あらすじ
十年前に失明した母と暮らす生稲怜花は、ある日矢島という記者に声をかけられる。
老人ホームで起きたインフルエンザの集団感染。その死亡者に処方されていたのは、母の治療に使われたのと同じ新薬「シキミリンβ」だというのだ。
母の失明の原因は――まさか。
乱歩賞作家が描く、製薬会社やマスコミ、数多の謀略が交差する圧巻のミステリー。
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Posted by ブクログ
薬をめぐるミステリー。新薬を使ったが故に失明してしまった母を持つ女性と、その事件を追っている記者、新薬を開発した製薬会社の社長代行、新薬を使用した病院などがからまっていろいろなことが明らかになる。
医療や薬のミステリーというのが変わっていて面白かった。
Posted by ブクログ
医者、製薬会社、患者。薬の持つ影響力は測り知れない。何の影響もなく完璧に効く薬は無いと思う。完璧な診断力を持つ医者もいないと思う。悲観しているのではなく盲信しないという意味で。
体調が悪い時は自分の体に聞いてみる。数日、色々やってみても自力対応が無理そうなら病院に行く。早く行くほうが良いだろうか?
Posted by ブクログ
鏑木蓮『疑薬』講談社文庫。
新薬開発をテーマにした医療ミステリー。
今まさに新型コロナウイルスのワクチンが世界中で使われ始めようとしている。普通なら数年掛けて行われる治験を数ヵ月に短縮し、副作用の懸念もある中で、言わば見切り発車での使用となる。本作で描かれるインフルエンザ治療薬の『シキミリンβ』はまさに薬の副作用の怖さをテーマにしており、決して他人事とは思えない。そんな興味深いテーマの作品なのだが……
鏑木蓮は好きな作家の一人だったのだが、これまで読んだ作品の中では低評価となる。余りにも薬医療に関して専門的な記述が多く難解な上に、ストーリー展開のテンポが悪く、途中何度か投げ出しそうになった。
10年前に失明した母親と共に居酒屋を営む生稲怜花は雑誌記者の矢島に最近老人ホームで起きた死亡事件の原因が母親の失明原因と同じではないかと告げられる。問題のインフルエンザの治療薬『シキミリンβ』という薬はヒイラギ薬品工業が11年前に開発した会社の明暗を分ける新薬だった……
本体価格840円
★★★
Posted by ブクログ
何気ない描写やキャラのしぐさで、登場人物に深みを与えてくれるところが鏑木蓮の強みの一つだと思ってるのですが、序盤に怜花が近所の高校生相手に変顔を見せるという何気ない描写に「あ、この本良さそう」と予感しました。
こうした描写って、読み手にキャラの人物像をさりげなく、かつ深く伝えてくれてる気がして、読み進めれば進めるほどキャラが生き生きしてくるように感じることが多いです。そういう作品が好きな傾向が自分にはあるので、先に書いたような予感がしたわけです。
なので、感覚的には惹き込まれる点がいくつかありましたが、論理的には理解できなかった点もありました。
特に三品の目論見について。高齢者医療や老年内科のことが作中すご~~~く価値のあることのように描かれているけど、医療過誤を隠蔽してまでやるメリットが私にはわかりませんでした。
それを含む、クライマックスの展開や話の内容はほとんど理解できていない気がしてまして、そのためか怜子や良治の行動も納得できなかったりピンと来ていなかったりします。
自分にもっと読解力や理解力があったら、本作に対する印象は大きく変わっていたかもしれません。最初に記したように、キャラがしっかり立ってるという点はとても良く、いい奴も悪い奴も、それぞれ自分なりの信念を持って行動していたところはホントに好みだったので……