感情タグBEST3
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著者の「犯罪者」からの3部作は、ミステリ系の極上のエンタメだったが、これは作風が違う。
異国情緒のある導入部で、ファンタジーなのか何か、最初の40ページほどは物語の全体像が見通せずとまどったが、一人の失踪発生後は物語に引き込まれた。
ミステリ好き、ファンタジー好きとか関係なく多くの人に読んでほしい。
登場人物一人ひとりの悲しみが伝わってきて、読んでいて切ない。でもそれだけの話ではない。読者に訴える言葉の力が強い。
読み終えても長く心に残る物語です。
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社会派エンターテインメントの雄が贈る衝撃作
「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子
「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!
面白かった。様々な現代の問題が組み込まれた寓話的な作品。架空の街を舞台にしてあるものの、現代に似通う思想や構造である点が良かった。
民主主義から衆愚政治になり、全体主義的な思想が蔓延るようになるのが、今の日本のようで、この作品の終わり方に通じるものがあるのでは、と思いゾッとした。しかるべき時に声を上げないと、この世界の人たちのように自ら人権といったものを放棄し、ディストピアに陥っていますのであろう。
また、羽虫と言われるような差別人種や伯爵といった上級階級の人がいることも今に似通っていて恐ろしかった。
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★★★★★+
少年、怠け者、葉巻屋、魔術師4人の視点で綴られる、ある街に起こった悲しい出来事
これはディストピア?歴史?現実?
読む人によっていくつもの感じ方がある
過去に学ぶための作品なのか?あるいは現在の我々に対する警鐘なのか?
解き明かされる少年の母に起きた真相はとても深い
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『天上の葦』で過去の戦争から、今度は遠い未来から作者が現代に鳴らす痛烈な警鐘。
このディストピアは紛れもない今私たちが生きている世界が辿るであろう運命の物語だ。
第一章のトゥーレの母親の失踪をきっかけに〈始まりの町〉の様々な“顔”が炙り出されていく過程はスリリングで、結末を見届けたくなる興奮が止まない。
多様性を認めようとなりつつあるこの社会、考えることを大きな力に明け渡していないか怖くなる。
奇跡を願う世の中になった時にアレンカやコンテッサ、4人の語り部たちのような先を見て屈しない生き方を引き継げるだろうか。
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いつもの太田愛作品のつもりで読み始めたが、様子が違う…どこかで軌道修正されるかと思ったら、そうでもなく…これはなんなんだとずっと思いながら、最終章。
何かがわかった訳でもなんでも、謎が解けた訳でもないけれど、号泣だった。
今まで読んで来た本の中でベストに近い。
Posted by ブクログ
羽虫(移民)達がしいたげられる架空の街でおこったことを、4人の目線で語る。
『レーエンデ物語』の一章かと思うようなお話。
太田愛さんの鑓水シリーズとはガラリと違うものの、
現状を楽な方へ選択していくとこうなっていくのだ、という『天上の葦』でのテーマを彷彿とさせた。
最後は涙が出そうだった。
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太田愛さんの他作品と作風こそ違えど社会への警鐘という根本は一緒だと感じました
舞台は始まりの町、1人の流れ者が町から姿を消すことから物語は始まる
なぜいなくなったのか、消えなければいけない理由があったのか
「この町は根が傷んでいるんだ、もうずっと以前から。深い所から腐っているのに、みんな気づかないふりをしてそれを認めようとしない。」
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有り得ないほどに有り得るかのような物語
悲しすぎて読むに耐えられない場面もあったが
それも含めてこの世のどこかで起こりうる現実
寓話的で引き込まれるストーリー展開は秀逸で
読み手の視点で考えさせる手法がすごい
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テレビドラマの脚本を手がけ、「犯罪者」シリーズのノンストップエンターテイメントで唸らせてくれた太田愛さんによる、これまでの作品とは大きく変わった寓話小説。
ただし、そこはさすがにこの作者。寓話の根底には、現代社会が抱える課題が描かれています。
社会派エンターテイメントへと流れていく過程で書かれた作品なのでしょう。
とっつきにくいけど、2回読むと、この小説のプロットが実に巧みであることに気付かされます。きっと。自分は一回しか読んでませんが(笑)
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2024-01-05
こう来たか…ミステリかと読み始め、今とは異なる架空の街でのファンタジーかと思いきや、ガッツリイマココを寓意した風刺小説。
この小説が炭鉱のカナリアでは無いことを祈るばかりです。嫌だから祈っただけじゃダメなんだってば。
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この小説の舞台となる国も時代も明らかではないが、その中央集権的な統治が進んでいくところは幾つかの実在の国を思い起こさせる。氏名や地名からは東欧のような感じも匂わせるが、いつの時代だかの日本のようなところもあるし、あるいはこれからの•••
太田愛の痛快エンタメ作品とは趣きの異なる寓話のようなファンタジックな小説だが、独裁、腐敗、謀略、癒着といった闇の世界が見せて夢か現実がわからないような恐ろしい社会を描いた社会派空想小説といったところ。すでに発刊から数年を経ているが、今だからこそのリアリティーもあってスリリングな展開にドキドキした。政治に無関心だと今にこうなるよ、という警鐘が聞こえてくる。
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これまで読んだ著者の作品のイメージとは、全く異にする小説なので、戸惑いながら読むことになった。
序章から始まり、4章で構成され、トゥーリ、マリ、葉巻屋、魔術師と、それぞれ異なる語り手が話を始める。
彼らの名前からはどこの国とも想像が付かず、彼らの住む町も「始まりの町」と呼ばれ、SFか寓話か、なんとも捉えきれなディストピアの世界が広がる。
この世界では、中央府の印が入った推薦本一色となり、その他の本は認められず、地下出版した秘密の印刷所は警察に急襲され逮捕されるという。逮捕者は中央府の矯正施設に送られるなんて、まるで北朝鮮か中国を思い起こされるが、この日本でもいつかはあり得るか。
政党間の憲法改正で、緊急事態条項とかが論議されている。こういった法律の危険な側面は、松岡圭祐著『高校事変』で語られていた。
底流にあるのは、やはり著者らしい現代への警世であり、話が進むにつれ、著者の警句というか現代及び将来を見据えた言葉が綴られる。
「強大な力の独占は災い以外なにものも生まない。だが人間は富も力も分け合うことを嫌い、可能な限り仲間内で独占しようとする。なかでも最も恐ろしいのは、力を持った悪人ではなく、力を握った愚か者たちだ」
「他者の尊厳のために闘わないと言うことは、自分の尊厳をも手放していくことよ。個々の尊厳は貧しく痩せたものとなり、おのずと命の単価は安くなる。それがどんな事態を招くのか、この町はいつかきっと知ることになるわ」
著者がこれまでの書で危惧する事態が、現実となる日が来るのだろうか。
Posted by ブクログ
ファンタジーでなければ辛すぎて最後まで読めなかった。
陰鬱な中にも、こころ優しい登場人物がいて、なんとか悪い方向にいかないでほしいと願いながら読みました。
Posted by ブクログ
はじまりの町で起こる余所者羽虫差別と事件とその後の話。章ごとに語り部が変わり、進むごとに謎が解けていき、各々の葛藤が伝わり辛い。町の人から羽虫への接し方に腹立つ。人ではなく物だという扱いにこちらが耐えれなくなる。そして町の洗脳に気付かず良いように支配される、無関心ほど怖いものはないと感じる。先の章に行くにつれ未来が見えなくなり息ができなくなる。
にしても、ファンタジーと割り切れない圧倒的既視感。他所の国で、この日本で、起こりそうで他人事には思えない。