太田愛のレビュー一覧
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第26回大藪春彦賞受賞作! 希望と成長の社会派青春群像劇。
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった― -
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ネタバレ10月10日土曜日、いつもと変わらないスクランブル交差点の中央で何も無い空を指さしながら死んでいく老人がいた。老人の名前は正光秀夫。その後、興信所を営んでいる鑓水と修司のもとに元与党の重鎮である磯部満忠の私設秘書、服部裕之が「1000万を支払うので正光が何を指したのかを調べろ」という依頼をされる。ほぼ同時に、警察官を停職中の相馬のもとに警視庁公安部の前島から部下の山波が行方不明になったので探せという命令を受ける。正光と山波を調べるうちに2人は繋がっており、正光は山波の逃亡を手助けしたのではないかという線が浮上する。3人は正光の旧友であると考えられる白狐を追って岡山県の離島、曳舟島へと向かう。
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購入済み
おもしろかったー!!あの人の真意とか、あの人の決意とか、あの人の最期とか、疑惑とか謎とか悪とか正義とか……あぁもう、ぐわぁー!ってなる。読んでいる間中、熱い塊を心臓にぐりぐり押しつけられているみたいだった。
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どこかの街の物語、でもどこにでも起こってきたし、今も起こっているとても哀しい美しい物語でした。
最後の部分で、「人がより良い世界を願い、それを実現しようとする時、そこには長く困難な歳月が横たわっている。(中略)細い水の流れが集まって小川となり、それが河となり、やがて力強い大河となってついには海に至るように、それが実現する時には かつて奇跡として願われたものは、あたかも自然とそうなるべくして成就されたかのように見える。」
いまこうして暮らせているのは、百年以上前の人たちにとっては奇跡なんだろう。
当たり前に思って感謝も忘れてる私たちをみたら、彼らはなんと思うだろう。
でもきっと、アレンカやマ -
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最初、現代日本が舞台じゃないのか…と敬遠していたが、読み始めると、さすが太田愛さんだ!ってなりました。オーディブルで先に『未明の砦』を聴いていて、それがちょっと合わなかったので、あまり社会派すぎるのも…と思っていたけど、多分『未明の砦』が合わなかったのは自分の問題に近すぎて、耳を塞ぎたい話題だったからかも知れない。民選が廃止されても、中央府に芸術や文化を統制されても声を上げなかった多くの人々と同じように。
他の方のレビューに「一冊かけて道徳の授業をされた気分」という言葉があったが、確かに説教じみているところはある。しかし過去も未来にも、現在にも通じる話であり、この作品が鳴らす警鐘に耳を傾けるべ -
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これはすごかった。
最後までずっとすごい。とても面白かった。
どうにかこうにか映像化してほしい。
国家権力、大企業の圧力、一国民の小ささ。
派遣社員、期間工、正社員…いろんなくくりがあるけれど、そもそも法律の定義する社員と従業員、労働者との違いについては初めて知り、驚いてしまった。
大手自動車会社ユシマの工場労働者の悲惨な労働体制を改善すべくどうにかこうにか奮闘する派遣、期間工の4人。
構造的なしんどさが続く中、最後までどうなるんだと、気になってしょうがなかった。自分の知識の無さも実感できたし、社会派小説としてもただの小説としても万人におすすめ。
登場人物は多いが頑張って読んでほしい。
今 -
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太田愛氏の魂を込めた大作。読み応えずっしりな社会派ミステリーが好きな人におすすめ。
著者が伝えたいテーマは明確なのだが、ストーリーは極めて複雑である。上下巻2冊と思えないほど濃く、長く感じる。よくここまで書き広げて収拾するな、と感心してしまう。登場人物が多く男ばかりなので、誰が誰か分からなくならないように時間のある時に一気読みしていただきたい。
ストーリーは、ある老人が渋谷のスクランブル交差点で天を指さして絶命した。その姿は誰に見せたくて、どういうメッセージがあったのか。その謎を解くべく依頼された探偵事務所のメンバーたちと、警察組織に使い倒される人々が、瀬戸内海の小島に導かれ物語が展開する。不 -
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「犯罪者」、「幻夏」にも登場した個性豊かな3人の主人公が、日本中を注目させた、ある奇怪な出来事の謎を解明すべく、またまた大活躍する大作の上巻となります。
今回の事件では、複数の公安警察官の動きがポイントとなっていますが、先の展開が知りたくてたまらず、「犯罪者」や「幻夏」と同様、ページをめくるのが止まりませんでした。
そして、後半、物語の舞台はあるキーマンを探しに瀬戸内海のある小島に移るのですが、そのキーマンが誰なのか、必死に頭を回転して推理している自分がいました。
島の住民はみんなが排他的であり、全員、怪しく思えてきますね。このあたりの人間描写が、著者は本当に上手ですね。
東京のど真ん中 -
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ネタバレ犯罪者、幻夏と読み進めてついに三作目の天上の葦。
犯罪者・上とは打って変わって天上の葦・上を読み終えても謎が多すぎてまだまだ繋がらない部分ばかり。犯罪者・上ではドキドキが止まらず、ミステリー・サスペンス特有の楽しさが全面で下を手にしたが、今回は天上の葦・上を読み終えての感想は「?」。ここからどう転がっていくのか。とにかく上だけでも情報量が多くて一回整理しないと…という気持ちもあるがまずは下を手にしてみようと思う。
そして全てがつながった時、再読したい。
犯罪者では繁藤、幻夏では相馬。そして今回は鑓水のバックグラウンドにも触れていて、三作それぞれで登場人物を知れるのもまた良い。