鏑木蓮のレビュー一覧
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名探偵:宮澤賢治
ワトソン:藤原嘉藤冶
ケンジ、カトジと呼び合う。
『ながれたりげにながれたり』
『マコトノ草ノ種マケリ』
『かれ草の雪とけたれば』
『馬が一疋』
短編が4編。
2編めは、ええっ、宮澤賢治なのに血腥い!…と思ったけれど…
岩手の風土や、時代の空気、農民の生活事情が丹念に描かれていて、「賢治の時代」に入り込むことが出来る。
賢治は、村人の困り事の相談に乗ったり、争議の調停をしたりしていたことが、作品からも読み取れるから、具体的にはこんなこともあったかもしれないな、と想像させる。
賢治好きには嬉しい1冊。
方言による会話も、読み進むうちにすっかり慣れた。 -
Posted by ブクログ
あの宮澤賢治を探偵役に据えた連作短編集の第2弾。今回も宮澤賢治は親友の藤原嘉藤治と共に様々な事件を解決する。宮澤賢治を信奉する鏑木蓮だからこそ描けた作品であることは間違いない。残念なことにシリーズ第1弾に比べると斬れ味の悪い短編が目立つのは物語の制約ゆえなのか…
『哀しき火山弾』。石工会社の社長の事故死を巡る賢治の推理。歯切れの悪い結末…
『雪渡りのあした』。盗まれた宝珠の謎に賢治が迫る。これもまた斬れ味が悪い。
『山ねこ裁判』。やっとスッキリした結末が描かれる。鍵のかかった土蔵から盗まれた家宝の謎。本作の中では一番面白かった。
他に『きもだめしの夜に』と『赤い焔がどうどう』を収録。 -
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鏑木蓮の作品は殆んど読んでいるが、どの作品も風合いが違うミステリーである事にいつも驚いている。本作では、薬丸岳が取り上げそうな題材を選んでいる。
中学生時代のクリスマスイブに警察官の父親が拳銃を奪われ、射殺されるという悲劇に見舞われた隆史。隆史の父親を射殺し、失踪したとみられる隆史の親友・伸人の父親…この日を境に隆史と伸人の仲は決裂する。二人は成長し、父親の仇を討つために刑事となった隆史…
隆史の父親の射殺事件の真相と隆史と伸人の成長を同時に描く、なかなか巧みなミステリーである。隆史と伸人の友情が壊れる前半と隆史が事件の真相に迫る後半…結末には感涙。 -
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老人の孤独死をテーマに描かれた本。
映画監督を夢見るビル管理のアルバイト青年がある日、孤独死した老人に出会う。そのまま終わるはずだったが、その老人がかつて映写師であり、また自分で撮った作品を遺品として残していた。それを見た青年の中に「この老人はどんな人だったのか撮りたい」という熱い情熱が燃え始める。
本書の骨子は、現在孤独死問題に挙げられている人々は戦争を経験した最後の世代であること。
その人生の極限状態を生き抜き、その後も生きてきた人々で、その間には数多くの縁、つながりがあってきたはず。
それを現在のつながりだけを見て孤独死はかわいそうだ単純に判断するのはおかしいと思う。
むしろ上から目 -
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『時限』を読み、鏑木蓮さんという作家の存在を知り、この作品を手にしてみた。
プロローグは1947年のシベリアで始まる。ひたすら日本への帰郷、ダモイを夢見る収容所の日本兵達。その収容所で起きた殺人事件と60年後に舞鶴で起きたロシア女性の殺人事件がリンクする時…
悲惨なシベリアの収容所生活の場面を読む度に百田尚樹の名著『永遠の0』を思い出した。ひたすらお国のために闘い続けた日本兵が望む事と大本営の意図との乖離が何とも哀しい。
また、俳句が事件の全貌を読み解く鍵を握っており、非常に面白いミステリーの仕立てとなっている。
さらに抑留体験者の高津が岩手県の紫波の出身で、日詰といったご当地ならでは