あらすじ
北アルプス・槍ケ岳の観光開発をめぐり、鎬を削る若きエリート――国井、村越、弓場。三人は、福祉省・門脇局長への接近を図り、更に、上高地で逢った門脇の娘・美紀子の愛を得ようと争う。自分の会社に開発利権を導くために! しかし、彼女に最も近づいていた国井が殺害された。村越と弓場が容疑を掛けられるが……。捜査陣は鉄壁のアリバイを崩せるか!? 山岳本格推理!
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Posted by ブクログ
昭和47年2月から『週刊小説』に八回にわたって連載された作品である。作者の典型的な初期作品で、大企業の非情さへの怨念、何重にも絡み合った人間関係、日本アルプスを舞台にした友情と愛と悲劇、そしてアリバイを構成するトリック。この時期に数多く書かれたタイプの作品群のひとつである。登場人物の造形と舞台の設定は図式的といえなくもないし、現実性を担保してるとは言い難いが、小説としては十分に面白い。
槍ヶ岳の観光開発案を三社が提出、各社の担当者である国井・村越・弓場は大学の同窓で、認可のために凌ぎを削っていた。三人は成り行きから、認可の鍵となる福祉省の門脇局長の娘・美紀子にプロポーズする。美紀子の気持ちが国井に傾きていき、門脇も国井の西急案を支持する。そんな状況で国井が殺害され、国井のライバルでかつて国井に妹を見殺しにされた弓場に嫌疑がかかる。なぜかアリバイを立証できない弓場。実はアリバイを証明したくてもできない事情があったのだが、それは・・・。
最後のトリックは現代ではまずあり得ない設定だし、作者に文中で説明してもらってもピンとこないもので、なんともバランスが悪いのが難点か。事件の発端となる槍ヶ岳の観光開発案は、現実にあった話と聞く。古さは感じるものの、最後まで面白く読めた。