太田愛のレビュー一覧
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太田愛さんの作品は『犯罪者』『幻夏』に次いで3作目。個人的には前2作の疾走感、まるで映像作品を観ているかのような追いつ追われつの駆引きのほうが好みではあったものの、太田さんならではの社会性は今作品も負けず劣らず、寧ろより一層の恐ろしさを持して我々に警鐘を突き付けてくる。
どんな時代の報道の中にも進んで権力にすり寄る者たちがいる。自らの下劣さを処世術や政治力と思い違いをした人々です。批判の声は、権力の名を借りた暴力によって次々とねじ伏せられていく───
マスメディアによる報道の歪曲性がなんとなく論じられる現代において、膨大な文献を用いた過去の情報統制を引き合いに、その危険性を2段も3段も深く論駁する。しかもミステリーとして読ませながら、それらをプロットしていく手腕は圧巻である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ派遣労働者の若者4人が主人公で、労働問題と国家権力の暴走に立ち向かうという内容。
大手自動車メーカーの工場で働く主人公ら4人は、過酷な労働環境や不当な扱いに苦しむ中、仲間との出会いを通じて、現状を変えようと立ち上がる。
自分なりに知識を吸収し、労働組合結成まで成し遂げる。しかし、大企業にとって都合の悪い彼らは、共謀罪の適用対象として警察に追われる身となる。そんな状況でも、大事な人の死を無駄にしないために、逃亡しながらも戦うことを諦めない。
逃亡を続ける主人公たちは、労働者の権利や人間の尊厳を守るため、大企業や権力機構に立ち向かっていく。
格差社会、非正規雇用、政治への思考停止、日本人という民族の悪いところが盛りだくさん。
主人公たちの成長と連帯があり、挫けない姿勢が良かった。 -
Posted by ブクログ
下巻でまとめて感想を書こうかとも思ったが、現状の本作に対する感想を留めておきたいと思ったため上巻のみでの感想となる。もちろん下巻も読み最終的な感想も書こうと思う。
信頼している読書系YouTuberが絶賛していたので購入。
ただ現状そこまでハマっている感じではない。
もちろん面白いし、スケールの大きい事件に挑んでいく主人公たちを応援しながら読んでいるが、いかんせんどう留まっていくのか予想ができない。
それゆえ下巻での怒涛の伏線回収に期待してしまう。現状バラバラな事件がやっと細い糸で繋がり始めたがまだ何も分からない。この何も分からないのが個人的には少しネック。
先が見えなさすぎて今自分の読んでいる物語が綺麗に畳まれるのか不安で仕方ない。しかも下巻は上巻よりもページ数が少ない。このスケールの大きい謎を高々400数ページで本当にまとめ切れるのだろうか、不安は膨らむばかりである。
ネタバレもできないし、下巻もまだ1ページも手をつけていないので、私の不安を吐露するだけの感想になってしまったがこれがリアルな感想であると開き直ってこの駄文を締めくくろうと思う。 -
Posted by ブクログ
購入してから労働組合が一つのテーマになっていると知り、組合活動に長らく身を置いているものとして興味深く読ませてもらった。
終盤、主人公らの主張に皆が耳を傾け、連帯が広がるシーンなど、正直、現実的では無いところも少なからずあるものと感じた。労働者が全体で一致して動き始めることは、そうそううまくはいかず、それでも何とか取りくみを継続させていくことに、日々困難さを感じている。そうした中、作品から何かヒントをもらえるかなとも期待していたが、そこには至らなかった。また、組合の活動としてはこれから、と言うところで終わってしまうことも若干残念だった。
とは言え、エンタメとしては、やはりこれまでの作品同様、珠玉の出来。労働組合という地味で、あまり一般ウケもないであろうことをテーマとしつつも、「共謀罪」や政治的な野望を絡ませ、スリリングなサスペンスに仕上がっており、どんどん先を読みたくなった。また、解説にも記載されていたが、こうしたテーマで新聞連載するのは、なかなかのことだとも感じた。若い世代に、少しでも労働組合のことを知ってもらえる、きっかけになってもらえれば、と願う。
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Posted by ブクログ
ディストピア小説。でも『大きな鳥にさらわれないよう』や『密やかな結晶』みたいな美しさとか抒情的な世界観を味わうディストピアでなく、もっと現実的で血なまぐさくて刺激的な方向性の恐さの(強い言葉でいえば悪趣味な)作品だった。
まぁ・・テレビドラマの脚本家さんだし。そういう恐さが真骨頂の作家さんなのかもしれないけれど。
最近出逢った若松英輔さんの文章の影響で、「静かで美しい言葉ほど、自然と悲しみがにじみ出てくるし記憶に残る」と思っており。そういう意味ではこの作品は、悲しみにひたったり自分の生き方を悔いたりする文学ではなく、シンプルに恐さを味わうためのエンタメだったなという読後感。(でも、若者にはこのくらいわかりやすいディストピアのほうが刺さるのかな。) -
Posted by ブクログ
ネタバレ天上の葦や犯罪者がとても面白かったので、期待して購入。労組潰しのために共謀罪を使う権力者の横暴という、他の作品と通底するテーマ。ただ、あれだけ団体交渉が進んでいて、ネットに副社長と団交した時の画像まで上がっているのに、全て無かったことにしようとするのは、現代の炎上の状況からして、権力者側としては、やや杜撰な戦法ではないかと感じた。また、矢上達が文庫の本で啓蒙されることが本作における重大な契機であるが、現実の矢上のような境遇にある人が同じ状況になったとしても、夏休みを満喫するだけで、おそらく文庫の本は読まないのではないかなと感じた。そういう意味で、少々野暮な感想ではあるが、リアリティに欠くなと感じた。