あらすじ
感動の江戸川乱歩賞受賞作が待望の文庫化! 極限の凍土、シベリア捕虜収容所で起きた中尉斬首事件。60年の沈黙を自らに強いた男が突如、姿を消した。歴史の闇に光を当てた、魂を揺さぶる渾身の一作。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
シベリア抑留、俳句、自費出版、老人自活施設と
団塊の世代以上の読書好き年配者を
想定読者に据えたかのような骨太の社会派ミステリー。
たぶんそんな意図はないんだろうけど。
戦後の動乱期、ふとしたことから大罪を犯したが
罪が露見せずに数十年が経ち、今では地位もある
名誉もある自分がやるべき仕事もある身になり
過去の過ちを隠すためにまた罪を重ねてしまうという作りは
松本清張の名作、あるいは『飢餓海峡』のそれに近い。
俳句をトリック解明のキーに据えた試みは
物理トリックやアリバイなど理詰めの思考とは趣きが違っていて
575の文字から情景を想像しながら考える面白さがあった。
イルクーツクの俘虜収容所(ラーゲリ)での過酷な抑留生活に関する
描写に力が注がれており、タイトルと相まって
作者の熱量を感じた。
Posted by ブクログ
ブク友のNORAxxさんのレビューをみて、興味を持ち読んでみた。
非常に重厚な物語。ミステリーなんだけれども、描かれる人間ドラマの印象が強い。
私の無き祖父がシベリア抑留者だったので、より地続きで内容が心に迫ってくる。親も、私も直接抑留の話を祖父から聞くことができなかった。しかし、唯一、テレビドラマでシベリア抑留の話を再現していたのを一緒に見た時に、「こんなに綺麗な環境じゃなかった」とぼそっと、一言つぶやいたことを思い出す。
本書を読んで、改めてシベリア抑留のことを学んでみたいと思った。
ミステリーという形で、名もなき人物の視点から戦争の惨禍と人間の尊厳を描き切った力作。文学作品とも呼べるかと思う。
Posted by ブクログ
ガツンとくる物が読みたくなり手に取った一冊。
過去にソ連の捕虜となりシベリアに抑留された経験を持つ高津は、それを風化させまいと一冊の句集を自費出版しようとする。
試みが実現するその前に、あるロシア人の女性が近くの埠頭で遺体となって発見された。その後高津は行方不明となってしまう。
残された出版担当者槙野は守銭奴の鬼上司に尻を叩かれ大口顧客である高津の行方を追う。可哀想な彼にエールを送りたくなるのは自然の理かろうて...ズズッ…( ՞灬ة旦)
この単純な殺人事件は後に謎が深く複雑に絡み、多くの人間と時空を繋ぐ因縁の物語へと発展して行く。
句集で語られる彼の人生は壮絶だ。
彼ら兵士達はソ連兵の管理課に置かれたとしても「ダモイ(帰郷)」出来る事を信じて疑わなかった。だが、彼等の乗る貨車はシベリアに向かっていた。国は彼等をソ連の労働資源の提供ではなく、奴隷にでも使ってくれと見放した様なものだ。ダモイなど、有り得なかったのだ。過酷な労働と残酷な命のやり取りに額の皺は刻まれるばかりだった。
年月を経て、ある日の中尉殺害事件をきっかけにダモイが叶う事となる。娯楽の俳句を通じて出会った4人の仲間達との友情を心に留め、高津は日本に帰還した。
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60年前を綴る名も無き一兵士の句集
その中で語られた未解決の中尉殺害事件。
そして現代で起きたロシア人女性殺人事件と繋がりを見せるシベリア抑留兵士達の影。
この因果が全て繋がった時、高津の目的と志しが明らかとなり、そしてその瞬間私の心は震え上がり腕には鳥肌が浮かんでいた。
武士だ、もののふだ、SAMURAIだ。
今なら迷わず土産屋に置いてある「侍」の文字がプリントされたTシャツを購入するだろう。
「剣を抜かずに勝つ」
無駄な血を流さず、相手の刀を汚さないことが尊ばれる。彼は最後まで刀を抜かなかったのだ。
420ページにもなる作品に加えて、句集の中で数々の俳句が出てくる。心得の粒子もない私は調べ調べの読書となった。
にも関わらず、付け焼刃の知識と付属する解説により意味を知れば知るほど高津の句集の深みが身に染み渡る様で驚く程夢中になった。あっという間に読み終えてしまった。
しかもただの句集ではない、ミステリなのだ。犯人の情報が隠されているのだ。唆るであろう(含)
私のツルツルの脳では俳句から犯人を特定する事は 勿論 できなかったが、余裕があれば是非隠された真実と繋がりを探し出してみてほしい。
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この作品を手に取り感じた、現実でも起こったであろう壮絶なる兵士の物語がこの世に確実に存在している事。そしてそれを決して風化させるべきではない事を、しっかりと胸に留めておきたいと思いました。
面白かった。
Posted by ブクログ
剣を抜かずに勝つ
極限のシベリア勾留を体験して
ダモイを果たし
何も持たずに生き抜いた一兵士の生き様
涙なしには語れない
戦争を知らず、恵まれた現代を
当たり前のように生きていられる事に感謝する
私利私欲に支配されない生き様
尊敬するべきはずの老人たち
すぐ近くにもいるのかもしれない
Posted by ブクログ
ミステリーでありながら、文学性を感じさせられた。
シベリア抑留について詳しく知らない自分にも、シベリアの過酷な環境が伝わってくる描写だった。かなり詳しく調べられたのではないだろうか。
キーパーソンとなる人物たちのキャラクターが魅力的で、物語に引き込まれる。
Posted by ブクログ
作者の作風が好きで、ダモイの意味は全く知らずに読み始めた。知識としては知っている抑留について改めて考えた
全体を通して辛く厳しいラーゲリ生活が書かれているけれど、槙野が句に引かれる気持ちがよくわかる
#鏑木蓮
Posted by ブクログ
(「BOOK」データベースより)
舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか?風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。第52回江戸川乱歩賞受賞作。
乱歩賞はあまり信用しないというか、はっきりいって今後活躍が期待される新人賞ぐらいのものなので、あまり期待しすぎてはいけないと思いながら読むようにしています。
が、これは久々に乱歩賞物読んでよかったと思わせる力量のある本でした。盛り込みは多いですが、シベリア抑留という悲劇への言及と、人間の品格みたいなものが良く書かれていて胸を打ちました。
ただ乱歩賞という足かせによって、起承転結で結が間延びしてしまったような気がします。僕的に謎解きってがっちり書かなくても良いと思っていて、この話ならもっと人間ドラマとして押して行ったらもっといい作品になったんじゃないかと思います。
あと、刑事と出版の人の両方が等分に役割が割り振られていて、どちらが主体がぼやけているような気がしました。これならばもっと出版の側に重きを置いた方が面白かったかなあ。
Posted by ブクログ
面白かったです。
特に自分が知らないシベリア抑留についての部分が
とても興味深く、そのあたりにもひかれて、
どんどん読み進めました。
いかにも乱歩賞らしい作品と感じました。
Posted by ブクログ
『時限』を読み、鏑木蓮さんという作家の存在を知り、この作品を手にしてみた。
プロローグは1947年のシベリアで始まる。ひたすら日本への帰郷、ダモイを夢見る収容所の日本兵達。その収容所で起きた殺人事件と60年後に舞鶴で起きたロシア女性の殺人事件がリンクする時…
悲惨なシベリアの収容所生活の場面を読む度に百田尚樹の名著『永遠の0』を思い出した。ひたすらお国のために闘い続けた日本兵が望む事と大本営の意図との乖離が何とも哀しい。
また、俳句が事件の全貌を読み解く鍵を握っており、非常に面白いミステリーの仕立てとなっている。
さらに抑留体験者の高津が岩手県の紫波の出身で、日詰といったご当地ならではの地名と宮澤賢治の詩が登場するあたりも面白い。
鏑木蓮さんは、これからも期待出来る作家だとあらためて思った。
Posted by ブクログ
「ダモイ」とは、ロシア語で「帰国」の意味。
第2次世界大戦でロシアのシベリア、捕虜収容所からの帰還兵が60年の歳月を経て自費出版しようとした句集の原稿を残したまま失踪。
前日に舞鶴港の埠頭で水死体で見つかったロシア人女性と帰還兵には接点があったことが判って、60年前に捕虜収容所で起きた殺人事件が浮かび上がってくる。捜査はこの謎を解くことで、犯人像が浮かび上がってくる・・・というやや複雑な構図。
今は亡き自分の父親もシベリア帰りで、これまで戦争の話はほとんど聞いたことはなかったんですが、本書にあった抑留者の強制労働の世界を経験してきたかもしれないことを思うと、なんと言ったらよいのか・・・
Posted by ブクログ
暗いし…重いですね。
強制的に抑留されたシベリア。
極寒の極限状態の彼の地。
戦争で無理やり連れて行かれ、
敗戦後、日本への帰国も叶わず、
過酷で劣悪な状況で何年も強制労働。
起こるべくして起きた事件。(と私は思う)
謎解きの辺が若干判りづらかったんですが、
シベリアの雪と氷と空気の冷たさが
リアルに肌に、胸に突き刺さるようでした。
☆☆☆☆ ホシ4つ
Posted by ブクログ
第52回江戸川乱歩賞受賞作。
なので、バリバリのミステリーと思っていたら、シベリア抑留から始まる重いストーリでした。
ダモイは帰郷のこと。なので、東京ダモイはシベリア抑留者達が日本へ帰郷することでした。
本書で描かれる極寒の地での抑留生活が辛い。
昨年、「ラーゲリより愛を込めて」の映画を見ましたが、本書で描かれる内容はそれをはるかに超える凄惨さでした。
ストーリとしては、
シベリア抑留経験者の高津はその経験を一冊の句集として自費出版しようとしていました。
そんな中、舞鶴港で発見されたロシア人女性の遺体。
同時に、高津も行方不明に。
自費出版会社の担当者槙野はその行方を追うことに。
さらに警察もその行方を追います。
ロシア人女性を殺害したのは高津なのか?
その句集の中には、60年前のシベリアのラーゲリで起きた日本人将校の斬首事件のカギとなる記述が。
句集の中の謎解きが始まります。
日本人将校を殺害したのは誰なのか?
高津の句集に描かれたラーゲリの生活の様子がリアルで辛い。
そして、高津が句集を通して訴えたかったものとは。
句集から60年前の事件の真相を明らかにするところが斬新。
お勧めです。
Posted by ブクログ
舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか?風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。第52回江戸川乱歩賞受賞作。
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第52回江戸川乱歩賞受賞作2作品の内の1冊と言う本作品。「ダモイ」とはロシア語で「帰郷」と言う意味なのだそう。日本へのシベリア抑留での過酷な状況、内地への想いに心苦しいものがあった。前に読んだ本にも収容所で俳句の会があったと記してあったことを思い出した。
Posted by ブクログ
薬丸岳さんの次の乱歩賞とゆうのと、そのタイトルから、読みたい候補上位だったが、やっと手に入れた。白砂で知った鏑木さんだが、期待を裏切らない作品かと。良作。
Posted by ブクログ
東京ダモイ/鏑木蓮:第52回大賞受賞。2006年。
シベリア抑留だというから読んでみた。シベリア抑留の時の中尉殺人事件が現代の殺人事件を呼ぶのだ。ヒントは、元シベリア抑留者の高津が自費出版しようとした句集。
シベリア抑留のことはとても調べてる。何故かシベリアのことは語らない経験者が多いので、こういう本は必要だと思う。で、その部分はやはり心を打たれる。
だのに★が4つなのは、自費出版会社の男女とか、刑事とかいまいちなんだよなぁ。推理は俳句に詳しくないもんで、そんなもんかなぁと思ったり。
ちなみに「ダモイ」とは、ロシア語で「帰郷」のこと。抑留者は「トーキョーダモイ」と言われてたのに、シベリアに連れてかれたのだ。
Posted by ブクログ
鏑木氏のデビュー作。
シベリア抑留
俳句の謎解き
老人の社会貢献
かそけき恋
自費出版の社会的価値
モチーフが多すぎて
焦点が定まらない印象を受けた。
ただ一人、高津の正しさだけが
最後まで純粋で美しい。
推理の過程は複線で進み
多くの人がからんでいて複雑すぎる。
俳句の解読なんて…もっと
興味惹かれるはずなのに。
つまりは盛り沢山すぎて
全体の構成要素から
勝手にいくらか間引いて
読みやすくして読み進める
しかなかったからだろう。
まだまだ、今の鏑木氏が持つ
筆力は感じられない。
少しずつ、最近の作品まで
読んでいこうと思う。
Posted by ブクログ
舞鶴でロシア人女性の遺体が発見された。時を同じくして抑留体験者の高津も姿を消す。二つの事件に関わりはあるのか。当時のことを綴った高津の句集が事件をつなぐ手がかりとなる。60年前極寒の地で何が起こったのか?風化しても消せない歴史の記憶が、日本人の魂を揺さぶる。第52回江戸川乱歩賞受賞作 というのがあらすじ。
シベリア抑留中のエビソードがあまりにも凄絶で、ミステリとしての面白さがどこかへ行ってしまった感じ。力作。
Posted by ブクログ
7月-10。
シベリア捕虜収容所での殺人事件と、収容所看護師と被害者の孫が、
現代で殺された。捕虜の一人が句集の中に、真相を込める。
謎解きがちょっと難しい。主人公らしき、雑誌社の若手社員を
もっと描き込んだ方が面白かったかも。
終盤は少し駆け込み過ぎかな。