鏑木蓮のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
鏑木蓮の連作ミステリ作品『思い出探偵』を読みました。
ここのところ国内の作家のミステリ作品が続いています。
-----story-------------
もう一度会いたい人が、あなたにはいますか?
小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴…… そんな小さな手がかりから、依頼主の思い出に寄り添うようにして、捜しものを見つけ出していく“思い出探偵”。
京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を開いた実相浩二郎は、息子を亡くし、妻がアルコールに溺れていくのを見かねて刑事を辞めたという過去を持つ。
思い出探偵社には、その誠実で温かい人柄にひかれるようにして、元看護師の一ノ瀬由美、役者志望のアルバイト本郷雄高、10年前に両親を惨殺されて心に傷を負った27歳の橘佳奈子が集まった。
「思い出」は心を豊かにすれば、苦しめもする――乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなさと懐かしさが溢れるミステリー。
-----------------------
2009年(平成21年)に刊行された京都思い出探偵ファイルシリーズの第1作です。
■第一章 温かな文字を書く男
■第二章 鶴を折る女
■第三章 嘘をつく男
■第四章 少女椿のゆめ
■解説 小梛治宣
人生は「思い出」の積み重ねでしかありえない… 良きにつけ悪しきにつけ、そのひとが生きてきた証なのだ――。
小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴… そんな小さな手がかりから、思い出探偵社の仕事は始まる、、、
「一言お礼が言いたい」 思い出探偵社に持ち込まれた事案を調査する実相浩二郎たちの行く手には…… 。
面白かったです、、、
粗末なペンダントをわざわざ届けてくれた男性を探す『第一章 温かな文字を書く男』、
ジャズ喫茶でのわずかな時間の出会いが人生を変えた『第二章 折り鶴の女』、
車椅子の青年が思い出探偵社を混乱に陥れる『第三章 嘘をつく男』、
戦後の混乱期に命を救ってくれた男性を探す『第四章 少女椿のゆめ』、
の4篇が収録されています… 軽めの物語かと思っていたのですが、意外と深みがあったし、「思い出探偵社」で働く人たちの人生も巧く描いてあったと思います。
『第三章 嘘をつく男』は、ちょっと異質な印象ですが、サスペンス的な展開で愉しめましたね、、、
『第四章 少女椿のゆめ』の結末はちょっと物足りない印象かな… 好みの問題でしょうが、私は再会するところまで描き切って欲しかったな。
京都思い出探偵ファイルシリーズの続篇、ぜひぜひ読みたいですね。 -
Posted by ブクログ
ブク友のNORAxxさんのレビューをみて、興味を持ち読んでみた。
非常に重厚な物語。ミステリーなんだけれども、描かれる人間ドラマの印象が強い。
私の無き祖父がシベリア抑留者だったので、より地続きで内容が心に迫ってくる。親も、私も直接抑留の話を祖父から聞くことができなかった。しかし、唯一、テレビドラマでシベリア抑留の話を再現していたのを一緒に見た時に、「こんなに綺麗な環境じゃなかった」とぼそっと、一言つぶやいたことを思い出す。
本書を読んで、改めてシベリア抑留のことを学んでみたいと思った。
ミステリーという形で、名もなき人物の視点から戦争の惨禍と人間の尊厳を描き切った力作。文学作品とも呼べるかと思う。 -
Posted by ブクログ
ガツンとくる物が読みたくなり手に取った一冊。
過去にソ連の捕虜となりシベリアに抑留された経験を持つ高津は、それを風化させまいと一冊の句集を自費出版しようとする。
試みが実現するその前に、あるロシア人の女性が近くの埠頭で遺体となって発見された。その後高津は行方不明となってしまう。
残された出版担当者槙野は守銭奴の鬼上司に尻を叩かれ大口顧客である高津の行方を追う。可哀想な彼にエールを送りたくなるのは自然の理かろうて...ズズッ…( ՞灬ة旦)
この単純な殺人事件は後に謎が深く複雑に絡み、多くの人間と時空を繋ぐ因縁の物語へと発展して行く。
句集で語られる彼の人生は壮絶だ。
彼ら兵士達はソ連兵の管理課に置かれたとしても「ダモイ(帰郷)」出来る事を信じて疑わなかった。だが、彼等の乗る貨車はシベリアに向かっていた。国は彼等をソ連の労働資源の提供ではなく、奴隷にでも使ってくれと見放した様なものだ。ダモイなど、有り得なかったのだ。過酷な労働と残酷な命のやり取りに額の皺は刻まれるばかりだった。
年月を経て、ある日の中尉殺害事件をきっかけにダモイが叶う事となる。娯楽の俳句を通じて出会った4人の仲間達との友情を心に留め、高津は日本に帰還した。
ーーーーーーーーーーーーーー
60年前を綴る名も無き一兵士の句集
その中で語られた未解決の中尉殺害事件。
そして現代で起きたロシア人女性殺人事件と繋がりを見せるシベリア抑留兵士達の影。
この因果が全て繋がった時、高津の目的と志しが明らかとなり、そしてその瞬間私の心は震え上がり腕には鳥肌が浮かんでいた。
武士だ、もののふだ、SAMURAIだ。
今なら迷わず土産屋に置いてある「侍」の文字がプリントされたTシャツを購入するだろう。
「剣を抜かずに勝つ」
無駄な血を流さず、相手の刀を汚さないことが尊ばれる。彼は最後まで刀を抜かなかったのだ。
420ページにもなる作品に加えて、句集の中で数々の俳句が出てくる。心得の粒子もない私は調べ調べの読書となった。
にも関わらず、付け焼刃の知識と付属する解説により意味を知れば知るほど高津の句集の深みが身に染み渡る様で驚く程夢中になった。あっという間に読み終えてしまった。
しかもただの句集ではない、ミステリなのだ。犯人の情報が隠されているのだ。唆るであろう(含)
私のツルツルの脳では俳句から犯人を特定する事は 勿論 できなかったが、余裕があれば是非隠された真実と繋がりを探し出してみてほしい。
ーーーーーーーーーーーー
この作品を手に取り感じた、現実でも起こったであろう壮絶なる兵士の物語がこの世に確実に存在している事。そしてそれを決して風化させるべきではない事を、しっかりと胸に留めておきたいと思いました。
面白かった。