鏑木蓮のレビュー一覧
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京都出身の鏑木蓮、初めて読みます。500頁近くのそこそこ分厚い本ですが、関西が舞台になっているため、関西人ならば馴染みの地名が多く、取っつきやすい。
刑事だった主人公の男性は、高校生の一人息子を真冬の琵琶湖で亡くす。遺書めいたメモを残していたことから自殺と断定され、妻はそのショックからアル中に。妻に寄り添うために主人公は刑事を辞める。そして京都御所を臨む地で開業したのが「思い出探偵社」。人生を振り返るとき、どうしても会いたい人、お礼を言いたい人がいる。依頼人のそんな思いに応えて、彼らの人生の分岐点となった大切な思い出のなかにいる人を探し出すのが仕事。
手がかりはごくわずかです。届け物をして -
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鏑木蓮『京都西陣シェアハウス 憎まれ天使・有村志穂』講談社文庫。
京都西陣にあるワケあり住人が住む町家をリフォームしたシェアハウスを舞台にした連作中編集。主人公の性格がちょっと変わっていて、最初は取っつきにくいのだが、読み進むうちに爽快感に変わっていく、不思議な魅力を感じる作品。就活中の女子大生・有村志穂がワケあり住人の生活はおろか、心の中にも土足でズケズケ上がり込み、お節介を焼くが…
『第一話 泣いた雛人形』。自動車販売会社の営業職だった大迫寛雄は仕事中の交通事故で少女を死亡させてしまう。以後、良心の呵責に責め苛まれながら、シェアハウスで妻と娘の三人でひっそりと暮らしていたが…ミステリー -
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ネタバレ人の心情をうまく描く印象のある点で、数多のミステリ作家の中では頭一つ以上抜きん出ていると個人的に感じている作家の短編集。
けれど、最初の作品にして表題作の「黒い鶴」ではその片鱗が見られない、トリック重視な印象の苦手なタイプの作品。ホントに同じ作者?と疑問に思うほど作風が違っていて驚きます。
ただ、それを除けば概ね期待通りの内容で、個人的には5番目に掲載された「魚の時間」の侘しさと切なさにノックアウト。それ以降は完全に魔法にかかったように読みふけりました。
一番楽しんで読んだのは「白砂」のスピンオフにあたる「京都猫カフェ推理日記」。「白砂」の主人公父娘との再開がこんなに楽しめるとは… 人物 -
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宮沢賢治を探偵に据えた「イーハトーブ探偵」シリーズ第二弾。
前作よりも落ち着いて、より、賢治の世界を感じさせる。
人間の弱さが犯す悲しい罪を、賢治も悲しみながら、しかし厳しく暴いていく。
それぞれの作品が、賢治の作品を彷彿とさせ、あるいは実際に対比として語られたりする。
『哀しき火山弾』
石工会社の社長が、割れた凝灰岩の下敷きになって死んだ。
偶然の事故なのか?
『雪渡りのあした』
宝珠の中にあったはずの仏像が姿を消す。
『山ねこ裁判』
厳重に施錠されているはずの蔵から、高価な品が盗み取られた。
『きもだめしの夜に』
真に人を想うならば。
『赤い焔がどうどう』
真に人を想うならば2。 -
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鏑木蓮の短編集。乱歩賞デビュー10周年記念刊行だとか。
短編ミステリとして上手だった。乱歩賞作家らしい、スタンダードに大胆な伏線の張り方やストイックな犯人追求、絵的に映えるトリック等、見処は満載。
また、キャッチコピー通り人間心理の描写も深みがあり、やはり読み応えに通ずる。
難点を挙げるなら、雰囲気が古風に過ぎるところだと思う。情景描写が、悪くいえば古臭い。しかも時代設定や土地柄に寄せていることもないので、現代が舞台の話では、妙な違和感が残る。出来れば、もう少し柔らかさのある文章も使い併せてほしい。
最もよかったのは、女社長の毒殺話。大味だが、プロットとトリック、双方に効果的なネタが上手く使わ -
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鏑木蓮の作家デビュー10年を記念して、まとめられた初の短編集。デビュー前に書かれた『黒い鶴』を含む10編の短編を収録。『怨憎会苦』『愛別離苦』『求不得苦』『五蘊盛苦』の四つの仏陀の教えを章のタイトルとしている。鏑木蓮の作品には、かなりの頻度で岩手が登場する。鏑木蓮が宮澤賢治の信奉者であることが、その理由だが、佛教大学出身ということから、宮澤賢治の仏教思想との繋がりもあるのではと思われる。『あめっこ』などは、ずばり岩手県を舞台にした短編。
『黒い鶴』。作家デビューの二年前に初めて雑誌に掲載された短編。ミステリーなのだが、途中で結末が見えてしまい、少し物足りなさを感じた。
『ライカの証言』。医 -
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ほおっ。
読み終えて2つの意味でため息をついた。
ひとつひとつが短編とは思えない存在感。
ジャンルでの分類など寄せつけない
枠を超えた重厚な作品群。
その作品の濃厚さ 質の高さに
文庫一冊を読み終えただけとは思えない
疲労感がたまっていたことがひとつ。
鏑木蓮さんの作品には 実際の世界を生きる
人間の煩悩や感情がダイレクトに再生され
読む側の人生のどこかに 巧まずして重なる。
登場人物の中の誰かの苦悩や感情が
わたしの心奥の何かにシンクロしたらしい。
その重みに反応してしまったことがもうひとつ。
生と死が織り交ぜられ
それが一元的な観念であるかのように迫る。
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推理小説はふたつの効用がある。一つは、頭の体操のクイズ雑誌が根強く売れるように、娯楽として大きな需要があるので利益が見込めるということだ。一つは、犯人を特定するためにはその周りの風俗・社会状況を詳しく描かなければならないから、対象の周りに興味のある読者ならば格好の解説書になるということだ。
世の中に宮澤賢治ファンは多い。かくいう私も、もう既に45年来のファンである。岡山の地から既に二回も賢治を慕って花巻を旅したし、一回は偶然、賢治の旧居前で弟の宮澤清六さんと言葉を交わしたことさえある。
だからこそ、こういう小説には惹かれてしまうと同時に、悪態をつかざるを得ない。
時代はまだ賢治が農学校 -
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(「BOOK」データベースより)
舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか?風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。第52回江戸川乱歩賞受賞作。
乱歩賞はあまり信用しないというか、はっきりいって今後活躍が期待される新人賞ぐらいのものなので、あまり期待しすぎてはいけないと思いながら読むようにしています。
が、これは久々に乱歩賞物読んでよかったと思わせる力量のある本でした。盛り込みは多いですが、シベリア抑留という悲劇への言 -
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ネタバレ鏑木蓮さんの作品を読み終えて
ほおっと息をついたのはこれで
何度めだろう。
ミステリーというジャンルの中で
多くの人たちのたくさんの思いを
ここまで丹念に解き明かしてゆく。
その筆力にいつものめり込んでしまう。
作者の代わりにその水先案内を務めた
中原の信念に胸を衝かれる。
人の罪は消えない。誰もが悪であり
なんらかの罪を背負っている。
せめてその罪を積み重ねないように。
そんな中原の正義に その行動の誠実さに
この作品を読むことの価値があると思う。
食と栄養が人の基本にあるなどということ
にまで思い至らせてくれたことに…敬服。 -
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ネタバレ鏑木蓮氏の 人を見守る視線のあたたかさは
もうこの頃から育まれていたんですね。
処女作からは 格段に進化された作品だと思います。
対人医療と動物医療 二つの専門領域にまたがる
広範な知識と論理立ては 気が遠くなるほどの綿密な取材
なくしてはあり得ないでしょう。敬服しました。
鏑木作品を読むといつも思うのですが 本当にすべての
登場人物に向けられる視線があたたかい。やさしい。
発端の殺人は
複雑で醜い人間模様の広がりの入り口にも過ぎず
本当の事件は
それぞれの立場とそれぞれの自己尊厳 他者への敬愛
人間ならば誰しも理解できてしまう真摯な感情
そんな人の思いが生んでしまう悲劇だった。
背 -
Posted by ブクログ
鏑木蓮さんは不思議な方だと思う。
ここまで人の心の描写に時間と
手間暇と言葉を尽くす作家を
私は他に知らない。
ひとりひとりがそれぞれに与えられた
立場や境遇の中で一生懸命に他人を励ます。
背負った…あるいは背負わされた過去に
時に心を揺さぶられながら、それでも
他人の心に寄り添い、自らもまた成長していく。
正解はない。正解は自分たちで作るものだ。
そんな実相の言葉が
過去や現在にとらわれるのではなく
それもまた自分自身なのだと受け止めて
よりよい未来へと踏み出すように励ます
とびきりの応援歌のように聞こえる。
自分を励ます一番の方法は
誰かを励まそうと努力することである。
ここ近