太田愛のレビュー一覧
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ネタバレ上下巻に及ぶ長編社会派ミステリー、言論、報道の自由について考えさせられる。下巻は所々涙腺が緩んだ。
曳船島編では白虎の判明が明らかになり戦時中の過去が明かされる。報道の制限から始まり偽報道の蔓延、気がつけば言いたいことも言えない世の中の悲惨さの失敗から正光達が命を賭け行動に移した理由が分かり胸が熱くなる。
真実を報道する番組のメインキャスターに清廉潔白な人気者が携ることに対し、国民のコントロールが効かなくなると邪魔と判断した人間を社会的に抹消する政治家、そこと繋がる警察。リアルでも沢山あるのかもしれないと思うし報道されたことだけを信じるのではなく、そこから一歩自分で考えて意見を持ちたいと気づかされた。
子供達の笑い声を守るため。鑓水達3人組とその周りの登場人物達みんなカッコよかった、、! -
Posted by ブクログ
文句なしに一級品に面白い作品でした。おすすめのミステリーを聞かれたら、今のところ真っ先にこの作品を挙げています。ページ数はかなりあるのに、話はどんどん深く広がっていき、最後までまったくだれることなく一気読みでした。上巻を読み終わった瞬間、そのまま下巻を読んでいたくらい夢中になった作品です。今回は感想を書き忘れていたので再読しましたが、やはり面白さは変わりませんでした。
一つの通り魔事件からここまで壮大で奥深い物語につながっていくとは、読み始めた頃にはまったく想像していませんでした。食品会社のモラル問題、裁判闘争、政治腐敗など、次々と問題が広がっていくのに話が散らからず、最後には綺麗に収束していく構成力が本当に見事です。社会派ミステリーとして重厚なのに、とにかく読みやすく、続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。読んでいる間はずっと緊張感があり、怒りや無力感を覚える場面も多かったです。それでも最後まで読まずにはいられない力がこの作品にはありました。
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大手自動車メーカーの若い非正規労働者4人が、共謀罪により、逮捕されようとしていた。その裏には大手企業と政治家、そして公安警察が絡んでいた。
現代版蟹工船。
過労死を隠蔽工作したり、悪いことはなかったことにしようとする超大手企業&公安警察VS過酷な労働条件と低賃金で働く派遣工や期間工などの非正規労働者。勝手に決められた規則に反旗を翻す彼らを応援せずにはいられなかった。
フィクションとはいえ、公安警察ってこんなに怖いの?これじゃあ、戦前、戦中の特高警察と同じ。そして、日本って、労働において(ジェンダーにおいてもだけど)も全然先進国じゃないなぁとも感じた。
メーカー勤務の身内が、新卒研修で3ヶ月だけ工場の現場研修をした。1週間ごとに昼夜逆転の生活、決められた時間内で行うエアコンのない工場での作業。夜勤などで給料はよかったが、本当に過酷だったと。派遣工や期間工の方たちは、みないい人たちばかりで、過酷な労働生活を何年も続けていて頭が上がらないと言っていた。
太田さんの代表作『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』の3部作とはまた違った面白さがあった。でも、やっぱりあの3人にまた会いたいんだよなぁ。 -
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ネタバレ「人がよりよい世界を願い、それを実現しようとする時、そこには長く困難な歳月が横たわっている。
力を持つ者から迫害を受けることもあれば、今ある現実につき従う者から誹誘され、心を打ち据えられることもあるだろう。けれども、細い水の流れが集まって小川となり、それが河となり、やがて太く力強い大河となってついには海に至るように、それが実現する時には、かつて奇跡として願われたものは、あたかも自然とそうなるべくして成就したかのように見える。
人のなし得る奇跡、力ない者たちの奇跡とはそういうものなのだ。」
天上の葦以降の太田愛作品
これまでの社会派ものと違い、ファンタジー色のあるものかなと思っていたけど、過去の戦争に向かう時と共通するシーンや移民や難民を土地に住む人々としては許容しつつもその存在を侮蔑、軽視する世界は自分たちの住む世界と切り離すことができないものとして映った。
内容は四人のキャラクターから見たその世界で何があったかを章ごとに話していく構成になっている。
全編通して、優しさと決断力があるコンテッサがずっと好きだった。
3章の終わりでその時の体制に抵抗して羽虫たちの土地を作ろうとするコンテッサと怪力の結末があまりにも悲惨だった。アレンカやマリの描写を終えてからの3章だったから、コンテッサの希望が叶って欲しいと期待していたからだと思う。
4章のコンテッサと魔術師のやりとりを中で過去作の天上の葦の、民衆の政治への軽視からいつのまにか暴走している権力の恐ろしさを想起した。
その時にも出てきたキャラクターが語った「火は小さいうちに消さねばならない」という肥大化した権力やそれからくる戦争の大きさは止めることができない。というメッセージを大切にしたいと思った。
今作でも、最初はあった民選という民主主義は人々の政治の無関心からなし崩し的に伯爵の独裁が始まったからこうなっては止めることができないようになってからではもう手遅れだった。 この部分は作者の現在の政治に無関心な人たちに向けた忠告のように感じ -
Posted by ブクログ
再読です。前回は電子書籍、今回は文庫本。前回読んでから1年半、状況はますます悪化しています…
→前回の感想
解説のとおり恐るべき傑作だと思います。読み終わって茫然自失、溜息すら出ませんでした。久しぶりの太田さんでしたので大いに期待して手に取りましたが、冒頭いままでと全く異なるトーンに驚きました。それでも読み進めるにつれ根底はは同じと気付き、長い物語ですが一気に読まされました。感想や思いがたくさんありすぎて書ききれませんが、私は風刺というよりも反省のない人類への警告と読みました。ナチスドイツ、日本陸軍、そして極右勢力に牛耳られた今の日本と、人間は性悪で経験を生かすことも反省することもできない動物なのです。多少の時間稼ぎに過ぎないのでしょうが、安倍晋三に続き極右の皮を被った私利私欲だけが目的の高市早苗が国のトップにならなくて心から良かったと思います。
「中央府は骨の髄まで腐りきってる。今に始まったことじゃないが、あそこにいるのは甘い汁に群がる亡者みたいな連中ばかりだ。少しでもいい思いをしようと上の人間におべっかを使うほか能がない」→これって霞ヶ関の官僚や大手町や丸の内の経済団体のことですよね。
「これまでと同じように言われたとおりにしていれば、今より何倍も悪くなることはない。みんなそう思っている。羽虫も町の人間も、伯爵や中央府のほとんどの人間も。でもそうじゃない。力がひとところに溜まって動かなくなれば、代謝をやめた生きものみたいに腐っていくだけ」→前半は日本国民のこと。後半はこの国そのものを指していますよね。
「あそこには二種類の人間がいる。 ひとつは始まりの町の人間であることを大いなる誇りとし熱烈に先祖を信奉して満たされない自負心に悶々とする人々だ。もうひとつは自分が始まりの町の人間であるのを当たり前だと思い目先の生活と他人へ不満だらけの人々。どちらの人間も羽虫を虐げることで瀕死の自由を延命し、なんとか誇りと自尊心を保っている」→高市早苗に投票した様な人と選挙に行かないくせに文句ばかり言っている大多数の国民のこと
「みんな死ぬ……」 オト先生の目は恐怖に見開かれていた。 「あの子たちは、従うことしか教えられていない。それも、ただ従うのでは足りない、進んで従わなければいけない、学校は、私たちは、そう教えてきたんです。進んで従う者を褒め、そのような態度を競わせ、優劣を評価し、自発的に従う態度を叩き込んだ。そして、それが習慣として身につくまで繰り返した。そうです、まさに歯磨きのように習慣になるまで」→まさに安倍晋三が目指した美しい国、道徳教育、愛国心
「夥しい死は、無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または選択と思わずに同調した結果」→無関心な日本人が招く近い将来の日本のことです
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Posted by ブクログ
冒頭警視庁の捜査員が、追っていた容疑者に逃げられる所から始まります。
どんな犯罪を犯したのだろうと思いながら、読んでいくと今度は追われる側の4人の若者が、捜査員に追われるまでの物語が展開されていきます。
自動車工場で過酷な環境下で働かれている非正規労働者の4人。彼らのことを知れば知るほど、応援せずにはいられなくなります。
そして彼らを支えてくれる人達も、魅力的な人達が多かった。
この本を読むことで、勉強になることも多かったです。現政権、警察、検察のやることに疑問を持つことが多い中、このタイミングでこの本に出会えて良かったです。
結構な分厚さに読むのに気後れしてしまうかもしれませんが、若い人や非正規雇用で働いている人達にぜひ読んでほしいです。
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Posted by ブクログ
北方謙三『水滸伝』を想起した。
非正規労働者、だけでなく、自分のことを「普通」と思い込んでいる我々弱者に光を灯す、まさに現代版『水滸伝』。そう断言して差し支えない。
著者の小説は本作が初めてだが、その生き様をこれでもかと登場人物の台詞から殴打されたような感覚。
最初の400ページはあまり物語が動かず、苦しい場面も多いことも相まって、こりゃ駄作かなぁと思っていた。失礼ながら早く作業的に読み終えて次の本に移りたかった。
ところが、である。400ページを過ぎると物語が急加速していく。
闘う者たちの魂の叫びとでも言うべきか。こちらの心を熱く捉えて放さない。水滸伝ばりの名言連発。
現実には勝たなきゃ意味が無い、なんて思ってるんだろうけど、そもそも俺たちには勝つと決まってる勝負なんて巡ってこないんだ。お前が本当に勝ちたいならーーー。
震える。その連続。
徐々に行動を起こす人々。
気弱な者、やり直そうとする者…状況は様々だが、みんな素敵。みんなが、自分にやれる最大限の、立ち上がり方をする。
タイトル『未明の砦』に対して、最後の一節。そういうことだったの!?鳥肌。
最初の400ページをこらえれば、そこから先、ものすごい熱源が、あなたを待っている。 -
Posted by ブクログ
⭐︎6 。
素晴らしい。最初何のテーマの話なのか分からないまま一気に引きこまれその勢いのまま最後までずっとおもしろかった。
600頁の物語は、自分もユシマの派遣労働者達を間近で見てるようなリアリティある気分にさせられる。
自動車期間工として働く派遣労働者達の過酷な環境、それを取り巻く経営側、繋がる政府、警察、、
現実でも契約社員と社員の待遇の差をうめるため同一賃金同一労働の声が上がったことを思い出した。社員の休暇日数を契約社員に合わせることで合意がされ不満の声が上がったが、そんなレベルではない奴隷のような働き方をしてる人達もいることを知り悲しくなった。
4人に人権や労働について教えてくれる、気づかせてくれる人との出会いや憲法や労働者の権利を学んで成長していく過程が眩しい。俺たちが人間であることを分からせるんだと何度も主張する彼らをずっと応援しながら読んでいた。
出る杭だけど頑張ってる姿を見てる人、感化される人は必ずいるんだなと思った。
労働者の権利に気づかせてくれる、自分を殺さずに生きていく力を与えてくれる、たまに読み返したくなる素晴らしい小説。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ(上下巻とも感想内容は同じ)
本書は<鑓水、修司、相馬>が活躍する3部作の最後のシリーズ。前2作品は既読。このシリーズのこの3人組(!?)が大好きで、シリーズ最後のこれを読んでしまったらあとがなくなる、それは寂しすぎる!! との思いから、読むのを先延ばしにしまくってきた本。最近作者の本を調べたら、この後に数冊新作が出ていて、そちらの方も評判は上々だったので、だったらこの本を安心して読める…と、読むことにした。
いや~、相変わらずすばらしかった。
本書では3人組のうち鑓水に焦点が当たっているのも、鑓水をいちばんのお気に入りにしている私にはうれしい内容になっていた。が、先の戦争=太平洋戦争を絡めているだけに、あの軽薄っぽい鑓水が実は…とシリアス度全快。
そうなんだ、鑓水はクオーターだったんだ。と、これまでの内容と合わせて鑓水のキャラクターに妙に説得力があった。
抜群のストーリーテリングは流石としかいいようがない。謎の提示の仕方も丁寧。そして上巻から下巻への超ロングパスも奇麗にきっちりと回収されている。
巻末の参考文献の量を見て、まあ、絶句しました。半端ない覚悟でこの作品に望まれた太田愛さんの心意気をそこに見た思いです。
いつかぜったいに再読間違いなしの本書と言い切れます。
鑓水たちにはまたいつかお目にかかりたいものですが、いかがでしょうか、太田さん。
ネットで調べてみたら、戦後の渋谷にたしかに存在していたんですね、ひばり号。写真が上がっていました。
◆私の覚書◆
下巻
p42
死んだ仲間の時間は若いままで止まってる。生き残った人間は歳を取って、仕事や家庭を持って、白髪ができて、お祖父ちゃんと呼ばれるようになって。あの老人たちが死んだ仲間と一緒に歌える歌は軍歌だけなんだと思うと、あれもひとつの鎮魂の形なんだと思えるようになった。
p44
海軍将校だった鑓水の祖父は、時枝や正光、白虎、松林たちと戦ったのだと思った。正光秀雄が生きた時代は、鑓水にとって教科書の中の歴史ではなく、祖母を通して直接鑓水の現在に繋がっているのだ。
p451
そもそも言論の自由ってのは、為政者の側が国民に保障するものであって、あちら様が振り回すもんじゃないでしょうが。
===データベース===
生放送に映った不審死と公安警察官失踪の真相とは?感動のサスペンス巨編!
白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編! -
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ネタバレ(上下巻とも感想内容は同じ)
本書は<鑓水、修司、相馬>が活躍する3部作の最後のシリーズ。前2作品は既読。このシリーズのこの3人組(!?)が大好きで、シリーズ最後のこれを読んでしまったらあとがなくなる、それは寂しすぎる!! との思いから、読むのを先延ばしにしまくってきた本。最近作者の本を調べたら、この後に数冊新作が出ていて、そちらの方も評判は上々だったので、だったらこの本を安心して読める…と、読むことにした。
いや~、相変わらずすばらしかった。
本書では3人組のうち鑓水に焦点が当たっているのも、鑓水をいちばんのお気に入りにしている私にはうれしい内容になっていた。が、先の戦争=太平洋戦争を絡めているだけに、あの軽薄っぽい鑓水が実は…とシリアス度全快。
そうなんだ、鑓水はクオーターだったんだ。と、これまでの内容と合わせて鑓水のキャラクターに妙に説得力があった。
抜群のストーリーテリングは流石としかいいようがない。謎の提示の仕方も丁寧。そして上巻から下巻への超ロングパスも奇麗にきっちりと回収されている。
巻末の参考文献の量を見て、まあ、絶句しました。半端ない覚悟でこの作品に望まれた太田愛さんの心意気をそこに見た思いです。
いつかぜったいに再読間違いなしの本書と言い切れます。
鑓水たちにはまたいつかお目にかかりたいものですが、いかがでしょうか、太田さん。
ネットで調べてみたら、戦後の渋谷にたしかに存在していたんですね、ひばり号。写真が上がっていました。
◆私の覚書◆
下巻
p42
死んだ仲間の時間は若いままで止まってる。生き残った人間は歳を取って、仕事や家庭を持って、白髪ができて、お祖父ちゃんと呼ばれるようになって。あの老人たちが死んだ仲間と一緒に歌える歌は軍歌だけなんだと思うと、あれもひとつの鎮魂の形なんだと思えるようになった。
p44
海軍将校だった鑓水の祖父は、時枝や正光、白虎、松林たちと戦ったのだと思った。正光秀雄が生きた時代は、鑓水にとって教科書の中の歴史ではなく、祖母を通して直接鑓水の現在に繋がっているのだ。
p451
そもそも言論の自由ってのは、為政者の側が国民に保障するものであって、あちら様が振り回すもんじゃないでしょうが。
===データベース===
生放送に映った不審死と公安警察官失踪の真相とは?感動のサスペンス巨編!
白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編!