鏑木蓮のレビュー一覧
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鏑木蓮『見えない轍 心療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ』潮文庫。
心療内科医の本宮慶太郎を主人公にした新シリーズの第1弾。またまた宮澤賢治が登場する。今回は宮澤賢治の童話が事件解決の鍵を握るようだ。
事件の真相に迫る過程に説得力が希薄で、殺人の動機もトリックも拍子抜けする感じであり、ミステリーとしての面白さは余り無い。
京都の小さな町で遺書らしきメモを残して亡くなった34歳のパート女性・小倉由那。数日後、町で心療内科医を開業する本宮慶太郎の元に母親に連れられて女子高生の棚辺春来が診察を受けに来る。
摂食障害の棚辺春来は通学中に電車から亡くなった小倉由那が電車に向かい、春来を励ますかのよ -
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限界集落、老人の孤独死、無縁社会そして薄れゆく戦争体験といった社会問題を根底においてミステリータッチに仕上げた作品。
映画監督になることを夢見て故郷を飛び出したが、うまくいかず、アルバイトでアパート管理をしている青年門川誠一。彼はそのアパートで亡くなった独居老人・帯屋史朗の遺品整理をするが、見つかった8ミリフィルムに興味を抱く。フィルムに映っていたのは重いリヤカーを引きながら笑顔を絶やさない行商の女性。そして、もう一つ遺されたノートには意味不明な詩が記されていた。
これらに秘められた帯屋の人生を辿りドキュメンタリーを撮ろうと考えた門川は帯屋老人ゆかりの人たちを訪ね歩く。だが、その人たちは彼のフ -
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ひとりの老人の孤独死と遺品をきっかけに、主人公は彼の生き様を知ろうと思うようになる。手がかりを追っていくうちに、いろいろなことが判明してくる。ノートの謎、戦争中の隠された事実、帯屋が過去に関わった人々それぞれの思い、帯屋自身の心の動き。
読んでいる間ずっと、『知るためだけにここまで行動するかなあ?』という気持ちがついて回ってしまい。甲山の協力具合も少し不自然に感じてしまった。
ストーリーは面白かったし読後感もよかったのだけれど、気持ちが乗っかりきらずに読み終えてしまったのがちょっと残念。
少し不思議だったのが、この「エンドロール」にもひとつ前に読んだ「漁港の肉子ちゃん」にも東北の町が出て -
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鏑木蓮『疑薬』講談社文庫。
新薬開発をテーマにした医療ミステリー。
今まさに新型コロナウイルスのワクチンが世界中で使われ始めようとしている。普通なら数年掛けて行われる治験を数ヵ月に短縮し、副作用の懸念もある中で、言わば見切り発車での使用となる。本作で描かれるインフルエンザ治療薬の『シキミリンβ』はまさに薬の副作用の怖さをテーマにしており、決して他人事とは思えない。そんな興味深いテーマの作品なのだが……
鏑木蓮は好きな作家の一人だったのだが、これまで読んだ作品の中では低評価となる。余りにも薬医療に関して専門的な記述が多く難解な上に、ストーリー展開のテンポが悪く、途中何度か投げ出しそうになっ -
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ネタバレ何気ない描写やキャラのしぐさで、登場人物に深みを与えてくれるところが鏑木蓮の強みの一つだと思ってるのですが、序盤に怜花が近所の高校生相手に変顔を見せるという何気ない描写に「あ、この本良さそう」と予感しました。
こうした描写って、読み手にキャラの人物像をさりげなく、かつ深く伝えてくれてる気がして、読み進めれば進めるほどキャラが生き生きしてくるように感じることが多いです。そういう作品が好きな傾向が自分にはあるので、先に書いたような予感がしたわけです。
なので、感覚的には惹き込まれる点がいくつかありましたが、論理的には理解できなかった点もありました。
特に三品の目論見について。高齢者医療や老年 -
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終戦間際に実際に存在した、馬鹿馬鹿しいほどの作戦。その一つ「人間機雷」を題材にしたドラマ。
老人の孤独死と誰も引き取らない「遺品」から、確かに生きていた証を探っていくうちに、終戦間際に特攻作戦の実験中に起こった事故にたどり着く。
戦闘機によるいわゆる「特攻」、人間ロケット弾「桜花」、人間魚雷「回天」など、有名なもの以外にも、信じられないほど冷静さを失った作戦が実際に計画されていた。
同じ敗戦国のドイツと比べても、実に幼稚な「負け方」で、当時の政治レベルの低さが伺える。
でも、笑えないよ。
今でも「日本人がコロナに強いのは、民度が高いから」なんて、堂々と発言する政治家に、同じ匂いがするのに、そ -
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ネタバレ緻密に淡々と、これぞまさしく
刑事捜査の描写なのだと思った。
その捜査も片岡真子のひらめき抜きでは
成立しなかったわけで、そこが唯一の
フィクションなのだとすら感じた。
ここに描かれた犯人像も、伏線となる
カップ麺のイナゴ混入画像の捏造と拡散も
すべてがノンフィクションであるとしか
思えない…そんな世の中になってしまったのだ。
事実は小説より奇なりというが…確かに
もはや事実を超えるほどの奇想天外を
小説には求められないのだろう。
今の世にない奇想天外…もしかしたらそれは
「穏やかな日々」「幸せに生涯を全うする夫婦」
「大切な人を心から愛おしく思う恋人たち」
…そんなものなのかもしれな