ポール・オースターのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
面白くてたまらなくて、
がっしがしに読み進めた!
これまで読んだポール・オースターは、
もっと複雑で、言葉の迷宮に入り込み、
冷たさや悲観的な部分があるからこそだった気がするが、
とてもあたたかくて、優しくて、
楽観的で、希望がある。
もちろん人生なので悲痛な痛みや別れはあるのだけれど。
街角で巡り合う人々や、
家族の繋がりの中で、
名もなき人々の物語が照らし出されてきたからこそ、
ラストの2段落に、
はっと息を呑むのだった。
すべての人々に、
他にはない特別な物語があったのだということを、
ブルックリンへの愛を込めて、
ポール・オースターは全力で言いたかったのだな。 -
Posted by ブクログ
還暦目前、自身の身の錆で離婚をすることになり、さらには肺ガンにもかかり、残りの余生は静かに暮らしたいと故郷であるブルックリンに一人戻ってきたネイサン。
幸いガンは予後が良いようで、もうしばらく人生を楽しめるというなか、新生活を始めるやいなやわきおこる数々の騒動。
騒動の中で登場するネイサンの甥であるトム、トムが働く古書店の(怪しげな)主人のハリー、通りすがりに出会った完璧に美しい母親(PBM)ナンシー、トムとネイサンのもとに突然現れた少女ルーシー。
その他、ネイサンが行動する範囲で現れる数々の人々を群像劇的に描いていく。
騒動がおこり、それが収束していくなかで変わり、そして深まっていく人間関 -
Posted by ブクログ
突然のポール・オースターの訃報を聞き、長年積読状態だった本書を手に取りました。難解と思い込み本棚で眠っていましたが、オースターってこんなに面白かった?と思わせる小説。10ページ弱のエピソードが怒涛に展開してとても読みやすい。「アメリカ文学」って高尚に構えるのではなく、日本の小説ではないアメリカ的な「物語」を読んでいる、引き込まれて行く感覚。
結局、人は一人では生きられない。誰かとの繋がりを求めている。オースターの小説の登場人物は、高度資本主義かつ大量消費社会に馴染めないインテリの男が多い。本書もしかり。人間は愚かな生き物だけれども、だからこそ魅力的でもあり愛すべき存在。
もちろん読みやす -
Posted by ブクログ
自分の人生を肉体と精神のそれぞれの側面から振り返った本。
ただの自叙伝ではなく、構成がかなりユニークで面白いと思った。時系列順に並んでなかったり、各章でアプローチ方法が全然違ったりなど。あんまり詳しく書くとネタバレになってしまうけど、私は本を書く人間ではないのに思わずこういう書き方もあるんだって感嘆するようなものだった。
全く違う国と時代と性別に生まれた人だから、情景を上手くイメージできないこともあったけど、それでも筆者の人生を一緒に辿るのが楽しかった。
恥ずかしながらポール・オースターのことは知らなくてこの本をたまたま書店で目についたからなんとなく買っただけなんだけど、文章がとにかく面白く -
Posted by ブクログ
ある人の人生から誰かが去り、新たな誰かが現れ、そしてまた去っていく。誰にとっても人生は出会いと別れのつづら折りであり、本人を含めそこに登場し退場していく人物の大半が、名もなき人間たちだ。
2005年に発刊された、2000年のブルックリンを舞台に始まるこの小説は、その舞台設定から予想されるゴールに確かに到達してしまうが、それでも、あるいはだからこそ、名もなき人間たちの、ジェットコースターめいた涙と笑いの日々を描く朗らかで彩度の高い作品となっている。人生の終着点を探すつもりで生まれ故郷のブルックリンに戻ってきた60歳目前の男・ネイサン。彼がふとしたことで再会する、失意の中にいる甥にして元・秀才文学 -
Posted by ブクログ
「一九六七年の春、私は彼と初めて握手した。そのころ私はコロンビア大学の二年生で、何も知らない、書物に飢えた、いつの日か自分を詩人と呼べるようになるんだという信念(あるいは思い込み)を抱えた若者だった。」という主人公アダムの書き出しで、オースター読者ならピンと来る。本作も、ここ最近のオースター小説のベースになっている内省的自叙伝の色合いが濃いのではないかと。(1967年、オースターはコロンビア大学の二年生) もうこの時点でオースター・ファンとしては期待値が一段階アップする。
語り手がアダムになったり、彼の友人のジムになったり、そして、ジムの語りの中でアダムの残した手紙を読んだり。こうしてアダム像 -
Posted by ブクログ
Sturm und Drang.
本書を読み終えた直後の私の心境は、まさのこの一言であった。暴力的なまでの物語の持つ力を見せつけられ、数分の間、茫然自失としてしまう自分がそこにはいた。
私にとって、現存する作家の中で新作をチェックしてほぼ読むようにしている数少ない一人がポール・オースターである。これまで彼の最高傑作は多くの人々も認めるように1989年の『ムーン・パレス』だと思っていたが、その認識を改めた。本作こそ最高傑作といって良いのではないか。
物語は1967年、文学を志す20歳のコロンビア大学の男子学生を主人公に幕を開ける。彼が突然巻き込まれる暴力と恋愛をトリガーにして、彼の一生が劇 -
Posted by ブクログ
ネタバレ旧友から送られた回顧録の体裁を取ってるとはいえ、倫理的にも社会的にも結構エグい話。オースターと訳者の品格ある文章に抑えられているのを差し引かなかったら、かなりドン引きしていたのは間違いない。またその話が複雑で流動的な枠構造に彩られ、ドンドン物語世界の深みにさらわれる。読み終わりたくない、と久々に思った。
主人公アダムはオースターの主人公としては定番なタイプとは言え、美しく聡明な姉グウィンとの関係は、何故かサリンジャーのグラース家を彷彿とさせる。
更に、一応インテリながら歪んだエゴ炸裂で一皮剥けば変人どころか剣呑なルドルフは、偏執狂気質を露呈するとどうもイマイチ魅力に乏しい一方で、「王妃マルゴ -
Posted by ブクログ
ネタバレ
感想書きにくい作品だよなあ。オースター作品は何年も前から読もう読もうと積読状態で、そもそも昔通ってた美容室のお兄さんが『ムーンパレス』を薦めてくれたのがきっかけだったのだ。それもまだ半分しか読めてないのだけど、これを機に読み進めたいと思う。
ブラックを見張るブルー、そのブルーを見張る私たちという多重構造。ブラックは見張られることで自身の物語を形作り、そして終わらせようとしている。ブルーがブラックへ接触を図ろうとするところから一気に展開が出てくる。それまでは淡々と、色のない情景が続くように思える。派手なことは起きないけど、何か惹かれていく感じ。