとってあるので老眼でも簡単に読める。80歳過ぎたら読む本かもしれない。

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    2023年06月17日
  • 喪失

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    妻に男がいる。「許せない」。夫婦をつづけていても、もはや村井の妻は失われている。その〈喪失〉を埋めるものが殺意であった(「喪失」より)。夫婦、不倫、恋愛、過去の愛の傷……男と女の諸相から生み出される7つの事件と謎に挑む、警視庁捜査一課棟居刑事! 初文庫化推理傑作集。

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    2023年05月27日