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ドラマ「相棒」などの脚本家としても活躍し、『未明の砦』で大藪春彦賞を受賞。骨太の社会派サスペンスの書き手として独自の存在感を発揮する太田愛のもう一つの顔。日本推理作家協会賞候補となった「夏を刈る」、半自伝的小説「給水塔」を含む待望の第一短編集。
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Posted by ブクログ
2年前の冬読んだ「未明の砦」 共謀罪の標的にされた大手自動車メーカーの若い非正規労働者たちが、逮捕寸前に逃亡し…。 これは日本の現実を撃つ社会派の大作だった。 友人たちに勧めまくった。 それまでに太田愛はすべて読んだ。ハズレはなかった。同じ市の出身ということもあり誇らしく思っている。 本作は初の...続きを読む短編集。5つの小説とエッセイが1本。自分なりに分けると、 1つ目は戦争。 3つ目と4つ目はミステリー。 5つ目とエッセイは不安。 とでもしておく。3つ目は以前に文庫のアンソロジーでも読んでいた。 さて残りは2つ目の「中庭 サイレン」だ。中味は書かないが、最も私の琴線に触れた作品だった。 先に妻を亡くし、一人息子は独立し、住み慣れた団地の最後の住人となった普通の男が、部屋を去る時が来て…。 人の心の襞のわかる作者だ。
久しぶりの太田愛さんの新作短編集。近未来を想像させるのもあれば、ミステリーもあり。流石に読ませる力は凄い。 度肝を抜いたのは『中庭〈サイレン〉』 見事にミスリードさせられた。何か事件が起こる訳ではない(最後は事件だけど)けど見事に騙された。 ミステリー2篇はさりげなーく過去と現在の日本の問題点をち...続きを読むょっと皮肉を込めて絡めている。
ノスタルジックだけど不穏な作品集。太田愛さんが脚本家としても活躍されているためか、ドラマのように場面場面が頭に浮かびました。
死の香りを纏う短編集。どの短編も空気感が好きで、それぞれにのめり込む。特に夏を刈ると鯉はめちゃくちゃ引き摺る。死と嘘の漂う感じがほんまに良くて、気持ちが複雑に絡まり苛まれる。私も後から来る人のために石を退けておく側の人間として生きたい。
初めて太田愛さんの著書を読んだ。一つ一つの描写が細かく、それの積み重ねによって情景がより繊細に浮かび上がる体験をした。言葉や表現の選択が非常に美しい。なぜこんな言葉が使えるか知りたい。 満点をつけなかったのは、おそらく自分の読書力が足りなくて十分に作品の魅力を感じきれてないからかと感じさせられたので...続きを読む。 最後の短編なんかは、なんでこんな物語が書けるのか本当に不思議。中学生のなんとも形容し難い感情を給水塔と掛け合わせて表現していて、物書きの才能に溢れた天才の子供しか描けないやろという感じ。 他の作品も読んでみたい。
自分の心の拠り所の場所 今の自分を作ったはじまりの場所 その場所や景色と共にある 幸せな記憶や忘れたい思い 普段振り返ることはないけれど 自分にとってホームベースのような 場所や景色は永遠にそこにあるわけではなくて 消滅することでそこが大切な場所だとわかる それを教えてくれた 5つの物語でした 懐...続きを読むかしい景色が思い浮かぶ お話もありました 遊戯室(十月の子供たち)は 現在進行形の ホームタウンの略奪の話では? 読んだ後 暫くしてその事に気がつき いたたまれない気持ちになりました
5つの短編集と1つのエッセイでなりたっていた。短編集は不安と悲しみを与えてくれる。そして余韻を残して終わってしまう。これも著者の作風のひとつかも確かに心に残る一冊だった!
社会派ミステリーのイメージが強い太田さん。みなさんの評価も高い作品が多く、ずっと読んでみたかったが、なかなか読む機会がなく、ようやくこの短編集を読んだ。 が、短編5作品とエッセイからなるこの作品。全然社会派でなく昭和レトロなノスタルジックなものばかりで、太田さん初読みの私には「あれ?」っとなった。...続きを読む 今までの作品が好きな方にはあまり評判がよろしくないようだが、日本推理作家協会賞にノミネートされた『夏を刈る』や『鯉』などは「最後にそうきたか!」と驚き、最初の作品『十月の子供たち』は80年前の日本や今まさに起こっている遠方の国の様が感じられ、胸の締めつけられる思いになった。 次回はぜひ太田さんの長編小説を読んでみたい。
ノスタルジックで幻想的ながら、うすら寒さがひたひたと迫ってくる作品集 #最初の星は最後の家のようだ ■きっと読みたくなるレビュー 太田愛先生の作品集。「トワイライトゾーン」に吸い込まれたような世界観で、幻想的でありながらも、うすら寒さをひたひたと肌で感じるのです。 いつもの先生が題材にあげる社会...続きを読む課題を提起するお話から、人生や死に対する恐怖を描いた作品もある。バラエティに富んでるので、飽きずにあっという間に読み進めちゃいますね。 なお各編の表題名は、家の間取り名とタイトルがセットなっています。旅立つ前に帰ってきたような…いや、初めて訪れる家に来て出会ったような、そんな作品集なんですよね。細かな仕掛けも楽しませてくれました。 ■各短編の簡単レビュー ●遊戯室 十月の子供たち 〈わたし〉と〈ぼく〉二人称の物語。仲睦まずい家族が、ある日から地下室で生活を始めることになった。両親は宝さがしに出かけるのだが… 幸せと不幸せの境界線が如何に頼りないものか痛感させられる作品。安定はかけがえのないものであり、慣れっこになるとやバランスが取れていただけということを忘れがちになる。 ●中庭 サイレン 団地に住む男の物語、彼は間もなく引っ越す予定。団地で生きてきたこれまでの記憶を振り返っていく… 短編のお手本のような作品、こんなにも短いお話なのに、人ひとりの人生を豊潤に描いてる。我が家の近くにも本作に出てくるような団地があるんだけど、一部屋ずつにそれぞれの人生があったんだろうと哀愁を感じてしまう。 ●舞踏室 夏を刈る【おすすめ】 かつての豪邸の解体工事中、井戸の中から白骨死体が見つかる。地方新聞記者の白石は、住み込みで働いていた女中に取材を訪れていた。当時十五歳だった少女の記憶が訥々と語られていく… 太田先生の力強い筆致と、重厚な課題提起に痺れる作品。どんなにきれいごとをいっても、私はこの罪は許したくないですね。今やメディアでもあまり取り上げられず、大きく語られないのも腹立たしいと思っています。 ●書斎 鯉【おすすめ】 若かりし頃からお世話になっていた叔母が亡くなった。実家に帰り当時の写真を見て思い出すことがあった。伯母と私、そしてもうひとりいた友人のことを。 古い日記のページをめくるような物語、目の前にはセピア色の世界が広がる。友人から言われた生き方に関するセリフは至極の一品。たとえ世間と違った価値観や信条を持っていても、胸を張って生きたい。 ●階段 給水棟【超おすすめ】 少女の夏休み、友人たちと遊びながら過ごす。彼女はビルの上にある給水塔に飲み込まれるような恐怖を感じ… ゲーム「ぼくのなつやすみ」みたいな世界観、ノスタルジーに浸れる作品。幼い頃、生まれて初めて「死」の不思議さに相対した時の感覚が濃厚に描かれているのです。 本書最後のエッセイ『異界、異形の者をめぐる記憶』と共鳴していますね。このエピソードもホント良くわかる、何処にも逃げられず押しつぶされてしまうような不安感。未だに忘れられない。普段は蓋をして考えないようにしている死、病気や怪我をするとすぐにあの頃に引き戻されるんです。
理不尽さや、やるせなさ、世の中の無情に重いく暗い気持ちになった。子どもの頃には気づかなかったことに、大人になって改めて気づくこともあるだろう。知らなければよかったのか、苦しくても知るほうがよかったのか、答えの見つからない問いばかりで、1冊読み切るのに時間がかかった。
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太田愛
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