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「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子
「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!
高知市の「TSUTAYA中万々店」書店員、山中由貴さんが、お客様に「どうしても読んで欲しい」1冊に授与する賞、第4回山中賞受賞作。
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Posted by ブクログ
再読です。前回は電子書籍、今回は文庫本。前回読んでから1年半、状況はますます悪化しています…
→前回の感想
解説のとおり恐るべき傑作だと思います。読み終わって茫然自失、溜息すら出ませんでした。久しぶりの太田さんでしたので大いに期待して手に取りましたが、冒頭いままでと全く異なるトーンに驚きました。それでも読み進めるにつれ根底はは同じと気付き、長い物語ですが一気に読まされました。感想や思いがたくさんありすぎて書ききれませんが、私は風刺というよりも反省のない人類への警告と読みました。ナチスドイツ、日本陸軍、そして極右勢力に牛耳られた今の日本と、人間は性悪で経験を生かすことも反省することもできない動物なのです。多少の時間稼ぎに過ぎないのでしょうが、安倍晋三に続き極右の皮を被った私利私欲だけが目的の高市早苗が国のトップにならなくて心から良かったと思います。
「中央府は骨の髄まで腐りきってる。今に始まったことじゃないが、あそこにいるのは甘い汁に群がる亡者みたいな連中ばかりだ。少しでもいい思いをしようと上の人間におべっかを使うほか能がない」→これって霞ヶ関の官僚や大手町や丸の内の経済団体のことですよね。
「これまでと同じように言われたとおりにしていれば、今より何倍も悪くなることはない。みんなそう思っている。羽虫も町の人間も、伯爵や中央府のほとんどの人間も。でもそうじゃない。力がひとところに溜まって動かなくなれば、代謝をやめた生きものみたいに腐っていくだけ」→前半は日本国民のこと。後半はこの国そのものを指していますよね。
「あそこには二種類の人間がいる。 ひとつは始まりの町の人間であることを大いなる誇りとし熱烈に先祖を信奉して満たされない自負心に悶々とする人々だ。もうひとつは自分が始まりの町の人間であるのを当たり前だと思い目先の生活と他人へ不満だらけの人々。どちらの人間も羽虫を虐げることで瀕死の自由を延命し、なんとか誇りと自尊心を保っている」→高市早苗に投票した様な人と選挙に行かないくせに文句ばかり言っている大多数の国民のこと
「みんな死ぬ……」 オト先生の目は恐怖に見開かれていた。 「あの子たちは、従うことしか教えられていない。それも、ただ従うのでは足りない、進んで従わなければいけない、学校は、私たちは、そう教えてきたんです。進んで従う者を褒め、そのような態度を競わせ、優劣を評価し、自発的に従う態度を叩き込んだ。そして、それが習慣として身につくまで繰り返した。そうです、まさに歯磨きのように習慣になるまで」→まさに安倍晋三が目指した美しい国、道徳教育、愛国心
「夥しい死は、無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または選択と思わずに同調した結果」→無関心な日本人が招く近い将来の日本のことです
Posted by ブクログ
トゥーレがずっとヤヤトゥーレで、アフリカの話か? 全然違った、社会風刺強めのダーク・ファンタジー。ある町に蔓延る感情を、被差別者(羽虫たち)がそれぞれの立場から情緒たっぷりに描く。失われた記憶を追い求めた者、変革を試みて死んだ者、使命のために出て行く者がおり、最後には町全体が崩壊に至る。語り口は皆生き生きとしているのに、ぽつぽつと灯る希望の光が容赦なく消え失せていく展開は絶望そのもの。狂人と見做された女はひっそりと息絶え、母は自分の死と引き換えに息子の尊厳を守り、全てを見てきた魔術師は死者と会話する。戦争や人の悪意で多くの移民が死に、生き残った者がその業を背負う、そんな構図が常にある。
トゥーレはヤヤ・トゥーレではなかった。
Posted by ブクログ
どこかの街の物語、でもどこにでも起こってきたし、今も起こっているとても哀しい美しい物語でした。
最後の部分で、「人がより良い世界を願い、それを実現しようとする時、そこには長く困難な歳月が横たわっている。(中略)細い水の流れが集まって小川となり、それが河となり、やがて力強い大河となってついには海に至るように、それが実現する時には かつて奇跡として願われたものは、あたかも自然とそうなるべくして成就されたかのように見える。」
いまこうして暮らせているのは、百年以上前の人たちにとっては奇跡なんだろう。
当たり前に思って感謝も忘れてる私たちをみたら、彼らはなんと思うだろう。
でもきっと、アレンカやマリやコンテッサみたいに、思いっきり楽しく生きて!
って見守ってくれている気がします。
あらゆることに感謝を忘れずにいたいと思いました。
Posted by ブクログ
最初、現代日本が舞台じゃないのか…と敬遠していたが、読み始めると、さすが太田愛さんだ!ってなりました。オーディブルで先に『未明の砦』を聴いていて、それがちょっと合わなかったので、あまり社会派すぎるのも…と思っていたけど、多分『未明の砦』が合わなかったのは自分の問題に近すぎて、耳を塞ぎたい話題だったからかも知れない。民選が廃止されても、中央府に芸術や文化を統制されても声を上げなかった多くの人々と同じように。
他の方のレビューに「一冊かけて道徳の授業をされた気分」という言葉があったが、確かに説教じみているところはある。しかし過去も未来にも、現在にも通じる話であり、この作品が鳴らす警鐘に耳を傾けるべきであるとも感じた。テーマは『未明の砦』とほぼ同じであるのに、こちらでは素直に受け取れたのは、ファンタジーという体裁をとっているためだと思う。ディストピアが完成するまでの「始まりの町」の歩みを4人の語り手を通して丁寧に描いている。太田愛さんの描かれる人物はどの作品でも魅力的だが、本作でも遺憾無く発揮されている。ストーリーの関係上、嫌な奴が多い本作だが、語り手たちはとても誠実で不器用だ。そんな彼ら彼女らの人生の物語として読み進めるうちに、作者の主張も自然に受け入れることができた。
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小説・文芸
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