鏑木蓮のレビュー一覧
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大手コンビニ「キャメルマート」の病院内の店長として単身赴任した小山田。
売り上げの数字がすべてだというコンビニ本部の意向に逆らい、
病院という特殊な場所にあるコンビニの役割とは何かを考え、
患者や医師、そこで働く人々に寄り添い、イベントや新商品の開発に奔走する───
#さびしいサッカーボール
事故で片足をなくして大好きなサッカーをあきらめなくてはならなくなった海斗12歳。
アンプティサッカー(病気や事故で手足を切断した選手が、松葉杖をついてプレーする)の選手と出会い…
「片脚を失くしただけで、両脚を失くした気になるな!」
リハビリで、たった一歩しか進めないなんて悲観しないでほしい。
その一歩がどれだけ大きいことであるかと陽気に語る選手。
絶望の淵から這い上がり、努力し続ける人の言葉は何より重い。
#にがい猫缶
(このお話は、個人的にかなりキツかった…)
どうしても高級な猫缶が欲しいと訴える、認知症の老婦人の悲しい記憶。
何十年経っても消えない後悔と、悲しく深い傷。
戦時中は、軍用犬やお国のためにと飼っていた馬はもちろん犬や猫までが供出させられたという。
戦争は人間ばかりが犠牲になるわけではない。
動物たちは、何もわからないまま、愚かな人間の犠牲になる。
#熱きおまけ
かつて戦隊もののヒーローだった俳優が余命宣告を受けた。
誰か一人でも多くの人に勇気を与えたいと、その最後の命の炎を燃やす。
おぼろげに覚えている「ライダースナック」
サクサクとしてほんのり甘く、やさしい味だったような…。
舞台が病院ということもあって、テーマは重かったです。
でも、不思議と温かな気持ちで読み終えることができました。
※タイトルの「P・O・S」とは、ポイント・オブ・セールシステム。
物品販売の売り上げ実績を、単品単位で集計できるシステムのこと。 -
Posted by ブクログ
POS(ポス)は『ポイント・オブ・セールシステム』の略。
コンビニチェーン「キャメルマート」の社員・小山田昌司は、スーパーバイザーとして店舗指導に当たるとき、このPOSデータを大きな指針としていた。
ある日彼は、業績悪化のため店長が降格人事となった「キャメルマート京洛病院店」の立て直しのため、臨時の店長として、東京から単身赴任することになる。
現在の店長は若松。
病院内という特殊な立地を本部に訴え続けていたが、担当のスーパーバイザー・平(たいら)は聞く耳持たず、無理なノルマを押し付けられて売り上げが伸びなかった。
外に出られない入院患者に「行楽弁当フェア」はつらい。
糖分を制限された小児患者に「アイスクリームフェア」はかわいそう。
病院は特殊な空間だ。
京洛病院店の現正社員は、店長の若松研一と西野緑。
若松は、院内スタッフにも店舗スタッフにも信頼され、代わりとして本部から派遣されてきた昌司への緑の当たりはきつい。
昌司は、信条とするデータ至上主義で売り上げの向上を目指そうとするが、ゴミ箱に意外なものが捨てられていたり、特殊な要望を訴えるお客様が現れたり。
軽く、いい話に、緑に後押しされて巻き込まれ、昌司はデータ主義から次第に人間を見るよう変わっていく。
途中から、なんだか「思い出探偵」みたいに?
完璧に見える医師たちにも乗り越えるべき壁があり、平も意外な本音を語る。
昌司自身も変わっていく中、気がかりの解決がひとつづつ新商品の開発に結び付くのも面白い。
お仕事小説で、探偵物で、病院もの。
終わり方が実に気持ち良かった。
第一話 さびしいサッカーボール
新品のサッカーボールとシューズが捨てられていた。
第二話 にがい猫缶
ペットも家族。
はからずも被害者と加害者になった人たちの心の傷。
第三話 熱きおまけ
ヒーローは戦い続ける! -
Posted by ブクログ
京都思い出探偵シリーズ、第二弾。
単行本『思い出をなくした男』を改題。
まず、どうして改題したのかな、いいタイトルだったのに…と思いましたが、なるほど、かなりねじれて複雑なお話が多いように思いました。
1作目は、いわゆる“ええ話”と、探偵社のスタッフ自身の、過去を乗り越えるお話が多かった。
探し出された人たちも、会いたくないのは積極的な拒絶というより、“今さら”という戸惑いの方が多かったようです。
今作は、「思い出は誰にとっても良いというものではない」という事をあらためて突きつけられる事案だったり、依頼そのものが独りよがりなのではないかと思えたり。
または、探すべきか探さざるべきか、そこまで踏み込んでいいものか、と思えるものであったり。
思い出は本人だけのもの。
他の人間が捻じ曲げていいものではない。
そういうメッセージもありました。
依頼者の心に寄り添えなかったり、どちらサイドの立場に立つか迷ったり、調査員も人間。
役者としての活動に本腰を入れるために探偵社をやめた本郷のその後も描かれ、彼の補充人員として入ってきた医者の卵の平井真の成長と変化も描かれ、人生の彩り豊かです。
それにしても、人間の心の複雑さをあらためて感じさせられた思いです。
第一章 雨の日の来園者
第二章 大芝居を打つ男
第三章 歌声の向こう側に
第四章 思い出をなくした男 -
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京都出身の鏑木蓮、初めて読みます。500頁近くのそこそこ分厚い本ですが、関西が舞台になっているため、関西人ならば馴染みの地名が多く、取っつきやすい。
刑事だった主人公の男性は、高校生の一人息子を真冬の琵琶湖で亡くす。遺書めいたメモを残していたことから自殺と断定され、妻はそのショックからアル中に。妻に寄り添うために主人公は刑事を辞める。そして京都御所を臨む地で開業したのが「思い出探偵社」。人生を振り返るとき、どうしても会いたい人、お礼を言いたい人がいる。依頼人のそんな思いに応えて、彼らの人生の分岐点となった大切な思い出のなかにいる人を探し出すのが仕事。
手がかりはごくわずかです。届け物をしてくれた人の特徴的な字だったり、へこたれた自分に渡された折り鶴だったり。探し出すのは至難の業だと思われますが、人から人へと手がかりは広がります。
主人公はもちろんのこと、探偵社で働く人たちが心に傷を持ち、そのぶん人の心がわかる温かな人間。ストーカーの話はちょっと異質でサスペンスタッチ。個人的にはこの章だけ浮いているように感じられてはあまり好きになれませんでしたが、ほかは昭和へのノスタルジーも感じられる佳作。 -
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ネタバレ人の心情をうまく描く印象のある点で、数多のミステリ作家の中では頭一つ以上抜きん出ていると個人的に感じている作家の短編集。
けれど、最初の作品にして表題作の「黒い鶴」ではその片鱗が見られない、トリック重視な印象の苦手なタイプの作品。ホントに同じ作者?と疑問に思うほど作風が違っていて驚きます。
ただ、それを除けば概ね期待通りの内容で、個人的には5番目に掲載された「魚の時間」の侘しさと切なさにノックアウト。それ以降は完全に魔法にかかったように読みふけりました。
一番楽しんで読んだのは「白砂」のスピンオフにあたる「京都猫カフェ推理日記」。「白砂」の主人公父娘との再開がこんなに楽しめるとは… 人物描写の巧みさがなせる技でしょうか。予想はしていましたがそれを超える面白さで、こうしたスピンオフをドンドン描いてほしいと思った次第。 -
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宮沢賢治を探偵に据えた「イーハトーブ探偵」シリーズ第二弾。
前作よりも落ち着いて、より、賢治の世界を感じさせる。
人間の弱さが犯す悲しい罪を、賢治も悲しみながら、しかし厳しく暴いていく。
それぞれの作品が、賢治の作品を彷彿とさせ、あるいは実際に対比として語られたりする。
『哀しき火山弾』
石工会社の社長が、割れた凝灰岩の下敷きになって死んだ。
偶然の事故なのか?
『雪渡りのあした』
宝珠の中にあったはずの仏像が姿を消す。
『山ねこ裁判』
厳重に施錠されているはずの蔵から、高価な品が盗み取られた。
『きもだめしの夜に』
真に人を想うならば。
『赤い焔がどうどう』
真に人を想うならば2。
賢治の作品「貝の火」は、銀河鉄道の夜と並んで好きな作品だが、いまだに理解には及ばない。
これから先もずっと、考え続ける。 -
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鏑木蓮の短編集。乱歩賞デビュー10周年記念刊行だとか。
短編ミステリとして上手だった。乱歩賞作家らしい、スタンダードに大胆な伏線の張り方やストイックな犯人追求、絵的に映えるトリック等、見処は満載。
また、キャッチコピー通り人間心理の描写も深みがあり、やはり読み応えに通ずる。
難点を挙げるなら、雰囲気が古風に過ぎるところだと思う。情景描写が、悪くいえば古臭い。しかも時代設定や土地柄に寄せていることもないので、現代が舞台の話では、妙な違和感が残る。出来れば、もう少し柔らかさのある文章も使い併せてほしい。
最もよかったのは、女社長の毒殺話。大味だが、プロットとトリック、双方に効果的なネタが上手く使われていた。
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