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宮澤賢治は、親友の女学校教師・藤原嘉藤冶から不思議な話を聞く。教え子の父親が、電信柱が歩くのを見たというのだ。まるで、賢治が書いた童話「月夜のでんしんばしら」のように。さらに教え子自身も川を流れる河童を目撃していた。現場を検分した賢治は、驚くべき推理を繰り広げるのだった。心優しき詩人が、数々の怪事件を鮮やかに解き明かす、新シリーズ始動!
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Posted by ブクログ
宮沢賢治を探偵に見立て、宮沢賢治とその親友・藤原嘉藤治の活躍を描いた連作短編集である。時は大正、舞台はイーハトーブ…岩手県である。これまで鏑木蓮が描いて来た作品にはかなり高い確率で岩手県が登場するのだが、鏑木蓮の出身地は京都であり、非常に不思議に思っていた。ある時、鏑木蓮が宮沢賢治を信奉している事を...続きを読む知り、謎が氷解した。従って、この作品は鏑木蓮の本領が如何無く発揮されるものなのだろう。 まるで宮沢賢治が目の前に居るかの如く、ワクワクするような短編ばかりである。我が郷土の誇る宮沢賢治が探偵として大活躍を繰り広げるのだから、たまらない。よほど宮沢賢治と岩手県を研究したのか、宮沢賢治の詩とストーリーが上手く融合し、面白い作品に仕上がっている。 この短編集には、2006年に発表された短編から、書き下ろしの短編まで、四編が収録されている。 『ながれたりげになかれたり』は、花巻の大沢温泉を舞台に描かれたミステリーであり、宮沢賢治の香りが味わえる。宮沢賢治の親友の藤原嘉藤治に見覚えがあると思ったら、現在の紫波のラ・フランス温泉の近くに藤原嘉藤治の暮らした家があったのを思い出した。 『マコトノ草ノ種マケリ』は、現在の北上市を舞台に密室殺人事件が描かれる。宮沢賢治が、この事件をどう解決するのか…この短編集の最大の見ものだろう。描いている南部藩と伊達藩の境塚は、現在のみちのく民族村に現存している。 『かれ草の雪とけたれば』は、現在の奥州市江刺区が舞台であり、事件の舞台となった岩谷堂町役場は、明治記念館として現存している。 『馬が一疋』は、唯一の書き下ろし。馬が、一瞬にして白骨死体になった事件に宮沢賢治が挑む。 シリーズ第一作ということなので、次作以降も非常に楽しみである。
推理小説はふたつの効用がある。一つは、頭の体操のクイズ雑誌が根強く売れるように、娯楽として大きな需要があるので利益が見込めるということだ。一つは、犯人を特定するためにはその周りの風俗・社会状況を詳しく描かなければならないから、対象の周りに興味のある読者ならば格好の解説書になるということだ。 世の中...続きを読むに宮澤賢治ファンは多い。かくいう私も、もう既に45年来のファンである。岡山の地から既に二回も賢治を慕って花巻を旅したし、一回は偶然、賢治の旧居前で弟の宮澤清六さんと言葉を交わしたことさえある。 だからこそ、こういう小説には惹かれてしまうと同時に、悪態をつかざるを得ない。 時代はまだ賢治が農学校の教師をしていた頃であり、素封家の家の恩恵を受けながらも嫌っていた時である。友人の藤原嘉藤治をワトソンにして、ホームズのように推理をする。私も泊まったことのある大沢温泉の混浴川風呂から見えた河童の話を見事に推理してゆく。いろんな細かい描写が、あゝ大正11年の花巻はこうだったに違いないと思わせてくれて、嬉しくなる。賢治と父親との微妙な関係にも異論はない。しかし、やはりどうしても賢治が殺人事件に首を突っ込むような、こんな大変なことに二度も三度も入ってゆくのが違和感あってたまらない。いくら、そこから派生した詩や短歌が、それとなく提出されようとも、賢治の作品にこれらの事件が大きく影響されなかったはずはないからだ。事件はフィクションだよと、言われようとも、賢治ファンとしては、作品を穢されたようで、やはり我慢出来ないのである。 そういう意味では、殺人事件にもならない第一章と四章、特に一章は、良くで来ていたと思う。ただ、正直続編は読みたくはない。
名探偵:宮澤賢治 ワトソン:藤原嘉藤冶 ケンジ、カトジと呼び合う。 『ながれたりげにながれたり』 『マコトノ草ノ種マケリ』 『かれ草の雪とけたれば』 『馬が一疋』 短編が4編。 2編めは、ええっ、宮澤賢治なのに血腥い!…と思ったけれど… 岩手の風土や、時代の空気、農民の生活事情が丹念に描かれて...続きを読むいて、「賢治の時代」に入り込むことが出来る。 賢治は、村人の困り事の相談に乗ったり、争議の調停をしたりしていたことが、作品からも読み取れるから、具体的にはこんなこともあったかもしれないな、と想像させる。 賢治好きには嬉しい1冊。 方言による会話も、読み進むうちにすっかり慣れた。
真実なるものの社会性を自覚している探偵を初めて見た。少し新鮮。 各話の最後についている作者の二行ほどの注記は、おしなべて現地を訪れてみるようにと誘っている。 なるほど、文体に透けて見える土地や人への視線が、こうもあたたかく同時に切実なわけだ。
宮沢賢治が今も多くの人に愛されているのは、賢治が、多くの人を、動物を、世界を愛す人だったからなのかも。
宮沢賢治を探偵役として登場させ、実際の作品と絡めながら謎解きをするという試みが斬新です。 彼の作品について詳しかったらもっと楽しめたはずなのに、知識不足が悔やまれます。
宮沢賢治のことについては、大して知らない。雨ニモマケズ…からすると、すごく我慢強い人なのかなと思う。そんな宮沢賢治を主人公とした探偵小説。本当にこの本のような性格だったかは置いておいて、素朴でとても優しい。ただ謎を解決して終わるのではなく、犯人たちの生活、その後のことまで考えて推理しているので、やは...続きを読むり優しい。「聖人君子で根暗」が良い方向に描かれている。
登場する宮沢賢治の人物像は、イメージ通りだった。犯行の手口も無茶な事はなく、納得感があった。でも、没入感があまりなかった。 なんでだろうか?主要キャストが2人だけなので話の広がりがなかったのかな? お父さんとの確執、妹とのエピソードなどもっと書ければ盛り上がったんでは。短編だからスペース的に難しいと...続きを読むは思うが。
宮沢賢治探偵登場の巻。 最初のお話が、日常の謎系だったので、そういう謎ばかり だと思ったら、首なし死体まで登場でのけぞった。 ワトソン役のカトジさんとの関係がほのぼのしていて 微笑ましい。 賢治の作品からインスパイアされてるようなので、 詳しい方が楽しめるのかなと思うけど、知らなくても のんきに読む...続きを読むには支障なし。
宮澤賢治が探偵役、友人の藤原嘉藤治がワトソン役になって難事件を解決する連作短編集。どの話にも宮沢賢治の詩、岩手の名所や文化財、賢治ファンがニヤリさせられる小ネタが用いられており、なかなか面白いパスティーシュに仕上がっていると思います。 豪快な物理トリックは実際に成立するかは微妙なところですが、この手...続きを読むのトリックを使った作品は最近ではあまり見られないので価値があります。【マコトノ草ノ種マケリ】がお気に入りです。
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