鏑木蓮のレビュー一覧

  • 見えない鎖
    9歳で母が家を出て行ってから、父子家庭ながら仲良く暮らしてきた有子。
    そんな最愛の父がある日突然殺され、犯人は自殺。
    父の上司の元刑事の中原と共に、事件を追う。

    家族の突然の死を経験した者としては、お腹もすかず葬儀の記憶も曖昧で、家の中の何を見ても涙が出てくる気持ちがよくわかる。
    何度も出てくる、...続きを読む
  • 沈黙の詩 京都思い出探偵ファイル
    「思い出探偵」シリーズ、第三弾。
    今回は、じっくり書き込む長編。

    物語は、重く暗い、冬の海の轟きを思わせる。
    長年のパートナーとともに大きな居酒屋チェーンを築き上げた、高齢の女性。
    籍を入れようとしなかった彼女を、なさぬ仲の子供たちも慕っている。
    認知の症状が進んでしまったことを残念に思い、過去を...続きを読む
  • P・O・S──キャメルマート京洛病院店の四季
    恐らくは他の方とは評価の基準が違うため 参考にはならないとは思いますが 私にとって この一冊が今年最高の一冊となりました。

    表面だけを見ていてもわからない人間の善意。
    日々を暮らす人の数だけ 異なる善意の形があることを この作品から知りました。

    「数値は嘘をつかない。でもそれは...続きを読む
  • 思い出探偵
    元京都府警の刑事だった実相浩二郎は、京都御苑の近くに「思い出探偵社」を構える。
    依頼人の話を聞き、わずかな手がかりから思い出を探す仕事だ。

    62年前、梅田の闇市で助けてくれた少年にを想い続ける老女。

    43年前、集団就職で出てきて働いた会社がつらくて飛び出したときにコーヒーを飲ませ、諭してくれたお...続きを読む
  • エンドロール
    映画監督になる夢が挫折して、アパート管理人のバイトでただ日々を過ごす青年・門川。孤独死の老人の遺品の中に8ミリフィルムを発見し、その映像に惹かれた彼は老人の人生を辿る。
    現代社会の孤独死問題と、日本国家が犯した最大の過ちである戦争。一人の男性の人生を、全く縁のない青年が執念で追うという設定が見事だ。...続きを読む
  • 見えない鎖
    警備員の父と、栄養士を目指す娘。
    二人の慎ましく穏やかな生活が、
    父が何者かに刺殺されたことで一変する。
    遺された娘は、
    周りの人たちに支えられ、
    自分の足で真相を探ろうとする。
    見えない鎖の繋がりが見えてきた時、
    切なさや やるせなさを飲み込む、
    静かな感動が、あった。
    ミステリーの謎解きにとどま...続きを読む
  • 思い出探偵
    ほんのわずかな手がかりを紐解きながら思い出の人にたどり着く、今までありそうでなかったミステリ。たどり着くまでは、探偵目線で、最後は依頼者に感情移入できて、1話で2度おいしい。依頼内容に加えて、メンバのサイドストーリーもうまい具合に絡まっていて秀逸。もう一度読んで見たい。
  • 転生
    被害者は女性染織作家。以前の事件から20年、その間の生活から生まれてきたそれぞれの時間が今回の事件を呼び込んでしまう。なんて哀しいんだろう。それぞれが懸命に生きていただけなのに。違う道への分岐を選べなかった事を無念に感じる。この事件を乗り越えて少しでも心静かに過ごせる時が来ますように。
  • エンドロール
    私のレビューはいつも語数が多く冗漫だ。
    しかし。今回は特別。

    これは凄い小説だ。

    人の死は
    それだけでとらえられてはいけないのだ。
    生きていることが そのまま死にゆくこと。

    主人公が、自分でも言葉にできない
    自分を行動に駆り立てる衝動の源泉を
    少しずつ少しずつ見つけてゆく。

    人の成長や成熟の...続きを読む
  • 時限
    ミステリーは苦手な人です。
    推理は大好きなのですが、私にとっての読書は
    あくまでも心のオアシスなので、殺伐とした
    シーンが言葉で表現されているのを読むのは
    辛いのです。
    ミステリーは映像として楽しむ方が
    気持ちにあっているのです。

    この作品はしかし。別格でした。すごい。

    かつて殺人事件の公訴時効...続きを読む
  • 思い出探偵
    どれほどの善意を
    他人に振り向けても
    だからといって幸せな日々を
    過ごすとは限らない。

    穏やかな日々を
    過ごしているように見えていても
    だからといって凄烈な過去を
    持たぬとは限らない。

    人のあたたかな思いが
    それだけで人を幸せにするとも限らず
    善意を振り向けたからといって
    必ずそれが報われるとは...続きを読む
  • エンドロール
    面白くて、一気に読んでしまいました
    一人で生まれ、
     多くの方と縁を作り、
      そして一人で旅立つ。
    自分の人生を人のせいにして
    毎日を過ごしていた若い門川が
    帯屋の死に関わったことで
    知らない間に変わっていく
    それは、自分だけが変わるのではなく
    関わっている周りの人たちとの関係も変わる
    そんな様子...続きを読む
  • エンドロール
    久しぶりに「当たり」でした。
    人生の終末を映画のエンドロールに見立て、人生の価値を問い、孤独死と呼ばれる状況がその人の人生を反映している物では無いことを訴える。
    初めての著者の作品を読むというのはちょっとした冒険だけれど、これだけスッキリと自分の胸に入り込む作品を探り当てた時は祝杯をあげたい気分です...続きを読む
  • 東京ダモイ
    シベリア抑留、俳句、自費出版、老人自活施設と
    団塊の世代以上の読書好き年配者を
    想定読者に据えたかのような骨太の社会派ミステリー。
    たぶんそんな意図はないんだろうけど。

    戦後の動乱期、ふとしたことから大罪を犯したが
    罪が露見せずに数十年が経ち、今では地位もある
    名誉もある自分がやるべき仕事もある身...続きを読む
  • ねじれた過去 京都思い出探偵ファイル
    立て続けに1作目から読んだが、さらに面白かった。真君にムチャ苛付いたが、最後にはなるようになって、ちょっとあっさりしすぎた?

    また、私の住んでる街が登場して、ほんま珍しい~

    私には調べて欲しい思い出はないなあ・・・
  • 救命拒否
    久しぶりに、買って良かったと思えた小説です。

    心に響いた言葉が沢山あった。「生きる覚悟」なんて考えた事無い。「絶対に勝てない相手を師と仰げば、挫折感を味わわないで済む」には身に覚えがある。

    おとぼけ警部補・倉さんと生真面目刑事岸ちゃんコンビが凄く自然体。まるですぐそこの道をあーでもない、こーでも...続きを読む
  • 時限
    直前に読んだ「白砂」に近い内容ですが、主役の若手女性刑事と上司の警部のやり取りがシリアスなので、比較的重い雰囲気が全般的に流れているように思います。

    事件の構造は本作のほうが幾分か複雑で、ミステリとしてはこちらのほうが面白いです。特にタイトルの「時限」要素が明確に関連してくる中盤以降はとてもスリリ...続きを読む
  • 東京ダモイ
    ここ最近のベスト1☆

    ストーリーの展開だけじゃなく
    作中の俳句が素敵でした。
    最後の一文には何とも言えない気持ちにさせられる。
  • 白砂
    最後の結末は途中で想像ついたけど、まさかと思ってたら本当に思った通りで驚きました。もうただただ小夜が不憫でならなくて、でも登場人物の背景にある心情に寄り添う感じが好きでした、もう一度読み返してみたらもっと寄り添えて読めて面白いかも!最後の方の小夜とのお別れの場面は感動。殺される前までの小夜視点の心情...続きを読む
  • 見えない階 心療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ2
    主人公の人柄が良いのでシリーズ2作目
    ダメダメ設定と思いきや、心療内科医として
    滅茶苦茶優秀だと思うし、親友の無理なプロ
    デュースでTV出演したら誠実さが伝わり、
    京町屋に設けた分院は大繁盛・・・推理も患
    者ファーストを貫きつつも偶々知り合った記
    者や警察官と駆け引きしつつ成果を勝ち取る
    有能ぶり!...続きを読む