ポール・オースターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
突然のポール・オースターの訃報を聞き、長年積読状態だった本書を手に取りました。難解と思い込み本棚で眠っていましたが、オースターってこんなに面白かった?と思わせる小説。10ページ弱のエピソードが怒涛に展開してとても読みやすい。「アメリカ文学」って高尚に構えるのではなく、日本の小説ではないアメリカ的な「物語」を読んでいる、引き込まれて行く感覚。
結局、人は一人では生きられない。誰かとの繋がりを求めている。オースターの小説の登場人物は、高度資本主義かつ大量消費社会に馴染めないインテリの男が多い。本書もしかり。人間は愚かな生き物だけれども、だからこそ魅力的でもあり愛すべき存在。
もちろん読みやす -
Posted by ブクログ
誰かのおすすめ本で紹介されていて
気になって購入後、積読したままにしてたら
何に惹かれて買ったか、どんな内容か
さっぱり忘れてしまってた
わたしの最近の傾向でSFだったかなーと
思いながら読み進めたが、物語である。
僕の視点で話はすすむ
むむむ、最後まで読み切れるかなー
と不安になりつつ、読み進める
50ページも過ぎた頃からか
どんどん引き込まれていく
彼の中に。
小説って、また読もうと思うものはなかなかない
一回読んで、あーよかった、面白かったと
でも、最後まで、ワクワクもするし
人生についてすごく考えさせられる
アメリカ文学って、結構文化的なことを
知った上じゃないと楽しめないのが -
Posted by ブクログ
自分の人生を肉体と精神のそれぞれの側面から振り返った本。
ただの自叙伝ではなく、構成がかなりユニークで面白いと思った。時系列順に並んでなかったり、各章でアプローチ方法が全然違ったりなど。あんまり詳しく書くとネタバレになってしまうけど、私は本を書く人間ではないのに思わずこういう書き方もあるんだって感嘆するようなものだった。
全く違う国と時代と性別に生まれた人だから、情景を上手くイメージできないこともあったけど、それでも筆者の人生を一緒に辿るのが楽しかった。
恥ずかしながらポール・オースターのことは知らなくてこの本をたまたま書店で目についたからなんとなく買っただけなんだけど、文章がとにかく面白く -
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「一九六七年の春、私は彼と初めて握手した。そのころ私はコロンビア大学の二年生で、何も知らない、書物に飢えた、いつの日か自分を詩人と呼べるようになるんだという信念(あるいは思い込み)を抱えた若者だった。」という主人公アダムの書き出しで、オースター読者ならピンと来る。本作も、ここ最近のオースター小説のベースになっている内省的自叙伝の色合いが濃いのではないかと。(1967年、オースターはコロンビア大学の二年生) もうこの時点でオースター・ファンとしては期待値が一段階アップする。
語り手がアダムになったり、彼の友人のジムになったり、そして、ジムの語りの中でアダムの残した手紙を読んだり。こうしてアダム像 -
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Sturm und Drang.
本書を読み終えた直後の私の心境は、まさのこの一言であった。暴力的なまでの物語の持つ力を見せつけられ、数分の間、茫然自失としてしまう自分がそこにはいた。
私にとって、現存する作家の中で新作をチェックしてほぼ読むようにしている数少ない一人がポール・オースターである。これまで彼の最高傑作は多くの人々も認めるように1989年の『ムーン・パレス』だと思っていたが、その認識を改めた。本作こそ最高傑作といって良いのではないか。
物語は1967年、文学を志す20歳のコロンビア大学の男子学生を主人公に幕を開ける。彼が突然巻き込まれる暴力と恋愛をトリガーにして、彼の一生が劇 -
Posted by ブクログ
ネタバレ旧友から送られた回顧録の体裁を取ってるとはいえ、倫理的にも社会的にも結構エグい話。オースターと訳者の品格ある文章に抑えられているのを差し引かなかったら、かなりドン引きしていたのは間違いない。またその話が複雑で流動的な枠構造に彩られ、ドンドン物語世界の深みにさらわれる。読み終わりたくない、と久々に思った。
主人公アダムはオースターの主人公としては定番なタイプとは言え、美しく聡明な姉グウィンとの関係は、何故かサリンジャーのグラース家を彷彿とさせる。
更に、一応インテリながら歪んだエゴ炸裂で一皮剥けば変人どころか剣呑なルドルフは、偏執狂気質を露呈するとどうもイマイチ魅力に乏しい一方で、「王妃マルゴ -
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ネタバレリーマンショック後の冷え込んだ景気のアメリカで、4人の若者がサンセットパークの廃屋に不法滞在してシェアハウスする物語。
金融危機で起こった不景気による先行きの見えない不安と未来に対する絶望感は今の日本の感覚とも通じるものがあり、解説でも語られている通りの「いま・ここ」にしかない切迫感が凄まじい。それは立ち退き期限の迫った廃屋の不法滞在という腰の座らなさがそのまま若者たちの「寄る辺なさ」へと繋がっており、夢や目標のために節約しているというより本当に行き場がなくて迷い込んだような感じなのがたまらなく切ない。群像劇視点ながら主人公含む4人ではなく、主人公マイルスの父親であるモリス・ヘラーの視点も混