鏑木蓮のレビュー一覧

  • 黒い鶴

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    ほおっ。

    読み終えて2つの意味でため息をついた。


    ひとつひとつが短編とは思えない存在感。
    ジャンルでの分類など寄せつけない
    枠を超えた重厚な作品群。
    その作品の濃厚さ 質の高さに
    文庫一冊を読み終えただけとは思えない
    疲労感がたまっていたことがひとつ。

    鏑木蓮さんの作品には 実際の世界を生きる
    人間の煩悩や感情がダイレクトに再生され
    読む側の人生のどこかに 巧まずして重なる。
    登場人物の中の誰かの苦悩や感情が
    わたしの心奥の何かにシンクロしたらしい。
    その重みに反応してしまったことがもうひとつ。

    生と死が織り交ぜられ
    それが一元的な観念であるかのように迫る。

    途中で読むのをやめられないくらいの
    息詰まる感じがあって 読み通した。

    容赦なく目に飛び込んでくる現実の恐怖に
    疲労困憊したが それほどの力のある作品群。

    しかし生の喜びが心に残るものも。
    「京都ねこカフェ推理日記」
    「水の泡」
    この二編に心が少しほぐれるのを感じた。

    力のある作品と向き合う作業は
    読書の愉悦だが リアルに疲れるものである。

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    2016年11月13日
  • イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり~賢治の推理手帳I~

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    推理小説はふたつの効用がある。一つは、頭の体操のクイズ雑誌が根強く売れるように、娯楽として大きな需要があるので利益が見込めるということだ。一つは、犯人を特定するためにはその周りの風俗・社会状況を詳しく描かなければならないから、対象の周りに興味のある読者ならば格好の解説書になるということだ。

    世の中に宮澤賢治ファンは多い。かくいう私も、もう既に45年来のファンである。岡山の地から既に二回も賢治を慕って花巻を旅したし、一回は偶然、賢治の旧居前で弟の宮澤清六さんと言葉を交わしたことさえある。

    だからこそ、こういう小説には惹かれてしまうと同時に、悪態をつかざるを得ない。

    時代はまだ賢治が農学校の教師をしていた頃であり、素封家の家の恩恵を受けながらも嫌っていた時である。友人の藤原嘉藤治をワトソンにして、ホームズのように推理をする。私も泊まったことのある大沢温泉の混浴川風呂から見えた河童の話を見事に推理してゆく。いろんな細かい描写が、あゝ大正11年の花巻はこうだったに違いないと思わせてくれて、嬉しくなる。賢治と父親との微妙な関係にも異論はない。しかし、やはりどうしても賢治が殺人事件に首を突っ込むような、こんな大変なことに二度も三度も入ってゆくのが違和感あってたまらない。いくら、そこから派生した詩や短歌が、それとなく提出されようとも、賢治の作品にこれらの事件が大きく影響されなかったはずはないからだ。事件はフィクションだよと、言われようとも、賢治ファンとしては、作品を穢されたようで、やはり我慢出来ないのである。

    そういう意味では、殺人事件にもならない第一章と四章、特に一章は、良くで来ていたと思う。ただ、正直続編は読みたくはない。

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    2016年09月14日
  • 東京ダモイ

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    (「BOOK」データベースより)
    舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか?風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。第52回江戸川乱歩賞受賞作。

    乱歩賞はあまり信用しないというか、はっきりいって今後活躍が期待される新人賞ぐらいのものなので、あまり期待しすぎてはいけないと思いながら読むようにしています。
    が、これは久々に乱歩賞物読んでよかったと思わせる力量のある本でした。盛り込みは多いですが、シベリア抑留という悲劇への言及と、人間の品格みたいなものが良く書かれていて胸を打ちました。
    ただ乱歩賞という足かせによって、起承転結で結が間延びしてしまったような気がします。僕的に謎解きってがっちり書かなくても良いと思っていて、この話ならもっと人間ドラマとして押して行ったらもっといい作品になったんじゃないかと思います。
    あと、刑事と出版の人の両方が等分に役割が割り振られていて、どちらが主体がぼやけているような気がしました。これならばもっと出版の側に重きを置いた方が面白かったかなあ。

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    2016年11月04日
  • 見えない鎖

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    ネタバレ

    鏑木蓮さんの作品を読み終えて
    ほおっと息をついたのはこれで
    何度めだろう。

    ミステリーというジャンルの中で
    多くの人たちのたくさんの思いを
    ここまで丹念に解き明かしてゆく。

    その筆力にいつものめり込んでしまう。

    作者の代わりにその水先案内を務めた
    中原の信念に胸を衝かれる。

    人の罪は消えない。誰もが悪であり
    なんらかの罪を背負っている。
    せめてその罪を積み重ねないように。

    そんな中原の正義に その行動の誠実さに
    この作品を読むことの価値があると思う。

    食と栄養が人の基本にあるなどということ
    にまで思い至らせてくれたことに…敬服。

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    2016年05月15日
  • 転生

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    美津子さんを殺害した人は序盤の方で気づいた。しかしその理由は終盤までわからなかった。いざその理由をわかると切ない気持ちに襲われる。そんな一冊。

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    2016年03月21日
  • 時限

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    [生きること]
    推理小説の中にうまく散りばめた感じ。
    龍馬さん、お龍さん、乙女さん。
    なるほど〜と、ちょっと歴史の勉強にもなった。

    生きる意味を問う前に、
    生きてることがすでに意味を持っている

    それをテーマに書かれた作品でした。

    読んでよかった作品でした。

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    2016年02月03日
  • 屈折光

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    ネタバレ

    鏑木蓮氏の 人を見守る視線のあたたかさは
    もうこの頃から育まれていたんですね。
    処女作からは 格段に進化された作品だと思います。

    対人医療と動物医療 二つの専門領域にまたがる
    広範な知識と論理立ては 気が遠くなるほどの綿密な取材
    なくしてはあり得ないでしょう。敬服しました。

    鏑木作品を読むといつも思うのですが 本当にすべての
    登場人物に向けられる視線があたたかい。やさしい。

    発端の殺人は 
    複雑で醜い人間模様の広がりの入り口にも過ぎず
    本当の事件は
    それぞれの立場とそれぞれの自己尊厳 他者への敬愛
    人間ならば誰しも理解できてしまう真摯な感情
    そんな人の思いが生んでしまう悲劇だった。

    背負うものがあってこその人生。
    この言葉を強くかみしめたい。

    追記 この作品から既に宮澤賢治…そして
       イーハトーヴが出てくるとは!

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    2015年11月01日
  • ねじれた過去 京都思い出探偵ファイル

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    鏑木蓮さんは不思議な方だと思う。

    ここまで人の心の描写に時間と
    手間暇と言葉を尽くす作家を
    私は他に知らない。

    ひとりひとりがそれぞれに与えられた
    立場や境遇の中で一生懸命に他人を励ます。
    背負った…あるいは背負わされた過去に
    時に心を揺さぶられながら、それでも
    他人の心に寄り添い、自らもまた成長していく。

    正解はない。正解は自分たちで作るものだ。

    そんな実相の言葉が
    過去や現在にとらわれるのではなく
    それもまた自分自身なのだと受け止めて
    よりよい未来へと踏み出すように励ます
    とびきりの応援歌のように聞こえる。

    自分を励ます一番の方法は
    誰かを励まそうと努力することである。

    ここ近年の暮らしの中で この言葉が持つ意味は
    全身でわかるような気持ちになっている。

    思い出探偵はまだ続くようだ。
    もっともっと彼らを見ていたい。

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    2015年10月25日
  • エンドロール

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    孤独死の男性のそれまでの人生をたどる。テーマは重いけれど、文体の軽さからかさくさくと読むことができた。遺品の中から、それまでの人生に関わってきた人の名前が浮かぶ。しかし、その中で一様に語らないある人のこと。ミステリーの要素もありつつ、人生そのものはどんなものかを考えさせられた。
    最後の投稿文がとてもいい。

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    2015年09月29日
  • イーハトーブ探偵 山ねこ裁判~賢治の推理手帳II~

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    ケンジと賢治は別の人?そんなに賢治を知っているわけでもないのに賢治らしさを感じる。しゃべり言葉は花巻弁、誰かに音読してもらいたいなと思う。冷静な観察と推測が一体になって答を導き出していました。ますむらひろしさんの解説も面白かったです♪♪

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    2015年09月21日
  • イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり~賢治の推理手帳I~

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    名探偵:宮澤賢治
    ワトソン:藤原嘉藤冶
    ケンジ、カトジと呼び合う。

    『ながれたりげにながれたり』
    『マコトノ草ノ種マケリ』
    『かれ草の雪とけたれば』
    『馬が一疋』

    短編が4編。
    2編めは、ええっ、宮澤賢治なのに血腥い!…と思ったけれど…

    岩手の風土や、時代の空気、農民の生活事情が丹念に描かれていて、「賢治の時代」に入り込むことが出来る。
    賢治は、村人の困り事の相談に乗ったり、争議の調停をしたりしていたことが、作品からも読み取れるから、具体的にはこんなこともあったかもしれないな、と想像させる。
    賢治好きには嬉しい1冊。
    方言による会話も、読み進むうちにすっかり慣れた。

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    2017年09月15日
  • 救命拒否

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    爆破事件を追うベテランと若手刑事の物語。「医療トリアージ」を題材にしているのがポイント。よい読後感。

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    2015年01月12日
  • イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり~賢治の推理手帳I~

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    真実なるものの社会性を自覚している探偵を初めて見た。少し新鮮。
    各話の最後についている作者の二行ほどの注記は、おしなべて現地を訪れてみるようにと誘っている。
    なるほど、文体に透けて見える土地や人への視線が、こうもあたたかく同時に切実なわけだ。

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    2014年12月06日
  • エンドロール

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    孤独死によって明らかになる特攻隊員達の戦後を描いたミステリー作品。
    地方の過疎化を鋭い観点で著述されており、都市市民が忘れてはいけない知識も重要な要素でありノンストップで読ませる。
    そして、私が観たことがない名作映画を是非とも観なくては、マズいと思わせるぐらいに絶妙なエッセンスとしている。コアな映画ファンにも読んでいただき、作中の映画の評価を聞いてみたいです。
    「永遠の0」に感動した人にはオススメと行きつけの本屋さんの宣伝メッセージが購読のキッカケでしたが、「永遠の0」は越えないかな。

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    2014年11月21日
  • エンドロール

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    遺品の8ミリフィルムを見て惹かれたことから門川くんの道行きが始まる。孤独に亡くなった老人にもそこに至るまでの道がある。エンドロールに流れる関係者の方々に恥ずかしくない生き方をしているだろうか……

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    2014年11月03日
  • エンドロール

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    本屋で何も考えずに手に取った本。

    人生のエンドロールを迎えた際に、人は何を思い何を残すのか!

    老人の孤独死に遭遇した映画監督を目指す青年・門川が、老人の遺品である8ミリフィルムを見て、老人の人生に興味を持ち調べていく。

    映像の場所に行き、関係のある人から話を聞くにつれて…。

    とても地味な話だが、人と人との繋がり…老人の人生…そして最後のエンドロールに涙しました。。。

    登場人物の心の温かい部分を感じ、心地よい気分になりました!

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    2014年09月19日
  • エンドロール

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    老人の孤独死をテーマに描かれた本。

    映画監督を夢見るビル管理のアルバイト青年がある日、孤独死した老人に出会う。そのまま終わるはずだったが、その老人がかつて映写師であり、また自分で撮った作品を遺品として残していた。それを見た青年の中に「この老人はどんな人だったのか撮りたい」という熱い情熱が燃え始める。

    本書の骨子は、現在孤独死問題に挙げられている人々は戦争を経験した最後の世代であること。
    その人生の極限状態を生き抜き、その後も生きてきた人々で、その間には数多くの縁、つながりがあってきたはず。
    それを現在のつながりだけを見て孤独死はかわいそうだ単純に判断するのはおかしいと思う。
    むしろ上から目線で、失礼にあたるかもしれない。

    だから孤独死したからと言って同情するのではなく、その人の歩んできた人生、培ってきた縁があったことを意識してほしい。

    という提言には思わせることがある。
    どこにいても人の縁は生き続けるというのは元気がもらえる。

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    2014年09月14日
  • 東京ダモイ

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    この作者の本は初めて読んだけどなかなかの佳作。シベリア抑留については特に目新しい話ではなかったけど、上手いことミステリーに絡めたなと。

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    2014年06月22日
  • エンドロール

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    5/22~6/2 なんか思わぬ読後感を味わえた。戦後モノ?ミステリ?
    人情系? 色々要素がいいかんじにブレンドされて素敵な作品に。 こういう作品に出会えるから手当たり次第読みも悪くないと思う。

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    2014年06月04日
  • エンドロール

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    ネタバレ

    アパート管理で見つかった孤独死した老人。重くて暗い始まりから、終始軽く扱えないテーマが出てきてストーリーを貫いている。でも、最後に希望のようなものが見えて、読後感は意外にスッキリするものでした。
    主人公と同じ年齢ということもあって、その行動や考え方は他人事とは思えず、自分に置き換えて考えると、もっと人生・家族について振り返らなきゃ・・・とも思った。
    そういう意味でも最後の締め方は救われました。

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    2014年05月15日