あらすじ
映画監督になる夢破れ、故郷を飛び出した青年・門川は、アパート管理のバイトをしていた。ある日、住人の独居老人・帯屋が亡くなっているのを見つけ、遺品の8ミリフィルムを発見する。映っていたのは重いリヤカーを引きながらも、笑顔をたやさない行商の女性だった。門川は、映像を撮った帯屋に惹かれ彼の人生を辿り、孤独にみえた老人の波瀾の人生を知る。偶然の縁がもたらした温かな奇跡。(『しらない町』改題文庫化)。2011年さわべス受賞作。
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Posted by ブクログ
映画監督になる夢が挫折して、アパート管理人のバイトでただ日々を過ごす青年・門川。孤独死の老人の遺品の中に8ミリフィルムを発見し、その映像に惹かれた彼は老人の人生を辿る。
現代社会の孤独死問題と、日本国家が犯した最大の過ちである戦争。一人の男性の人生を、全く縁のない青年が執念で追うという設定が見事だ。未来の自分自身を重ねた『孤独』という状況を徐々に打ち破る展開が巧みである。自分の人生は自分が主役だ。エンドロールには多くのキャストの名前が連なるが、最初は主役である自分の名前である。
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私のレビューはいつも語数が多く冗漫だ。
しかし。今回は特別。
これは凄い小説だ。
人の死は
それだけでとらえられてはいけないのだ。
生きていることが そのまま死にゆくこと。
主人公が、自分でも言葉にできない
自分を行動に駆り立てる衝動の源泉を
少しずつ少しずつ見つけてゆく。
人の成長や成熟の過程を
この作品で目の当たりにした。
Posted by ブクログ
面白くて、一気に読んでしまいました
一人で生まれ、
多くの方と縁を作り、
そして一人で旅立つ。
自分の人生を人のせいにして
毎日を過ごしていた若い門川が
帯屋の死に関わったことで
知らない間に変わっていく
それは、自分だけが変わるのではなく
関わっている周りの人たちとの関係も変わる
そんな様子や
戦争での記憶を背負って生きている
老人たちの苦しみや後悔
色々なことがギッシリと、
でもゆるやかに映し出されている
映画のような小説でした
Posted by ブクログ
久しぶりに「当たり」でした。
人生の終末を映画のエンドロールに見立て、人生の価値を問い、孤独死と呼ばれる状況がその人の人生を反映している物では無いことを訴える。
初めての著者の作品を読むというのはちょっとした冒険だけれど、これだけスッキリと自分の胸に入り込む作品を探り当てた時は祝杯をあげたい気分です。
*本作品は「しらない町」を改題した物だそうです。
Posted by ブクログ
『しらない町』の改題。映画監督を夢見る門川が、バイトで管理していたアパートの一室で老人の孤独死に遭遇する。亡くなった老人・帯屋の遺品の8ミリフィルムを見た門川は帯屋の人生に惹かれ、帯屋の人生を調べていく…
門川がほんの僅かな手掛かりから帯屋の人生を辿る中で、少しづつ見えてくる人と人との繋がり、普通の孤独な老人と思われた帯屋の激動の人生に物語にのめり込んだ。予想もしなかった帯屋の人生…そして結末…感涙…
人生のエンドロールを迎えた時、何を思うのだろうか。殺伐とした現代社会で人と人との繋がりの機微、人の心の暖かさを教えてくれる作品。
蛇足。鏑木蓮さんの作品には岩手県が多く登場するのだが、この作品でも大船渡、一ノ関が登場する。
解説は、盛岡のさわや書店の田口幹人さん。
Posted by ブクログ
青年の主人公があるきっかけから一人の人生をたどる物語り。永遠の0もそうだけれど、
世代のギャップや話したくない気持ち、話せない話し、忘れたいことを聞いてほしくない気持ち、だけど知りたい気持ち、とても伝わってきた。
最後はそれぞれの真実になっているけれど
未来に向けたエンドロール
Posted by ブクログ
死(孤独死)に対する考えが少し変わったような気がします。 奥の深い物語でした。
人は生前いろんな人と出会い、語り、泣いて、笑って、生きてきたんです。誰ひとり孤独で亡くなる人なんていません。
私もここで一人のまま逝くことになるでしょう。でも、私のことを少しでも、覚えてくれる方がいらっしゃるはず。それが縁というものでしょう。私はそれでいいと思っています。一人であっても、心の中に会いたい人を思い描いて、豊かな気持ちでこの世から去りたいんです。
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孤独死の男性のそれまでの人生をたどる。テーマは重いけれど、文体の軽さからかさくさくと読むことができた。遺品の中から、それまでの人生に関わってきた人の名前が浮かぶ。しかし、その中で一様に語らないある人のこと。ミステリーの要素もありつつ、人生そのものはどんなものかを考えさせられた。
最後の投稿文がとてもいい。
Posted by ブクログ
孤独死によって明らかになる特攻隊員達の戦後を描いたミステリー作品。
地方の過疎化を鋭い観点で著述されており、都市市民が忘れてはいけない知識も重要な要素でありノンストップで読ませる。
そして、私が観たことがない名作映画を是非とも観なくては、マズいと思わせるぐらいに絶妙なエッセンスとしている。コアな映画ファンにも読んでいただき、作中の映画の評価を聞いてみたいです。
「永遠の0」に感動した人にはオススメと行きつけの本屋さんの宣伝メッセージが購読のキッカケでしたが、「永遠の0」は越えないかな。
Posted by ブクログ
遺品の8ミリフィルムを見て惹かれたことから門川くんの道行きが始まる。孤独に亡くなった老人にもそこに至るまでの道がある。エンドロールに流れる関係者の方々に恥ずかしくない生き方をしているだろうか……
Posted by ブクログ
本屋で何も考えずに手に取った本。
人生のエンドロールを迎えた際に、人は何を思い何を残すのか!
老人の孤独死に遭遇した映画監督を目指す青年・門川が、老人の遺品である8ミリフィルムを見て、老人の人生に興味を持ち調べていく。
映像の場所に行き、関係のある人から話を聞くにつれて…。
とても地味な話だが、人と人との繋がり…老人の人生…そして最後のエンドロールに涙しました。。。
登場人物の心の温かい部分を感じ、心地よい気分になりました!
Posted by ブクログ
老人の孤独死をテーマに描かれた本。
映画監督を夢見るビル管理のアルバイト青年がある日、孤独死した老人に出会う。そのまま終わるはずだったが、その老人がかつて映写師であり、また自分で撮った作品を遺品として残していた。それを見た青年の中に「この老人はどんな人だったのか撮りたい」という熱い情熱が燃え始める。
本書の骨子は、現在孤独死問題に挙げられている人々は戦争を経験した最後の世代であること。
その人生の極限状態を生き抜き、その後も生きてきた人々で、その間には数多くの縁、つながりがあってきたはず。
それを現在のつながりだけを見て孤独死はかわいそうだ単純に判断するのはおかしいと思う。
むしろ上から目線で、失礼にあたるかもしれない。
だから孤独死したからと言って同情するのではなく、その人の歩んできた人生、培ってきた縁があったことを意識してほしい。
という提言には思わせることがある。
どこにいても人の縁は生き続けるというのは元気がもらえる。
Posted by ブクログ
5/22~6/2 なんか思わぬ読後感を味わえた。戦後モノ?ミステリ?
人情系? 色々要素がいいかんじにブレンドされて素敵な作品に。 こういう作品に出会えるから手当たり次第読みも悪くないと思う。
Posted by ブクログ
アパート管理で見つかった孤独死した老人。重くて暗い始まりから、終始軽く扱えないテーマが出てきてストーリーを貫いている。でも、最後に希望のようなものが見えて、読後感は意外にスッキリするものでした。
主人公と同じ年齢ということもあって、その行動や考え方は他人事とは思えず、自分に置き換えて考えると、もっと人生・家族について振り返らなきゃ・・・とも思った。
そういう意味でも最後の締め方は救われました。
Posted by ブクログ
孤独死というテーマでおもしろいというと語弊があるけど、心が動く作品だった。著者の単語の選び方も好き。最後の証言が続くあたりが特に良い。
ただ、孤独死に戦争という結構大きなテーマが絡んでたことで、若干どっちが本題かわかりにくくなってるような気がした。こういうやわらかな縁のつながりはこんな特殊な体験を持った老人を登場させないと描けないものかなぁと思った。
あと、伏線の張り方が、張られた段階でそれとわかる書き方でちょっと残念だった。甲山の資格勉強の話など、なくても良かったんじゃないかと思った。
Posted by ブクログ
孤独死。息を引き取る瞬間に立ち会った人がいないというだけ。
その人の送ってきた人生のエンドロールには、多くの名前がある。
そうだ。そうなんだ。
《伏龍》。もっと知りたくなった。
Posted by ブクログ
限界集落、老人の孤独死、無縁社会そして薄れゆく戦争体験といった社会問題を根底においてミステリータッチに仕上げた作品。
映画監督になることを夢見て故郷を飛び出したが、うまくいかず、アルバイトでアパート管理をしている青年門川誠一。彼はそのアパートで亡くなった独居老人・帯屋史朗の遺品整理をするが、見つかった8ミリフィルムに興味を抱く。フィルムに映っていたのは重いリヤカーを引きながら笑顔を絶やさない行商の女性。そして、もう一つ遺されたノートには意味不明な詩が記されていた。
これらに秘められた帯屋の人生を辿りドキュメンタリーを撮ろうと考えた門川は帯屋老人ゆかりの人たちを訪ね歩く。だが、その人たちは彼のフィルムとノートにまつわる話を聞くと、いずれも途中から非協力的な態度に転じる。彼らには、胸にしまいこんで共有する悲惨で重苦しい戦争体験があった。
かつて、この国は、兵士たちが体当たりする馬鹿げた極秘作戦を行ってきた。兵士たちは作戦に自ら志願する姿勢が崇高だと洗脳されていた。このことが、風化されないようにと多くの書物が著されてきたが、本作も収束点はここかと感じた。
帯屋のキネマ旬報への投稿文で締め括るエンディングがいい。
Posted by ブクログ
ひとりの老人の孤独死と遺品をきっかけに、主人公は彼の生き様を知ろうと思うようになる。手がかりを追っていくうちに、いろいろなことが判明してくる。ノートの謎、戦争中の隠された事実、帯屋が過去に関わった人々それぞれの思い、帯屋自身の心の動き。
読んでいる間ずっと、『知るためだけにここまで行動するかなあ?』という気持ちがついて回ってしまい。甲山の協力具合も少し不自然に感じてしまった。
ストーリーは面白かったし読後感もよかったのだけれど、気持ちが乗っかりきらずに読み終えてしまったのがちょっと残念。
少し不思議だったのが、この「エンドロール」にもひとつ前に読んだ「漁港の肉子ちゃん」にも東北の町が出てきて、どちらのあとがきでも東日本大震災のことに触れられていて、私が読んだのが3.11の前後だったってこと。
Posted by ブクログ
終戦間際に実際に存在した、馬鹿馬鹿しいほどの作戦。その一つ「人間機雷」を題材にしたドラマ。
老人の孤独死と誰も引き取らない「遺品」から、確かに生きていた証を探っていくうちに、終戦間際に特攻作戦の実験中に起こった事故にたどり着く。
戦闘機によるいわゆる「特攻」、人間ロケット弾「桜花」、人間魚雷「回天」など、有名なもの以外にも、信じられないほど冷静さを失った作戦が実際に計画されていた。
同じ敗戦国のドイツと比べても、実に幼稚な「負け方」で、当時の政治レベルの低さが伺える。
でも、笑えないよ。
今でも「日本人がコロナに強いのは、民度が高いから」なんて、堂々と発言する政治家に、同じ匂いがするのに、それを許しているのは、国民である自覚が無いのも、当時と同じ。
物語は、短い中に沢山のテーマを盛りすぎで、やや残念でした。
Posted by ブクログ
映画関係の仕事に就きたい青年が孤独死した老人のとった
映画をみて老人の人生を探っていくお話。
おもしろかったけれどちょっとご都合主義な感じがあるかな。
Posted by ブクログ
なんか地味な作品なのに引き込まれてしまう。
孤独死とは単に死んだ時の状態が一人だったということで、大切な思い出の人たちがいたり、思い出してくれる人たちがいるのなら孤独では無かったのだろう。
Posted by ブクログ
結局、時代の流れで人の思考や価値観は移りゆくもので、後世に残したいものも消し去りたいものも、それをどう解釈するかはそれぞれ。
何が正しいかは、これからを生きる人たちが時代を学び応えていくもの。
Posted by ブクログ
主人公は映画関係の仕事につきたいフリーター。バイトでマンションの管理人をしていたが、孤独死に遭遇。その住民の8ミリに魅せられ、ドキュメントを作ろうと決める。途中亡くなった人を知人の話で追求していくあたり、少し「永遠の0」に似てるかなと思ったが、そうでもなかった。死んだ人の思惑というのは、いくら親しかった人に聞いても、わかるものではないのかなぁ。孤独死といっても、それまでの人生において関わった人たちがいる。なにも独りで死ぬことが孤独死ではない。
Posted by ブクログ
本屋でふと目に入り購入。映画監督になる夢を捨てきれない主人公が、 バイト先で老人の孤独死に遭遇することから始まる話。遺品である8ミリフィルムが、様々な展開を生むきっかけとなる。エピローグの文章がとても美しかった。「私はそれを誇りに思っています。」私もそう言える人生になるだろうか 。
Posted by ブクログ
ある人の人生が幸せなものか、そうではなかったかを評価するのに、ある一点をもってのみで、軽々しくなされてはいけない。そんなことを考えさせられます。
同時に、主人公である映画監督に憧れるフリーター青年の成長も嬉しい。
そして、田口幹人氏の解説にグッと来ます。
▲とにかく、人間の死を扱いたいのなら、地に足つけて生きることから始めるんだな。生き様が死に様なんだから▲
Posted by ブクログ
思い出探偵と同じ作家だったのか
縁を感じるな
期待をするには、まず信頼しなければならない。
役者の鼓動と見てる私の鼓動が共鳴することがあるんだ。
生き様が死に様なんだから
人間は生きたようにしか死ねない
絆/繋がり
Posted by ブクログ
鏑木蓮さんの本は、「思い出」「過去」に重点を置いた物語が多い。
今作もまさにそんな一冊。
独居老人が多く住むマンションの管理会社でバイトする、
主人公の門川は警備のバイトも掛け持ちするフリーター。
ホントは映画関係の仕事をしたかったのだが、それもかなわずに。
ある日、そんな彼は住人の帯屋が独り部屋で死んでいる所に出くわす。
そして、遺品整理の最中に見つけた8ミリ映像に興味を持ち、
帯屋の人生を追うドキュメンタリーを撮ろうと動き始める。
しかし、帯屋を知る人に会おうとするもなぜか非協力的だったり
敵意を露わにされたりして、うまく事が進まない。。。
果たして、彼はちゃんとドキュメンタリーを完成させられるのか。
それは一体なにをもたらすことになるのか。
うーん、他の著作と同様に地味ですね。物語としては。
この物語こそがドキュメンタリーだったなら、もっと心動いたんだろうけど。
そして、主人公よりも彼の上司の方に興味が湧いてしまいました。