太田愛のレビュー一覧
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ネタバレ冤罪とそれに巻き込まれた家族の話。「23年前にいなくなった子どもを探してほしい」依頼を出した時点で母の香苗は尚が生きていること、そしてとんでもないことをしているのではないかと気づいていたとは…辛すぎる…。自分の死期が近づいても母の子を思う気持ちは永遠だなと泣けた。
拓は当時8歳。何も知らない無邪気で逞しい子どもだった。何も知らないから、尚が危ない目にあってる守らなきゃ!という気持ちだけで、以前尚に助けてもらった時と同じやり方で近づけさせることなく大人をやっつけた。でもそれが自分たちの父親だった。しかも冤罪だということが証明されて自分たちに会いに来ていたときに…。辛すぎるし、展開に容赦がない…。
そして尚は、父を無自覚に殺してしまった弟のこと、警察から疑われてしまっている母香苗を守るために、最終的には自分が「存在しなくなる」ことを選ぶ。12歳でそんな悲しい選択できんて…。尚が早くに大人になりすぎたこと、頭が良かったこと、思い切りの良さと行動力と、弟の父がわりとして、母にとって頼れる存在として、生きていたことが仇となって、自らが消えて罪をなかったことにした。本当は船を見て帰ってくるはずだったのに、なんて時に台風来てるんだよもう少し船待ってくれよ…泣
尚と拓と一夏を過ごした相馬は刑事として尚を探し、最後の殺人を止めた。楽しい夏の思い出に友達の失踪という出来事が加わり、この小説の中で描かれる23年前の夏が、周りの雰囲気も会話も今と対比してより鮮やかで夢心地に感じた。いなくなる日が近づくにつれて、真相が分かるにつれて、どこに救いを求めればよかったのか考えて苦しくなった。警察という組織がこの一家にとって敵だったために悲劇は起こった。冤罪は怖い。1番の被害者は間違えて逮捕された人だけれど、その家族が人殺しの家族として生きてきた時間に対しての対価は、誰が払うのだろう。尚が生きててよかったけど本当に辛い。寝込みそう。 -
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太田愛さんの本を最初に読んだとき、おもしろすぎて衝撃でした! 「犯罪者」「幻夏」「天上の葦」の3部作、大好きです!!
この「未明の砦」は文庫になるのを待ってました(でも高かった涙)
帯にあるように“社会派エンターテイメント”の本書ですが、先の3部作に比べて、“社会派”の部分が多くて少し重かったかなぁ
労基・憲法・共謀罪……もう少し“エンターテイメント”寄りのほうが好みです、でも期待に違わずのおもしろさ!!
警察や政治家、清掃員に会社経営者、週刊誌の記者や非正規社員たちがそれぞれの場所でそれぞれの役割を果たしてゆく、エンディングに向けての怒涛のような最終盤は、読みた過ぎて目が走ってゆく感じ、久々でした
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太田愛『未明の砦』角川文庫。
第26回大藪春彦賞受賞作。
以前、評判の高い『犯罪者』を読んだが、自分には合わなかったようで、以来、太田愛の小説からは距離を置くことにしていた。
本作『未明の砦』は大藪春彦賞受賞作にして、評判も上々ということで、ミーハーな自分は禁を破り、読んでみることにした。
人気テレビドラマ『相棒』の脚本も務めたことのある作家だけに、なかなか全貌が見えて来ない。そこが魅力という読者も居るのだろうが、短気な自分には少しじれったい。
非正規労働者を蔑ろにする大手企業の愚劣な犯罪と選挙のために大手企業を優遇する政治家の姿を描いた社会派サスペンス小説である。
自分も大学を卒業してからメーカーの工場に勤務しているが、自分の入社当時には非正規社員など居なかった。正社員の他に臨時社員とパート社員が居ただけだ。派遣社員が工場に採用されるようになり、企業は正社員という固定費を変動費に変えて不況を乗り切ろうと、正社員をリストラし、何時でも切れる派遣社員や構内請負会社の社員などの非正規社員を採用するようになった。
日本社会がおかしくなり始めたのはこの頃からだ。生き残った正社員も成果主義なる新しい人事制度により疲弊し、年功序列や終身雇用制度は崩壊する。自分の働いていた工場では過去に8度もリストラがあり、その度に自分は役員から遺留され、残ってきた。しかし、数年前に同期や友人が相次いで辞めるにつれ、自分の負担が大きくなるのに嫌気が差し、転職した。
風の噂では自分が辞めた後にも何とか残っていた同期は、妻子を残して自ら生命を絶ってしまったようだ。自分もあのまま頑張り続けていたら、どこかで破綻していたと思う。
さて本作。若い頃から工場で働いてきた自分には胸が熱くなるような小説であった。
大手自動車メーカーのユシマで働く非正規労働者の矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平の4人は共謀罪の容疑で逮捕される寸前にタイ料理店の突然の火事に乗じて逃走する。
この時点では4人が何をしようとしたのか全く解らないのだが、それが少しずつ明かされていく。
一方、所轄の刑事の薮下哲夫はこの事件には裏があると読み、独自に捜査を開始する。さらにその影では超法規的手段で日本を一変させようとするキャリア官僚が野心のために動き出していた。
日本では自動車業界は国策として政治家に護られている。特に世界トップの自動車メーカーであるトヨタ自動車などは一番その恩恵を受けているのだろう。トヨタ自動車が咳をすれば日本経済が風邪をひくとも言われている。そんなトヨタ自動車も本作のように非正規労働者により支えられているのだ。
完全に疲弊し、冷え切った日本経済を立て直すためには行き過ぎた非正規労働を禁止にして、正社員として手厚く扱うべきだろう。そうなれば、若者たちの結婚も増え、少子化も解消されるのではなかろうか。どっかの経済学者の口車に乗って、バカな首相が労働者派遣法を改悪した結果が今の日本の惨状なのだ。
本体価格1,350円
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思いもしなかった展開と結末に胸が熱くなった。
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。
標的は大手自動車メーカー『ユシマ』の非正規工員の
矢上・脇・秋山・泉原の四人。
だが、突如発生した火災に乗じて四人は逃走する。
誰かが警察の動きを伝えたのだ。
所轄の刑事・藪下は事件に裏があると読んで独自に捜査を開始。
更に超法規的手段で日本を一変させようとするキャリア官僚が
野心のために動き出す。
読み始めた当初は、逃走した四人がどんな闇を抱え、
そしてどんなテロ行為を行おうとしていたのか、
その謎が明かされるのを待ち遠しく読み進めていたが、
明らかになった事実は何てことないことだった。
むしろ、恐怖に近い戦慄が走ったほどだ。
日本においての労働者としての権利、そして現状を
全くと言っていいほど自分は理解していなかったことを痛感。
そして、この物語において行われていることが、
さほどフィクションとしてではなく
現実として自分の周りにも迫っていることなのではないかと
日本という国が心底怖くなってしまった。
陰謀論として片付けるのか、現実問題として受け止めるのか、
人はあまりにも判断力というものを失ってしまっている気がしてならなかった。 -
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ネタバレものすごく重く現代人が見なくてはいけない話だと思った。
最初はただのミステリーで結末がどうなるのかに注目していたが、物語の確信は現代の報道についての啓蒙と実際にあった事実を元にした警告だった。
平和ボケしていて、まさかそんな、と思うようなことが80年前当たり前に行われていて言論の自由を奪われ戦争に駆り出されていたことを思うと、情報の大事さや、現在の戦争をしている国でも同じようなことが起こっているのだろうと思わざるを得ない。
特に情勢が不安定な現代、メディアの情報操作について改めてきちんと目を見張っておかないとまた悲劇が繰り返されるという恐怖も感じた。
そんな警告を訴えながらも物語としても引き込まれ、最後まで飽きずに読み進められる文才は本当に素晴らしいと思う。 -
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ネタバレ天上の葦、上下巻読み終わったのでまとめて感想を。
老人がスクランブル交差点で天を指差して死亡ふるという印象的なシーンから始まり、終わりまでずっと物語に引きつけられた。おなじみの3人が公安に追われることになり、犯罪者、幻夏以上に緊迫した状態が続く。
そして、何よりも印象に残ったのは戦争描写。今まで色々と本を読んだりドラマや映画を見たりしてきたが、1番戦時下の状況がリアルで、夢にまで出てきて途中で読むのを休憩したほどだった。今回のテーマは報道であり、国から報道が規制されることの危機感、危険性を真っ向から取り上げている。戦時中に徐々に報道の自由が失われていった過程と、国からの発表を信じて亡くなっていった人たちの悲哀が凄まじい。第二部のここ、読むのきつかった。SNSが発達した今、そんなことは起こり得ないと思っていたけれど、メジャーな報道機関は簡単に抑えられてしまうのかも。そして個々で発信をしている人たちは、デマにも流されやすい。世論を動かすことなどやろうと思えば簡単にできてしまうのではという恐ろしさを感じる。小さな火のうちに消さなければ何もできなくなってしまうという言葉が何回も出てきているが、国民一人一人が自分たちの暮らしのためにその意識をもっていかないと恐ろしい状況を招きかねないことの警告のように感じる。
交差点で亡くなった正光や、曳舟島の老人たちが必死で守ろうとしたもの、これは戦争を経験していない私たち世代も絶対に守っていかなければならないものだと思う。 -
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地元をその支配下に置く大手自動車メーカー「ユシマ」に勤める非正規工員たちは、ある出来事を通して自分たちの扱われ方に疑問を抱く。過酷な労働環境、抑えられる賃金、そして蔑ろにされる安全と健康。仲間を集め立ち上がろうとする彼らだったが、ユシマは公安と手を組み、共謀罪の名目で彼らを犯罪者にしようとする。骨太な社会派サスペンスです。
リアリティ抜群なのですが、こんな現実があるとは信じたくないような……でもかなり現実にありそうなんですよね。誰にでもできる仕事とは決して言えないのに、簡単に替えのきいてしまう工員たち。命の危険にさらされながらも耐えるしかできない環境にはぞっとします。
非正規工員の彼らだけれど、決して愚かなわけでも努力が足りないわけでもなく、ただただ巡り合わせが悪いだけという印象です。生きるために働かなければならず、しかし生きている実感を得られないまま日々を暮らす彼らの姿は、絵空事でも他人事でもないのかもしれないと感じました。そしてどんどん知識を吸収し思考を重ねた彼らがユシマを相手に数々の戦略で攻め込む様にはわくわくします。とはいえユシマと警察、怖すぎるよ……。
とはいえもちろん、警察サイドにもまともな人物がいることにほっとさせられます。きっと大団円のはずだと信じて読みましたが、読む手の止まらない緊迫感が満載の一冊でした。 -
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失踪した公安警察官の山波を追って、相馬、鑓水、修司の3人は瀬戸内海の曳舟島へ。その島には、渋谷の交差点で天を指差しながら、絶命した正光の過去を知る「白狐」と呼ばれる人物の手がかりが。彼は一体誰で、正光は亡くなる寸前、何を指差していたのか…。
相馬、鑓水、修司の3人組、3部作の最終作。
死に際に天を指差した老人、失踪した公安警察官、政治家とマスメディアの関係、正光の過去を知る「白狐」、様々な点が結ばれて1つの大きな事件の全貌が明らかになった。
今回もどんどんどんどん話が深まり、絶対、上手く事が運ぶと思うんだけど、ヒヤヒヤドキドキしながら、物語の展開を楽しんだ。
ここ最近、戦争の話を多く読むが、毎回その描写が辛くて酷い。争いの一番の犠牲者は子どもたちなんだと改めて思った。
そして、「表現の自由、言論の自由」とマスコミについて、考えさせられた。
これで3人ともお別れかと思うと寂しくて、寂しくて。また、この3人(プラス四郎)の作品に出会いたい! -
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白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で、何もない空を指さして絶命した。死の間際、老人は何を指差していたのか?その謎を突き止めるよう興信所を営む鑓水と修司のもとに依頼が舞い込んだ。依頼人はあの人物。報酬金は1000万円。そして老人が死んだ同じ日、1人の公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられた停職中の刑事・相馬。2つの事件に鑓水、修司、相馬の3人が挑んでいく。
ついに、鑓水、修司、相馬の素敵な3人組の3作目に突入。今回、影の主人公は鑓水。
不可解な老人の死、不明の公安警察官、新興宗教、マスコミと政治家の関係、戦時中の日本軍。またまた、多くの点が現れた。これが後半、1つの線となり、事件は解決していくのかな。
『犯罪者』もそうだったけど、上巻だけじゃ、さっぱり事件の全容が掴めない。だから、気になって気になって、どんどん進んじゃう。
早く下巻を読み始めないと…。
『幻夏』に出てきた柴犬四郎が張り詰めた空気を和ませる。四郎は、事件が解決するまで、いい子にペットホテルで3人を待てるかな。 -
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白昼の駅前広場で、通り魔事件が発生した。4人もの死者が出たが、犯人は近くの雑居ビルで薬物中毒により死亡。ただ1人助かった青年、修司は搬送先の病院で、見知らぬ男に「あと10日、生き延びてくれ」と言われる。その後、謎の男に襲撃された修司は、一匹狼の刑事、相馬に助けられる。修司は相馬の古くからの友人、鑓水の所に匿ってもらうことに…。
太田さん、すごすぎます。皆さん、絶賛するのがわかります。先日読んだ『幻夏』も心が揺さぶられる作品だったけど、今作もなかなかもの。
通り魔事件から、謎の奇病、巨大企業の古すぎる体制、警察組織の裏の顔、次から次へといろんな悪いものが出て来ます。でも、ぐちゃぐちゃにならずにきれいにまとまって、1つの方向に向かっていきます。脚本家出身だけあって、映像が目に浮かぶように、どんどん読み進められます。
まだ上巻した読んでないのに、こんなにも面白くて先が気になるなんて…。
この勢いのまま、下巻に突入です。 -
Posted by ブクログ
事件を大きなジグソーパズルとして、ばら撒かれた謎は小さなピースで、ひとつずつ読んでいって形にしていく感じ。
いやまぁ、ミステリーとはそういうものなのでしょうけど、この3部作はどれもそのピースが細かいし、パズルは大きくて難しい。
そんな風に思えました。
特に今作は、舞台も田舎の小島へ移動するし、戦争や報道の在り方など、読んでいて一番しんどかったかもしれない。
綿密に練られた事件、謎、全て回収されていく後半は、鮮やかでお見事以外の言葉が見つりません。
読んでいる間の充実感。
物語の満足感。
読み終わってしまった喪失感。
もう、全て味わえました。
どれも少しずつ毛色の違う3部作。
はー面白かった。