鏑木蓮のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作者がどれだけ宮澤賢治を大切にしているかが伝わってきました。だから、ケンジとカトジが今回も生き生きと活躍しています。ケンジにとっては、たいそう悲しい時期にあたる今作品ですが、どう言うのでしょう、ケンジがケンジになっていく、その悲哀の道筋がここには読み取れるような、そんな一冊でした。
ミステリーとしては前作よりもちょっとボンヤリしたかもしれません。ワトソンカトジの活躍というか、存在がとても鮮やかでした。宮澤家の方々も納得の登場です。謎解きよりも人物描写で楽しめた本作品、だったかもしれません。
カトジがそばにいてこそのお話だとすると、次作はどこから始まるのか、次作が楽しみです。
ますむらひろしさんの解説も素敵でした。 -
Posted by ブクログ
宮澤賢治の人としての魅力がフィクションの中で存分に発揮されています。ミステリーとしては本格の部類なんでしょうね。謎の魅力よりも登場人物のキャラクターで読み進めた感じです。
敢えて二点、一点は時々、地元というか、そこに暮らしている人なら言葉にしないようなことを登場人物が話している部分があるような気がしました。その地方の人なら知っていることを、セリフの中で読者に説明させている。地の文の方がいいんじゃないかと思ったところがちょっとあったこと。二点目に、ケンジのセリフの中に「岩手県全土に風評被害が出かねねえ」みたいなのがあったのだけれど、ケンジのセリフとしてはどうなのかなあ、と思ってしまったこと。そこで、星3つとさせてもらいました。賢治の推理手帳1とあるので2もあるのでしょう。次回も読みます。 -
Posted by ブクログ
国文学科の卒論に選んだのが宮澤賢治。
小学校の高学年から高校にかけて、心の中で首を傾げながら彼の童話を読み重ねていった。
多くの童話や児童文学とは異なって、どうしてもふさわしい映像を思い浮かべられなかった。それは具象だけでは描ききれなくて、その証拠に、何本もの映画が作られたけれど、どれを観ても賢治の世界観…心象スケッチを再現しているとは思えなかった。
この本を見つけた時、最初は賢治への冒瀆だと感じた。法華経信仰に身を捧げ、妹トシをこよなく愛し、東北の農業振興に尽くした彼を、ホームズに見立てるなんて…。
ところが、である。そこに、私が思い描いたとおりの賢治がいたのだ。ふとしたことに目をつけると、もうそこから目を離せなくなる。誰が話しかけても、もう聞こえない。でも、人一倍の優しさで、ただ謎を解くのではなく、その陰にある苦しみや悲しみを抱える人たちの思いを包みこんで、不幸になってはならない人たちを、決して不幸な結末には導かない。
この作家は私と同じく、賢治を敬愛されているのだと思いました。そうでなければ書けない本です。