あらすじ
人生は「思い出」の積み重ねでしかありえない。良きにつけ悪しきにつけ、そのひとが生きてきた証なのだ――。小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴……、そうした小さな手がかりから、依頼人の思い出に寄り添うようにして、人や物を捜し出していく“思い出探偵”。京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を始めた元刑事の実相浩二郎は、探偵社のメンバーである元看護師の一ノ瀬由美、時代劇俳優をめざす本郷雄高、十年前に両親を惨殺されて心に傷を負った橘佳菜子と共に思い出と格闘し、依頼人の人生の謎を解き明かす。「思い出」は心を豊かにすれば、苦しめもする――乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなさと懐かしさが溢れるミステリー。
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Posted by ブクログ
心温まるストーリーでした。うまくいきすぎじゃない?!って思うところもあったけど、物語はこのぐらいスカッとしてもいいかもと思える作品でした。続編があったら読みたいです
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元京都府警の刑事だった実相浩二郎は、京都御苑の近くに「思い出探偵社」を構える。
依頼人の話を聞き、わずかな手がかりから思い出を探す仕事だ。
62年前、梅田の闇市で助けてくれた少年にを想い続ける老女。
43年前、集団就職で出てきて働いた会社がつらくて飛び出したときにコーヒーを飲ませ、諭してくれたお姉さんに、今の自分があることを知ってほしい。
10年前の忌まわしい事件を乗り越えたい。
7年前、自殺として処理された、浩二郎自身の息子の死の真相を突き止めたい。
5日前、清涼寺の境内でなくした愛猫の思い出の品を拾ってくれた人にお礼を言いたい…
独立した短編集ではなく、いくつもの事件は平行して進み、依頼されたものではなく、スタッフ自身の心に抱えた問題もある。
思い出はいいものばかりではない。
相手にとって、どういう形で心に残っているかわからない、人間の心の複雑さもある。
62年前、43年前という、遠すぎる戦後日本の思い出も、作品の特徴かもしれない。
わずかな手ががりを追って飛び回る姿は、時効間近の事件に執念を燃やす刑事そのものだ。
温かい解決、切なく懐かしい解決、苦い解決…いろいろだが、依頼人の気持ちに寄り添いたい、というのが浩二郎の一番の願い。
第一章 温かな文字を書く男
第二章 鶴を折る女
第三章 嘘をつく男
第四章 少女椿の夢
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ほんのわずかな手がかりを紐解きながら思い出の人にたどり着く、今までありそうでなかったミステリ。たどり着くまでは、探偵目線で、最後は依頼者に感情移入できて、1話で2度おいしい。依頼内容に加えて、メンバのサイドストーリーもうまい具合に絡まっていて秀逸。もう一度読んで見たい。
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どれほどの善意を
他人に振り向けても
だからといって幸せな日々を
過ごすとは限らない。
穏やかな日々を
過ごしているように見えていても
だからといって凄烈な過去を
持たぬとは限らない。
人のあたたかな思いが
それだけで人を幸せにするとも限らず
善意を振り向けたからといって
必ずそれが報われるとは限らない。
人の世のやりきれない矛盾が
この本には詰め込まれている。
なのに…どうしてこんなに安らぐのだろう。
真実を伝えることも伝えないことも
相手の心のためだけに選択する人たちが
この探偵社にはいる。
どの事案もすっきりとは片付かない。
必ずどこかに翳りを残しながら終わる。
探偵たちの人生もまた、どこかに何かを
抱えたまま。だけど、温もりがじんわり。
昭和の匂い。
でもそれだけじゃないあたたかみ。
ちょうど…日暮れ時になるとあちこちの窓に
灯され、家族の食卓をやわらかく照らした
白熱灯の温もり。
鏑木氏の作品は人臭い。それが、とてもいい。
Posted by ブクログ
依頼人の『思い出』を探し出す『思い出探偵社』の発想が面白い。物語の中のミステリーの要素も良いのだが、依頼人の人生の機微の描き方にも面白さがある。
思い出探偵社の実相浩二郎をはじめとする探偵の面々が己れの過去と闘いながら、依頼人の思い出を探し出すのだ。
物語は四章から成り、それぞれの依頼人が思い出探偵社に思い出探しを依頼する。僅かな手掛かりから遠い過去の思い出を探し出す探偵の活躍が興味深い。第三章だけは異質で、サスペンス色が濃くなる。
『東京ダモイ』『屈指光』と何故かこの作者の作品には度々、岩手県が登場するのだが、この作品にも南部杜氏で有名な石鳥谷、奥州市が登場する。作者の鏑木蓮さんは岩手県にゆかりがあるのだろうか。今のところ、自分にはこれが一番のミステリーである。
Posted by ブクログ
鏑木蓮の連作ミステリ作品『思い出探偵』を読みました。
ここのところ国内の作家のミステリ作品が続いています。
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もう一度会いたい人が、あなたにはいますか?
小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴…… そんな小さな手がかりから、依頼主の思い出に寄り添うようにして、捜しものを見つけ出していく“思い出探偵”。
京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を開いた実相浩二郎は、息子を亡くし、妻がアルコールに溺れていくのを見かねて刑事を辞めたという過去を持つ。
思い出探偵社には、その誠実で温かい人柄にひかれるようにして、元看護師の一ノ瀬由美、役者志望のアルバイト本郷雄高、10年前に両親を惨殺されて心に傷を負った27歳の橘佳奈子が集まった。
「思い出」は心を豊かにすれば、苦しめもする――乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなさと懐かしさが溢れるミステリー。
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2009年(平成21年)に刊行された京都思い出探偵ファイルシリーズの第1作です。
■第一章 温かな文字を書く男
■第二章 鶴を折る女
■第三章 嘘をつく男
■第四章 少女椿のゆめ
■解説 小梛治宣
人生は「思い出」の積み重ねでしかありえない… 良きにつけ悪しきにつけ、そのひとが生きてきた証なのだ――。
小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴… そんな小さな手がかりから、思い出探偵社の仕事は始まる、、、
「一言お礼が言いたい」 思い出探偵社に持ち込まれた事案を調査する実相浩二郎たちの行く手には…… 。
面白かったです、、、
粗末なペンダントをわざわざ届けてくれた男性を探す『第一章 温かな文字を書く男』、
ジャズ喫茶でのわずかな時間の出会いが人生を変えた『第二章 折り鶴の女』、
車椅子の青年が思い出探偵社を混乱に陥れる『第三章 嘘をつく男』、
戦後の混乱期に命を救ってくれた男性を探す『第四章 少女椿のゆめ』、
の4篇が収録されています… 軽めの物語かと思っていたのですが、意外と深みがあったし、「思い出探偵社」で働く人たちの人生も巧く描いてあったと思います。
『第三章 嘘をつく男』は、ちょっと異質な印象ですが、サスペンス的な展開で愉しめましたね、、、
『第四章 少女椿のゆめ』の結末はちょっと物足りない印象かな… 好みの問題でしょうが、私は再会するところまで描き切って欲しかったな。
京都思い出探偵ファイルシリーズの続篇、ぜひぜひ読みたいですね。
Posted by ブクログ
心の中でずっと寄り添いたいような思い出、生きていく糧となるほどの思い出、時には悪い夢であって欲しいと思うようなことも。
思い出探偵社を訪れる人々にも、思い出探偵社のメンバーにも様々な思いや事情があって、ぐいぐいと引き込まれて読みました。
連作短編集のようでありながら、二つの依頼が並行して調査されていたりと時間が繋がっていたのも良かったです。
Posted by ブクログ
京都出身の鏑木蓮、初めて読みます。500頁近くのそこそこ分厚い本ですが、関西が舞台になっているため、関西人ならば馴染みの地名が多く、取っつきやすい。
刑事だった主人公の男性は、高校生の一人息子を真冬の琵琶湖で亡くす。遺書めいたメモを残していたことから自殺と断定され、妻はそのショックからアル中に。妻に寄り添うために主人公は刑事を辞める。そして京都御所を臨む地で開業したのが「思い出探偵社」。人生を振り返るとき、どうしても会いたい人、お礼を言いたい人がいる。依頼人のそんな思いに応えて、彼らの人生の分岐点となった大切な思い出のなかにいる人を探し出すのが仕事。
手がかりはごくわずかです。届け物をしてくれた人の特徴的な字だったり、へこたれた自分に渡された折り鶴だったり。探し出すのは至難の業だと思われますが、人から人へと手がかりは広がります。
主人公はもちろんのこと、探偵社で働く人たちが心に傷を持ち、そのぶん人の心がわかる温かな人間。ストーカーの話はちょっと異質でサスペンスタッチ。個人的にはこの章だけ浮いているように感じられてはあまり好きになれませんでしたが、ほかは昭和へのノスタルジーも感じられる佳作。
Posted by ブクログ
変わったテーマで、また舞台が京都と云うことでなかなか面白かった。作者は洛南高校から仏大だそうである。結構京都の南部が出てくるので、そっちの出身?
ただ、佳菜子の話は進展し過ぎって印象を受けた。もう少し掘り下げてからでも良かったのでは?
でも、面白いと思います。
Posted by ブクログ
思い出にまつわる人や物・事柄を探し出す探偵さんのお話。
予想外にハラハラする話もあり、面白かった。じわじわくる。どれもうまく行き過ぎかなとは思ったけど、うまくいかなかったら、それはそれで悲しいのでOK。
終わり方に物足りなさを感じたけど、次作も期待!早く文庫化されてほしい。
Posted by ブクログ
4編からなる短編連作ミステリー
設定が面白い。京都府警の元刑事の浩二郎が奥さんのリハビリかねて始めた探偵業。
依頼人の想い出に寄り添いながら、人や物を探していくという展開。
そんなにうまくいくか?というのは置いておいて、じんわりと暖かくなる物語でした。
■温かな文字を書く男
清涼寺の境内で落としてしまった大事な思い出の小瓶のペンダント。
喫茶店で落とし物として届けられ、その届けた人物を探してほしいという依頼。
残されたメモの文字から人物を探し出していきます。
■鶴を折る女
43年前、集団就職で上京し、職場のトラブルで逃げ出したときに、ジャズ喫茶で出会った年上の少女を探してほしいという依頼。
その少女が残した折鶴と紙片に残された詩から43年も前の女性を探し出していきます。
■嘘をつく男
この章だけは、ちょっとはらはらドキドキ
車椅子の男の依頼から拉致られてしまったスタッフの女性。
この女性を救い出すことができるのか?
という展開。
■少女椿のゆめ
62年前の戦後の動乱期に、米兵に暴行を受けそうになったところを助けてくれた男性を探してほしいとの依頼。
その男性が落としていったお守り袋から探し出していきます。
これ、この探偵社に頼むといったいいくらお金がかかるんだろう?っと思えるぐらい、過去の調査がすごい(笑)
依頼人の想い出の依頼を解決していくと同時、浩二郎含め探偵社のスタッフ達の心のオリとなってしまっているモノの真相も明らかになっていきます。そして一歩踏み出すことが出来る様になっていきます。それも良かった。
京都弁、関西弁は読むのにちょっと苦痛なところがありますが(笑)、楽しめました。
お勧めです。
続編があるようです
「思い出をなくした男」
探して、読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
依頼人の思い出に寄り添うようにして、人や物を捜し出していく「思い出探偵」…ちょっと上手く行き過ぎ?と思いつつも面白く読めた。ラストはなんかバッサリ?続編もあるのか〜
Posted by ブクログ
依頼人の思い出を対象とした探偵小説で切り口としてはなかなか面白かったが、全体的に事がうまく運びすぎていて、現実味はなかった。
舞台は私の故郷でもある京都。
4章で構成されているが、私の好みは3章の「嘘をつく男」。佳菜子に迫る危機が丁寧に描かれていて、小説を読みながらハラハラした。
一方で物語を締めくくる第4章「少女椿の夢」は、途中で尻切れトンボのように終わっており、もやもやが残ったまま話が終わってしまう印象であった。最後の展開をあえて描写しなかったように思うが、その後の展開を創造するヒント、種みたいなものも描かれておらず、深みがないまま終わってしまう点は残念であった。
解説によると「思い出をなくした男」という続編があるらしい。
Posted by ブクログ
自殺として片付けられた息子の死に疑問を抱き、上層部に楯突いたことが
きっかけで刑事をやめてしまった男が主人公。
彼はその後、人々の思い出を探る「思い出探偵」を開業。
認知度も上がり、少しずつ仕事も増えていた。
思い出を探る、という観点が珍しくて楽しみにしていました。
まぁ、可もなく不可もなく、という感じかな。
あえてそうしているのかもしれないけど、どうも盛り上がりに欠ける。
一番イイ所が語られていなかったり、そこを落とし所にするのかって
箇所があったりしてね。
そんなにうまくいくもんじゃないよ、ってことを語りたいんなら、
もっとはっきりと顧客の期待に添えなかった依頼を語ってもいいのでは?
息子の死の真相(?)に辿り着く部分もやけにあっさりだし、
なんだかちょっとバランス悪いなーと。
「思い出探偵」というネタ自体は面白いのに、ちょっと残念。