宮本昌孝のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最後まで熱かった!とはいえ最終章の義輝の動きは静かで、技に限らず人生も境地に達したかのようで少し悲しくもあった。兄弟3人の対話のシーンは印象深く、波乱の剣の旅を経て静寂に心を向ける義輝と純粋な心で自然に心を寄せる周こう、対照的に俗世に執着する覚慶(後の義昭)。実在と虚構の人物が活きいきと動く宮本作品だからこそ、この静寂な場面が心に残った。
そして下巻の裏の主人公は松永弾正。極悪人に描かれている(史実通り?)が、人間味があって憎めない。そしてもう1人、憎めないキャラが義輝の因縁の熊鷹。彼の行動は一貫して(世間的に)悪だが、孤独に生きることしか選択できなかった人生には同情してしまう。最後は熊鷹 -
Posted by ブクログ
最高の歴史短編集だった。どの物語も面白く、かつ宮本先生らしさが随所に見られ、ファンとしてもさらに好きになった。
個人的なお気に入りは、『戦国有情』『不嫁菩薩』『武商諜人』『明治烈婦剣』の4作。
『戦国有情』は赤母衣4人衆の桶狭間後の人生を描く。わずか14pながら追放になってでも友を救おうとする友情・絆の強さをしっかり感じられ、追放されてもなお主家を重んじる忠義に感情を揺さぶられた。
『不嫁菩薩』は武田信玄の娘の於松と織田信長の息子の信忠の結ばれぬ恋を描く。作者の描く淑やかながら芯の強い女性は本当に短時間で読者の心を掴む。「天離り果つる国」の紗雪にも通ずる部分がある。特に武田滅亡後に信忠 -
Posted by ブクログ
前評判通り、非常に良い作品だった。解説にある通り、現実と虚実が見事に交錯した、これぞ歴史小説という作品だった。
前半、愛する2人が実は兄弟かもしれないという展開で終わり、このまま陳腐な展開で終わるのかという不安もよそに、佐々からの脱獄、秀吉との全面衝突に向かう。ここでも弱者が強者に抗うありがちな展開(私は大好きだが)かと思わせておいて、終盤更なる悲劇と、にも関わらず全てが回収されカタルシスの下りるラストに大満足させられた。
上巻でも感じたが、七龍太のキャラクター造成が素晴らしい。文武両道で人柄が良いという完全無比のキャラは、現代小説や日常系の小説においては現実味がなく感情移入できない傾向 -
Posted by ブクログ
飛騨の「幻の城」を秀吉の魔の手から守るため、竹中半兵衛の愛弟子、津田七龍太が姫とともに立ち向かう戦国ロマン。
上下巻合わせて1000ページを超える大作ですが、一気に読み終えてしまいました。
まさに、戦国ロマンと呼ぶにふさわしい、戦国時代の歴史の醍醐味と若者たちの熱い思いや恋が描かれ、この物語の世界にどっぷり浸かることができました。
豊臣と徳川の駆け引きに巻き込まれ、翻弄されてしまう飛騨を救うために立ち向かう姿がなんともかっこよく、また目が離せないほどの緊張感も味わうことができました。
結末も非常にさわやかで、気持ちの良い読後感でした。
歴史の裏にはたくさんの物語がきっとあ -
Posted by ブクログ
飛騨の「幻の城」を織田信長の魔の手から守るため、竹中半兵衛の愛弟子、津田七龍太が姫とともに立ち向かう。
これまでたくさんの戦国時代の作品を読んできましたが、今まで注目したこともない、この飛騨の城を舞台にした、まさに血沸き肉躍る作品に出会えたことに、とても幸運を感じました。
この戦国時代のちっぽけな地を中心に、信長や秀吉、家康といった戦国武将たちが歴史を作っていく様が描かれるという、小説の醍醐味を思う存分感じることができました。
また、主人公の津田七龍太は、架空の人物と思われますが、まさに読者の理想の人物であり、主人公に感情移入しながら歴史を味わうことができました。
さらに、歴 -
Posted by ブクログ
風魔衆の頭領となる風間小太郎の小説。
まず宮本昌孝さんの描く風魔小太郎のキャラクターが涼やかでかなり良い。
上巻450ページ程あり上・中・下巻で1400ページ程ありそうで、まだ上巻の段階だが面白く飽きさせない内容と涼やかな小太郎のキャラクターで楽しめる。
龍姫や蛾妙、甚内、対手方の忍びもそれぞれ良いキャラクターで楽しい。
過去にも感想で書いた記憶があるが、個人的には忍者が最強過ぎる描写が多すぎると冷めてしまう事が多いのだが、こちらも強いのは強いが理解出来る様な描き方で問題はなかった。
長く積読してあったがもっと早く読んでも良かったなぁと思える作品でした。
続きも楽しみだ。
2022/6 -
Posted by ブクログ
戦国時代の最強陣借り者・魔羅賀平助を主人公とする連作短編集。戦国時代の有名な戦いや事件を流浪傭兵視点で描く形にまず斬新さを感じた。そして各話の小説としての完成度が高く、殺し合いを舞台とするにも関わらず平助の人柄にもほんわかしてしまう。
どの話も好きだが浅井久政の野良田の戦いを舞台とした「隠居の虎」が最も好きだ。父・浅井亮政、子・長政という才能ある武士に挟まれ苦悩する二代目を救う平助。猛き武士にありながら自らの幸せはふっくら温かな白米を食すことと豪語する平助に羨ましさと彼が息子ならという羨望を感じる久政。親子の仲を取り持ち、最後に久政に、彼の所望は三石半、毎日一升の白米を食べることと、言わせる