ポール・オースターのレビュー一覧
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ネタバレ旧友から送られた回顧録の体裁を取ってるとはいえ、倫理的にも社会的にも結構エグい話。オースターと訳者の品格ある文章に抑えられているのを差し引かなかったら、かなりドン引きしていたのは間違いない。またその話が複雑で流動的な枠構造に彩られ、ドンドン物語世界の深みにさらわれる。読み終わりたくない、と久々に思った。
主人公アダムはオースターの主人公としては定番なタイプとは言え、美しく聡明な姉グウィンとの関係は、何故かサリンジャーのグラース家を彷彿とさせる。
更に、一応インテリながら歪んだエゴ炸裂で一皮剥けば変人どころか剣呑なルドルフは、偏執狂気質を露呈するとどうもイマイチ魅力に乏しい一方で、「王妃マルゴ -
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私立探偵ブルーは、明らかに変装しているホワイトという男から、ブラックという男を見張るよう、依頼を受ける。
最近ブラウンから探偵事務所を受け継いだばかりのブルーは、張り切って見張るのだが……。
依頼人が用意した見張るための部屋は、ちょうどブラックの部屋が正面から見張れるような位置にあった。
充分に報酬が支払われ、見張り部屋の家賃も支払うって、どれだけ重要なミッションなんだよ!
ところがブラックときたら、毎日窓辺のデスクで何かを書き、本を読み、買い物に出、たまに映画を観たり、飲みに行ったり。
こんな生活が1年以上続く。
一体ブラックは何者で、何のために彼を見張らなければならないのか。
登場人 -
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一本の間違い電話をキッカケに自分がポール・オースターという名の探偵となる作家ダニエル・クイン
自分の気配を消し、探偵のふりをするうちに、自分という個の意識から自由になるかわりに自分を見失っていく話
探偵となった主人公が何かを解決することもなく⋯うっすら根底に不穏な雰囲気を醸し出している
「何者でもない自分」を演じ、そのように振る舞い、それが継続されていくと自己は自分を認識できずに混乱していくのか?、と思い至った
ほの暗い色彩のないグレーな印象で少々気分が下がるけど
なぜかこの著者の本を他にも読んでみたいと思った
あと柴田元幸さんの翻訳がうまいと思う
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PAUL AUSTER 2024年に亡くなり、これが:最後の作品らしい。
ニュ-ヨ-クで暮らしていた二人が、結婚に至った経緯、そして妻の海における事故死。10年後の私の生きざま。作家は実に物語をうまく作るのだ。なぜなら、PAULの奥様は健在だし、彼は肺がんでなくなっている。私は1年前妻を肺がんで亡くした。
主人公と同じ状況で、おそらく小説の中の私と同年配。奥さんが私と同い年と思われる。10年後の自分がどう思っているか、小説に書けるものなら書いてみたい。
世の中には夫又は妻と生き別れ、死に別れされた人も多いだろうが、皆さんどうされているやら、様々であろうがやはり残ったほうは、生きてゆかねば -
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ネタバレ
感想書きにくい作品だよなあ。オースター作品は何年も前から読もう読もうと積読状態で、そもそも昔通ってた美容室のお兄さんが『ムーンパレス』を薦めてくれたのがきっかけだったのだ。それもまだ半分しか読めてないのだけど、これを機に読み進めたいと思う。
ブラックを見張るブルー、そのブルーを見張る私たちという多重構造。ブラックは見張られることで自身の物語を形作り、そして終わらせようとしている。ブルーがブラックへ接触を図ろうとするところから一気に展開が出てくる。それまでは淡々と、色のない情景が続くように思える。派手なことは起きないけど、何か惹かれていく感じ。 -
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ネタバレリーマンショック後の冷え込んだ景気のアメリカで、4人の若者がサンセットパークの廃屋に不法滞在してシェアハウスする物語。
金融危機で起こった不景気による先行きの見えない不安と未来に対する絶望感は今の日本の感覚とも通じるものがあり、解説でも語られている通りの「いま・ここ」にしかない切迫感が凄まじい。それは立ち退き期限の迫った廃屋の不法滞在という腰の座らなさがそのまま若者たちの「寄る辺なさ」へと繋がっており、夢や目標のために節約しているというより本当に行き場がなくて迷い込んだような感じなのがたまらなく切ない。群像劇視点ながら主人公含む4人ではなく、主人公マイルスの父親であるモリス・ヘラーの視点も混 -
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【写字室の旅】
オチがよかった。あと数ページだけどどうやって物語が終わるんだろうって思ってたところでのそういうことか、と分かった時は快感だった。
オースターが今まで書いてきた作品の登場人物たちが沢山出てきて、それぞれの作品を思い出しながら楽しく読めた。オースターはそんなつもりで書いてないかもしれないけど、ファンからしたら最早ファンサービスだと思う。
物語の登場人物が自我を持ったらという題材は色んなところで見るけど、物語を世に生み出すことの責任や畏怖のようなものを感じた。
【闇の中の男】
前半の写字室の旅と同じく物語を作ることについてのお話。
こちらは前半とは違い、作り出された物語の中の人