ポール・オースターのレビュー一覧

  • サンセット・パーク(新潮文庫)

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    期待に違わぬ素晴らしい作品でした。リーマンショック後の先の見えない時代を背景に、心が損なわれた主人公と取り巻く人達が、傷ついた心や厳しい生活を抱えながらも互いをいたわりながら日々を懸命に生きていく様は、強い共感を覚え心が癒されます。

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    2025年12月08日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    主人公が愛する伯父を失って泣き腫らし、泥酔・嘔吐し、行きずりの娼婦にホテルに連れ込まれた挙句、脚を開く彼女に子守唄を歌ってあげた一幕は感に堪えなかった
    頁を急く衝動と、ずっと終わらなければいいのに、という一抹の寂しさを胸に同居させられた傑作

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    2025年12月08日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ジーンと心に染み入るような感動のある小説でした。
    悲劇に振り回されながら生きる登場人物たちはとても人間味があり、僕はなぜか読んでいて救われる気持ちになりました。
    登場する3人の男たちは、ある意味悲劇でつながっている深い関係だと思いました。
    不思議と読後感がとてもよい小説でした。
    また、このような小説を読みたいです

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    2025年11月30日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    移民や多様な文化が交錯するニューヨーク、ブルックリン。ここを舞台に、人生の終盤に差しかかった主人公が偶然の出会いを通じて再び人とのつながりを取り戻していく。過去に何かしらの傷を負った人物の群像劇でありながら、どこか静かに温かい。自分の外に一歩踏み出して他者と関わろうという気持ちがあれば、年齢に関係なく、人生前向きに生きられると思えた本。

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    2025年11月23日
  • 4 3 2 1

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    めっちゃ良かった。ファーガソンの何度も様々な方向に違えて繰り返す人生を、様々に違った方向から読むことができる。同じような人生でも様々に違って見えるのかもなと思った。

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    2025年11月15日
  • 4 3 2 1

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    なんということか、ついにこの大作を読み終えてしまった!深夜2時半の読後とにかく感想を新鮮なうちにおさめたい!

    まず、本屋さんで手に取ったその時の重みと期待は忘れられず、読み進めるほどに考えが深まるこの経験はとても貴重だった。今この時代に20代で、主に60年代波乱の時期を書いたこの作品を読めたこと、著者のポールオースターには感謝しかありません。なんたる贈り物。
    10代後半から20代へと差し掛かる時期に、いつどこでだれがどのようなことをしたのか、自分自身の出来事、社会の出来事、全ての要素が織り込まれて人は成長していくのだなと、俯瞰的に人生を眺めるに至りました。今現在の私に深く深く突き刺さってきま

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    2025年11月02日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    とても時間がかかってしまったけど、読み終わってほんわかする。いや、未来は暗いんだけど、いくつになってもアイデアと気力があれば人生は楽しいんだなって 90

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    2025年09月29日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    初めてポールオースターを読みました。面白い。そして読後感も良く癒されました。特に際立ったことが起こらない前半も、魅力ある文体と豊かな表現力に引き込まれました。他の作品も早速読みたくなりました。

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    2025年09月19日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    クインの失われた息子と妻の話は最後まで語られない。その説明の不在こそトラウマの証拠だろう。
    ピーターとヴァージニアは、おそらく彼の失われた家族を暗喩している。
    ダニエル・クインのイニシャルが、ドン・キホーテと同じであるように、これは狂人、あるいは狂人に見える人の物語であり、孤独に陥っていく「浮浪者」あるいは「狂人」の内面を描いた物語だろう。
    最初は、ピーターの父である教授がそのように見える。しかし次第にクイン自身がそれと同じ境地に陥っていくのである。

    教授と同じ顔をした(立派なみなりをした)別の人間は、おそらくそうではなかった別の人生を生きる自分の暗喩である。クインにとってのオースターも同じ

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    2025年09月10日
  • 4 3 2 1

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    これぞ、オースターが遺した
    オースター流の総合小説だ。

    恋愛・哲学・音楽・文学・青春・政治が
    これでもかと言わんばかりの力強さを持って
    オースターの文学的音楽の波にサーフしている。

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    2025年09月03日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    探偵ブルーはホワイトから、ブラックを見張ってほしいという依頼を受ける。
    ブルーはブラックの真向かいの部屋に住み観察を始めるが、彼の行動はといえば、何か書きものをしているか、散歩しているかのどちらか。
    事件らしい事件も起こらず、ただブラックを見張り続けるほか何もすることのない日々に、ブルーはじりじりと焦燥感を募らせる。
    無機質なニューヨークの街の中で、物語は色彩を失っていく――。

    『書くというのは孤独な作業だ。それは生活をおおいつくしてしまう。ある意味で、作家には自分の人生がないとも言える。そこにいるときでも、本当はそこにいないんだ。』
    『また幽霊ですね。』
    『その通り。』
    『何だか神秘的だ。

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    2025年08月16日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    書き出しの「人類がはじめて月を歩いた夏だった」はあまりにも名文だと思う。

    愛や喪失をテーマに紡がれる物語で文章も相まってとても美しく儚い。

    以下、好きな文章。

    ・「彼女に恋をしないこと なんて不可能だった。ただ単に彼女がそこにいるという事実に酔い知れないこと なんて不可能だった」

    ・「僕は崖から飛び降りた。そして、最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する」

    人生のオールタイムベストに挙げる人が多いのも頷ける。

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    2025年07月24日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    喪失から始まり喪失で終わった。人生は喪失の連続だ。同じ場所に留まり続けることはできないし、自分の意思とは関係なく街の風景は変わっていく。歳をとるにつれてどんどん話のできる人は死んでいく。このような喪失とどのように向き合って生きていけばいいのだろうか。自分だったらどうなってしまうのだろうと考えながら読んでいた。

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    2025年06月12日
  • 4 3 2 1

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    1960年代を中心としたアメリカ、激動の時代のクロニクル。パワフルかつ繊細。変奏曲のように同じ主題が違う展開を生み出す。これまで自分が教科書やニュース、別の作品で見聞きした歴史的事件が現れて登場人物がどのように関わっていくのかを辿るのも一興。最後に一定の種明かしがあるのが優しみ。作品の長さは読書の楽しみの長さ。

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    2025年05月31日
  • 4 3 2 1

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    買ってから5ヶ月寝かせていたけれどもGWに意を決して読み始め、2週間かけて読み終わりました。

    とにかくすごい作品としか言いようがない(語彙力)。
    今になってポール・オースターで好きな作品ベスト3に入るものを読むことになるとは思わなかった。

    解説や帯にも書かれているけれども文字どおりオースター文学の集大成でした。

    オースターが生まれた1947年から1970年代にかけてのNYにおける野球チーム、バスケットボール、ベトナム戦争と反戦運動、公民権運動、文学や音楽、大学生と学生運動、アメリカ政治などオースターが何度も題材にしてきたテーマや、人にはコントロールできない

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    2025年05月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    熟年離婚の後に死に場所を探してブルックリンへと帰ってきた老人が甥のトムとの再会を機に、冒険に詐欺に逃避行の手助けと家族を取り巻く人生最後のドタバタ騒ぎに巻き込まれる物語。オースターの作品の中で恐らく最も読みやすいコメディタッチのストーリーであり、相変わらずその「語り」の巧さに敬服してしまう。

    登場人物に対しての作者の「まなざし」に非常に温かみがあり、たとえば主人公のネイサンは切れ者で老人特有の知恵と落ち着きがあるが、行きつけのダイナーにいる女性店員にデレデレしたりと、いくつになっても男であることの愚かさが描かれているわけだが、それが決して否定的でなく、至ってフラットに描かれている。さりとて肯

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    2025年05月15日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ある日、ミステリ作家のクインのもとに間違い電話がかかってきた。電話の向こうの人が発した第一声は、「ポール・オースターですか?」。私立探偵のポール・オースターとやらをクインは知らなかったが、常々ミステリを執筆するとき探偵になってみたかったため、その私立探偵のふりをすることにした。そこから不思議な依頼をうけ、歯車が狂い出してゆく。みなさんも知っている通り、ポール・オースターはこの本の作者の名前でもある。私好みのメタ・フィクションの香りがするぞ……。ページをめくる手が止まらず、秀逸な展開に唸った。

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    2025年05月04日
  • 4 3 2 1

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    一ヶ月半をかけてようやく読み切りました!
    ネタバレになってしまうため内容はあまり詳しく言えませんが、一章の途中から違和感を覚え、二章を読み始めると「これってまさか...」と慄き、さらに読み進めて、この本の構造そのものに気づいたとき「とんでもない本に手を出してしまった...」とかなり驚愕しました。
    しかしこの構造自体が今まで人生の可能性について、あり得たかもしれない出来事や人にはコントロールしようのない偶然を何度も題材にしてきたポール・オースターならではであると思いました。まさしく集大成の作品です。

    一滴の水滴が水面に落ちて波紋がゆっくり広がっていくように、少年の頃のある人との出会いが考えの礎

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    2025年03月28日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ポストモダニズムがどうとか、巻末にあった文章のようなことは難しくてわからない。作家たちの歴史を学ぶ必要がある。
    ただ単純に、読んで、構造的な面白さが印象深かった。前衛アートのように構造を楽しむものなのかな、と思った。
    主人公たる探偵ブルーは、ホワイトに「ブラックという男を監視してほしい」と依頼される。しかしブラックは日がな一日机に向かっていて、外出は散歩程度のものだ。依頼の意図も知らないブルーは焦れて、飽き、やがてホワイトとブラックについて物語を妄想したり、自己について深く考え込んだりする。ついにブラックと接触したブルーは、ブラックもまた誰かを監視するよう依頼された探偵だと知る。

    監視する者

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    2025年02月01日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    鍵はウォールデンである。
    ある男を監視する主人公は、男の買ったソローの森の生活を読もうとして挫折する。
    ゆっくりと読む、それが主人公の陥った袋小路を打開する唯一の手段。
    しかし、その機会を失った事で、停滞していた監視は、主人公を傍観者の立ち位置から巻き込む形で、監視される男へと、一種、予定調和の様に集約していく。
    ゆっくり読むべきは、我々読者だったのか?
    この転換は、小説の丁度ど真ん中でピッタリと折り返す様に起き、計算された構成を味わえます。

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    2025年01月22日