あらすじ
石工会社の社長が、採石場で岩の下敷きになり亡くなった。調査を頼まれたケンジは、現場に残されていた黒い粉に気づく。(「哀しき火山弾」) 堅固な二重扉に錠が掛かったままの土蔵から、家宝の掛け軸が盗まれた。犯人はどこから入りどこへ消えたのか!? ケンジが披露した驚くべき推理とは?(「山ねこ裁判」) 名探偵・宮澤賢治の活躍を描く話題のシリーズ第2弾が登場!
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Posted by ブクログ
宮沢賢治を探偵に据えた「イーハトーブ探偵」シリーズ第二弾。
前作よりも落ち着いて、より、賢治の世界を感じさせる。
人間の弱さが犯す悲しい罪を、賢治も悲しみながら、しかし厳しく暴いていく。
それぞれの作品が、賢治の作品を彷彿とさせ、あるいは実際に対比として語られたりする。
『哀しき火山弾』
石工会社の社長が、割れた凝灰岩の下敷きになって死んだ。
偶然の事故なのか?
『雪渡りのあした』
宝珠の中にあったはずの仏像が姿を消す。
『山ねこ裁判』
厳重に施錠されているはずの蔵から、高価な品が盗み取られた。
『きもだめしの夜に』
真に人を想うならば。
『赤い焔がどうどう』
真に人を想うならば2。
賢治の作品「貝の火」は、銀河鉄道の夜と並んで好きな作品だが、いまだに理解には及ばない。
これから先もずっと、考え続ける。
Posted by ブクログ
ケンジと賢治は別の人?そんなに賢治を知っているわけでもないのに賢治らしさを感じる。しゃべり言葉は花巻弁、誰かに音読してもらいたいなと思う。冷静な観察と推測が一体になって答を導き出していました。ますむらひろしさんの解説も面白かったです♪♪
Posted by ブクログ
あの宮澤賢治を探偵役に据えた連作短編集の第2弾。今回も宮澤賢治は親友の藤原嘉藤治と共に様々な事件を解決する。宮澤賢治を信奉する鏑木蓮だからこそ描けた作品であることは間違いない。残念なことにシリーズ第1弾に比べると斬れ味の悪い短編が目立つのは物語の制約ゆえなのか…
『哀しき火山弾』。石工会社の社長の事故死を巡る賢治の推理。歯切れの悪い結末…
『雪渡りのあした』。盗まれた宝珠の謎に賢治が迫る。これもまた斬れ味が悪い。
『山ねこ裁判』。やっとスッキリした結末が描かれる。鍵のかかった土蔵から盗まれた家宝の謎。本作の中では一番面白かった。
他に『きもだめしの夜に』と『赤い焔がどうどう』を収録。
Posted by ブクログ
前作に登場した菅野高清さん再び。もし実在したら一癖も二癖もある人物だろうが、トシ絡みで物悲しさ漂う雰囲気をいい塩梅に緩和してくれる。そんな高清さんにはちょっと残念な短篇「雪渡りのあした」が一番好み。私は宮澤賢治ビギナーなので、情景描写を追いながら読むことしかできないが、彼の経歴やら未読作品やらにどっぷり浸かってから読み返せば、さらに楽しめそうな一冊。
Posted by ブクログ
前作と同様、探偵役に宮沢賢治、ワトソン役に親友・藤原嘉藤治を据えて様々な事件を解決していく連作短編集。
宮沢賢治の著作と上手く絡めて話を作っている点は相変わらず関心しますが、読んでいる内に概ね予想がついてしまうものばかりで、ミステリーとしてはやや物足りないです。
物理トリックは前回ほど大掛かりではありませんが、【山ねこ裁判】と【赤い焔がどうどう】はなかなか良く出来たトリックだと思います。
Posted by ブクログ
作者がどれだけ宮澤賢治を大切にしているかが伝わってきました。だから、ケンジとカトジが今回も生き生きと活躍しています。ケンジにとっては、たいそう悲しい時期にあたる今作品ですが、どう言うのでしょう、ケンジがケンジになっていく、その悲哀の道筋がここには読み取れるような、そんな一冊でした。
ミステリーとしては前作よりもちょっとボンヤリしたかもしれません。ワトソンカトジの活躍というか、存在がとても鮮やかでした。宮澤家の方々も納得の登場です。謎解きよりも人物描写で楽しめた本作品、だったかもしれません。
カトジがそばにいてこそのお話だとすると、次作はどこから始まるのか、次作が楽しみです。
ますむらひろしさんの解説も素敵でした。