【感想・ネタバレ】真昼の誘拐のレビュー

あらすじ

清純派女優八木橋紀子との密会に溺れている最中だった。助教授宮本の妻は暴行殺害され、幼子が消えていた。息子はきのう鍵を誤飲し、危険な状態にある。紀子はTVで犯人に呼びかけるが、事件は次第に予想もつかぬ貎を見せ始めた……。

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Posted by ブクログ

昭和47年に『週刊小説』(実業之日本社)に連載された作者の初期の作品。いかにも森村作品らしい構成の妙があり、その設定と展開には多少の強引さも感じられるが、登場人物の関係の糸が少しずつ明らかになっていく巧みな筋書きが一気に読ませてくれるサスペンスだ。必然にあらがおうとする人間たちの懊悩と苦闘、虚構の愛を覆い隠せなくなり、静かな悲しみが漂うラスト、すべてが森村が奏でるいつもの色調である。

主人公の大学助教授・宮本洋一郎が、人気清純派女優・八木橋紀子との情事の後に帰宅すると妻が死体と化し、息子の姿が消えていた・・・。誘拐されたと判断した宮本は息子を案じるがゆえに警察には連絡せず、愛人の紀子に助けを求める。しかし犯人からは連絡はこない。そこで女優の紀子は一計を案じ、テレビの生放送劇で犯人に連絡することを思い立つのだが・・・。昭和40年代には生の放送劇なんてものがあったのかと時代を感じさせる。読む側からすれば「警察に電話しろよ!」と言いたくなるが、そこはプロット上やむを得ない。複数の別の場所で発生する事件が見事にひとつにまとまっていく構成は作家の技量であり、古さは感じるがとにかく面白いことは確か。

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2023年09月30日

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