鏑木蓮のレビュー一覧
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『しらない町』の改題。映画監督を夢見る門川が、バイトで管理していたアパートの一室で老人の孤独死に遭遇する。亡くなった老人・帯屋の遺品の8ミリフィルムを見た門川は帯屋の人生に惹かれ、帯屋の人生を調べていく…
門川がほんの僅かな手掛かりから帯屋の人生を辿る中で、少しづつ見えてくる人と人との繋がり、普通の孤独な老人と思われた帯屋の激動の人生に物語にのめり込んだ。予想もしなかった帯屋の人生…そして結末…感涙…
人生のエンドロールを迎えた時、何を思うのだろうか。殺伐とした現代社会で人と人との繋がりの機微、人の心の暖かさを教えてくれる作品。
蛇足。鏑木蓮さんの作品には岩手県が多く登場するのだが、この -
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ネタバレ直前に読んだ「白砂」に近い内容ですが、主役の若手女性刑事と上司の警部のやり取りがシリアスなので、比較的重い雰囲気が全般的に流れているように思います。
事件の構造は本作のほうが幾分か複雑で、ミステリとしてはこちらのほうが面白いです。特にタイトルの「時限」要素が明確に関連してくる中盤以降はとてもスリリング。クライマックスの絶望感と、そこからの逆転劇は(少し都合よくも感じられましたが)見事だと思いました。
しかし「白砂」と同じく、被害者の境遇がわびしすぎて泣けてきます。山本妹にも同情しますが、それ以上に夏山千紘の人生が本当にいいとこなしにしか思えなくて、なぜかこっちまで落ち込んできます。
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依頼人の『思い出』を探し出す『思い出探偵社』の発想が面白い。物語の中のミステリーの要素も良いのだが、依頼人の人生の機微の描き方にも面白さがある。
思い出探偵社の実相浩二郎をはじめとする探偵の面々が己れの過去と闘いながら、依頼人の思い出を探し出すのだ。
物語は四章から成り、それぞれの依頼人が思い出探偵社に思い出探しを依頼する。僅かな手掛かりから遠い過去の思い出を探し出す探偵の活躍が興味深い。第三章だけは異質で、サスペンス色が濃くなる。
『東京ダモイ』『屈指光』と何故かこの作者の作品には度々、岩手県が登場するのだが、この作品にも南部杜氏で有名な石鳥谷、奥州市が登場する。作者の鏑木蓮さんは岩手 -
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鏑木蓮の長篇ミステリ作品『喪失』を読みました。
『見えない轍 心療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ』に続き、鏑木蓮の作品です。
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キャリア女性刑事が挑む、感涙ミステリ!
京都市内のビルの非常階段で、有力不動産会社社長、真鍋征矢の妻、文香の遺体が見つかる。
文香の手には夫・征矢の金属製のブレスレットが握られていた。
妻は夫からの暴力被害を訴え離婚調停中だった。
事件後、文香の担当弁護士の和光は、彼女は嘘をついていた、DVはなかったとして、征矢の無実を証明したいと名乗り出る。
果たして嘘をついているのは誰か。
京都府警の準キャリア刑事、大橋砂生が不可解 -
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鏑木蓮の長篇ミステリ作品『見えない轍 心療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ』を読みました。
鏑木蓮の作品は昨年の7月に読んだ『白砂』以来ですね。
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京都の小さな町で、遺書らしきメモとともに34歳の女性・小倉由那の遺体が発見された。
それから数日後、同じ町で心療内科を開業する本宮慶太郎のもとを、女子高校生の棚辺春来が母親に連れられて訪ねてくる。
彼女の不調の原因を探ろうとする契太郎は、春来の口から由那の死に関する驚くべき疑念を聞いてしまう。
摂食障害の女子高生と、命を落としたパート女性の間には何があったのか―。
一人の医師が、人の心にひそむ光と影を見 -
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読みやすく面白いミステリ作品でした
登場人物に感情移入しやすく、情景を思い浮かべやすい物語です
ラストも切なくて好みの世界観でした
人間というものは実に愚かで哀しい生き物ですね
みんな幸せになりたかっただけなのにね
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予備校生、高村小夜が一人暮らしのアパートで殺害された。出入りが目撃された中年男性が捜査線上に浮かぶ。
心の動きに捜査の主眼を置く下谷署の目黒は、小夜を知るにつれ、援助交際の線を捨てて事件に迫った。
小夜が歌に詠んだ故郷、京都府の山村で目黒が掴んだ事実とは。
哀しい真相が隠された、切なさ溢れるミステリー。 -
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より深く心の中で生きて、ずっと私を見守っていて欲しいから────。
事件に関わる一人一人の人柄を深掘りしていくが故に、どの人間にも感情移入してしまいたくなる。犯人の人物像を明らかにする過程に少々退屈さを感じたが、その綿密な描き方はやはりこの物語に欠かせない部分であった。
この物語の中では登場人物それぞれがそれぞれに何かしらの犠牲を払っている。そして、その上で彼等の日々は循環して行く。とはいえ、それが果たして最良か。その答えを読者に問い掛けている。そんな気がする。
人間は弱い。最も気の毒で同情されるべきは自分だ、と言い切ってしまう姿には若干の嫌悪感はあるものの、人間には誰しもそう言った自己 -
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鏑木蓮の長篇ミステリ作品『白砂(はくしゃ)』を読みました。
鏑木蓮の作品は昨年の5月に読んだ『思い出探偵』以来ですね。
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予備校生、高村小夜が一人暮らしのアパートで殺害された。
出入りが目撃された中年男性が捜査線上に浮かぶ。
心の動きに捜査の主眼を置く下谷署の目黒は、小夜を知るにつれ、援助交際の線を捨てて事件に迫った。
小夜が歌に詠んだ故郷、京都府の山村で目黒が掴んだ事実とは。
哀しい真相が隠された、切なさ溢れるミステリー。
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2010年(平成22年)に刊行された作品です。
苦労して働きながら予備 -
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鏑木蓮『見習医ワトソンの追究』講談社文庫。
ここ数日、珍しく仕事とプライベートが忙しく、なかなか読書が捗らなかった。
2023年に逝去された鏑木蓮の医療&警察ミステリー小説である。捻りに捻り過ぎたせいか、終盤のくどさが目立った。
プロローグに描かれる事件の迫真描写。和歌山に住む母親の五十嵐菜摘が大阪で一人暮らしをする娘の五十嵐夏帆と電話で会話していると電話の向こうでただならぬ事態が発生する。
何者かに腹部を刺された美容研究家の五十嵐夏帆が大阪の三品病院に緊急搬送された。犯人は夏帆と別れた夫の八杉弘文と思われたが、事件を担当する大阪府警の刑事・成山有佳子の夏帆への聴取で否定される。懸命な